[ 三妖神物語 第三話 女神乱舞 ] 文:マスタードラゴン 絵:T-Joke

第六章 闘神乱舞

 7条の光の槍が、”獲物”に突き刺さった瞬間、彼等は今度こそ勝利を確信していた。
 地球上で放った光の矢とは力も質も全く違う。
 この世界で、彼等の力に対抗できるモノなど存在しなかった。彼らの死の光を浴びて、あの美しい”獲物”は跡形もなく蒸発しているだろう。
「終わったな」
 その呟きは誰がもらしたものなのかは分からない、だが、それが彼等の共通の思いであることは事実だ。
 その時、それは起こった。

 ファシュ!

 奇妙な”音”が聞こえたような気がした。
 ここが異質の物理法則が働く世界だとはいえ、空気は存在しない。そのため普通の音波は伝わらないが、天使の耳は純粋に”音”だけを聞くわけではない。
 重力波や電磁波を”聞く”事さえ出来る。その”音”がどのような物であるかはこの際問題ではなかった。
 問題なのは、その音と共に起きた事態である。
 天使達の巨大な力が込められた死の光は、その何とも形容しがたい音と共に消滅してしまったのだ。
 そして、そこには、先ほどとは異なる存在が居た。
 グリフォンのいた場所に静かにたたずむ影。
 獅子のたてがみを思わせる黄金の髪を空間を流れる力の風にそよがせ、不思議な光沢を放つ鎧を身にまとう、美しい戦士。
 そして、眠るように閉じられていた瞼が開かれ、現れた二つの瞳は、太陽をも凌ぐ輝きを秘めたる黄金の炎!
 天使達は、その姿を凝視した。
 そして、天使達は知った。
 その”人影”が先ほどのグリフォンのもう一つの姿だと。
 そして、恐怖した。
 それは、強大な力を秘めた”敵”なのだと!
 だが、その本能的な恐怖を彼等は無理矢理ねじ伏せた。
 彼等は自分達の力を信じていた、いや過信していたのだ。
 この世界に自分達に対抗できる物など存在しないと。
 現実に、この世界に干渉を初めてより2000年、未だに彼等の道を遮った者は存在しなかった。
 彼等を止めようと立ちふさがった者達は、神や魔王、精霊や魔獣にいたるまで、全て滅ぼしてきたのだ。
 僅かな例外として、竜族達がいた。
 彼等の知っている”神を越えた”竜族ではなく、この世界に元々存在する土着の竜族。
 確かに彼等の力は、天使たる彼等にほぼ互角だった。だが、数が違っていた。
 そのころ、多くの聖霊や魔族が存在していた。そのために天使達も多くの仲間を連れてこの世界で暴れていたのだ。
 数に勝る天使達は、巧みに竜族を翻弄した。
 正面から戦えば決して天使達に引けを取ることは無かった竜族だったが、数に勝る天使達は、竜族と仲間が戦っている隙をついた。天使達の中で手の空いている者達が、竜族の信徒を滅ぼしていったのである。
 そのために竜族の信徒は激減し、この世界と竜族とのつながりは絶たれ、やがて、竜族はこの世界から姿を消していった。
 そして、彼等の力を恐れ、この世界の神々は、戦うことをあきらめてしまっていた。
 この世界で彼等はやりたい放題だった。
 この世界の人間達に信じられていた古い信仰を叩き潰し、神々を闇に葬り去って自分達こそ真実の神の使徒と人間達に信じ込ませた。
 彼等の創造神を真実の神として、人間達の間に新しい信仰を広めることにも成功した。
 あとは、あらかじめばらまいておいた予言を現実にすることで、この世界を確実に支配するだけだった。
 自分達が負けるはずがない!
 しばしば、過去の成功や栄光は、人間の判断力を鈍らせ大きな失敗へと誘い込む。
 彼等は天使であるため、人間など比較することもできないほどに強大な力を持っていはいたが、精神面の構造は、ほとんど人間と変わらなかった。
 人間が犯した過ちを、今、天使達が犯そうとしていた。

