記事一覧

軽井沢編6 変化

軽井沢編第6弾です

間に個人的に色々で・・・・
でも 皆さんのお陰で元気に復帰です(笑)
今回も長くて時間はあまり進みませんが諸事情によりかなり甘い話に・・・
こんなの野明でも遊馬でもないわ!という意見も聞こえてきそうですが。
そこは二次創作ってことで許してくださいね~

ではそんな駄文ですがお付き合いくださる方は以下の本文へお進み下さいませ。

以下本文

==============
変化
==============

遊馬に手を引かれて店を出る。
カウベルの音を奏でつつペンションの扉が閉まると野明は後ろを振り返って立ち止まった。
「ね、いいの?」少し困ったような顔をして遊馬の顔を見上げる。
「何が?」
「都さん、遊馬と話したいことがあったんじゃないかなって」
「話はしたさ、さっき。話はきいたし相応の返事もした。野明が気にするようなことは何も無いよ」
あっさりと答える遊馬に少し複雑な気持ちになった。
彼女は遊馬が好きで、それはずっと前から変わらずに今もそうだったんだろうことは容易に察することが出来た。
『久し振り』と言っていたことから 恐らくそれなりの期間遊馬と顔を合わせていなくてやっとあえたと思ったら私を伴ってきた、ということになる。
もし自分が逆の立場ならどうだろうと思うと彼女の様子が気にかかった。
私達がいた時は あっさりとというか寧ろサバサバした様で『降参』と手を上げていたけれど そのあと『こちらに来ないか』と声を掛けたのはそれでも遊馬と少しでも接していたいという気持ちの表れではなかったのか。もしそうならキッパリと遊馬に断られてしまった彼女は今頃 涙を流しているかもしれない。
自分を優先してくれたことを嬉しく思う気持ちと 明確に一線を引かれてしまった彼女に対する申し訳無い気持ちとがごちゃ混ぜになって心の中に複雑な波を立てた。

切なげな顔をして閉じた扉を見ている野明の頭を自分の胸元に引き寄せ抱え込むように抱きしめる。
「他人に振り回されるなよ。滝口を気にしてるんだろうけど、それは仕方ないんだから。俺はあいつと付き合うつもりがないし、その対象に見れない。なのに気を持たせるようなことは出来ないさ。それは野明がいるからっていうだけじゃない。伯母さんもいってただろう? 俺は一度もあいつにそういう感情をもてたことが無い。そういうことなんだ。」
野明は遊馬の胸元に引き寄せられたまま黙って話を聞いていた。
「そうやって人の気持ちに思いを馳せる事が出来るのは野明のいいところだと思うけど、過度にのめり込んで一緒に沈んでいくのは止めてくれ。見てる俺が辛い」
驚いて顔を上げれば苦笑交じりの遊馬と目が合った。
野明は胸の奥がキュンとなって遊馬の背中に手を回すと一瞬だけキュッと力を込めた。
「うん」と返事をすると直ぐにぱっと身体を離し「行こっか」と声を掛けて車に向かって歩き出す。
黙って後を歩く遊馬を視界に捕らえて安心しているのが分かって『やっぱり妬いてたのかな』と思った。

助手席に座って運転する遊馬の横顔を見る。
視線を感じたのか遊馬がこっちを振り返った。
「まずは昨日のショッピングモールでいいんだろ?それとも他に行きたいところあるか?」
「ううん 昨日のとこゆっくり見たい。それに・・・」
「それに?」
「この近辺 何にも分からないから。遊馬にお任せ」
「了解」
その答え方が少し可笑しくてクスクスと笑うと遊馬が怪訝な顔を向けた。
「・・・なんだよ?変なこと言ったか?」
「そうじゃなくて。『了解』って言うのが遊馬らしいなって」
「なにが?」
「なんだろうね。でもきっと私が一番よく知ってる遊馬」
「なんだそりゃ?」
「・・・秘密」
なんだか職場にいて指示をもらっている時みたいな受け答えに少し安心した。
やっぱり『遊馬でないと駄目だな』と思うとそっと遊馬のシャツの袖口を引いた。
遊馬は少し驚いたみたいにこちらを見返すと軽く笑った。
「こーら、運転中。ミッション変え辛いだろ」
「あ ごめん」慌てて手を離す。
「もう着くから。少し待ってろ」
「はーい」なんだか擽ったい気分で返事をすると両手を膝の上において目線を前に向けた。
「着いたら腕でも肩でも組んでやるから」
笑いながら言う遊馬に軽口を返す。
「ホントに?」
「本当。そのかわり逃げんなよ」
「・・・変なことしないでよ?」
「さあな、それは取り方次第だろ。まず行きたいとこ探しとけよ」
そう言って昨日取って来た店舗の案内図を野明に手渡した。
小さな冊子に纏まった地図を開いて感心する。
「広すぎて どこに行っていいのかわかんないね」
「こっちは土地があるからな、東京で仮にこんな物作るとしたらでっかいビルとかになるんだろうけど。散歩がてらのんびり回ろうぜ。」
地図を広げて敷地の広さに改めて驚く。
「道に迷いそうだよねぇ」
しみじみいうと遊馬が呆れたような顔をした。
「お前ね 誰と来てると思ってんだ?ちゃんと案内してやるから安心して店選べ」
その偉そうな物言いに思わず顔が綻ぶ。
「頼りにしてるからちゃんと傍にいてよね?」
「了解。だから離れるなよ?」
「勿論」
一瞬顔を見合わせると互いに仄かな笑みを湛えたまま前方に視線を戻した。
車内に妙に擽ったい空気が漂って野明はすこしドキドキした。

駐車場に車をとめて車外にでると地図を広げる野明の脇に立つ。
「で どこ行きたい?」
野明の指差した一角と駐車場の位置を地図で確認する。
「少し距離があるから寄り道しながらゆっくり行こうぜ」
遊馬はぽんと軽く背中を叩くと野明を促して歩き始めた。
開店直後、更に平日ということもあって人気のあまり多くないモール内を並んで歩く。
暫くすると野明が拗ねたような顔をしているのに気づいて遊馬は『何かしたかな?』と首を傾げた。
時々仲良く寄り添って歩くカップルとすれ違うと野明がちらりとそちらを見遣るのに気づいて可笑しくなる。
野明の肩に手を回して傍に引き寄せた。
「羨ましいなら言えばいいだろ?」
「自分から言うのは負けたみたいで嫌なの」
「勝ち負けの問題かね?大体そんな顔して見てたら同じだと思うけどな」
と言って額を小突くと「やだ 変な顔してた?」朱に染めた顔を両手で覆う。
その顔を遊馬が楽しげに覗きこんだ。
「いや、素直でいいんじゃないの?なんなら肩じゃなくて腰抱いてやろうか?」
野明は真っ赤になって「今はいい」と言ってそっぽを向いた。
遊馬はその様子を見て肩を震わせるようにして笑いを堪えながら「はいはい『今は』ね」というと野明の肩を抱いて歩き出した。

フロアは女性向けブランドの洋服や鞄が主で店も東京で見るものと大差を感じない。
それでも野明が楽しそうに「これ、かわいい」とか「ね これどう思う?」と聞いてくるのでそれなりに受け答えをしながら店舗を巡る。
店舗に惹かれて出たり入ったりして歩いているうちに野明は腕を組む方に落ち着いた様で遊馬の左腕に両手を絡め、気になる店を見つけるたびに引っぱっていく。
それに律儀に付き合う自分に遊馬は少なからず驚いた。

『俺 こういうの苦手だったんだけどな』と昔の記憶を手繰る。
中学、高校、大学、研修校時代を通して何人かの女性と付き合いがあった。
それでも買い物に付き合うのは結構面倒で何かと理由をつけては別行動していた。
『待ってるから好きなもの見て来い』と言ったり『他に見たいものがあるから後で待ち合わせしよう』と言ってみたり。
特に相手の洋服選びに興味も無かったし、結局散々見るだけ見て何も買わずに店舗を次々梯子して挙句最初の店に戻ってまたあれこれと悩んだ挙句、別の店舗に更に移動して・・・みたいな体力を浪費するだけの非生産的な行動に理解など出来よう筈も無い。
欲しいならさっさと買ってしまえばいいし、文句があるなら買わなきゃいい。
それは主観の問題なんだから俺に意見を求めても無駄だとも思っていた。
大体『どう?』なんて聞くときは自分で答えを決めていることも多くて実際に俺の意見が聞きたい訳ではなく同意が欲しいだけ、ということも多かった。
そんなことから買い物に同行すること自体がすっかり面倒になって久しかったのだが。

「ね 遊馬、このシャツ可愛いよね」といいながらクルクルと表情を変える大きな瞳でこちらを見上げる野明に「いいんじゃね?」と笑みさえ浮かべて受け答える自分。
寧ろそれを『楽しい』と感じているあたり少なからず自分は変わったのだろうと思う。
それは野明限定なのかもれないが、それならそれでいいと思った。
他に腕を組ませたい相手がいるわけでもない。
自分の隣で色の違う同じデザインのシャツを両手に持って「どっちがいいかな」と考え込む野明を眺めていると自然と気が和らぐ気がした。
真剣に悩んでる野明の眉間に指を立てて、「ここ、皺できてるぞ」と言って顔を覗く。
「え 本当に?!」
野明はあわてて眉間を押さえようとしたが遊馬が指を退かさないので顔をぐんっと後ろに引いて指を離そうとした。
思わずからかってみたくなって遊馬は指を野明の眉間に当てたまま顔の動きを追う。
怪訝な顔をして左右に首を振った野明にあわせて指を動かすと野明は少し考えて眉間に当てられた指を遊馬の手ごと両手で掴むときょとんとした顔で小首を傾げた。
「これなに?」
「いや 面白いなぁと思って」
クスクスと笑う遊馬に野明は「子供みたい」と笑って遊馬の顔を下から覗き込む。
野明の手を解いて頭をくしゃっと撫でるとそのまま軽くポンと頭の上に手を置きなおした。
「どっちか決めたのか?」
「う~ん 決められないの、遊馬決めて?」
「俺が?じゃこっち」
そう言って薄い水色のシャツを選ぶ。
すると野明は手元のオレンジシャツをワゴンに戻すと遊馬の選んだ水色のシャツを嬉しそうに抱えた。
「コテージに帰ったら着てみようっと。遊馬のお見立てだもんね」
言いながら軽やかな足取りでレジに向う。
その様子をみて『たまに買い物に付き合うのも悪くないな』と思った。

他に何件も出たり入ったりを繰り返し、やっぱり何も買わずに出る店が多いのだが不思議と以前のように面倒とか退屈という風には感じなかった。
大きな芝生の中庭を横切って建物を移動する頃になって野明が思い出したように遊馬をみた。
「お買い物 すっごく楽しいんだけど・・・遊馬退屈じゃない?」
「いや 十分楽しいけど?」
「だって 私ばっかり好きな店に出入りして遊馬つまらなくなかったかなって」
申し訳なさそうに言う野明に思わず笑ってしまう。
「変な気使うなよ。そう思ったらちゃんと言ってる。それに、野明見てるとかなり面白いけどな」
「え なにそれ?」
「いや 楽しそうに買い物するんだなって。俺 洋服買うのにそんな風にしないからさ」
「そうなの?」
「見て気に入ったらサイズと値段見て即決。気に入らないところがあると思ったら買わない、そんなもんだな。その店舗に5分もいれば買うなら買うし買わないなら店出てる」
「遊馬らしいというか・・・でもそれじゃ余計退屈だったよね?」
しゅんとしてしまう野明を好ましく思う。
「そんな顔するなって。寧ろ面白かったけど?野明も女の子だなって」
「え?」
「普段一緒に出かけてもこんな風にゆっくり買い物しないから気づかなかったけど洋服とか小物とか楽しそうに選ぶもんだなと思ってさ。」
「女の子ってみんなそうじゃない?」
「そうかもな。でも野明だから面白いんだよ、多分」
そう言って野明の顔を見遣ると野明は照れくさそうな笑顔を見せた。
「私も遊馬と一緒ですごく楽しい」
遊馬の腕に腕を絡めようとして手にした数個の紙袋が邪魔になる。
「ほら それ貸せよ」遊馬が手を出したので渡そうかどうしようか考えているとひょいっと荷物を取り上げられた。
「自分で持てるよ?」
荷物の中身は全部野明のものだけに気が引けた。
「いいから。大した量じゃないし持ってやる」
そう言って腕を軽く差し出すと「ありがとう」と言って野明は遊馬の腕を取った。

