OK Works 8 (2006-present) | OK Features | OK Voices (2005-present) | Home | BBS | Links OTOMO KATSUHIRO on Magazines芸術新潮 '12年4月号 大特集 大友克洋の衝撃
コメント3.11の未曾有の大災害で故郷である宮城県も大きな被害を受けた大友克洋は2012年、動き始めました。その第1弾が「AKIRA」全ページを含む一大原画展、「大友克洋GENGA展」の開催。入場料の一部が寄付されるチャリティー形式となっています。そのGENGA展を目前にして、芸術新潮という少し堅めの雑誌で、展覧会の宣伝も兼ねた大特集が組まれました。 「大特集 大友克洋の衝撃」は、実に81ページ(目次、表紙を含めれば83ページ)に及ぶボリュームで、展示前の原画をふんだんに使いながら、大友克洋の足跡を明らかにします。圧巻はやはり、A4サイズ、高級な紙質に美しい印刷で表現される原画の数々。特集冒頭の「グラフ」コーナーのみならず、その後の記事中でも随所に原画が使用されていて、見るものの目を釘付けにします。中にはデビュー作「銃声」の1ページという、初めて見る人も多いようなものまで。言葉では説明しきれる者ではないので、とにかく見て下さい。 記事としては、ロング・インタビューも白眉の内容。インタビューアーは事前に単行本未収録作品も含めた全作品を読んで臨んだということで、今まで全く語られたことのなかった初期の話など、初めて語られる事柄が目白押し。マニアとしてはもっと突っ込んで貰いたいところも多々ありますが、一般のファンには充分濃い内容ではないでしょうか。 そして、新作マンガの「DJ TECKのMORNING ATTACK」。オールカラー8ページの読み切りSF短編は、「公園」以来5年ぶりの「ちゃんとした」マンガ。キーワードは「武器よさらば」「ELECTRIC BIRD LAND」「西洋昔話」「BD」…裏に深い設定がありそうで、意外と無いかもなんて思わせる、いかにも大友克洋らしいトボけた作品。ここから無理矢理話を続けたら、メビウスの「エデナの世界」のようになっていくのかしらん、などと妄想も膨らみます。 その他、マンガ論、映像論、絵画論に加え、関係者やファンによる記事がてんこ盛り。そこでも大友原画が贅沢に配置されていて見逃せません。論評の中では、これまでほとんど無かった近代日本絵画史にはめ込んだ絵画論が非常に面白い。まだまだ読み込みが足らないので何も語れませんが、この論からはいろいろと発展がありそうで楽しみです。また「アトリエ+スタジオ訪問記」の中では、この号発売時点では詳しい情報の公開されていなかった新作マンガ連載と新作アニメ「火要鎮」の情報も(この二つは結構小出しでヤキモキ)。一方、マンガ論は何度も大友作品論を描いている村上知彦によるもの。全体としては大友マンガを俯瞰してまとめたものとして一読の価値はあると思いますが、「Fire-Ball」の扉絵をエッシャーのパロディと知らずに論じているのが残念というか間抜けというか…。しかしそれを取り返すほど面白いのが、高寺彰彦氏の想い出話。ええ〜、それってそうだったの!?的な裏話の連発で、マニアはにやにやしてしまうこと請け合いです(しかもそれがtwitterに続く…w)。 通常よりも多数出荷されたにもかかわらず、発売翌日以降は入手困難な地域が出るなど、異様な程の売れ行きとなりました(ちなみに都内大手書店では品切れせず)。そして、発売1週間足らずで異例の重刷決定。とりあえず、プレミア付きで買わないでも大丈夫だと思います。何はともあれ、大友ファン必携の一冊。 OK Works 8 (2006-present) | OK Features | OK Voices (2005-present) | Home | BBS | Links |
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