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軽井沢編15 日常

軽井沢編 15弾です

旦那の休みも挟まって思いっきり期間があきすぎてお忘れの方も多いかとは思いますが軽井沢編ですの更新です。

今日は朝から天気が悪い。
台風が近寄っています・・・
更生している時間がないのでそのままUPしますので誤字脱字は気づいたらこっそり修正しているかもしれません(笑)

ではでは 長々続いたこのお話も遂におしまいです。
よろしければもう暫くお付き合いくださいませ~(^^)

以下本文

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軽井沢編14 理由

軽井沢編 14弾です

世の中、夏休みですね~
買い物に出た大型ショッピングモールは嘗て無いほど混んでました(^^;
暫くは近寄らないようにしよう。
キャラクターショーなんかもやっていて ああ休みなんだなと痛感。
自分の家が平常運転だとなんだか実感がないですね~☆

さてさて本編ですが、アッサリと飲み会を終了してコテージに向ってます。
長々続いたこのお話もそろそろ終盤です。
よろしければもう暫くお付き合いくださいませ~(^^)

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軽井沢編13 友達

軽井沢編 13弾です

ここ数日 少し強めの自身が続いていますね。
『東海地震とは関係がない』と学者さんが仰っていたそうですが・・・
何はともあれ台風で地盤が緩んでるところへ持ってきての地震ですからやっぱり警戒はすべきですよね。
『天災は忘れた頃にやってくる』と申しますし。
日頃の心構えが大事、ということで。

そして飲み会完結編です(笑)
どうぞご覧下さいませ~

のんびり進んできたこのお話もなんとか終わりが見えてきましたがもう少し続く予定ですのでよろしければもう暫くお付き合いくださいませ~(^^)

以下本文

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軽井沢編12 過去

軽井沢編 12弾です

今日は一日雨の予報です。
空気はジメジメ空はどんより。
時々雷鳴も聞こえます

のんびり進んできたこのお話もなんとか終わりが見えてきましたがもう少し続く予定ですのでよろしければもう暫くお付き合いくださいませ~(^^)

以下本文

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軽井沢編11 贅沢

軽井沢編 11弾です

残すところあと一日~
やっとここまで来ましたよ・・・
書いてる自分が長さにめげそうです(笑)
期間限定の裏話をご覧になった方もそうでない方も話はちゃんと繋がるようになっている・・・筈です(^^;
本編の更新がすごく間が開いてしまいましたがどうにか続行中です♪
なんとか終わりが見えてきましたがもう少し続く予定ですのでよろしければもう暫くお付き合いくださいませ~(^^)

以下本文

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軽井沢編10 刻印

軽井沢編 10弾です

遂に二桁突入・・・(^^;
長いなぁ・・・しみじみ思います(笑)
暑さで倒れそうな気温の中、決して涼しいとはいえない本文(^^;
文才の無さに思わず笑が止りません(笑)
上手くかけるようになりたいな~とつくづく思います。

今週も幼稚園はお休み・・・
登園している時の一週間はあっという間なのに休みの一週間ってなんて長いんでしょう・・・・
今週もがんばるぞ!

ここ暫く週一の週末更新が続いていたこのシリーズですが遂にそれすらぶっちぎって9日あきましたね~
私逃げまくってましたから(笑)
今回は久し振りも絵もつけてみました☆
完結だけはさせないとなぁという意思はあるんですよ、なので見捨てないでね(^^;

長くて完結はまだ先になりそうですがもう少し続く予定ですのでよろしければもう暫くお付き合いくださいませ~

以下本文

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刻印
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「なぁ、俺のものにならないか?」
そう言われた直後クルリと視界が回り、顔の脇に両腕をついた遊馬が覆いかぶさるようにして自分を見つめていた。
いつものふざけた感じとは違う初めて見る『男の人』の目が少し怖くて、野明は遊馬の目から少し視線を外した。
「嫌なら無理強いはしない」
真剣な眼差しの遊馬に野明は眼を逸らしたまま小さく首を振った。
嫌ではなくて、怖いと思った。それは遊馬が怖いのかこれからのことが怖いのかよく分からなかったけれど。
「嫌・・・じゃないの・・・でも・・・」
何と言っていいのか的確な表現が浮かばない。『この先』に自分が予想した事を思って不安と羞恥で頬が紅潮しているのが自分でもはっきりと判った。
「でも?」
真剣な眼差しで遊馬が言葉の先を促し野明は目を合わせることが出来ないまま答えを返す。
「私 こういうの全然・・」 経験がないからわからない、と続けようとして頸の後ろに差し入れられた遊馬の暖かい手に意識が移る。次いで遊馬がふぅっ・・・とゆっくり息を吐くのが分かった。
遊馬の方に目を向けると先刻までの怖いくらいの眼差しは影を潜めていて優し気な顔でくすりと笑った。自分の方にゆっくりと唇を寄せて囁く。
「心配しなくていい。俺が教えてやる」
そう言うと殊更にゆっくりと唇を重ねて遊馬が頸と腰に手を宛がい自分をぐっと抱きこむのが分かった。