 天使達が再び戦闘態勢を整えるのを一瞥して、彼女”メイル”は静かに宣告した。
「あたいが、お前達に警告するのは一度きりだ。
 あたいは弱い者いじめは好まない。
 素直に元の世界に帰るのならば手はださぬ。
 だが、お前達がこれ以上この世界に干渉するというなら、お前達を叩き潰す」
”この世界”と言うのが地球とそれを含む宇宙全体であることは天使達に容易に理解できた。
 だが、彼女の警告を彼らは完全に無視した。
 せっかくの、メイルの警告。女神の慈悲を彼らは無にしたわけである。
「ほざくな!(ケダモノ)が!!」
 彼らは相手が何者なのか未だに理解できなかった。この世界に存在するただの幻獣だと信じていたのだ。
 あまりにも愚かな事であり、あまりにも奇妙な事実だ。
 彼らは己の力を過信し、相手の力を見くびりすぎた。
 彼等は、彼女を自分達より劣ると信じているのだ。
 かつて、メイル達に徹底的に叩き潰されながら、何故かメイルの姿を見て、”闘神”の事を思い出す者がいなかったのである。
 自分達より劣ると信じていた相手に見下されたために、冷静さを失い、その本質を見誤ったのだろうか?
 屈辱に煮えたぎり、相手の正体を思い出せなかったのであろうか?
 あるいは、意図的にその答えを拒絶していたのかもしれない。
 この異世界にメイルがいることなど、天使達にとってあり得ないことなのだから。

 だが、いきり立ち、メイルへの敵意を膨らませる7人の天使達を冷ややかに残りの1人が見つめていた。
 メイルに攻撃を加えるでも無く、ただ、成りゆきを見つめているだけだった。
 その傍観者を、メイルが怪訝に思って視線を動かした時、決戦の火蓋が切られた。
 天使の一人”ガブレイル”が右手を僅かに動かす。
 手のひらを上に向け、小さな言葉を呟く。すると、手のひらのすぐ上に光が現れた。
 その光の中から現れたのは、かなり大きな”物質”剣であった。
「くたばれ(ケダモノ)!」
 血の気の多いガブレイルが剣を抜き放ち、メイルにつっこむ。
 恐るべき速さだった。
 天使であるガブレイルの速さは、物理法則を完全に無視したものだった、一瞬の数億分の一の時間で剣を空間から呼び出し、構えもみせずに相手の懐に飛び込む。
 その勢いのまま、剣を突き出した。
 剣がメイルの心臓を狙い、白銀の閃光と化す。
(しとめた)
 天使達がそう思ったとき。

 ゴキリ

 異様な音が微かに聞こえたような気がした。
 勿論、それは普通に聞こえた音などではない。
 いくら物理法則が異なっている亜空間とは言え、空気のないこの空間で音が普通に届くことなど無い。
 その音は、巨大な力が加えられたことによって発生したエネルギーが、空間を振動させて天使達の耳に届いた重力波だった。
 剣がメイルの体に届くより早く、メイルの拳がガブレイルの顔面をとらえていたのだ。

 彼女の拳は、彼の顔面の真ん中にめり込む。
 先ほどの異様な音は、メイルの拳が彼の顔面を砕いた音だった。
 しかし、空間を震わせ重力波の”音”さえ生じる拳の一撃とは一体どれほどの破壊力を持っていたのだろうか。
 顔面に拳をめり込ませている天使・・・・。
 もしも、この状況を見た者が居たら、呆然とするか、大笑いするか、実に興味深い事だろう。
 だが、それは、人間の目には映らない光景だった、その光景は一瞬のことなのだ。
 圧倒的な破壊力を秘めた拳を正面から受けたガブレイルは、瞬時に数千億キロ後方にまで吹っ飛ばされる。
 だが、メイルがガブレイルを殴り飛ばしたまさにその瞬間をねらって、ラファイルが頭上から、メイルの脳天に光の刃を振り下ろす。

 ザン!

