[ 三妖神物語 第四話 女神帰還 ] 文:マスタードラゴン 絵:T-Joke

第七章 おとぎ話の終わり。物語の真実。

「・・・・そして、その魔獣はその方に仕えるようになったと言うことです」
 シリスは傍らに座る少年に向かって笑顔を向ける。それが物語の終わりの合図だった。
 彼女は自分の物語を少年に聞かせた。薬神シリスと推測される手がかりとなる部分を上手く省いて。
 神々や魔族からも恐れられ排斥された魔獣にさえ救いの手がさしのべられ、その力を良い方向に使う機会を与えられた。そのような物語に作り変えてシリスは傍らの少年に聞かせたのである。
「努力し、己を磨きなさい。
 そうすれば、必ずあなたを必要としてくれる者が現れます。
 そして、あなたが人々を救えばそれがシリス神の御心に添うことになるでしょう。
 恥じることはありません。あなたの努力は必ず報われます」
 その言葉に少年は頷く。
「うん、きっとなってみせる。
 シリス様の神官に。そして、かあさんのような人を出さないようにがんばるよ」
 少年の決意にシリスは優しく微笑む。
 そして、少年を連れて神殿の玄関近くに歩いていくと、玄関から慌てた様子の神官達が少年を呼びながら走ってきた。
「どうしたんだろう?」
 少年は不安に駆られた。もしかしたら、母親の身に何かが起きたのかも知れない。
 不安に脅える少年の背中を軽くシリスは押してやる。
「大丈夫、心配することはありませんよ」
「あの、お姉さんはどうするんですか?」
 不安に駆られた少年は誰かに付いてきて欲しかった。目の前にいる美しい神官に。
「ご免なさい。わたくしはもう行かなければならないのです。
 でも、心配することはありません。そう、きっと大丈夫ですよ」
 そう励ますと、静かに少年から離れた。
 少年に向かって走ってくる神官からまるで逃げるように美女は背を向けて歩き出す。
「お姉さん! 名前を教えて下さい!!」
 名残惜しそうに少年が声をかけるが、美女には聞こえなかったのだろうか? 
 その声に答えず、彼女は去っていってしまった。
 追いかけて名前を聞こうかとも思ったが、彼女はまれにみる俊足であった。
 僅かな時間で彼女は神殿の影に隠れてしまっていた。それを見て少年は考え直した。
 きっと、この神殿にいる神官だろう。服装から見てかなり高位の地位にある神官だから今まで会う機会がなかっただけに違いない。何時か会うことが出来るはずだ。
 少年はそう考え、彼女を追うのをやめた。
 そして、息を切らせて少年の元に神官がやってきた。
 神殿の玄関から少年の位置までそれほどの距離があるわけでは無いが、よほど慌てていたのだろうか、息が切れかかっている。
「た・・・・たいへんだ・・・・坊主・・・・」
「かあさんに何かあったんですか!?」
「実は・・・・」
 神官が続きを言おうと呼吸を整えているうちに、少年は神殿に向かって駆け出していた。神官の制止の声も届かない。
「おい! まだ話は!!
 ・・・・まあいいか、自分の目で見れば分かることだ・・・・」
 そう結論すると、その場で神官は乱れた呼吸を整えるために深呼吸をした。
 だが、呼吸を整えながら神官はぽつりと呟く。
「しかし、母親はどうやら筋金入りらしい。あの坊主どうするつもりかな?」

