OK Misc. Comics | Home | BBS | Links OTOMO KATSUHIRO Misc. Comics大友克洋GENGA展 図録
内容
コメント
2012年4月9日から5月30日まで開催されている『大友克洋GENGA展』の図録です。表紙、裏表紙は『大友克洋GENGA展』のメイン・ビジュアルである、河村康輔氏の手によるコラージュ。B4ソフトカバーは迫力のサイズです。 収録されているのは、デビュー前の作品「海が…」、「マッチ売りの少女」から、この時点での最新作である「DJ TECKのMORNING ATTACK」まで。カラー1枚絵を除き、完全収録されている作品はありませんが、各マンガ作品、映像作品(の設定画等)から最低でも1コマが収録されるように配置されています(*注)。分量が多いのは、やはり「AKIRA」と「童夢」。この2つが別格で、「さよならにっぽん」、「聖者が街にやってくる」、「気分はもう戦争」、「幻魔大戦」、「YOU」、「大砲の街」、「STEAMBOY」、「Giro de Italia 2007」が4〜6ページ、あとは多くて3ページ、ほとんどが半ページほどとなっています。 注:マンガ作品で全く収録されていないものは以下の通り:「A Space Godzilla Part. 1&2」(原稿紛失のためと思われる)、「星際大戦」(合作のため原稿が無い?)、「火之要鎮」(原稿行方不明のため:GENGA展にも出品無し)、「Batman The Third Mask」(不明:GENGA展に出品あり)、「ORBITAL ERA」(不明:GENGA展に出品あり)、「公園」(不明:GENGA展にも出品無し)。 CHAPTER01 1973-1975このチャプターには、主に単行本未収録作品の多い最初期の原画を収録。のっけから誰もが初めて見るであろう「海が…」の2段と、「マッチ売りの少女」の1段と1ページが収録されていて、度肝を抜かれます。特に「海が…」はGENGA展では展示されていなかったので、ここで初めて公開されました。その先も「銃声」から順に、最初期の作品の原稿から数コマ〜1ページほど収録されています(「銃声」、「親友」、「密漁の夜」は「芸術新潮 '12年4月号」に収録されたのとは別のページ、コマを使用)。そして「傷だらけの天使」シリーズが終わるところでチャプター終了。この中で扱いが一番大きいのが「目覚めよと呼ぶ声あり」で、2ページが割かれています。この時期の代表作ということでしょうか。 CHAPTER02 1976-1978続いて1976年から1978年の作品をまとめたチャプター。「鏡」から「信長戦記」までの作品をカバーしています(但し「ヘンゼルとグレーテル」は他の西洋童話シリーズとまとめて次のチャプターに収録)。この中で特に重要なのが、「鏡地獄」と「遠い祭り」の単行本未収録作品2つ。「鏡地獄」は本文からの収録が小さめの3コマ(図録1ページの4分の1程度)なのが残念ですが、「遠い祭り」は、原画展で判明した4色で描かれた扉を含めて図録半ページ以上が割かれています。全5回だった「さよならにっぽん」が4ページなのを除くと、「ハイウェイスター」と「宇宙パトロールシゲマ」に各2ページ使われているのがこのチャプターの特徴。また、「大魔境」、「信長戦記」等の2色が目に鮮やかです。 CHAPTER03 1979-1982チャプター3は、大友克洋作品が一気に多様化した1979年から1983年を、カテゴリ分けしながらまとめます。チャプターの分量も、ここが一番多くなっています。冒頭は、1978年作品ながらこちらに入れられた「ヘンゼルとグレーテル」。そこから西洋童話シリーズが10ページ続きます。そして「Fire-ball」が2ページ。更に同時期のSFものが2ページにまとめられています。印象的な扉絵を中心にした「聖者が街にやってくる」の4ページ、「A荘殺人事件」1ページを挟み、重要な単行本未収録作品である「G…」が3ページに渡って収録されています。「気分はもう戦争」に勝るとも劣らぬ描き込みの「G…」の凄さはこの3ページを見るだけで充分に感じ取れると思いますが、これだけ見せられると、余計に残りが気になってしまうかもしれません。そして1〜2ページずつの短編の紹介が続いた後、「気分はもう戦争」が8ページに渡り掲載されます。更に短編紹介が挟まった後、2ページを使った「Apple Pradise」も目玉の一つでしょう。ベタの塗りむらまでもが見える印刷で、細かいSFメカの描き込みが堪能できます。