腕を組んで芝の貼られた中庭を歩く。
ふかふかした足元がアスファルトになれた足にはとても新鮮で気持ちがいい。
「ここ裸足で歩いたら気持ちよさそうだよね」
「そうだな、今度は公園にでも行こうか。浜離宮恩賜公園とか芝が綺麗に貼られてるし手入れがいいから裸足で歩いても怪我しないだろうし。」
「恩賜公園?」
「行ったことないか?」
「ない」
「じゃ 天気がよければ次の休みに連れてってやるよ。季節ごとに何かしら花も咲いてるからのんびり散歩するにはいいところだし」
「そうなんだ、楽しみにしてるね」
周りをくるりと見渡すと平日にもかかわらず思いの他カップルが目に付いた。
『自分達もそう見えるのかな』と思って野明はこめかみを遊馬の腕にぴたっとくっつけてみた。遊馬は野明の顔を見て小さく笑うとそのまま歩を進める。
エスコートされて歩くようなちょっと擽ったい気持ちになった。

ふと時計を見ると既に1時を少し過ぎていた。
「昼 食べるか?」
「そうだね のども渇いたし」
「なら レストラン街向こうだったな」
というと遊馬はサクサクと歩き始める。
遊馬にくっついて歩きながら『あの地図、一通り覚えてるのかなぁ』と変なところで感心してしまった。
レストラン街の入り口に着くと案内板に店舗の一覧があった。
「何食いたい?」
「遊馬は?」
「そうだな・・・中華以外。」
その答えを聞いて野明は思わず噴き出した。「うん、私も中華以外がいいよ」
待機任務中は毎日上海亭の出前なのだから外に来てまで中華を食べようとは思えなかった。
結局 無難に和食の店を選択し定食を頼んで食事を済ませるとお茶を飲んで少し落ち着く。
暫くして遊馬が思いついたように野明に向き直った。
「野明 折角軽井沢まで来たんだし買い物が終わったらちょっと珍しいもの見に行かないか?」
「珍しいもの?」
野明は小首を傾げる。
「平日の昼間だしあいてると思うけど。」
「どこに行くの?」
「今は内緒。行けば分かるさ」
悪戯を思いついた子供のような目で話す遊馬は年上なのにとても可愛く見えて思わずくすりと笑ってしまう。
「じゃ連れってて」
「よし、決まりな。まずは買い物の続き行くか」
そういうと荷物を持って店を出た。

野明の行きたがっていた店はすぐに見つかった。
いわゆるバスグッズやフレグランスなどを中心に扱う店舗で遊馬にはあまりというか全く馴染みのない店だった。
嬉しそうに店内を物色する野明に『やっぱりこういう物好きなんだな』と少し感心する。
色とりどりのメイク用品、スキンケア用品から石鹸、入浴剤などが所狭しと並べられていて色んな芳香が入り混じった独特の香りが満ちている。
普段来慣れないだけに『匂いに酔いそうだな』と思う。
野明はというと店内をウロウロした結果、バスグッズのコーナーに足を止めて熱心に何かを選んでいた。
「何見てるんだ?」
声を掛けると野明は子供が何かをねだる時みたいな顔をした。
「ね、入浴剤って買ってもいい?」
「なんで?買えばいいだろ。好きなやつ」
「コテージで使ってもいいかな?」
「そりゃいいけど。ほしいならいくつか買って帰ればいいだろ?」
何か珍しい種類のものでもあるのか、と思って首を傾げる。
「だって普段使えないんだもん」
「なんで?」
「寮はお風呂共用だから。」
「女子寮もそうなのか?」
野明はコクリと頷いた。
ちょっと意外だった。何となく女子寮は個別に浴室がありそうだと思っていたが、男子寮と同様共同浴場になってるらしかった。
「そりゃ 使えないか・・・」
二課棟はシャワー室だし外で泊まるようなことでもない限り使いたくても使えなかったわけだ。
「いいんじゃないか?いくつか気になるのあるなら買っていこうぜ。風呂洗うのが面倒でなればのぼせない範囲で何種類か試せばいいし」
「本当にいい?遊馬こういうの嫌いじゃない?」
「別にいいよ。こういう機会でもないと試せないんだろう?気に入ったやつ買えよ」
そういうと野明は嬉しそうに棚を物色し始めた。
よく見ると本当にいろんな種類のものがあってこれが全部入浴剤かと思うほど変わったものも少なくなかった。
一見ワインのボトルにしか見えないものや 小さなビニールのボールに見えるもの、いろんな色の細かい紙石鹸を詰め合わせたようなものから、どう見ても塩の粒にしか見えないものまで それこそ色んなものがあってこの中から選ぶのは結構大変だろうと思った。
真剣な顔であれこれ手にとっては棚に戻して選ぶ姿はなかなか面白くて暫く黙ってその様子を見ていると悩んだ末に手にした籠に入れた10種類近い入浴剤をじっとみて野明が大きく溜息をついた。
「決まったのか?」
「それが・・・これ以上絞れなくて。でもこんなに使えないしどうしようかなって」
「ちょっと貸せ」
といって野明から籠を受け取って店の端に寄る。
「いくつ位に絞りたいんだ?」
「う~ん あと二日でしょ? 朝夕使ったとしても4つあればいいんだから・・・」
「じゃ 選ぶ余地も残すようにして6つに絞る、というのでどうだ?」
「うん。そうだね」
選んできたものは全て一回の使いきりだったので種類別に大まかに分けて見る。
するといくつか 同じようなタイプのものが混ざっていたので 野明にどれか一つを選択させ残りを切る形であっという間に6つに絞った。
「これでどうだ?」と提案すると野明はコクリと頷いた。
こういうところが 男女の感覚の違いなのかもしれない。
ものすごく合理的にサクサクと物事を決める遊馬に野明は今更ながらに感心してしまった。
「これで欲しいの全部か?」
「待って。もう少し」
そう言ってフロアを駆け回る野明を見る。
『あれだけ嬉しそうにするなら連れて来て正解かな』と思う一方で野明の両親がこんなこと知ったら怒るんだろうなぁとぼんやり考えた。
手を出してはいない。けど飲み会から足掛け5日、男と2人泊りがけで遊びに出てるなんて知ったら 何もありませんでした、といって素直に信じてくれるとは思いがたい。
そんな心配を知ってかしらずかその家の一人娘は無邪気に買い物に夢中になっている。
遊馬は遠くに住む彼女の両親と自分の為に思わず深い溜息をついた。

欲しいものを一通り購入した野明が遊馬の元に戻ってきて「ただいま」と当たり前の様に腕を取る。
それを見て『まあいいか』とそのまま野明を伴って店を出た。
「ここで他に買いたい物あるか?」
「もう十分、この後珍しいもの見せてくれるんでしょ?」
「そうだな、じゃまっすぐ車に戻るけどいいか?」
「うん」
返事を返してまっすぐ車に向かって歩くと以外な程早く車に着いた。
「こんなに近かったの?」
物凄く歩いた気がしていたので野明は少し驚いた。
「行く時は色んなところに寄り道したからだろ。まっすぐ歩けば15分かからないさ」
苦笑する遊馬を見て一緒でなかったら車に戻るのに何分かかっただろうと思う。
というか戻ってこれたのかさえ疑問だった。
後ろ姿を眺めていると視線を感じて遊馬が振り返った。
「なに?」
「少しは私も地図読めるようにならないとなぁって思ったの」
「なんで?」
「私1人でここに戻ってこれる自信なかったもの。地図見ても」
少し拗ねたように言う野明に 呆れたような視線を向ける。
「俺が読めるんだからいいんじゃないのか?ちゃんと着いてきたら迷わないだろ?」
「だって いつでも遊馬がいるとは限らないじゃない?」
「何で?呼べば良いだろ、別に。用が無きゃ付き合ってやるけど?」
当たり前見たいに言う遊馬の顔を覗き込んで少ししかめっ面をして見せる。
「駄目だよ、遊馬。そういうこと言うと、変に期待しちゃうから」
「期待って・・・俺は別に困らないけどな。そういわれると逆にこっちも期待するだろ?野明は困らないのか?」
「あ・・・えっと・・・遊馬ならいいかなぁ・・・って」
最後は聞こえるかどうかくらいの小さい声。
意外な答えに少し目を瞠ったが、うつむき加減で話す野明にあえて問い直すことはしないで普通の調子で話す。
「なら 問題ないんじゃないか?」
「えっと・・・うん。そうかも。」
「ま そういうことだな、車出すぞ?」
「うん お願い」
車がゆっくり走り始めると野明は窓の外に視線をさまよわせながら胸がきゅんとするような感覚にじっと耐えていた。
それはちょっと切なくて幸せな感覚。遊馬を見るとその感じが強くなる気がして長く見ていることができなかった。

to be continue....

=============
追記

えっとここ数日 激しく凹むことと人様の温かさに励まされることをど同時に体験しまして。
私 凹んだ時になにか妄想すると激しく暗いか 吐くほど甘いものしか出てこないことをはじめて実感しました。
で・・・結果 吐くほど甘いものになりまして(^^;
数日置くと恥ずかしくてUPできそうにないので今のうちに勢いで上げしてまおうかと・・・

長い駄文にここまでお付き合いくださって有難うございます。
完結にはまだまだ遠いお話ではありますが どうぞ見捨てないでお付き合いくださいませ♪

ご意見ご感想などいただけますとやる気が出てきますのでお時間のある方は是非 一言なりといただけますと幸いです。
次回ものんびりマイペースに更新していこうと思いますのでどうぞ宜しくお願いいたします。

サプライズ こんきちさま

こんきちさまからの頂き物です。
自分の誕生日に激しく落ち込んでいたところこんな素敵なSSをくださいました
ありがとうございます~!!

===========
サプライズ

あなたにとってはなんでもない日でも、わたしにとって今日は大事な日なの。

「ごめんな。今日そっち行け無いかもしれない…」
「いいの、無理しないで。」
悔しそうな声で遊馬が電話をくれた。

今日はあたしの誕生日、ホントは今日大阪から帰ってくるはずだったの

でも・・・仕方ないよね、お仕事だもん。

「ごめん」
「ううん、頑張って」
電話を切ってから遊馬の使ってたクッションを抱きしめる。ホントは寂しいよう

"ぴんぽーん"

「はい」
ドアホン越しに返事をしたら…
「泉さんに速達です」
郵便屋さんが届けてくれたのはかわいい熊のぬいぐるみ。
手には小さな筒を持ってたの。
筒の蓋を外すと中から出てきたのは、遊馬からの電報

「誕生日おめでとう、俺と出会ってくれてありがとう」

しばらく…嬉しくて泣けちゃって動けなかった。

「そういうのは、直接言ってよぉ」
熊のぬいぐるみをぎゅうと抱き締めて玄関先に座り込んだら

「そんな事に感動されるって思わなかったな」
背中越しに聞こえた声は…
「遊馬?」
「幽霊じゃないぞ」
あたしは、遊馬に抱きついた。
「会いたかったよぉ」
「ごめんなぁ、今日誕生日なのにたいした事できなくて」
あたしの頭を撫でてくれる。
「そんな事ないの」
覚えててくれた…それだけじゃなくて…。小さくても、おっきなプレゼントももらったの。
「ありがと」
あたしの為にこんなステキなことしてくれて、急いで帰って来てくれて。

感謝で一杯です

思いっきり落ち込んだ今年の誕生日。
出だしは 最高に幸せでした。
日付かわってすぐ ツッジーさんにお祝いの絵を戴いて、こんきちさんにお言葉戴いて。

で朝起きて かなり凹みました。
それについては詳細が別の日記にあるので割愛しますが。

そして先ほど 宅急便が届きました。
大きな箱で開けてみると アレンジメントフラワーが入っていました。
ASAKI姫からのプレゼントで デスクトップに貼り付けていたツッジーさんの絵と今あわせてみたら なんだか有難くて涙が出てきました。
本当に ツッジーさん 姫、こんきちさんに ご心配くださってメッセージをくださった そおた。さま。
本当に有難うございます。

今日はもう出かけることが出来ないのは時間的に確定ですが、身内以外の方々が本当に優しくしてくださってとても嬉しいです。
もうちょっと 頑張って元気が出たらサイトの更新始めますね。
ありがとうございます!