 神殿の中を母親の病室へと急ぐ彼の元に、別の神官が走ってきた。
「坊主! 急いできてくれ」
 血相を変えた神官の様子に少年は焦っていた。
 母親の身に何かが起こったのか? 
 あの美女は心配はないと言っていたが、こうなると、その言葉を信じられない。
 慌てて、病室に飛び込んで・・・・少年は神官達が血相を変えている理由をやっと理解した。
 確かに、あの銀の美女の言葉は真実だった。心配など無用だったのだ。
 いや、逆にこれはこれで問題があるかも知れない。
「私はヤフェイ様の元に戻ります!
 邪神の使徒が私の身体に触れないで!! 汚らわしい!!」
 金切り声を上げて、神官達に手近にある物を片っ端から投げつけている元気な女性が部屋の中で暴れていた。
 つい先ほどまで死にかけていた人間とはとても同一人物とは思えない。
 あまりにもすさまじい光景に少年は呆れるべきか、笑うべきか、喜ぶべきか、判断が付かなかった。
 そう、部屋の中で神官相手に立ち回りを演じているのは、つい数時間前まで死の淵をさまよっていたはずの彼の母親なのである。
 暴れる暴れる、とにかく暴れる。
 何とかなだめようと神官達が声をかけたりするが全く効果がない。まるでお湯の中に落ちた猫である。
 彼女にしてみれば、ヤフェイの天敵である三妖神は最も忌まわしい神である。
 その一人であるシリス神の神殿にいるという事だけで耐え難い事だった。神官達が自分の身体に触れるなど許せることではない。
 枕をぶつけ、花瓶を投げつけ、見舞い品の果物を放り投げ、毛布を両手に握って振り回す。
 つい数時間前まで棺桶に首まで入っていた人間と同一人物などと誰が信じられるだろう。もしも先ほどまでの彼女をその目で見ていなければ、誰も彼女が病人だったなどと思わないに違いない。
「かあさん、やめてよ!! みっともないよ!!」

 母親の元気過ぎる姿に喜ぶより先に呆れた少年は、もしかしたら、親不孝者だったかも知れない・・・・

 暴れる母親を少年はなだめた。
 初めは村に戻ると言い張った母親だったが、自分が意識を失っている間に村から抜け出し、シリス教の神官の手当を受けていたと知って、半狂乱になった。
 暴れ疲れた後、流石にもう村へは戻れないと観念した母親は、別人の様に大人しくなりベットの中で力を落とした。
「・・・・ヤフェイ様の教えを守って四十数年生きてきたのに・・・・これからどうやって生きていけばいいと言うの・・・・」
 彼女にとっては今までの人生を否定されたようなものである。落ち込んでも仕方がない。
 力無く呟く母親を少年は一生懸命励ました。
「あのまま村にいたら、かあさんは死んでいたんだ。だから、かあさんは生まれ変わったんだよ。
 今度は別の生き方をしようよ。生まれ変わったんだもん、ヤフェイに義理立てすることは無いよ」
 そう言って少年は母親を説得し続けた。

 ・・・・母親がそれを受け入れて、新しい人生を生きることを決意するのはかなりの年月を必要としたのである。

 翌日、少年は自分を励ましてくれた美女の姿を探して神殿を歩き回ったが、どこにも彼女の姿はなかった。
 少年は意を決して、この神殿の最高責任者である神官長に話を聞くことにした。
 神官長は毎週一回、神官見習いに講義をしてくれる。その講義が終わるまで少年は講堂の外で待ちかまえていた。
 講義を終えて出てきた神官長に少年はその美女の話をした。どうしてもお礼が言いたかったし、もう一度会ってみたかったのだ。
 だが、その話を聞いて老齢の神官長は驚愕の表情を浮かべて、少年に尋ね返した。
「その娘はどんな服装をしていたかね?」
「正式な礼服を着ていました。
 右の襟に植物の葉のような刺繍が三つ付いていました」
 あの日はちょうど三妖神の祭りの日。礼服を着た神官達が大勢歩いているのを少年は何度も見ていた。
 その美女の着ていた服が神官の礼服であることは、礼服を見慣れた少年にはすぐに分かった。そして、少年の言葉を聞いて、神官長は重々しく呟いた。その言葉には驚愕がありありと現れていた。
「礼服に植物の葉の刺繍が三つ・・・・」
 植物の葉。それは、薬神シリスの象徴である薬草”ラザイラ”の葉であろう。
 それがシリス神に仕えるものにとっての象徴である。
 それは良い。それがあるのは礼服ならば当然だ。ただ、問題なのはその数である。
 ラザイラの葉の刺繍。その数はそのまま神官の地位を現す称号である。
 見習い神官は一つ。一人前の神官は二つ。神官長に就任できる上級神官は三つ。
 一つの神殿をまかされる神官長は四つ。神官長を束ねる大神官が五つ。
 この神殿では上級神官は神官長である彼を除けば彼の補佐役の三人しかいない。
 そして、その中に少年が言うような銀髪の若い女性などいなかったのだ。
 では、上級神官の礼服を着たその美女は一体何者なのか。
 神官長の脳裏にある答えが閃いた。
 その答えを確認するために、少年を聖堂へと連れていく。