啄ばむように何度か軽く唇を合わせた後 優しく野明の唇を塞ぐ。
緊張している野明は目をぎゅっと瞑り、その全身に思い切り力が入っているのに気づき一度唇を離した。
「野明、力 抜けるか?」
「・・・えと、どうしたら抜けるんだろう?」
困った顔で訊く野明に思わず噴出しそうになりながら、「じゃ 抜いてやろうか?」というと再び 先ほどよりも深く唇を重ねる。
吃驚した野明の身体がぴくりと跳ねて、遊馬を離そうと両手を肩に当てて突っ張った。
遊馬はまるで意に介す様子もなく僅かに出来た隙間からすっと舌を差し入れる。
「んっ・・・」
思わず首を竦めて逃れようとしたものの、頸の後ろに回された遊馬の掌がしっかりと頭を抑えているので思うようにならない。歯列に舌を這わせ、野明のそれを絡めるように口腔で踊る遊馬の舌の感覚に野明の意識がふわぁっと遠のく。
目の端にうっすらと涙が浮かんだ野明から頃合をみて唇を離すと彼女の身体はくたりとベッドに沈んだ。
ニヤリと笑うと野明の顔を覗き込む。
「力、抜けただろ?」
「遊馬の意地悪」
「意地悪ねぇ。これでそんな風に言われたんじゃ、この後困るんだけどな」
「この後・・・って・・遊馬ぁ・・・」
抗議の声を上げ、頬を染めて目線を合わせたり逸らしたりと忙しく動かす野明に軽く笑みを返す。
「怖いか?」
「・・・少し」
「逃げるなら今が最後。どうする?」
「どうするって・・・」
困った顔で目を逸らす野明に『逃げ道を提示しないのは卑怯かな』と思い直す。
確かに野明を欲しい気持ちはあるが無理強いすることだけは絶対に嫌だった。
今後のこともあるし何よりそんな風にして手に入れても自分が納得できないだろう。

少し考えて、いつかの様に野明の顔の横から右手を退けた。
自分が荒れて彼女を傷付けた『抱かせてくれるのか?』と言ったあの時のように。
あの時は本気で抱くつもりなどなかった、『こんなヤツだから相手にするな』という自虐めいた自暴自棄の結果だから 右手は壁につかず逃げ道を用意しておいたのだ。
今回は少し事情が違う。
本気で欲しいから、野明に後悔を残させたくないから。
「嫌ならここから出てもいい」
そう言って片側を開けた。

野明は腕の退かされた自分の左側の空間と遊馬の顔を交互に見比べ少しの間考えるように口元に手を宛がい、それから小さく首を左右に振った。
おずおずと両手を遊馬の頸に伸ばしてそっと引き寄せる。
「逃げないよ。・・・遊馬、大好き」
何より欲しかったその言葉に思わず気が昂る。
退けていた右手を戻して野明と向かい合った。
「俺も野明が好きだ」
言葉を返して野明から小さな吐息交じりの声が漏れるのを聞きながら頬に瞼に首筋にと何度となくキスの雨を降らせる。
今までに聞いたことのない声と表情。そのどれもが堪らなく愛しい。
次第に甘く変わっていく野明の声を聞きながら襟元に結ばれた寝巻きの紐に手を掛けると、驚いた野明が慌てて遊馬の手を退けようと手を伸ばした。
「ちょっ・・・っちょっとまって・・・」
「やだ、待たない」
野明の手を意に介すことなスルリと紐を解くと、襟元が広く開いて肩が露わになる。
首筋から鎖骨、喉元に順に舌を這わせ、胸元を強く吸い上げると白い肌に赤い花が咲いた。
「んっ・・・あ・・やだ、痛っ・・!」
肌蹴た胸元に目を移すとそこに赤い痣が出来ているのが目に入る。
「これっ・・あ、遊馬ぁ・・・」
「・・『俺の』って印。一つじゃ 足りないかな・・・」
にっと笑って更に花を咲かせる。
下着の淵に3つ目の痕をつけると「邪魔」と呟いて野明の背中に手を回し、その身を包む布を取り去ろうと手を這わせ、焦った野明が慌てて身を捩る。
「あ・・・ちょっと、遊馬・・・」
「待たないし、止めない」
細い手首を掴んで野明の半身を起こして寝巻きに手を掛けると 野明は遊馬の肩口にポンと額をつけ、小さな声で訴えた。
「あの・・・電気、消してもらえる?」
『それじゃ野明がみえない』と思ったものの自分が掴んでいる野明の手が微かに震えているのを見て小さく笑う。
「分かった」
部屋の明かりを落とし、自分と野明の身を包む衣服と理性の箍をベッドの脇に投げ捨てると、野明と共にシーツの海に沈んだ。