贅沢を言うならこういう時にちょっとだけ肩を貸してくれる人がいると嬉しいのにと思うんですが。これだけステキな友達ができて それを思うのは 本当に贅沢なので。
皆さん たくさん ありがとうございます。

期待なんてしてなかったけど あんまりだと思う

今日は 幼稚園のママさんたちと懇親会がある予定でした。
一月以上も前からちゃんと旦那にもお願いしてあったのに今朝になって会社に行くと言い出しました。
今日のことを今からドタキャンすることになりました。
お友達の送別会も兼ねていたのでショック。
今更 自分の旦那になんの期待もしてなかったけど一応自分の誕生日でもあったので一つくらい頼みごとを聞いてもらえると思ったんだけど 無理でした。
そもそも誕生日であることも忘れられていたので仕方ないんですけどね。子供の方が覚えていてなんだか虚しくなりました。
前から言ってたんだし夜6時半からだしせめてそれまでに帰ってきてくださいとさっきまでで30分、半泣き状態でお願いしたけど帰りは飲み会があるので駄目だそうで・・・・
お願い事なんて 3ヶ月で2回するかしないかなのに それでも駄目なんだなと思いもう諦めました。
あとでお友達にごめんなさいの電話入れて会費とお餞別のお金を誰かに預かってもらわないと・・・・

こういうキャンセルの仕方って後の友達関係にも響くし、まして今回は幼稚園のママさんの集まりなので3年クラス替えがない園だけに今後のこと思うと一番嫌なのになぁ。

一周忌の打ち合わせもあって午前中 実家に行く予定だったけどそれもキャンセルだな。
夕方までに誰かと連絡つけないともっと迷惑かけるし。

来月の私の父の一周忌も参加しないというので広島まで1人で子供2人連れて行かなくちゃ・・・
自分のことは諦めてたけど 今回ばかりは他の他人に迷惑がかかるので今からすごく胃が痛いです。
ネットする時間はできたけど、なんかテンション下がりまくり。
家の賃貸契約の保証人も父が亡くなったので変更しないといけないけど 相談に乗ってくれる感じも無いので私の伯母に連絡取るかなぁ・・・こういうこと ぜんぶ1人でやらないといけないのが結構辛いです。旦那は自分の実家と連絡取るのを面倒がるので 向こうの苦情も 私に来るし。
子供がいなければ 家出したいくらいだわ・・・

誘引

先日 娘と一緒にディズニービデオ見ながら妄想(笑)
取りとめの無いSSです。
他にやること沢山あるのに現実逃避実行中です~

散文ですが それでもいいわという方は 以下本文です♪

=============
誘引
=============
天気のいい昼休み。
遊馬を探して二課棟をウロウロする。
隊員室にも 電算室にも ハンガーにもいないとなると後は 屋上か堤防か。
手近なところでまず 屋上に上がると彼は屋根の上ごろんと横になっていた。
「遊馬」
名前を呼んで駆け寄ったが返事が無くて『眠ってるのかな』と思って顔を覗き込んだ。
頭の後ろで両手を組んで片膝を軽く立てるようにして横になる姿はとても無防備に見えて思わずじっと見入ってしまう。
もう一度小さな声で「遊馬」と呼んでみた。
風に吹かれて揺れる前髪、閉じていると分かる意外に長い睫、軽く噤まれた唇。
『少しだけ 触れてみたいな・・・』と思った。
寝ている遊馬に ふっ・・・と吸い込まれるみたいに ほんの一瞬 野明は自分のそれを遊馬に重ねると、すいっと立ち上がって踵を返した。逃げるようにしてその場を離れるとアルフォンスのコクピットに入り込んでハッチを閉める。
自分でも判るほど顔が熱い。心臓が飛び出そうなくらいバクバクと音を立てて、「落ち着こう」と深呼吸したもののなかなかその動悸は収まらなかった。
そっと自分の唇に指を当てると そこが物凄く熱い気がして落ち着かなかった。
自分のしたことに今更ながら動揺して どうしてあんなことをしたのかと羞恥で一杯になる。
「遊馬・・・寝てたよ・・・ね」 それがせめても救い。
知られたらどうなるんだろう? 怒るかな、それとも嫌われてしまうとか。
そう思うとなかなかここから出られない。遊馬の顔を普通に見れる自信がないから。
膝を抱えて丸くなる。もう直ぐ昼休みが終わってしまう。普通の顔が出来ますようにと自分に願を掛けた。

昼休み 食事を終えて少し眠くなったので屋上に出た。
海風が絶えず吹くので気温の割りにすごしやすい。
軽く目を閉じてうつらうつらしていると、階段を上ってくる軽やかな足音が聞こえた。
『野明か』そう思ったものの まどろんだ状態が心地よくてそのまま目を閉じていた。
顔を覗き込む気配と共に 名前を呼ぶ小さな声が聞こえたがもう少し寝ていたくて返事を返さずに寝た振りを決め込んだ。
少しの沈黙の後、気配が近づく。鼻を擽る甘い香りと額に触れる細い髪、そしてしっとりとした温かくて柔らかい何かが唇に軽く触れると直ぐに全ての気配が遠ざかった。混乱している間にパタパタという足音が小さくなり慌てて顔を上げると赤い髪の頭が屋根の下に消えた。
思わず口元を手で覆って「嘘だろ?」と呟く。
自然、顔が朱くなるのが分かった。
直に昼休みが終わる、野明をみて普通の顔でいられるだろうかと思うとあまり自信がなかった。

始業のベルが鳴って隊員室に戻る。
互いに自分の席について思わず相手の様子を窺おうとして顔を見合わせる形になる。
お互いにびっくりして慌てて目を逸らす。
その様子を見た太田さんが訝しげな様子で「お前ら どうしたんだ?」と訊いた。
答えられよう筈も無く2人は同時に答えた。
「何も」
「何もねぇよ」

END

=============
追記

寝てる人にkissって本当は反則、って思うんですが。
娘にせがまれて sleeping beauty とか見ているとちょっと妄想(笑)
この場合 逆ですが☆
結局このことは無かったことにされちゃうんですかね、このカップルだと(^m^)
それか 付き合うようになってかなり時間が経ってから思い出したように遊馬が持ち出すか・・・?

ご意見 ご感想いただけますと 踊って喜びます(笑)
是非 お時間があれば宜しくおねがいします♪

謎の答え (紅葉饅頭音頭と 呼び捨て)

先日 いろんなチャットで会話をしていて何件か聞かれたこと。
即答できなかったので 調べました~

1.もみじ饅頭音頭って何?
2.シゲさんが野明呼び捨てにしてたのはいつだったか?

答えは どちらも28話の 「怪しいふたり」でした(笑)

ああ、自分がスッキリしました!
ご興味沸いた方は 是非見直してみてくださいね。

シゲさんが「野明」って呼び捨てにしてるって凄く新鮮に思ったんですよ、私(^^)
何話だったか思い出せなくてモヤっとしてましたが♪
でも やっぱり呼び捨ては遊馬の特権であってほしかったり(^m^)

軽井沢編5 約束

軽井沢編第5弾です

書いている最中に色んな用事が重なりましてだたでさえ遅筆なのにますます鈍亀状態になっています軽井沢。
どうにか 形に纏まりました(^^;
前回よりは 多少明るく展開しているとは思いますが オリジナルキャラ登場しますので苦手な方はご注意くださいね。

相変わらず 長い割りに時間の進まないお話ではありますが どうか見捨てずにお付き合いくださいませ。
こんな駄文ではございますがご意見・感想などいただけますと やる気か出てまいります(笑)
ではどうぞ よろしくお付き合いくださいませ~

以下本文

===============
約束
===============
夜明けまでは まだ時間がある。
雷鳴こそ遠雷に変わったものの 窓に叩きつける風雨は依然激しいままで漆黒と言っていい闇の中、野明は上掛け布団を引き寄せ抱きしめる様に小さく丸まっていた。
時折 窓に打ち付ける雨風のザンッという音が室内に響く。
遊馬の居るほうに首をめぐらせてみたものの 多少闇に慣れた目で見ても遊馬のいるベッドまではそれなりに距離があるためその様子をうかがい知ることは出来なかった。
思わず小さく息を吐くと遊馬から声が掛かった。
「眠れないのか?」
起きていると思っていなかったので少し驚いたものの遊馬の声に少し安堵する。
「うん、やっぱり雨音すごいね。台風みたい」
「場所、変わるか? こっちだとそんなに気にならないぞ?」
「え? いいよ。遊馬の方が疲れてるんだから少し休んで」
「俺はそんなに疲れてないけどな。やっぱ人の使ったベッドは抵抗あるか?」
さらりと音がして遊馬がこちらを向き直った気配がする。
野明も遊馬の方に向き直ってみる。
互いに気配はわかるのに闇に沈んで姿は見えない。
「そんな事ない。けど、他の人のなら嫌かな」
「ばーか。そういうこと言ってんなよ、変な風に勘ぐられるぞ?」
呆れを含んだ遊馬の声が返ってきた。
野明は複雑な思いでクスリと笑う。
自分が本当はどうしたいのか、よくわからなくなってしまった。
すこし考えてから口を開く。
「ね 遊馬 やっぱり変わって?」
「了解」
言うと遊馬は懐中電灯の明かりをつけ 「よっ」と声を掛けて起き上がるとスタスタと歩いてきて「じゃ 交代な」というとベッドの淵に腰掛けた。
野明も すばやく立ち上がると遊馬の居たベッドに移動する。
場所を入れ替わると 先ほどと同じように横になった。
「本当だ あんまり雨音聞こえないね」
「だろ?ちょっとの距離なんだけどな、確かにここだとよく聞こえるな」
「でしょ やっぱり変わる?」
「いや、いいよ。それより 眠れそうか?」
「うん、眠れそう」
そういうと 上掛けの布団を目深に被る。
「遊馬の匂いがする・・・」
思わず小さな声で呟くと 遊馬が軽く溜息をついた。
「気になるなら トランドルベッド出したらどうだ?」
「え どうして?」
「嫌じゃないならいいけどな」
「嫌じゃないよ?」
不思議そうにいう野明に「じゃ 寝ようぜ、夜が明けちまう」というと遊馬も布団を被った。
たしかに そこには野明の香りが残っている気がした。

