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OTOMO KATSUHIRO Misc. Comics

大友克洋GENGA展 図録

GENGA Otomo Katsuhiro Original Pictures
  • パイ・インターナショナル
  • 発行:2012年4月29日
  • 発売:2012年4月7日
  • 256p
  • B4 版
  • 定価 4,800円
  • ISBN978-4-7562-4273-0
  • 備考:4月14日頃出荷分以降はビニール・パッキング、ステッカー付き

内容

セクション・タイトル 頁数 初出
目次 1  
序文・大友克洋 2012年3月 1  
CHAPTER01 1973-1975 19  
INTERVIEW 1979 1 ぱふ '79年7月号
CHAPTER02 1976-1978 34  
DIALOGUE 1982 2 シナリオ '82年4月号
INTERVIEW 1983 1 プレイガイドジャーナル '83年9月号(再録:「マンガ批評大系 第4巻」'89
CHAPTER03 1979-1982 80  
INTERVIEW 1989 2 週刊少年サンデー '88年39号(再録:「オレのまんが道」 '89
INTERVIEW 1991 1 宝島 '91年3月9日号
CHAPTER04 1983-1994 52  
INTERVIEW 1991 1 エスクァイア日本版 '91年5月9日号
DIALOGUE 1993 1.5 ミスターマガジン '93年8号(再録:「大系黒澤明 第4巻」'10)
DIALOGUE 1994 0.5 月刊ベアーズクラブ '90年8月号 (?)(再録:「This Is Rock!」'94
CHAPTER05 1995-2004 20  
DIALOGUE 2002 5 ユリイカ '02年7月号
CHAPTER06 2005- 18  
作品リスト 6  

コメント

GENGA sticker

ビニール・パッキングに貼られたステッカー

2012年4月9日から5月30日まで開催されている『大友克洋GENGA展』の図録です。表紙、裏表紙は『大友克洋GENGA展』のメイン・ビジュアルである、河村康輔氏の手によるコラージュ。B4ソフトカバーは迫力のサイズです。
 多くの美術展・展覧会の図録がそうであるように、展示品の全てを収録することはページ数的に不可能であったため、図録としては非常に大胆な、カットアップ技法による誌面作りが行われました。中にはページ丸ごと1枚の原稿が割り当てられていることもあり、レイアウトでダイナミズムを感じさせます。また、展示品が「原稿そのもの」であるため、本来は版下である原稿を「印刷」するのではなく、写真撮影してそれをオールカラーで掲載しています。そのため、原稿に残るホワイトの跡、写植の貼り跡、鉛筆による指定といった、本来なら印刷時に消えてしまう情報もそのまま表現されています。カットアップのレイアウトについては好みの分かれる所ですが、原稿の持つ凄みを伝えることと大量の原稿を収録することを両立させるために、苦心の末に出来上がったことは容易に想像できます。

収録されているのは、デビュー前の作品「海が…」、「マッチ売りの少女」から、この時点での最新作である「DJ TECKのMORNING ATTACK」まで。カラー1枚絵を除き、完全収録されている作品はありませんが、各マンガ作品、映像作品(の設定画等)から最低でも1コマが収録されるように配置されています(*注)。分量が多いのは、やはり「AKIRA」と「童夢」。この2つが別格で、「さよならにっぽん」、「聖者が街にやってくる」、「気分はもう戦争」、「幻魔大戦」、「YOU」、「大砲の街」、「STEAMBOY」、「Giro de Italia 2007」が4〜6ページ、あとは多くて3ページ、ほとんどが半ページほどとなっています。
 また、図録の目玉として、過去のインタビューの再録も掲載されています。各セクションの終わりに、そのセクションに関連するものとして付けられていて、作品制作の背景を知る良い手掛かりになります。以下、各セクションと収録されているインタビューについて、簡単に解説します。