 光の刃はそこにある空間ごとメイルの体を脳天から引き裂いた!
 勝利の笑みを浮かべたラファイルだったが、次の瞬間、脇腹に激痛が走り、そのまま、加えられた破壊力に吹き飛ばされる。
 ラファイルが吹き飛ばされるとほぼ同時に、切り裂かれたメイルの”残像”がかすんで消える。
 メイルの尋常ならざる早さは、人間を遥かに超越した天使の五感さえ惑わす。ラファイルはメイルを切ったつもりで、ただの残像を相手にしていたのだ。
「なにい!」
 ミラヴィエルは驚愕の叫びを上げる。
 魔力はともかく、純粋な戦闘力や格闘術はガブレイルとラファイルが彼らの中で双璧をなす存在だ。
 その二人の完璧なはずのコンビネーションを、苦もなくかわしたメイルの異常なまでの戦闘力を、彼はようやく認識した。

 そして、彼の頭の中にある一つの記憶がよみがえる。
 あまりにも恐るべき、そして、認めたくない現実を。
 その記憶は今、目の前にいる”敵”の正体を彼に告げる。
 決して認めたくない。彼らではなく、彼らの創造者、彼らの神が。
 その忌まわしく憎々しい存在、それを越えるために、それを倒すために、そして、その存在を認めないために、あらゆる手段を講じた。
 だが、一矢を報いることすら出来ず、”神”の野望を打ち砕いた憎むべき存在。
 黄金の戦士”闘神”メイルの名を・・・・

 ・・・・・・・かつて、一人の人間がいた。

 その人間は強大な魔力を持ち、精霊と聖霊。妖魔や魔族、神々と竜族に愛され、祝福されていたのだ。
 その男は、自らの分身として巨大な力を持つ使い魔を生み出した。
 彼の力によって作られたその使い魔は、彼同様、常識外れの力を持っていた。
 人の手によって生まれたにも関わらず、その力は上級神族をさえ凌ぐほどだった。
 それを知ったとき、人間を生み出したヤフェイは狂喜乱舞した。
 彼等を部下にすれば自分の地位は神界に置いて揺るぎ無いものとなるだろう・・・・と。
 だが、その人間−マスタードラゴン−はそれを無視した。
 人間でありながら、創造神の命令を無視し、あまつさえ、反抗さえしたのだ。

 それが、どれほどに彼のプライドを傷つけたことか。
 そして、その力をどれほど疎ましく思ったことか。
 だが、どんなに怒り狂おうと、マスタードラゴンと使い魔達には手を出せなかった。
 マスタードラゴンは勿論、使い魔達さえ、その力はヤフェイを遥かに凌いでいたのだから。
 そして、その使い魔こそ、”メイル”と”ミューズ”
 後に”闘神”と”雷神”の地位を与えられた存在だった。