そして「童夢」。イメージ・アルバムのカラー・イラストや、単行本に収録されなかった連載時の最終回のコマなどを挟みながら、16ページのボリュームで画を見せます。それから「饅頭こわい」(またリアル・ウナギイヌだけなのが残念)を含む短編紹介が挟まった後、映像関係のイラストへ。「ロボットカーニバル」、「幻魔大戦」、「YOU」、「CANON T70」等。この辺りは『KABA』と被る内容ですが、トリミング違いで印象の異なるものもあり、面白いです。 CHAPTER04 1983-1994そして「AKIRA」がメインとなるチャプター4。全52ページのうち、44ページが「AKIRA」の画に割かれました。冒頭のカラー・ページの原稿に始まり、巻毎にモノクロ原稿ページ、カラー・イラスト・ページの順で並び、最後に関連するカラー・イラストがまとめて掲載されています。これがこの図録中でもっとも多くのページを割り当てられた作品に違いありません。違いありませんが、GENGA展が「「AKIRA」連載原稿全ページ展示」を最大の目玉にしていて、実際展示の大半が「AKIRA」の原稿であったことを考えると、図録での扱いはずいぶんと小さいようにも思えます。特にモノクロ原稿。レイアウトの好き嫌いは別として、正直もっと沢山のページを割いて欲しかったファンも多いはず。更に、原稿の選択に首をかしげるところも。なぜあの「怨念を込めた」という「AKIRA発動のカケアミ」が入っていないのか…。鉄男の表情に逡巡したことが窺えるホワイト跡が見えるコマなどはとてもいいのですが、この「AKIRA」パート全体は、必ずしも万人を満足させるものとはなっていないような気がします。 CHAPTER05 1995-2005続くチャプター5には、マンガ作品はありません。映画「MEMORIES」と「STEAMBOY」の為のイラストと、様々な媒体のために描かれた一枚物イラストの章となっています。ほとんどは「KABA2」やその他の設定集と被りますが、今まではトリミングで切れていた余白との境界にある筆跡が見えるのが興味深いです。 CHAPTER06 2006-そして最後は2006から現在までの仕事を収めたチャプター6。自転車絡みのイラストが多く、後ろ4ページに自転車以外のものを収録。最後の2ページにある「ボルヴィックCM用イラスト」と、「DJ TECKのMORNING ATTACK」を除き、ほとんどが「Viva Il Ciclissimo ! 」及び「KABA2」と被る内容です。そしてこの章にはインタビューの再録はありません。 作品リスト-巻末には、図録のページ毎に掲載された作品の初出(というか使用先)を記載した作品リストが付いています。明確にどのコマがどの作品に対応するかが書かれていないため、特に初期の単行本未収録作品は読んだことが無ければわかりにくいかもしれませんが、それなりに丁寧なクレジットとなっています。但し、間違いもいくつか指摘できます。
以上、ざっと内容紹介をするとこんな感じです。正直言って、賛否両論あることを覚悟した内容と言えるでしょう。特に、予備知識無くこの本を手にしたファンは、戸惑いが大きいかもしれません。しかし、GENGA展を見てからならば、編集者達が苦心して原画の持つパワーを封じ込めようとした意図は伝わると思います。特にチャプター3までは情報量が多く、何度も見返したくなる内容と思います。また、あまりインタビューを読んだことの無いファンにとっては、充実したインタビュー集ともなるでしょう。 2012年4月7日のGENGA展内覧会時に初めて一般販売された後、会場の物販コーナーで売られています。また、4月終わりからは書店での取り扱いも開始しました。版元の通販サイト及び特約店では、表紙絵と同柄のB3サイズ・ポスターが特典として付けられています。 なお、2012年4月14日の大友克洋の誕生日には、GENGA展物販コーナーでこの図録を購入すると、大友克洋特製「金太郎缶バッジ」(右図)がもらえました。イラストは「ヤングマガジン '97年1月 第5/6合併号 KINTARO 祭波雅 (さいばあ) ポスター」のもので、大きさは直径5cmほど。管理人は既に図録を購入済みだったために泣く泣く諦めましたが、物販コーナーのお姉さんに頼んで写真だけ撮らせて貰いました。不鮮明ですみません。 OK Misc. Comics | Home | BBS | Links |
This page last modified at .