注:マンガ作品で全く収録されていないものは以下の通り:「A Space Godzilla Part. 1&2」(原稿紛失のためと思われる)、「星際大戦」(合作のため原稿が無い?)、「火之要鎮」(原稿行方不明のため:GENGA展にも出品無し)、「Batman The Third Mask」(不明:GENGA展に出品あり)、「ORBITAL ERA」(不明:GENGA展に出品あり)、「公園」(不明:GENGA展にも出品無し)。
 「栄養満点!」、「That's Amazing World」の西洋童話シリーズ、「饅頭こわい」はシリーズものとして、一部作品のみ掲載(そもそも原稿が揃っていないとか)。「CARBON HEAT」、「おしゃれハンドル」の絵は挿絵扱いで、「おしゃれハンドル」から4点のみ収録。また、「イワンのバカ」などの4コママンガは収録に値しないと考えられたか、原稿が現存していないかのどちらかで収録されていない。更に、「海が…」より以前の投稿作品については、原稿が現存していない(と言われている)ため掲載されていない。

CHAPTER01 1973-1975

このチャプターには、主に単行本未収録作品の多い最初期の原画を収録。のっけから誰もが初めて見るであろう「海が…」の2段と、「マッチ売りの少女」の1段と1ページが収録されていて、度肝を抜かれます。特に「海が…」はGENGA展では展示されていなかったので、ここで初めて公開されました。その先も「銃声」から順に、最初期の作品の原稿から数コマ〜1ページほど収録されています(「銃声」、「親友」、「密漁の夜」は「芸術新潮 '12年4月号」に収録されたのとは別のページ、コマを使用)。そして「傷だらけの天使」シリーズが終わるところでチャプター終了。この中で扱いが一番大きいのが「目覚めよと呼ぶ声あり」で、2ページが割かれています。この時期の代表作ということでしょうか。
 インタビューは、「ぱふ '79年7月号」の記事から抜粋。元の記事の約半分が収録されています。なお、図録第1刷では「ぱふ '79年2月号」とクレジットされていますが、間違いです。

CHAPTER02 1976-1978

続いて1976年から1978年の作品をまとめたチャプター。「鏡」から「信長戦記」までの作品をカバーしています(但し「ヘンゼルとグレーテル」は他の西洋童話シリーズとまとめて次のチャプターに収録)。この中で特に重要なのが、「鏡地獄」と「遠い祭り」の単行本未収録作品2つ。「鏡地獄」は本文からの収録が小さめの3コマ(図録1ページの4分の1程度)なのが残念ですが、「遠い祭り」は、原画展で判明した4色で描かれた扉を含めて図録半ページ以上が割かれています。全5回だった「さよならにっぽん」が4ページなのを除くと、「ハイウェイスター」と「宇宙パトロールシゲマ」に各2ページ使われているのがこのチャプターの特徴。また、「大魔境」、「信長戦記」等の2色が目に鮮やかです。
 インタビューは、「シナリオ '82年4月号」から抜粋した石井聰亙との対談2ページ分(元記事の4分の1ほど)と、「プレイガイドジャーナル '83年9月号」の記事からの抜粋(元記事の5分の1ほど)を収録。