夜が明けると雨はすっかり上がっていて窓の傍に寝ていた遊馬は眩しさで目を覚ました。
野明は、と思い振り返ると目深に布団を被ったままこちら側を向いて小さく丸まるようにして眠っていた。
遊馬はコキコキと小気味のいい音を立てて肩と首を回すと軽く伸びをしてベッドを降りた。
着替えを掴んでリビングに移動する。
顔を洗って 髭を剃ったあとテキパキを着替えを済ませ再び寝室に戻ろうとして扉の前で手を止めた。
少し考えて 軽くノックしたあと「入るぞ」と声を掛けて扉を開ける。
野明はまだすやすやと眠っていてその寝顔は実に無防備なものだった。
安心した様子で眠る野明の顔を見て安堵する一方で 自分が彼女を思うほど野明はこちらを男として見ていないのだということに軽い落胆も覚える。
『いっそ今 手を掛けてしまおうか・・・』とちらりと過った考えに軽い罪悪感を感じて慌てて頭を振る。
『そんなことをしたら絶対に後悔する』と思いその考えを振り払うようにもう一度大きくかぶりを振った。
時間を確認すると 8時を少し回っていて軽く食事をしてからショッピングモールに入るのならばそろそろ目を覚ましたほうがいい時間に差し掛かっていた。
野明の寝ているベッドに浅く腰をかける。
「野明」名前を呼んだが返事はなく「野明 買い物、朝から行く気ならそろそろ起きろ」と再び声を掛けた。
野明は 「ん・・・」と軽く呻いて身を捩るとうっすらと目をあけて焦点の定まらない瞳をこちらに向ける。
「・・・遊馬・・・ もう朝?」
言いながら 気だるげに半身を起こし軽く目を擦る。
ワンピースの寝巻きを見慣れなくて少し目を逸らした。
「ちゃんと眠れたか?」
「うん 眠れたよ。遊馬は?」
「寝たよ、あそこ結構眩しいのな、朝 それで目が覚めた」
窓際のベッドを示すと そこには燦々と日が当たっていた。
「え、そうなの?ごめんね。今日はちゃんと変わるから」
「ばか、気にすんなよ。それはまたあとで考えようぜ? それより着替えて出かける準備しようぜ。買い物の前に飯食っていかないか?」
「外で?」
「そ。嫌か?」
「ううん、いいけどこんな時間からお店ってやってるの?」
野明は首を軽く傾げる。
「多分な、まだやってるといいけど。」
そういうと遊馬は ベッドから降りると 「じゃ着替えてでてこいよ」といってリビングに向かった。
野明もベッドを降りて着替えを用意しながら 『ひょっとして遊馬はこの辺の地理に明るいのかな?』と思う。
ここにくるときもコテージの場所だけは管理棟から貰った地図で確認したものの それ以外で地図を見ている様子が無かった。
遊馬は普段から最初にざっと地図に目を通すと大体の場所を把握できてしまうところがある。
野明にはない能力で とても頼りになるなといつも思う。
けど先刻の台詞はそうではなくて 『知っている』ことを思い出している感じだった。
そんな些細なことを気にしている自分に野明は少し驚いて苦笑した。

着替えてリビングに向かうと 遊馬はソファに座ってTVを見ていた。
野明に気づくと振り返る。
「30分くらいで用意できるか?」
「うん 出来るよ」
応えると 『うん』と一つ頷くと「じゃ よろしく」と言って楽しそうな笑顔を見せた。
その顔をみて少し嬉しくなって「まっててね」と声を掛けると洗面所の扉を開けた。
緑から貰ったパレットで 教えてもらったように軽くメイクもしてリビングに戻ると遊馬が 「できたか?」と言いながら傍に来た。
コクリとうなずくと 遊馬は野明の顔を軽く覗き込んで 「いいんじゃない?」と嬉しそうにいうと「じゃ 出かけるか!」と言って背中をぽんっと軽く叩いた。

車を走らせて暫くするとペンションが立ち並ぶ一角に入る。
いわゆる観光地からは少し離れた場所でとても閑静な佇まいを見せる地域だった。
やはり一度も地図を確認することなく一軒の瀟洒な水色のペンションにたどり着くと その前に車を止めた。
懐かしそうな顔をして辺りを見回す遊馬に『ここに来たことがあるの?』と声を掛けようとしたが、その前に「入るぞ」といって遊馬が野明の手を引いたので言葉を発するタイミングを逸してしまった。

木で出来た扉を押すと カランカランとカウベルが音を奏でる。
中にいた 年配の女性が「いらっしゃいませ」と声を掛けながら入り口を振り返ると目をまるくして「あら、まぁ!」と言いながら遊馬の傍に歩み寄ってきた。
「遊馬くん? まあ 随分 突然きたわね」
嬉しそうにいう女性に「ご無沙汰してます」と遊馬が笑顔を向けると女性は目を細めて「とにかく 入って頂戴」と窓際の席を勧めた。
野明に目線を向け「かわいいお嬢さん連れてきたわね」と言って遊馬を見遣る。
「まあね、見せびらかしに来た」と言って悪戯っぽい笑顔を見せる遊馬に野明は吃驚して顔に朱をのぼらせた。
「ちょっとまっててね」と言ってご婦人が傍を離れると野明は遊馬の袖を引き小声で話しかけた。
「ね、遊馬 どうなってるの?」
明らかに困惑した顔で問う野明に遊馬は楽しそうに応える。
「どうって? 朝飯食いにきたんだよ。日中は朝から喫茶店として営業してるんだ」
「それは判るんだけど。遊馬 あのご婦人と顔見知りなの?」
「みてて判らんか? 旧知だな。ここ数年来てなかったけど」
「遊馬ん家って 前橋だよね?」
不思議そうに首を傾げる野明を楽しそうに眺める。
「こっちには祖父さんが別荘持ってたんだ。俺は基本、祖父さんとこで育ってるからさ、毎年夏休みはまるまるこっちに来てた」
成る程、と納得すると同時に少し感心する。
「別荘・・・。そっか 遊馬ってお坊ちゃんだったんだよねぇ・・・」
そんなことをすっかり忘れていた野明は眉間に皺を寄せて呟く。
そんな野明を横目に見て遊馬は思わず口元を緩める。
自分を 『篠原の御曹司』として全く意識しないで傍にる野明は本当に得難い存在だと思った。
「そんなんじゃ無いさ。祖父の持ち物だったし、今は親父の管理になってるんで俺は使わないけどな。使う気にもならん」
そう言うと野明の首に腕をかけて軽く引き寄せた。
野明は吃驚した様子を見せたものの大人しくされるがままになっていた。
「で さっきのご婦人は?」
こめかみに軽く頬を寄せる遊馬の顔をくすぐったそうにしながら「どうしたの?人が見てるってば」と抗議しつつ問いかける。
「祖父さんの知り合い。こっちに居るときはよく世話になったんだ。だから 野明を見せびらかしにきた」
「・・・あのねぇ・・・見せびらかすって・・・」
真っ赤になって目線を泳がせている野明にお構いなしで遊馬は頬を寄せて耳元で囁く。
「『彼女にしてやる』っていって連れてきたんだぜ? こっちにに来てから色よい返事を貰ってないけどな」
急に強気に出てきた遊馬にどう対処していいのか分からずドギマギしていると 席を外していたご婦人がお皿とコーヒーを手に戻ってきた。
2人の様子をみて「あらまぁ 仲のいいこと」と言って微笑むとカップを机において「さ、適当に取ってきて」と言って皿を差し出した。
皿を2枚受け取ると遊馬は野明を伴ってバイキング形式になっている朝食のコーナーへ向かった。
野明を解放して食事を皿に盛ると、2人で席に戻る。
遊馬の隣に座ってちらりと顔を見上げると目が合った。
遊馬は小さく笑って野明の髪をくしゃっと撫でるとコーヒーに手を伸ばした。
その様子をご婦人は微笑ましげに見ていて 野明と目が合うと優しい笑顔を向ける。
野明は まだ挨拶もしていなかったことに思い当たって慌てて「あの はじめまして」と頭を下げた。
「あ わりぃ 紹介してなかったんだ」
遊馬が思い出したように言うと、ご婦人は「そうだったわね ご紹介して?」と促す。
「野明、こちらは祖父の友人で昔から夏になるとお世話になってた滝口さん。おれは 伯母さんって呼んでるけど親戚ではないんだ。で こっちが」
言いながら野明の頭にポンと手をおく。
「俺のパートナーの泉野明」
「まぁ パートナーなの?」と楽しげに笑う滝口さんに野明は心中複雑だった。
『パートナー』と言う言葉を 滝口さんがどう受け取ったのか分からないけれどこの場合 仕事上のコンビとしてのパートナーを指している気がした。聞く人によって如何様にも受け取ることが出来るこの単語の便利さに少し歯がゆさを覚えてちらりと遊馬の方窺った。
楽しげに話す遊馬は普段見たことのない顔をしていた。
自分と話すときもリラックスしていると思うけれど 今はまるで親に色んなことを訊いて欲しくて目をキラキラさせる子供みたいだと思った。
お父さんと話すときはもっと緊張感があるし、打ち解けていそうにみえていた実山さんと話すときとも違う。
『こんな顔するんだな』と思わずしげしげと見つめてしまう。
その視線に気づいた遊馬が きょとんとした顔で振り返る。
「どうした?」
「新鮮だなぁって。遊馬ってこんな顔もするんだねぇ」
感心したように言うと遊馬は 「あっ!」と言って少し赤くした顔を左手で軽く覆うとばつが悪そうに「悪かったな」といってそっぽを向いてしまった。
「悪くないよ、ごめんってば。ね 話しててよ」
機嫌を損ねたと思って慌てて遊馬の袖を引く野明を優しく見て滝口さんが呟いた。
「遊馬くんに彼女ねぇ これは都が泣いちゃうわね」
「都さん?」
「姪っ子よ。遊馬くんが大好きでね、でも一度だっていい返事もらえたことがなくて」
「へぇ・・・やっぱり遊馬ってもててたんだ」野明が顔を覗き込むと遊馬は渋面をつくる。
「恋愛対象として見れないものは仕様が無いだろ? 友達だとは思うけどさ」
「昔からそうよね。ままごとに誘っても逃げられちゃうの」と滝口さんが朗らかに笑う。
不意に昨日の会話が思い出されて野明と遊馬は一瞬固まった。
滝口さんはそれを敏感に察して、『何か悪いこと言ったかしら?』という風に首をかしげた。
野明は 『おにいさん』発言を後悔していて今 訂正できるものならしてしまおうかとも思ったがどう切り出していいか分からない。悩んでいると 遊馬が不意に野明の耳元に囁いた。
「なぁ野明 俺の配役って昨日のままか?」
心中の窺いにくい穏やかな顔で問う遊馬に 見透かされたような気がして野明は少しドキリとした。
けれど 訂正するタイミングが欲しかった野明はやっぱり遊馬には敵わないな、と思いながら「あとで 相談しよ♪」といって、にこりと笑った。

「ところで何 滝口来てるの?」
「今 ここで働いてるのよ。もうすぐ降りてくると思うけど」
そういい終わるか終わらないかのうちに二階から軽い足音と共に髪の長い女性が降りてきた。
「伯母さん 二階掃除終わったよ」と言いながら店内を見渡して 野明たちと一緒に席に着く滝口さんを見つけるとスタスタと寄ってきた。
「なあに 伯母さんのお客さん?」と言って遊馬の顔を見るなり顔をポッと朱くする。
「篠原君!?」
「やぁ 久しぶり」軽く笑顔ものせて会釈すると都は「本当久しぶりだねぇ!」と言いながら遊馬の背中に抱きついた。
野明は吃驚して少し身を引く。
肩に顎を乗せるようにして 「何時来たの?」とか「別荘に泊まってるの?」とか話しかける。自分がいつも遊馬にしていることを人がしている、その光景をみて複雑な気分になった。
遊馬がやんわりと 都を離そうとしているのに彼女は簡単に離れようとはしなくて遂に遊馬が「滝口 離れて」といいながら腕を引きがした。
 「なによ、久しぶりに会ったのに、ケチっ!」と言って都が背中から離れると野明はなんだかホッとして小さな溜息をついた。
「私も コーヒーとって来る」と言って都がその場を離れると 遊馬の手が伸びてきて野明の頭を掴み自分の胸元にグッと引き寄せた。
「変な顔してたぞ、妬いたか?」
「・・・・ちょっと複雑。」
その答えに一瞬目を丸くした遊馬は「心配すんな」と言って小さく笑った。