 聖堂。
 一人前の神官が修行をし、祈りを捧げる場所。
 そこには大きな銀のレリーフが飾られていた。
 最高の腕を持つ職人が丹精込めて作り上げたそのレリーフは神官達が崇める女神が彫り込まれていた。
 とても銀に彫り込まれたとは思えないほどの緻密かつ精巧な像。そこに、三人の女神は確かに息づいていた。
 少年はまだ神官見習でさえない。そのためこの聖堂には正式には入れない。
 他の場所にも女神達を型取ったレリーフはあるが、それはもっと小さくこれほど緻密なものではなかった。
 その美しさに少年は目を奪われた。
「きれいなレリーフですね」
 少年がそう言うと神官長は少年を促した。
「もっと近寄って良くご覧なさい。特にシリス様を」
 そう言われて、少年はもっと近づき、その美貌の女神達を見つめて・・・・真ん中に立つ女神に何故か見覚えがあった。
「これは・・・・」
「誰かに似ていないかね?」
 興味深そうに神官長が尋ねる。
 だが、少年は声を出せなかった。その女神から目を離せない。
 食い入るように見つめる少年の顔に驚愕の表情が広がる。
「そんな・・・・何故・・・・何故、あのお姉さんと同じ顔なんだ?」
 少年の目の前に立つ女神。それは確かに少年が出会ったあの女性の顔だった。
「やはりそうか・・・・」
 神官長は頷き、少年の疑問に答えた。
「君が見た女性はこの神殿の神官ではない。
 植物の葉、ラザイラの葉の刺繍は神官の地位を現すもので、三つの刺繍は上級神官の地位を表すのだ。
 そして、この神殿に上級神官は私を除いて三人しかいないが、その中に銀髪の若い女性はいない」
 さらに言葉を続ける。
「シリス様は銀の髪と銀の瞳をお持ち故に、月の女神とも呼ばれておられる。
 だが、女神と崇められるお方だ、瞳の色を変えるくらい造作ないだろうな」
 神官長のその言葉に少年は呆然と呟く。少年も銀の美女の正体にやっと気が付いたのだ。
「・・・・そ・・・・それじゃ、僕が会ったあの人は・・・・まさか・・・・」
 震える声で呟く少年に神官長が重々しく頷く。
「そう。恐らく、そのお方は女神シリス様ご本人であったのだろう。
 君の母上が健康体になったのもシリス様の御技に間違いあるまい。
 まさかとは思っていたが・・・・」
 神官長の言葉を聞いて、少年はその銀板の中に立つ女神を改めて見た。
 銀色の女神は、優しい微笑みを浮かべて静かに少年を見つめていた・・・・

 聖堂で神官長は少年にシリスがこの神殿に来た事は秘密にするようにと語った。
「何故ですか?」
 少年のもっともな質問に、神官長は自分の考えを語った。
「もしも、シリス様が正式にここを訪れたなら私に挨拶をされて行かれるはずだ。
 三妖神様方は、そう言った礼儀を重んじる方々と聞くからね。
 多分、シリス様は私達に内密で君の母上を助けたかったに違いない。
 女神の力に頼り切り、自分の力で困難を乗り越えられないような人間を作りたくないとお考えなのだろう」
 神官長はそう言うと少年の頭をなでる。
「だから、このことは秘密にしなければならない。それがシリス様のお望みなのだよ」
 その言葉に少年は強く頷いた。
 だから、少年は話さなかった。
 シリス神が自分を励ますために、遠い昔話を話してくれたことを。それが、シリス神の誕生の物語であることを少年は知った。
 そして、それは少年にとって掛け替えのない宝物となったのだ。