CHAPTER03 1979-1982

チャプター3は、大友克洋作品が一気に多様化した1979年から1983年を、カテゴリ分けしながらまとめます。チャプターの分量も、ここが一番多くなっています。冒頭は、1978年作品ながらこちらに入れられた「ヘンゼルとグレーテル」。そこから西洋童話シリーズが10ページ続きます。そして「Fire-ball」が2ページ。更に同時期のSFものが2ページにまとめられています。印象的な扉絵を中心にした「聖者が街にやってくる」の4ページ、「A荘殺人事件」1ページを挟み、重要な単行本未収録作品である「G…」が3ページに渡って収録されています。「気分はもう戦争」に勝るとも劣らぬ描き込みの「G…」の凄さはこの3ページを見るだけで充分に感じ取れると思いますが、これだけ見せられると、余計に残りが気になってしまうかもしれません。そして1〜2ページずつの短編の紹介が続いた後、「気分はもう戦争」が8ページに渡り掲載されます。更に短編紹介が挟まった後、2ページを使った「Apple Pradise」も目玉の一つでしょう。ベタの塗りむらまでもが見える印刷で、細かいSFメカの描き込みが堪能できます。そして「童夢」。イメージ・アルバムのカラー・イラストや、単行本に収録されなかった連載時の最終回のコマなどを挟みながら、16ページのボリュームで画を見せます。それから「饅頭こわい」(またリアル・ウナギイヌだけなのが残念)を含む短編紹介が挟まった後、映像関係のイラストへ。「ロボットカーニバル」、「幻魔大戦」、「YOU」、「CANON T70」等。この辺りは『KABA』と被る内容ですが、トリミング違いで印象の異なるものもあり、面白いです。
 このチャプターで再録されたインタビューは、「INTERVIEW 1989」として、'89年刊行の単行本「オレのまんが道」からの抜粋2ページ分と、「INTERVIEW 1991」として、「宝島 '91年3月9日号」掲載記事の抜粋1ページ分。但し、前者の初出は「週刊少年サンデー '88年39号」なので、正しくは「INTERVIEW 1988」です。

CHAPTER04 1983-1994

そして「AKIRA」がメインとなるチャプター4。全52ページのうち、44ページが「AKIRA」の画に割かれました。冒頭のカラー・ページの原稿に始まり、巻毎にモノクロ原稿ページ、カラー・イラスト・ページの順で並び、最後に関連するカラー・イラストがまとめて掲載されています。これがこの図録中でもっとも多くのページを割り当てられた作品に違いありません。違いありませんが、GENGA展が「「AKIRA」連載原稿全ページ展示」を最大の目玉にしていて、実際展示の大半が「AKIRA」の原稿であったことを考えると、図録での扱いはずいぶんと小さいようにも思えます。特にモノクロ原稿。レイアウトの好き嫌いは別として、正直もっと沢山のページを割いて欲しかったファンも多いはず。更に、原稿の選択に首をかしげるところも。なぜあの「怨念を込めた」という「AKIRA発動のカケアミ」が入っていないのか…。鉄男の表情に逡巡したことが窺えるホワイト跡が見えるコマなどはとてもいいのですが、この「AKIRA」パート全体は、必ずしも万人を満足させるものとはなっていないような気がします。
 大きな「AKIRA」パートの後には、「老人Z」、「上を向いて歩こう」と、この時期に書かれた一枚画が4点掲載され、インタビュー・セクションとなります。選ばれたのは、「エスクァイア日本版 '91年5月9日号」のインタビュー、「ミスターマガジン '93年8号」掲載の黒澤明との対談、’94年発行の「This Is Rock!」収録の江口寿史との対談、それぞれの抜粋です。元記事に対する分量は、エスクァイアが5分の1ほど、黒澤明との対談が半分ほど、江口寿史との対談が5分の1ほど。なお、「This Is Rock!」は1994年発行の書籍ですが、元のインタビューは1990年に取られたもので、正しくは「DIALOGUE 1990」とすべきです。

CHAPTER05 1995-2005

続くチャプター5には、マンガ作品はありません。映画「MEMORIES」と「STEAMBOY」の為のイラストと、様々な媒体のために描かれた一枚物イラストの章となっています。ほとんどは「KABA2」やその他の設定集と被りますが、今まではトリミングで切れていた余白との境界にある筆跡が見えるのが興味深いです。
 インタビューは、「ユリイカ '02年7月号」に掲載された、高野文子との対談からの抜粋。5ページが割かれています(が、元記事はこの3倍以上の長さ)。結構危ない発言(by高野文子)も削られずに収録されています。