その様子を少し離れたところで見ていた都は驚いて固まってしまった。
自分には決してしてくれなかった仕草で 隣の女性を抱き寄せる遊馬を見て激しい嫉妬感を覚える。
見ているのが辛いなぁと思う一方で 傍にいて話をしたいとも思う。
ここで去るのもあからさまな気がして出来よう筈も無く、意を決して伯母さんの隣の席に戻った。
正面に座る野明を 思わずしげしげと眺めていると 気づいた野明が目線を上げた。
「はじめまして」と言って会釈をする野明の言葉を引き継ぐように遊馬が声を掛ける。
「野明、こちら滝口都さん。伯母さんの姪だな、で 滝口 こっちが泉野明、俺のパートナーだ」
いいながら 頭にポンと手をのせる仕草はとても自然で普段からそうしているだろうことが窺えた。
「彼女・・・?」
思わず訊いてしまうと遊馬は野明の顔を見てから「俺はそう思ってるけど?」と応えた。
野明は何もいわずにただ遊馬の方を見て頬に朱をのぼらせている。
「そうなんだ」
いいながら 改めて野明を観察してみる。
短い赤みの強い髪、小柄で快活そうなどこか幼さの残る雰囲気の女の子だった。
遊馬の好みだといっていた ストレートの黒髪を持つ、色白の知的美人とは随分違うなと思った。
それに少しでも近づこうと頑張っていた自分が少し虚しくなって伸ばしていた髪を無意識に弄ぶ。
微妙な沈黙を嫌った野明が殊更 普通に声を掛けた。
「遊馬、コーヒー淹れて来ようか?」
「ん? ああ、たのむわ」
そう言って少し残っていたコーヒーを飲み干すと野明にカップを手渡した。
「滝口さんは?」と伯母さんにも声をかけると「じゃぁ 戴こうかしら」といってカップを差し出した。
野明は 自分のを合わせて3つのカップを小さいトレイに載せると「行ってくるね」と席を立った。

野明が離れると都は徐に遊馬に声を掛ける。
「好み、変わった?」
「なんで?」
「ロングの黒髪、色白で知的美人がいいんじゃなかった?」
「それはそれで好みだけどね、でも あいつは違うの。」
「好みじゃないってこと?」
「まさか。野明は特別なんだ、虐めるなよ?」
目を眇めていうその顔は本気で『虐めたら承知しないぞ』という雰囲気を漂わせていて都は面白くなかった。
「折角 篠原君好みの女になろうって頑張ってるのに。」
「それは申し訳ないけどさ。前にも言っただろうけどそういう風に見れないんだよね」
「彼女はいいの?」と 野明に目線を送る。
「いいも何も ほかの男と口利くだけも面白くないね」
さらりという遊馬に「大した執着心じゃない」といって溜息をついた。
「そ あいつにはそれが上手く伝わってないけどな」
「こんだけ はっきり宣言しといて?」
呆れたように言う都に 多少バツが悪そうに遊馬は目を逸らす。
「本人にちゃんと言ってないんだよ、俺が」
「・・・なんで?」
あれだけ人前でいちゃつきながらどうして、と心底不思議そうに言う都に遊馬は不貞腐れたような顔を見せた。
「言って拒絶されたら立ち直れないの、俺が。あいつ失うのは嫌なんだよ」
「って・・・あんだけベタベタしてて 断られることもないでしょうに?」
「あいつ人がいいから人前で拒絶ってあまりしないからな。本当はあれで 弾かれないか気が気じゃないんだよ、こっちは」
「彼女に相当入れ込んでるのね」
「ほっとけ。だから あいつに余計なちょっかい掛けるなよ、本気で怒るからな」
強い口調でそういわれて 都は肩を竦めて溜息をついた。
「わかったわよ、で 私は失恋確定な訳だ?」
上目遣いで拗ねた顔をして見せる都に「悪いな」とさらっと言うと遊馬はトレイを持ってゆっくり歩いている野明に視線を移す。
「あいつでないと 駄目なんだ」
都も野明の方に視線を巡らせる。
「あすま」と試しに名前を呼んでみると 目線を一瞬だけ都に移した遊馬はすぐに野明に視線を戻した。
「その呼び方は野明の特権だからな。今まで通り苗字で呼んでくれ」
「・・・そっか。私のことも名前で呼んでくれないの?」
「呼ばない。それも野明の特権、本人は気づいてないのがイタイけどな」
「そっか。冷たいなぁ」
「知らなかったのか?」
「今までは皆に同じだったから気にしないで済んでたの。『特別』扱いされてる人を見ちゃうと他人には冷たいなって実感した」
都が溜息をつくと 遊馬は「さてと・・・」といって立ち上がる。
「どうしたの?」
「野明。ったくあの馬鹿、席外したつもりなんだよ。お前と話すことがあると思ったんだろ。気使いすぎなんだよな」
そういうと野明の元に歩いていく。
二言三言言葉を交わして 額を軽く小突いたりしている様子を見て都は大きく肩を落とした。
「勝ち目がないわね、都?」とそれまで 黙って会話に耳を傾けていた伯母が苦笑交じりに声を掛ける。
「悔しいけど 篠原君が夢中なんじゃどうしようもないわね」
頬杖をついて肩を竦め伯母に向き直る。
「あれだけ 堂々と惚気られてキッパリ断られると涙も出てこないわ」
「ご愁傷様」
「遊馬くん 律儀よね」というと伯母は可笑しそうに笑う。
きょとんとした目で「何が?」と問う。
「遊馬くんね 御祖父さんのご葬儀のときに『もう貴方が軽井沢にくること無くなっちゃうかもしれないわね』、っていったの。そうしたら 『来ますよ、いつか彼女でもできたら連れてきます、伯母さんは俺の母親代わりみたいなもんだからね』ってそういったのよ」
「・・・・そう」
都は連れだって席に戻る野明と遊馬を見ながら残っていたコーヒーを一息で飲み干した。

「野明」
遊馬が歩いてくるのを見て野明が笑顔を向ける。
「遊馬。ごめん コーヒーすぐ持っていくね」
野明の手にあるトレイに空のままのカップが乗っていることを確認し、遊馬は苦笑しながら背を押す。
「コーヒー注ぐのに何分掛けるんだ? 気の回しすぎだ、馬鹿」
いいながら 野明の手からトレイを取り上げると 3つのカップにコーヒーを注ぐ。
2つには普通に。一つには少なく。
少ない一つに砂糖と牛乳を注いでカフェオレにすると「いこうぜ」と声を掛けて席に向かう。
野明はその後をゆっくりついていった。
「ね、遊馬」背中に声を掛けると 遊馬は立ち止まって顔だけ振り返った。
「どうしてここで朝ご飯食べようって おもったの?」
「約束したんだ、伯母さんと」
「約束?」
「後で話してやるよ、とにかく座ろうぜ」
そう言って野明の傍まで戻ってくると手を引いた。

席に着くと 遊馬はコーヒーカップを自分と伯母の前に置き、カフェオレを野明に手渡した。
何もいわなくても 自分の好みを把握してさりげなく気遣ってくれることに少し嬉しくなる。
「ありがとう」というと得意そうな顔で「どういたしまして」と笑顔を見せた。
その様子を向かいの席から眺めていた都が野明に話しかけた。
「えっと 泉さん?」
突然名前を呼ばれて慌てて視線を向ける。同席している人がいるのに失礼だったかなと思う。
「はい、すみません。 滝口さん、でいいのかな。」
隣にいる伯母と同じ呼び方になるので野明が少し悩んでいると都の方から助けを出す。
「『都』でいいよ。伯母と同じじゃ呼び辛いでしょ?」
「有難うございます。あの、私も『野明』でいいですよ」
「そう? じゃ野明さん、怒らないでね。単刀直入に聞くわ、篠原君のこと好きなの?」
「え?」突然の質問に吃驚して目を瞠る。
都の瞳をじっとみて真剣に訊いてるんだと確信して、誤魔化しや半端な回答は彼女に失礼だなと判断した野明は一度目を閉じ、大きく深呼吸すると しっかりと都の瞳を見据えて答えた。
「遊馬はとても大切な人です。都さんの仰る『好き』というのが恋愛対象ですか?という質問ならそれだけに答えるのは難しいんです。遊馬とは仕事の上でもコンビを組んでいますしそういう面でもかけがえの無いパートナーだと思っています。でも もし遊馬にプライベートで他に親しい女性が出来てしまったらきっと凄く辛いだろうなと思う。遊馬は私にとって凄く『特別な人』なんですよ。上手くいえなくて ごめんなさい。これでは答えになりませんか?」
ゆっくりと 言葉を選ぶように目を逸らさず真摯に答える野明を見て都は大仰に肩を竦めて見せた。
「・・・いいえ十分です。降参」
といって肩の高さで両手をパッと広げると遊馬に視線を向ける。
「だそうですよ、篠原君?」
「ったく 余計なことするなって。そういうのは自分で・・・・」
といいながら 手で顔を覆うようにして呻くその顔が少し朱い気がして野明はくすりと笑う。
遊馬にもちゃんと伝わったかな、と思いその顔をそっと窺った。

「ごちそうさまって感じよね」
言い捨てると都は遊馬に別の話題を振る。
「ね 日帰りするわけじゃないんでしょ どこに泊まるの、あの別荘?」
話題が変わったことに安堵して遊馬はそれに乗った。
「いや、コテージ借りてる」
「え そうなの?勿体無い。自分ちの使えばいいのに」
「実家に連絡取るの 嫌なんだよ」
「相変わらずよね、今シーズンオフで部屋空いてるしここに来たらいいじゃない?ね、伯母さん?」
と伯母さんに話題を振ると彼女は困ったように笑った。
「それは遊馬くんが嫌よね?」
「え? 嫌って言うか・・・」
答えに詰まる遊馬に伯母さんが助け舟をだす。
「折角彼女と旅行にきて 保護者と小うるさい小姑みたいな女のいるところに泊まりたくないわよ、ねぇ?」
苦笑する遊馬に都は交渉の矛先を野明に移す。
「そうなの? じゃ 野明さんは?」
「え? わ、私ですか?」
急に振られて動揺する野明に遊馬が慌てた。こういうとき 押し切られやすい野明の性格をよく知っている。
「ね 野明さんも折角なら賑やかな方が楽しいよね?」
「えっと、あの・・・」いいながら遊馬に助けを求める野明を見て遊馬は強引に会話に割って入った。
「駄目。もう荷物も置いてあるし今更移動なんてする気はないの」
というと、野明に「言いくるめられるんじゃない!」と釘を刺した。
野明はホッとした顔をして「ごめん」と返事を返し、都に「すみません」と頭を下げた。

遊馬は時計を確認すると「そろそろ 行こうぜ」と野明に声を掛ける。
「どこか行くの?」
都が問うと「買い物、デートだから邪魔すんなよ」と釘を刺す。
伯母さんが可笑しそうにクスクス笑い、野明は2人の間で反応に困って複雑な表情をしていた。
「伯母さん 会計お願い」と遊馬が振り返る。
「今日はいいわよ」
「いや でも・・・」
「約束どおり報告に来てくれたんでしょ? だからお祝いね、安いものだけど?」
「やっぱり 覚えてました?」といって遊馬が嬉しそうに笑う。
伯母さんは静かに頷いて「また 来て頂戴ね。用事なんてなくていいんだから」といい、ヒラヒラと手を振った。
遊馬は 照れくさそうな顔をして「必ず」というと野明の手をとる。
野明も「ご馳走様でした」と挨拶をして遊馬に連れられて店を後にした。
店内に残った 伯母と都は暫く閉まった扉を眺めていたがやがて気を取り直したように「さて お仕事しましょうか」といって伯母が先に立ち上がった。
俯いている姪の肩をぽんと叩いて「少し休んでから降りてらっしゃい」と声を掛けて厨房に向かう。
都は「そうする」と声を掛けて二階への階段を上り、自室にあてがわれた部屋のベッドに倒れこむと「私の方が長く見て来たんだけどなぁ」と呟いて枕を抱え込んだ。
さっきまでは まるで流れなかった涙が後から後から流れてなかなか止らなかった。

to be continue.....