 ・・・・あらから二十年が過ぎた。
 この地を訪れたことはあれ以来無かった。何となく足が遠のいていたのだ。自分の昔話を話したことが照れくさかったのかもしれない。
 神殿は全く変わらなかった。あの頃と。
 あの時彼女を呼び寄せたカラの古木、その精霊に挨拶し、そのまま、何となくその場に佇んでいた。
 静かに神殿を見おろしていたシリスが、その場を離れようとした時、後ろから不意に声をかけられた。
「失礼ですが、シリス様ではありませんか?」
 え?
 その声に驚いて後ろを振り向くと、そこには年若い神官が立っていた。
 襟にある刺繍は四個。このフェルローズ都市の神殿を預かる神官長を意味する礼服を着た若い神官、いや、若すぎる神官長は彼女に深々と頭を下げる。
「お久しぶりです、シリス様。
 あなた様が再びこの神殿を訪れる日を、私はこの二十年間待ち望んでおりました」
「あなたは?」
「失礼致しました。自己紹介をまだしておりませんでしたね」
 笑顔でそう言うと、青年は名乗った。
「私はこの神殿を預からせてもらっているカイム・ザイルと申します。
 この度は我が神殿にご足労下さり、まことに感謝いたします。
 なにとぞ、私達の神殿にあなた様との時を過ごす栄誉をお与え下さい」
 そう言ってカイムは膝を折る。
 カイム・ザイル。その名声はシリスの耳にも届いていた。
 まだ二十代という若さに似合わぬ見識と知識。優れた技術と気高い理想を持ち、若くして現代四大賢者の一人と呼ばれる逸材であり、五百年に一人の天才と誉れ高い。
 その若さで既に大神官候補に名を連ねるほどの人物であり、シリス派のみならずトリニティの神官で彼の名を知らない者は、無知のレッテルを貼られると言われるほどの有名人であった。
 だが、シリスはその名声ではなく、彼の顔立ちに驚いていた。
 確かにどこかで見たことのある面影。それも最近見たような気がして、彼女は青年神官長を凝視し、そして、その面影を記憶の底から掘り出すことに成功した。
「まさか、あなたは・・・・」
「はい、二十年ほど前にあなた様に救っていただいた者です」
 そう言って青年は穏やかに笑う。
 彼はあの時の少年だった。そして、あの少年はその思いを遂げたのだ。
 シリス神の神官になると言う夢を、これ以上はないと言うほど完璧に。
「あなたの噂はわたくしの耳にも届いております。そうですか、あなたがあの噂の主だったのですね」
 カイムにシリスは微笑んだ。
「ヤフェイは貴重な人材を失ってしまったようですね」
 元々ヤフェイの信徒だった彼がシリスの信者になったのはささやかな偶然に過ぎない。そして、そのために、ヤフェイは得がたい人材を失ったのだ。今頃、かの神は自分の居城で、地団駄を踏んで悔しがっていることだろう。
 しかし、不世出の天才と誉れ高いシリス派の神官長は穏やかにそれを否定した。
「いいえ、もしもあのままヤフェイ神の信徒であったなら、私は平凡な一信徒に過ぎなかったでしょう。
 あなた様に出会い、あなた様に救われからこそ、今の私があります」
「謙遜なさるのですね」
「いいえ、これは事実なのです。ですが、私の噂話はこれくらいにしませんか?
 それよりも、なにとぞ、今回の祭りの最初の栄誉をこの神殿にお与え下さい」
 彼等信者にとっては女神本人と同じ時を共有できることは最高の栄誉である。
 それに、なんと言っても彼にとっては二十年ぶりの恩人、いや恩神との再会だった。今回のこの機会を逃したら、次に会えるのは何時のことになるか全く見当も付かない。
 数千億年の時間を生きる神と二百年程度の寿命しか持たない人間とでは時間に対する認識に大き過ぎるずれがあるのだ。
 人にとって数千年、数万年もの太古の神話を、神はつい昨日のことのように懐かしむ。思い出の場所に久しぶりに来てみたら、実は数千年が過ぎていた。などと言うことは全く珍しくもない。今を逃せば自分の寿命がある間に彼女に再会できる可能性など皆無だろう。
「・・・・分かりました。
 今日のこの一時をここで過ごすとしましょう」
 青年の必死の想いが通じたのか、美貌の女神は笑顔で答えた。
 その答えに彼は本当にうれしそうに頷いた。