CHAPTER06 2006-

そして最後は2006から現在までの仕事を収めたチャプター6。自転車絡みのイラストが多く、後ろ4ページに自転車以外のものを収録。最後の2ページにある「ボルヴィックCM用イラスト」と、「DJ TECKのMORNING ATTACK」を除き、ほとんどが「Viva Il Ciclissimo ! 」及び「KABA2」と被る内容です。そしてこの章にはインタビューの再録はありません。

作品リスト-

巻末には、図録のページ毎に掲載された作品の初出(というか使用先)を記載した作品リストが付いています。明確にどのコマがどの作品に対応するかが書かれていないため、特に初期の単行本未収録作品は読んだことが無ければわかりにくいかもしれませんが、それなりに丁寧なクレジットとなっています。但し、間違いもいくつか指摘できます。

  • 1ページ目左段:「ぱふ」の出版社名の英語表記:誤:「Seiseisha」→正:「Seisuisha」
  • 1ページ目中段:誤「傷だらけの天使 1〜5, 〜'75年6月5日号」→正:「1〜6,〜’75年8月7日号」
  • 1ページ目右段:「鏡地獄」初出:誤:「'76年3月21日号」→正:「’76年3月12日号」
  • 2ページ目右段:「ヘンゼルとグレーテル」初出誌社名:誤「Futabasha」→正:「Shonen Gaho-sha」
  • 3ページ目左段:P68掲載の作品に「赤頭巾」欠落
  • 4ページ目中段:誤:「気分はもう戦争」7話扉未発表原稿→正:7話扉単行本未収録原稿
  • 4ページ目右段:「猫はよく朝方帰ってくる」初出誌社名:誤「Kodansha」→正:「Shonen Gaho-sha」
  • 6ページ目左段:小松左京エッセイへのイラストの年号抜け→「1996年」
前述のインタビューの年号間違い等も含め、これらの誤植が2刷以降で訂正されるのを期待しましょう。

GENGA poster

初回特典ポスター(B3)

以上、ざっと内容紹介をするとこんな感じです。正直言って、賛否両論あることを覚悟した内容と言えるでしょう。特に、予備知識無くこの本を手にしたファンは、戸惑いが大きいかもしれません。しかし、GENGA展を見てからならば、編集者達が苦心して原画の持つパワーを封じ込めようとした意図は伝わると思います。特にチャプター3までは情報量が多く、何度も見返したくなる内容と思います。また、あまりインタビューを読んだことの無いファンにとっては、充実したインタビュー集ともなるでしょう。
 ただ敢えて個人的感想を言わせて貰うならば、「KABA2」ときっちり棲み分けても良かったのでは無いでしょうか。「KABA2」が発行されたのが何年も前というのならともかく、GENGA展開催のつい数ヶ月前(なにしろ「KABA2」発売記念でもあるわけですから)。にもかかわらず、そこに収録されているイラストを、カットアップでまた沢山見せられても面白くも何ともありません。この部分、もうちょっとどうにかならなかったものでしょうか。残念です。

Kintaro Badge

4/14に配られた缶バッジ

2012年4月7日のGENGA展内覧会時に初めて一般販売された後、会場の物販コーナーで売られています。また、4月終わりからは書店での取り扱いも開始しました。版元の通販サイト及び特約店では、表紙絵と同柄のB3サイズ・ポスターが特典として付けられています。

なお、2012年4月14日の大友克洋の誕生日には、GENGA展物販コーナーでこの図録を購入すると、大友克洋特製「金太郎缶バッジ」(右図)がもらえました。イラストは「ヤングマガジン '97年1月 第5/6合併号 KINTARO 祭波雅 (さいばあ) ポスター」のもので、大きさは直径5cmほど。管理人は既に図録を購入済みだったために泣く泣く諦めましたが、物販コーナーのお姉さんに頼んで写真だけ撮らせて貰いました。不鮮明ですみません。

 

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