 だが、メイルがここにいるなど彼等にとっては計算外だった。
 第一、彼女たちはあちらの世界の守護神としての役目がある。
 それなのに、こんな世界に居るとは、にわかには信じがたい。
 だが、こちらの世界の幻獣風情に自分達に危害を加えられるほどの力があろうはずがない。
 姿と言い、力と言い、彼女はおそらく闘神メイル本人なのだろう。
”何故”という疑問は確かにあった。
 だが、今はそんなことはささいな事。
 問題は”どうやって”彼女を倒すかである。
 彼女が”闘神”メイルである以上、正面から戦っては、万に一つの勝ち目さえあり得ない。
”闘神”に”神の下僕”が束になったところで、かすり傷さえつけることなど出来はしないのだ。
 ここは逃げるのが一番の得策だが、いくら闘神メイルが相手とは言え、このまま、おめおめと引き下がることなど、どうして出来ようか!
 自分達の誇りのためにも、創造神ヤフェイの名誉のためにもここで引き下がるわけには行かなかった。
 一人で思案に耽っていたミラヴィエルを守るために他の4人は果敢(無謀)にメイルに挑む。
 灼熱のエネルギーがメイルを狙い、太陽を瞬時に氷の固まりと化す冷波が襲いかかる。
 明後日の方向から、ブラックホールをも凌ぐ超高密度の物質弾、地球ほどの大きさのそれが、光速に等しい速度でメイルめがけて飛んでくる。
 メイルに吹き飛ばされたガブレイルが、遠方から撹乱のために打ち込んだものだ。
 だが、その攻撃の全てを、あるいはかわし、あるいは打ち砕くメイル。
 明らかに本気などではなく、軽くあしらわれているにすぎない。
 それは天使達にも理解できる。
 彼女がその気になれば、その魔力中和能力で、エネルギー生命体である天使を消去することさえ可能なのだ。
 メイルにしてみれば、自分の主人の暮らす世界を自分達の欲望のために玩具にしようとする彼らを許しておくわけには行かないのだが、弱い者いじめをするのは彼女の気質が邪魔をする。しかし、このままにもしておけなかった。
 何しろ、彼らの神こそ主人の天敵にも等しい存在。
 卑しく呪われた神の下僕なのだ、無傷で帰すわけには行かなかった。
 だが、正直なところメイルは手を出しかねていた。
 勿論それは、天使に対して有効な力を持っていないという事ではない、全く逆の理由、すなわち、彼女の強すぎる力が問題だった。
 あまりにも強大すぎる彼女の力。
 本来のグリフォン形態ではないため、その力は遥かに弱くなっている。だが、それでも彼らを倒すだけには、あまりにも大きすぎる力をメイルは持っていた。
 手加減できればよいのだが、何しろメイルの能力と天使の能力では次元が違いすぎる。
 手加減したつもりでも、軽く相手を消滅させかねない。
 彼女の主人、かつてのマスタードラゴンほどではないにしろ、彼女も又、”強すぎるが故に実力を発揮できない”苦労を強いられていた。
 敵である以上、いざとなれば、天使を消去せざるを得ないかもしれないが、状況がそうなった場合は仕方がないと割り切るつもりだった。
 だが、そうするためには大義名分が必要なのだ。
 例え自分の主人の敵であっても、致命傷、あるいは”消去”という結果は軽いものではない。
 少なくとも、そういう手段に訴えてもやむをえない状況にでもならなければ、おいそれと手を出せなかった。
 そこまで遠慮してやる義理はメイルにはない、だが、竜一がそう”命”じたのだ。
 彼がかつての世界で、神々や魔族に愛された気質。真面目すぎるほど真面目なその気質を、彼女たちも多少困りものだと思いながらも愛していた。
 その命令は”専守防衛”
 自分達にとって危険な存在、もしくは、この世界に直接、害をもたらす行為を行わない限り、不用意に傷を付けてはならない。
 それが竜一の命令だった。
 そして、竜一の”命令”は彼女にとっては絶対だ、その命令がある以上、こちらから不用意には手を出せなかった。
 確かに天使達は本気で攻撃している。それに対して”正当防衛”の反撃も可能ではあるが、天使達にとっては本気の術も殺す気で仕掛けている攻撃も、メイルにとっては子供だまし以下の代物である。
 その程度の攻撃にむきになって反撃するのはあまりにも大人げない。”闘神”の名も泣こう。
 そしてなによりも、マスタードラゴンの使い魔”メイル”の汚名にもなりかねない。
 使い魔の汚名は、主人にとっての不名誉である。メイルにとって、自分のプライド以上に主人の名を汚すことは許されない事だったのだ。

 強すぎる力と高すぎるプライド。

 どちらか一方を持っていても戦いが不自由になることがある。まして、両方を持っているとなると・・・・
(ミューズに押しつけるべきだったか・・・・)
 そう思わないでもなかったが、今回、二面の敵が現れることは既に分かっていた。
 その意味で力押しで対処すればいい天使の方が、メイルには扱いやすかったのも事実だ。これが、人間相手ならますます手加減が難しくなる。