===============
追記

二人きりにしておく展開に困って 可愛そうな女の子登場です(^^;
でも 遊馬って基本的に冷めたヤツだと思うので自分が気を持てない相手にはこんなもんなんだろうな、と勝手に妄想(笑)
で やっぱり 2時間くらいしか経たないノロノロ展開です(^^;
さっさと買い物行きなさいよって感じですよね(←いや 悪いの私ですが・・・)

長い駄文に最後までお付き合いくださいまして有難うございます
もし よろしければご意見、ご感想などいただけますとやる気が出て参ります(^^)
それでは まだまだ完結には程遠いお話ではございますが どうぞ見捨てないで見守ってやってくださいませ。

グリフォン編の遊馬を妄想してみた(笑

須羽様の 雨に打たれている野明のイラストから妄想が炸裂してその辺の紙に遊馬をゲシゲシ描きました。
勢いで 先日ブログにその絵の一部をUPしたところ チャットで姫とツッジーさんがその絵を見てくれたよ、と言う話になり・・・・
実は 須羽様の絵から大量のイラストを妄想していたということを暴露したところ「みてみたい」というありがたくもオドロキの感想とリクエスト(?!)を戴きました。
思いつくままに しかも手近な水性ボールペンで書きなぐった落書きなので 数も多いし重なってるわ、順番は時系列にあってないわでこのままスキャンしても見辛いよなぁと・・・
この2日で絵をPCで一個づつ引っぺがす作業に没頭してました(笑)
(書き直した方が早い気もしましたが 同じ絵ってかけないので)

描いた絵を数えると描くも描いたり 13枚!!
このまま縦に並べるのもどうかと思い とりあえず漫画風にしたものの それ用に描いてないので背景も効果も入れてないし 展開は絵に合わせて光の如く急展開(^^;
ちゃんと描くなら倍はページかけてじっくり展開した方が良いんでしょうが・・・今 その余裕なし!ってことで・・・

そんなむちゃくちゃ強引なものでよければどうぞご覧下さい~
(あ 苦情は受けますが・・・石投げないでね! 意外に打たれ弱いんですよ、私(^^; )

落書きはこちらから・・・

ちょっと描いてみたくなった♪


須羽さまの所の泣いている野明を見ていて駆け寄る遊馬を描いてみたくてアナログ絵でカリカリと・・・
戦闘終了後 すぐと思い込んでいたので指の拘束そのままにしちゃったんですが コミックよくみると一度整備班の人と会っているのでその時に解いてもらってますよね(^^;
でもボールペンで描いたので書き直すの無理!ということでこのままでいいかな~と。

で こっちが野明をシャワー室に送った後に自分責めて壁ぐらい叩いてみないかな~と。
手の角度おかしいなと気づいたんですが・・・やっぱりボールペンなので直せずこのまま(^^;
私は余り消しゴム使わないのでアナログの時は普通にペンとかでゲシゲシ描いてしまうので修正が出来ないんです(゜ーÅ)

デジ絵は直そうと思えば直せるんですが そうすると際限が・・・
どっちがいいんでしょうね?(笑)

ショックだ~(T∇T)

昨日まで軽快に利用できていた防水液晶TV。急にリモコンが効かなくなりました。
リモコンの電池切れたかな?と思い新品入れたけど・・・無反応・・・
受信部分に光が強く当たってるのかとか、汚れたか、とかチェックしたものの・・・反応なし!!
でもTV本体のボタン操作では動くので赤外線に問題ありだろうなぁと思い カ○オのサービスセンターに電話してみると・・・

修理期間 基本10日前後、修理代金工賃込みで26000円前後の可能性有りとのこと(T∇T)
詳しくは中開けてみないとなんともいえないんだけど 赤外線のユニットを交換するとそのくらいって・・・・
あああ! 私の家に設備があれば自分でやるのにぃぃぃ
(昔 某電機メーカーの修理部門に関わっていたので多少覚えが・・・)
それにしても あれが無いと半身浴出来ない・・・30分もぼーっとしてるだけなんて無理です~(T∇T)
せめて防滴ラジオでもあればぁぁぁ・・・
夜中にこそこそ半身浴してたんですが 先ほどメーカーに一式送付したので今日はあっさりお風呂を切り上げました。
なんだか ちょっと悲しい気分。
今日こそは何か更新する心算だったのに、悲しみ日記の更新ってどうなの?!と自分で突っ込んでみたり。
しかも実家から強奪して来たもので2003年製の表示で、サービスセンターのおねーさんいわくこの型番の商品は 故障内容によっては修理が既にできないこともあるのでご了承くださいって。
ちょっとまて・・・6年そこそこでそんな事あるのか?!と 溜息が。
無事 なおるといいなぁ。

うにうに様 塗り絵企画♪

上の画像をクリックすると大きくなります。

<ご注意♪>
ブラウザの環境によっては一度画面の大きさ高さをあわせた荒い画像で表示されることがありますがその際はもう一度荒い画像をクリックして画像を拡大してご覧くださいませ(^^)
お帰りは ブラウザの戻る釦で♪

うにうに様の塗り絵企画に参加させていただきました♪
うにうに様ご用意のイラストに色塗りさせていただけるというイベントです。
とっても面倒な線画をすっ飛ばして 素敵イラストに色が塗れる夢のような企画、本当に有難うございます(^^)
とても愉しく塗り塗りさせていただきました!

イメージは花街、ということで(笑)
うにうに様 本当に有難うございます~

色塗りしました(^^) 

うにうに様の塗り絵企画に乗って 新しいソフトで塗り絵してみました。
使ったことのないソフトと機能に随分時間がかかりましたが,
どうにか完成・・・
今までのソフトに帰ろうかな・・・と真剣に悩みました(笑)

うにうに様 どうぞ!(^^)

峰龍紅様へ勝手に貢物♪

上の画像をクリックすると大きくなります。

<ご注意♪>
ブラウザの環境によっては一度画面の大きさ高さをあわせた荒い画像で表示されることがありますがその際はもう一度荒い画像をクリックして画像を拡大してご覧くださいませ(^^)
お帰りは ブラウザの戻る釦で♪

峰龍紅様のサイト 「極☆趣味の部屋」に掲載されていた 「幸せは歩いて・・・来た。」に勝手に一目惚れ。
図々しくも勝手に絵を描いて押し付けてしまおうとしてます(笑)
峰龍紅様 ご迷惑でなかったら貰ってやってくださいm(。。)m

「幸せを届けにきたので、ここにハンコくださ~い」って超ツボでした(笑)
お話は峰龍紅さまのサイトにてごらんになれます(^^)

続・少しだけハッピーフライト、日咲様side用挿絵

上の画像をクリックすると大きくなります。

<ご注意♪>
ブラウザの環境によっては一度画面の大きさ高さをあわせた荒い画像で表示されることがありますがその際はもう一度荒い画像をクリックして画像を拡大してご覧くださいませ(^^)
お帰りは ブラウザの戻る釦で♪

日咲様のサイト桃花源と私のこのHPで行っています相互リンクコラボ企画の小説用に描かせて頂いた挿絵になります。
ネクタイを緩める姿がいいよねっ!という話で盛り上がりその場面をチョイスさせていただきました(^^)
ご興味の沸かれた方はどうぞご覧下さい♪
作品は 三部構成。
1は さくらのサイトに。
2は 日咲様のサイトのリンクに。
3(おまけ)は 日咲様HPの秘密のお部屋に。こちらの閲覧には日咲様からパスを戴いてくださいね

軽井沢編4 言霊

軽井沢編第4弾です
書いている最中に色々ありまして 最初に書いたものと全然違う話になってしまいました(^^;
おかしいなぁ・・・・
とはいえ なんとか形になったのでとりあえずUPしてみようと思います。
相変わらず 長い上に完結まではまだまだ道程が長いですがどうぞ見捨てないでやってくださいね(^^)
ご意見・感想などいただけますと やる気か出てまいります(笑)
ではどうぞ よろしくお付き合いくださいませ~

以下本文

===============
言霊
===============

「お先~」
先に入浴を済ませて リビングに戻ると野明はソファに沈むようにして眠っていた。
「おい、こんなとこで寝たらか風邪ひくぞ?」
声を掛けて肩を揺さぶると 気だるそうに目をあける。
「ん・・・遊馬 おかえり」
「ただいまって・・・いいから寝るならベッド使えよ、風呂 空いたから入ってきたらどうだ?」
眠そうに目を擦る野明に「立てるか?」といって手を差し出す。
差し出された手を取ると野明はゆらりと立ち上がり「お風呂いってくるね」と足元に纏めてあった手提げを持って浴室に向かった。
ふらふらと浴室に向かう野明を見送って『大丈夫か?』と思いはしたがついていく訳にも行かないので「おう」とだけ返事をして先ほどまで野明の転がっていたソファに深く腰をかけた。

程なくして 脱衣所の方から「わぁ!」という歓声があがり「遊馬ぁ!」と呼ぶ声が聞こえた。
呼ばれる理由には何となく心当たりがあったので よっと声を掛けてソファから立ち上がると扉の前に立ち「なんだ?」と声を掛けた。
カチャと戸が開き、すっかり眠さがとんだ様子の野明がひょっこり顔をだす。
「遊馬、すごいね!外」嬉しそうに遊馬の手を引いて浴室の戸を開けると板塀で囲まれた坪庭がライトアップされて掃き出し窓の外に浮かび上がっていた。
露天風呂気分が味わえる室内風呂といった感じだ。
「さっき見た」と苦笑して答えると、「あ、そうか。そうだよね」と野明は少しシュンとしてしまった。
その様子に思わず笑みが漏れる。
「いいさ。見せたかったんだろ?」
野明の頭をくしゃっと撫でて「サンキューな。」というと野明は笑顔を見せた。
「すっごく綺麗なんだもん。でも そうだよね、先に入ったならみてるよねぇ」心もち眉根寄せて言う。
「気にすんな、さっさと入って来いよ。ご希望ならお供しようか?」
にっと笑って言うと 野明は吃驚した顔で振り返り「希望しない!」といって慌てて背中を押すと遊馬をリビングに追い出した。
「ぜ~ったい 覗かないでね!」というとピシャンと扉を閉める。
遊馬は思わず吹き出すと 再びソファに向かう。途中 キッチンに向かい冷蔵庫からビールを一缶取り出した。