 神殿へ向かう途中の僅かな時間。シリスは傍らに従う若い神官長に尋ねた。
「それにしても、どうしてあの時の神官がわたくしだと分かったのですか?」
 一応正体がばれないように隠蔽工作はしたはずだった。
 ミューズほどに完璧にやれる自信はないが、それなりに注意はしたはずである。
 それがシリスには不思議でならない。
「確かにこの神殿にはあの当時にも、多くの神官がおりました。
 銀髪の女性神官も何人かいましたが、残念なことに、あなたの隠蔽工作の役には立たなかったのです」
 訝しげに自分を見つめる白銀の女神の顔を見て、カイムはぷっと吹き出した。
「なにしろ、私を励ましてくれた銀髪の美女神官は、上級神官の礼服を着ていたのですからね。
 あの当時、銀髪の女性で上級神官の地位にいた者は居なかったのですよ」
 その言葉に傍らの女神は目を見開いていた。
 それは、彼女にとってかなりの衝撃だったらしい。
 その様子に神官長は肩を振るわせる。
 自分を励ましてくれた大恩有る女性。それも、自分達が崇め奉る女神本人を前に笑ってしまうのは失礼だと分かってはいるのだが、どうにも止められない。我慢が効かないのだ。
「上級神官・・・・ですか・・・・」
 呆然と呟く女神に彼は笑いをかみ殺して説明を続ける。
「襟首にあったラザイラの刺繍の数があなた様の服には三つ有りました。それは上級神官の地位を表す物だったのですよ」
「・・・・あの刺繍にそのような意味があったなんて・・・・」
 女神は心底驚いていた。
 シリスが信者達と共に過ごす時、その信者の数は恐ろしい程になる。
 大勢の信者と共に僅かだが時間を共にする。が、女神の顔を拝もうと彼女の間近まで近付くのは大抵、上級神官以上の地位の高い者である。
 後ろに控える信者達の顔も勿論シリスは見ているが、襟首の小さな刺繍にまでは気が回らなかったのだ。そのため、彼女はいつも目の前にいた上級神官達の刺繍の数をそのまま使ってしまったわけである。
 女神にしては間の抜けた話であるが、そもそも、シリスにとって人間の地位は何の意味も持たない。そのため、知らず知らずの内に地位や権力と言った物に対する注意が欠落していたのだ。
「これからは刺繍の数を二つにすることをお勧めしますよ」
「分かりました。これからそうすることにしますわ」
 笑いをかみ殺して提案する神官長に、女神は心底真剣な顔で頷いた。
「ところで、あなたの母上はお元気ですか?」
「ええ、あれ以来病気らしい病気はしていませんし、元気なものです。
 今ではすっかり、シリス様の信者になっていますよ」
 簡単にそう言うが、そうなるまでにはずいぶんと苦労したのだろう。シリスはそれに気がついていたがそれ以上は聞かなかった。元気でいるのなら、それで十分だった。

 神官長に案内されて、女神は神殿の聖堂へ歩いていった。
 そして、フェルローズ神殿で女神を讃える祭りが始まるのだった。

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