 ・・・・やってやれないことはないかも知れないが・・・・

 だがそれ以上にやっかいなのは、人間の組織を相手にする場合、事をいかに表に出さない様にするかが問題だった。
 早い話、いかにごまかすか、その腕が問われるのだが、残念なことにその手の策略に関してはメイルは得意ではない。
 結局、彼女が天使の相手をして、人間の組織をミューズ達にまかせるという結論は全く正しい選択なのだった。

 しかし、いつまでも悩んでいられない。自分は主人を守るためにここにいるのだから。メイルは腹をくくった。
 とにかく、天使に手を出すかどうかは、状況次第、成りゆきまかせにするしかなかった。
 気楽な悩み(本人にとっては大問題)で頭を抱えているメイルとは違い、天使達は必死だった。
 ここで彼女をどうにかしないと、彼らの神の遠大な計略が破綻しかねない。
 なにより、自分達が生き延びるためには、彼女を何とかしないといけないのだから、必死にならざるを得ないのだ。
 ミラヴィエルはその頭脳をフル回転させて打開策を考えていた。
 正面からではとても勝ち目など無い、では、どうする?
(奴の正確な位置を教えてくれ!)
 ミラヴィエルの脳に突然の怒鳴り声。確かめるまでもない、ガブレイルの声だった。
(どうするつもりだ?)
(やつの背中に切り込んでやる!)
(無駄だ、奴は”闘神”メイルだ。不意を付いたところで勝てはせぬ。)
(このまま終わってたまるか!
 いくら”闘神”が相手とは言え(ケダモノ)ごときにここまで嘗められて、おめおめ引き下がれるか!
 せめて一矢報いねば俺のプライドが)
 そこまでガブレイルの愚痴を聞いていたミラヴィエルだったが、名案が突然ひらめいた。まさに天啓であった。
(早まるな。奴に勝つ作戦を思いついた、これなら勝てるぞ!)
 そして二・三打ち合わせをすると、二人はその会話を切った。
 これ以上念話を続ければ、メイルに気取られる恐れもある。それに複雑な作戦でもないから簡単な打ち合わせですむのだ。
 そして、またしばらく戦いが続いた。
 とはいえ、それは戦いなどとは言えないのかもしれない。
 天使達は必死になって向かっているが、メイルはただ、あしらい、かわしているだけだった。
 攻撃が激しさを増していく。
 後方で作戦を練っていたミラヴィエルが攻撃に参加し、ガブレイル同様明後日の方角に吹き飛ばされていたラファイルも戦線に復帰した。
 6人がかりで激しく、すさまじい攻撃をくわえている、が、メイルは全く変わらず、のらりくらりと攻撃をかわし続けていた。
「ガブレイルはどうしたんだ!」
「後ろに回り込め! 俺は左からいく!」
「何とかして、奴の死角を取るんだ!」
 口々に叫びながら、何とか有利なポジションを占めようと、天使達は飛び回り、攻撃をくわえ、そしてまた飛ぶ。
 ヒットアンドウェイ戦法を仕掛けながら、ミラヴィエルはある方向に視線を一瞬さまよわせた。
(頼むぞ、ガブレイル・・・・)
 祈りにもにたその思いを受けて、今、ガブレイルはある場所へと急いでいる。
 超空間を跳び、光速を遥かに越えるスピードで。
”闘神”メイルを倒すための切り札を用意するために。
(小細工か・・・・)
 天使達の起死回生の作戦は、しかし、すでにメイルの知るところであった。
 ガブレイルの動きも彼女は先刻承知である。
 ミラヴィエル自身が言ったのだ。「不意を付いたところで”闘神”にはかなわない」と、天使ごときの力ではメイルを出し抜くなど不可能な事なのだ。
 ミラヴィエルはすぐに己の浅慮を後悔することになるだろう。

1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / < 7 > / 8 / 9 / 10 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15

書架へ戻る