ビールを片手に暫くTVを眺めていると入浴を終えた野明が出てきた。
「おまたせ~」
「おう」
声を掛けると野明はスタスタと遊馬の傍にやってきて隣にぽすんと座る。
「ただいま」
「おかえり、それ似合ってるじゃん」
野明は今日買ったワンピース型の寝巻きを着ていた。
襟ぐりにフリルとリボンのついた可愛らしいデザインのそれは 肌触りのよいサラサラした生地で出来ていた。
「なんか・・・変じゃない?」野明は着慣れない寝巻きに落ち着かない様子で問いかける。
「いいんじゃないか? まぁ職場に持ってはいけないけどな」
「それは 無理だよね」
そう言って顔を見合わせて笑う。
遊馬の手にあるビールに目をとめて「私も持ってこようかな」とキッチンに向かった。
冷蔵庫を物色してウーロン茶をみつけるとグラスに注いで持ってきた。
「お茶?」
「うん。お酒は今いいかな、と思って」
「そっか」
そういうと再びTVに目線を戻す。静かな目をしてニュースを見ている遊馬の横顔を眺めながらゆっくり手にしたウーロン茶を飲む。
たまに短い会話をしながらただ並んでTVを見ているだけなのにひどく安らいだ気分になった。
ニュースが終わると遊馬は大きく伸びをする。
「そろそろ寝るか~」というと洗面所に向かった。
野明も慌ててその後を追い、二人で歯を磨き、顔を洗う。
リビングの明かりを落として寝室に入ると、遊馬は昨日と同じように「どっち使いたい?」と訊いた。
出入り口に近い方と 睡蓮のある池が望める掃き出し窓のある方。
少し悩んだ末に野明は 掃き出し窓に近い方のベッドを選択した。
遊馬は出入り口に近い方のベッドに入ってさっさと横になり、野明もそれに習って横になる。
「電気消すぞ」
リモコンを片手に遊馬が振り向く。
「うん お願い」
そういうと 部屋の明かりが落とされた。

少し間があいて遊馬の声がした。
「なぁ、もう寝たか?」
「ううん 起きてるよ」
「さっきの質問。」
「え?」
「俺の役は何か、聞いてない」
「あ、えっとね・・・」少し考えるような間のあとで野明は答えを紡ぎだした。
「おにいさん・・・かなぁ」
「兄貴?」
「私 兄弟いないからさ、ちょっと憧れるんだよね。お兄さんとかいたらいいなぁって」
「ふーん。そんなもんかね? じゃ、いい兄貴演じてやるよ。おやすみ 野明」
「うん おやすみ 遊馬」
挨拶を交わすと野明はあっという間に眠りに落ちた。

規則正しい野明の寝息が聞こえるようになるまでそれ程時間は掛からなかった。
遊馬は野明に背を向ける様に大きく寝返りを打つ。
「兄貴ね・・・」小さく呟くとゆっくり息を吐き出した。
なるほど無防備でいる訳だ、と妙に納得すら覚える。
『仲のいい兄貴』の姿を思って一緒に買い物を楽しんだりちょっとした旅行に出たりする。
それを意識しているか否かはともかくとして兄弟なので平気だよね、位の感覚なのだろう。
実際の兄弟がそんなに仲睦まじいとは思わないが野明の理想の範疇はこんなところなのかもしれない。
事実自分には兄がいたが尊敬はしていていても男同士の兄弟でもあり、年が離れていた所為もあってべったり仲良しということは決してなかった。
とはいえ ここまで一緒についてきた訳だから嫌われてはいないとして、『彼女にしてやる』と声を掛けて『迎えにきて』と応えたのだからもう少し意識してもいいんじゃないのかと思うと 軽い脱力感に見舞われる。
焦ってどうこうしようという心算も無かったが 聊か拍子抜けしたような気分になったことは確かだった。
頭だけ野明の方を振り返ると安心しきった顔をしてすやすやと眠っていて それを確認すると再び顔を戻し眠ることに決め、目を閉じた。

夜半を過ぎた頃 ものすごい雨音と雷鳴で野明は目を覚ました。
掃き出し窓にものすごい勢いで雨と風が吹き付けていて外はさながら嵐のようだった。
時折 稲光と雷鳴が響き窓の外がカッと白くなる。
野明は そっとベッドから脚を下ろすと窓のそばに歩み寄った。
眠りに落ちたときからそんなに時間は経っていないのに外の天気は一変していて窓の外は紗がかかったようで視界が殆ど効かなかった。雷光が時折視界を白く染める。
外には 殆ど明かりは無かったが コテージ同士を繋ぐ小道には申し訳程度の街路灯が配置されていてその近辺だけが仄かに明るかった。
ふと 遊馬のいるベッドの方を振り返るとこちらに背を向けるようにして眠っている姿が目に入った。

『おにいさん・・・かなぁ』
自分で言った言葉を思い出す。
『俺の役は何?』そう訊かれて言葉に困った。焦って口から出た言葉は『おにいさん』だった。
けど、それは本当は少し違う気がする。
遊馬は 『遊馬』であって私の中でどんな役を担ってますか、と訊かれても一言でいえない。
きっと遊馬はこんなことまで考えて質問したわけではないと思う。
単純にままごとの話が出たので配役を訊いて見ただけなのだろうけれど、それをサラリと返す余裕が自分には無かった。
遊馬は仕事上のパートナー、気の合う友達、休日もつるんで遊ぶ仲間。
それから手のかかる子供みたいで 信頼できる兄のような親友のような人だ。
でも 恋人ではない。
はじめにままごとみたいだと言ったのは2人で家事をしているのが『新婚さんみたい』と思ったからだ。
ということは その時の遊馬の配役は『旦那さん』だったことになる。
でもそれを言うのは恥ずかしくて言葉を濁した。もしそう言って遊馬に拒絶されたらこの後どんな顔をして過ごしたら良いかわからなかったから。
遊馬に拒絶されるのが怖いということに思い至って初めて納得する。
『そっか、私、遊馬が好きなんだ』
多分仕事の相棒とかそいういうものとは違うところで、『遊馬』が好きなんだ。
そう思うと まともに遊馬の方を見ているのが辛くなった。
「あんなこと いわなきゃ良かった」と思わず口に出して呟いた。
あんなことが『ままごと』と引き合いに出したことなのか遊馬を『おにいさん』と言った事なのか自分でも図りかねて小さく溜息を吐いた。
雨足は弱まることなく降り続き 雷鳴も断続的に響いている。
雨の日は あまり良くない記憶が多いなとふと思った。
エコノミーに載った遊馬がグリフォンにつぶされた時も 熊耳さんが撃たれたときも二課棟に内海たちが乗り込んできたときも雨が降っていていた。
少し寒さが増した気がして両手で自分の肩を抱きしめる。
大きく息を吐いた時 轟音がして視界が真っ白になった。
思わず声を上げてその場にしゃがみ込む。
地面が少し揺れ、窓ガラスがビリビリと振動し反響音が辺りに響いている。
至近距離に落雷があったんだ、と気づくまで数瞬かかった。

その音と振動で 遊馬も目を覚ました。
「どうした?」
「落雷。近くみたい」
応えると遊馬はリモコンを操作して明かりをつけようとした。
「停電か?」
そういわれて外を見ると先ほどまで点いていたはずの街路灯が消えているのに気がついた。
「そうみたい、街路灯も消えちゃってる」
「そうか、野明 起きてたのか?」
布擦れの音と共に遊馬の声が聞こえる。
「うん、雨音で起きちゃった」
遊馬の気配を感じて振り返るとすぐ後ろで同じように外を見ているのが気配でわかった。
完全に真っ暗になってしまったので 部屋の中も外も視界が無い。
「ここに立っていても仕方がないし、リビングに行くか?」
「でも 向こうも真っ暗でしょ?」
「ガスは使えるだろ、コーヒー飲まないか? 目が覚めちまった」
「うん、でも・・・」
「明かりだろ? ここ動くなよ、部屋の隅に確か・・・」と言いながら遊馬が動く気配がして程なく懐中電灯の明かりが点いた。
「すごい、よくそんなの有ったね」
野明が感心していると、「部屋に入ったときに非常灯の位置とか確認しなかったのか?」と逆に不思議そうに訊かれた。
野明は「しなかった」と言ってクスリと笑う。こういうところが遊馬だな、と思う。
いつでもちゃんと色んなことを想定して行動している。
行き当たりばったりな自分との違いを見て『やっぱり遊馬といると安心』だと思った。

リビングに入ると 遊馬は野明をソファに座らせ「ここで待ってろ」といって玄関に向かい、そこからもう一つ懐中電灯を持って帰ってきた。
一つを野明に手渡し 自分も一つ手に持ってキッチンに入る。
ガスコンロのつまみを捻ると青い炎が踊った。ガスが点くことを確認すると水を入れた薬缶をかける。
沸騰するまでの間にインスタントコーヒーと砂糖、マグカップを取り出して並べた。
冷蔵庫から手早く牛乳を取り出すと小さめの片手鍋に移して直ぐに残りを冷蔵庫にしまった。
小さな火をつけたコンロのうえに片手鍋を載せると丁寧に温める。
「てつだうよ」と言って腰を浮かせた野明に「いいから座ってろ」といって手際よく作業を進める。
程なくしてコーヒーと カフェオレを作りおわるとまずカフェオレを野明に手渡した。
次いで 自分のコーヒーを取りにキッチンに戻り ついでとばかりに開封済みのポッキーも手にして戻ってきた。
とりあえず懐中電灯を一本TVの上において手元を照らしもう一本の明かりは消した。

「いつから起きてたんだ?」
ブラックのコーヒーを口に運びながら静かに話しかける。
「何時だろう、30分くらい前かも。雨と雷の音、凄かったんだよ」
「そうか、場所変われば良かったな。落雷があるまで気づかなかった」
「私が向こうにするって言ったんだもん。遊馬が気にすることないよ」
そういうとカフェオレを啜る。「あ おいしい」と呟くと「そりゃ よかった」と遊馬が笑った。
少しの間沈黙が続き、遊馬が心配そうに口を開いた。
「なんか元気ないな、もしかして雷怖いのか?」
断続的に雷鳴が聞こえてはいるがさっきほど至近距離の音ではなくなってきていた。
「雷が怖いって言うんじゃないんだけど、さっきのはびっくりした」
「あれはなぁ、俺も起きたし」
「でも、雨はあまり好きじゃなくなった気がする。ここ暫く 嫌なことがある時は雨の日が多かったから。」
そういうとカップをテーブルに置き 額を膝につけ丸くなるようにして両脚を抱える。
「それは今日も嫌なことが有ったって事か?」
目線を外すようにして静かに問う声に思わず顔を上げる。
「『雨が好きじゃなくなった気がする』ってのは 今そう思ったってことだろ?」
「・・・あ・・・・」
野明は心の中で舌打ちしたい気分だった。
考えに沈んで勝手に自己嫌悪に陥っていて言葉の選択を誤った。
以前からそうだというなら『なくなった気がする』ではなくて『好きじゃない』というべきで無意識に出た言葉だったためそこまで気が回らなかった。
そして殊この件に関しては自分の中の問題でこのタイミングで口に出して、まして遊馬に聞かれるのは一番避けたいことだった。
誤解を解かなくてはと思う一方で 自分でも整理がつかないことをどうやって説明すればいいのかわからずに逡巡していると先に 遊馬が口を開いた。
「着いてきたの、後悔してるならそう言えよ? 幸いにも今のところ何も無かったわけだし夜が明けて雨足が落ち着いたら東京に帰るか。」
とても穏やかな口調でそう言って野明の頭をポンと軽く叩くと マグカップをもって立ち上がる。
野明は慌てて遊馬のパジャマの袖口を掴んだ。
「ごめんなさい、そうじゃなくて。違うから、そんなこと言わないで」
何に対してなのかはっきりしない後悔の念と 遊馬が離れていきそうな不安感で 胸がぎゅっと締め付けられるような感覚が走り涙が出てきた。
一度出はじめると もう止まらない。あとから後から涙が溢れてきて顔を上げていられなくなり俯いた。
その様子を吃驚したように見ていた遊馬は 困った顔をしてもう一度ソファに座りなおした。
「野明 どうして泣くんだ?」
カップを置いて 顔を覗こうとしたが野明は袖口を掴んだまま完全に下を向いて顔を上げようとしない。
少し考えて、袖口から野明の手を離し肩にそっと手を掛けると身を強張らせる気配がした。
遊馬は黙って手を離しソファの背もたれに手を掛け直した。
野明が落ち着くのを待つように遊馬は何も言わずに雨音に耳を傾けていた。
暫くして、小さな声で「ごめん上手くいえない。でもお願い もう少しだけ傍にいて」と言うと遊馬の胸元にコツンと額を押し当てた。
遊馬は少し驚いたものの、小さな溜息を吐き『気の済む様にさせてやるか』と思った。
「了解。いい兄貴 演じてやるって言ったからな。傍にいてやるよ。その代わり 無理はするな。帰りたくなったら ちゃんと言え」
そういうと 野明はイヤイヤと首を振る。
「・・・帰るのはやだ。遊馬と一緒に居たいの」
そう言って遊馬の胸元に頬を寄せた。
『いい兄貴を演じてやる』という遊馬の言葉に激しく後悔した。遊馬を『おにいさん』と言ったのは自分。それなのにその通りにしてくれると言う遊馬に今更何を言えばいいのか判らなくて胸が軋む思いがする。
自分の発した言葉を今頃になってとても恨めしく思った。

胸元に頬を寄せて身体を預けるようにしている野明を横目にみて遊馬は内心溜息を吐いた。
『いい兄貴を演じてやるよ』と言ったのは自分だ。
野明がそう望んでいるのだから好きにさせてやろう、と思った矢先にこれだけ無防備にしな垂れかかってこられると正直眩暈がしそうだった。
『これは兄貴の役割なのか?!』思わず野明に問いただしてしまいたくなる。
少しはこっちの気持ちも察して欲しいものだと思わずにはいられなかったが 今それを言うのは精神的に不安定になっているらしい野明には酷なことだと思いぐっと飲み込んだ。
とはいえいつまでも この沈黙に耐える自信がなくて何か話題を探す。
「復旧しないな」
「え?」
「電気。落雷の磁場の影響なら数秒で復帰するだろ。変電設備のブレーカーが原因なら30分もあれば復旧するはずだし。どこかで 電線が切れたのかもな」
「あ・・・そうだね。あれからどの位たったの?」
遊馬は腕時計を確認すると時間は午前3時を少し回っていた。
「一時間ってとこか。切れてるなら復旧は夜が明けてからになるかもな。雷も大分収まったことだし夜明けまでまだ2時間以上ある。そろそろ向こうに戻るか」
野明の頭をポンと軽く叩くとTVの上から懐中電灯を取り野明に手渡す。
自分も机の上に置いていた懐中電灯を手にして野明の背を押した。
各々 ベッドに入って「おやすみ」と挨拶を交わすと布団に包まって明かりを消した。

2人とも互いに自分の発した言葉に少なからず縛られてしまい簡単に眠りに就くことは出来なかった。

to be continue...
==============
追記

日記の方を見てくださった方はご存知かと思いますが一度殆ど書き上げた原稿を雷に打たれて消失してしまいまして 最初はもっと幸せ一杯であったはずのお話が書き直すとこんなことに・・・(T∇T)
保存中に電源が落ちたためPCごとリカバリと言う激しく切ない状態に追い込まれてその他SSと描きかけだった挿絵も消失・・・
なので挿絵なしです(笑)
なにしろ今回は話が暗くなったので書いて楽しいところがなくなってしまったというのも一要因です(^^;
この2人 先日から完全に寝不足だと思うんですが・・・大丈夫でしょうかね?(笑)
書いた自分が言うな!って感じですが・・・・

長い駄文に最後までお付き合いくださいまして有難うございます。
完結までの道は長そうなので挫折しないように頑張りたいと思います。
ご意見、ご感想等のコメントをいただけますとそれを糧に頑張れますのでお時間のある方は是非宜しくお願い致します(^^)

上手くいかない~(T∇T)

購入したタブレットにおまけでついてきた イラストスタジオとフォトショエレメンツ、ポイントで強奪してきたコミックスタジオproに 素材集のブラシ素材等を追加してみようとしたんですが手順どおりしてるはずなのに何故かリストに上がってこない(T∇T)
綺麗な素材が沢山収録されていたのでこれでお絵かきしようと萌えていたのにショック・・・・
明日 もう一度やってみよう。
パターンブラシの使い方・・・よくわかりません。
よく考えると私そんな機能使ったこと無かったんだわ、と気づきました(笑)
勉強しよう・・・(^^;

特別 ツッジーさま

ツッジーさまより切番記念に頂戴したリクエストSSです(^^)

======================

特別

遊馬がいつからあたしの中で大きな存在になっていたのか・・・。

遊馬の声が・・・そして姿があたしに力をくれる。そして勇気をくれる。

こうして遊馬とのんびりひなたぼっこするのが日課になった

天気の良い日。

ちらりと横を見ると、屋上の屋根にごろんと転がり目を閉じている遊馬。

あたしも同じように横になり、青空を見る。

「なぁ。」
「ん?」
「良い天気だな。」
「そうだねー。このまま寝たいよね・・・。」
「そうだな・・・。日が暮れるまで寝れる自信あるぞ。」
「あたしも・・・。」

こんな他愛のない会話でもあたしは嬉しい。

遊馬があたしの中で、パートナーから特別な存在に変わった日から

毎日あたしはドキドキしていた・・・。

でも、きっと望んじゃいけないのかも知れない・・・。

「お前さ、最近ちょっと変じゃないか?」
「何が?」
「よくわかんねーけどさ、女らしくなったと言うか?」
「そう見える?」
「俺しかわからんみたいだけど・・・。」
「みんなに聞いたの?」
「ああ。みんな「そうか?」って言ってたけどな。」

ばれちゃってるのかな?ひょっとして・・・。

「まぁ、お前も年頃の女だもんな。」
「そうだよ!」
「恋の一つや二つしてるよな!」
「うん。してるよ!!」
「何ぃ?だれだ??俺の知ってる奴か?」
がばっと遊馬が起き上がり、あたしの顔を覗きこむ。

「言わないし教えない!!」
「パートナーだろ?知る権利あるぜ!!」
「何でプライベートな事言わないと駄目なんだよ!!」
「まぁ、最近女らしくなった点は褒めてやる。いいんじゃねーの?そういうの。」
「そう?」

あたしも体を起こす。

「遊馬、一つだけ教えてあげるよ!!」
「何だ?」

立ち上がり遊馬に背を向けて

「あたしの中では特別なんだよ!」
「だから何が?」

ゆっくりとあたしは歩き出す。

「遊馬が・・・。特別・・・だよ。」

小さな声で言ったので聞こえたか聞こえなかったのかはわからない・・・。
でもあたしは振り返ることなく棟内の入口へと向かった。

その直前に、緊急出動の指令が出た。
あたし達は現場に急行する。

プライベート回線で遊馬が言った言葉・・・。

「さっきの話だけどな・・・。俺もお前が特別だよ。」

と・・・。

Fin

繋いだ手を離さないで

私が愛と安らぎに餓えまくってるのでものすごく甘甘な展開を続けていますこのSS企画(^^;
いいのかこれで、とおもいつつ ここは妄想でストレス発散しないと身がもちません(笑)
というわけで のあますまってこんなんじゃないだろう!って思いますがここは目を瞑っていただいて・・・

繋いだ手を離さないで

遊馬と最初に交わした握手は隊長にポジションを告げられた時。
「なかよくやろう」
そう言って差し出された手を「どーやって?」と苦笑いして握り返し、口の悪いヤツだと思って、『女にもてねーぞ』って悪態を吐いた。

あれから2年と少し。
ヘッドギアを外してアルフォンスのコクピットを開けるとすぐ下に遊馬が居た。
こちらに気付くと振り返って右手を差しあげる。
その手に自分の右手を乗せて 少し遊馬に引かれる様にコクピットから飛び降りた。
「お疲れ」
そう言って頭をくしゃっと撫でて貰うと少し元気が出る。
「ね、遊馬。この手、離さないでね?」
遊馬は呆けたような顔をした後 穏やかな笑顔で答えた。
「離しゃしねーよ。心配すんな」
自分の小さい手を包み込むように握られた遊馬の大きな掌。
どうかこの先も『繋いだ手を離さないで』

追記
イラストを整理して移動中。
駄文の挿絵でしたが折角なので別の話をくっつけて
ものすごい少女漫画チックです(^^;

昨日消失した軽井沢書き直すと書いていたのと全然違う話になってきてしまった(^^;
鋭意作成中です。。。

うにうに様~ 企画のSSも途中までかいて消えてしまいましたぁぁ(ノ_<。)
頑張って書き直しますから テンション浮上するまで数日下さい!!

凹んだ・・・(愚痴なのでスルーしてくださってOKです)

19時を15分ほど過ぎたころCSでPATの再放送で「野明の冒険」を見ながら PCしてました。
軽井沢の4作目と ちょっと企画のSSと 描きかけのイラストを纏めて起動して 一個に行き詰ると別のにフラフラしつつTVもみつつ・・・
すると 突然轟音とともに停電!!
直後にものすごい勢いで雨が降り出しました(ノ_<。)
製作中のファイルは全て消失。PATは途中見逃すし、ルータもおかしくなって再設定に時間を取られ、今復旧。
旦那は 1FでTVみてて「設定直しとけ」だって・・・・
手伝ってよ! 君の分もあるでしょう!って感じです"(ノ_・、)"
昼も エアコンフィルターの掃除を言い付かり、椅子の上に脚立を乗せて作業。
その間ヤツは昼寝・・・・なんだか激しく凹んでます。
ヤツが使った車のバッテリーが上がって私が修理に立ち会わされ本人家で寝てたりとか・・・なんであたしが!私のせいじゃない!ってもう泣きそう・・・
ここ数日こんなんばかり・・・
他にもいっぱいあるけど書いてると更に凹むのでここまでにしよう・・・

おまじない

ASAKI姫と楽しくお話させていただいて 二課時代の話なんかないかな~という話からちょっと妄想(笑)
過去絵につけてUPしてみます♪
この企画 どうなんだろう???
不評なら辞めちゃおうかな(笑)

おまじない

今日の遊馬は宿直。
帰り支度を済ませて宿直室に声を掛ける。
「お疲れ様~ 宿直頑張ってね!」
「おう! お疲れ・・・ってどうしたんだ?その格好」
普段は着ることのないフレアスカートのワンピース。
出掛けにちょっと見せるつもりで寄ったので指摘されて少し嬉しい。
「似合う?」といってクルリとまわって見せると遊馬は顔を顰めた
「どっか行くのか?」
「同窓会」
ちょっと得意げに答えると不思議そうな顔で遊馬が訊いた。
「お前 出身北海道だろ?」
「東京就職組って結構多いんだよ」
「ふーん。そうなんだ」
少し不満げに言う遊馬をみてちょっとだけ悪戯心が沸く。
「・・・心配?」
遊馬の前にぽすんと座ると顔を覗き込む。
「するか、そんなもん」
「なんだ、つまんないの」
「今日は宿直だからな、迎えに行ってやれないぞ。」
「宿直じゃなかったら来てくれるの?」笑みを浮かべて聞き返す。
「愚問だな、遅くならないように帰れよ?」
溜息をつくように言う遊馬の右手を両手でキュッと掴んで『お願い』する。
「『早く帰れるおまじない』してくれる?」
「は?」といって一瞬固まった遊馬の目を覗き込んでクスリと笑うとやれやれ、といった顔をして私の頬に手を添えた。
「門限までに寮に帰れよ」
そういうと額に優しくキスをくれた。

追記
イラストを整理して移動中。
駄文の挿絵でしたが折角なので別の話をくっつけちゃいました(笑)