薄明かりの中目をあけると 自分の左隣で遊馬がうつ伏せに眠っているのが見えた。
露わな肩に思わず目を背け、身体を起こそうとすると遊馬の腕が自分の右肩を掴むようにして身を抑えていることに気づく。
その手を退かそうとして互いが洋服を着ていないことに気づいて赤面した。
起こさないようにそーっと手を退かし慌てて半身を起こすと下腹部に鈍い痛みが走り、思わず顔を顰める。
周りを見回すと脱ぎ捨てられた衣類が目に入り羞恥で頬が染まった。
そおっとベッドから抜け出すと手早く衣服を身につけ、遊馬の洋服を畳んでナイトテーブルに置くと洗面所に向った。
洗面所の明かりをつけ顔を洗う。
ふと先ほどのまでの事を思い出してしまい自分の胸元をそっと覗くとそこには遊馬がつけた赤い痕がくっきりと残っていた。
足元にあるポーチをを取ろうと身を屈めると下腹部にキリリと痛みが走る。
今しがた『破瓜の痛み』というものを身をもって知った野明は思わず「本当に痛んだ・・・」と呟いた。
軽く息をつき、部屋に戻ろうとして、ふと浴室に目がとまる。
『お風呂使おうかなぁ』
中を覗いて軽く浴槽を洗うとそそくさとリビングに向かい入浴剤の中から先ほど断念した泡になるものを手にして戻る。
説明を読んで中身をカランの下に流し込むとお湯を勢い良く注いだ。
見る見る泡が立つのを見て思わず顔が綻ぶ。
お湯が溜るまで少しありそうなので今のうちにと替えの下着を取りにそっと寝室に戻り、遊馬が良く眠っているのを確認して再びスルリと部屋を抜け出した。

小さなワインボトルに入った入浴剤は香りもワインそのもので浴室に芳醇な香りが満ちていた。
十分に泡が立ったのを確認して軽くシャワーで身体を流すと恐る恐る泡の中に足を入れてみた。
泡になった部分が微妙にくすぐったい感じがしてすぐに温かいお湯に足が届く。慎重に身体を沈めてみた。
泡で満たされた浴槽に入り、手足を伸ばしてみると外国映画で見たヒロインのような気分になる。
思わず楽しくなってスイッと足を上げてみたり、浴槽の淵にうつ伏せに腕を組んでみたりしてみる。
「こういうのやってみたかったんだよねぇ」
泡を両手ですくってふうっと息を吹きかけて飛ばしたりして野明は暫くの間浴槽で遊んでいた。

寝返りを打とうとコロリと転がると肩口に肌寒さを感じて上掛けをグイッと引き寄せた。
その感触がいつもの布団と違うことに気づいて、『ああ、そうか』と思い当たる。
『寮じゃないんだっけ』寝起きのぼんやりした頭で考える。
自分が衣服を身につけていないことに気づいて一気に数時間前のことが思い起こされた。
『そうだ、俺 野明を・・・』と思ってはた、と気づく。
自分の右隣に居たはずの野明の姿はそこにはなく、布団も既に温度を失いかけていた。
慌てて半身を起こすと 放り投げた筈の衣類がきちんと畳まれてナイトテーブルの上に置かれていて一瞬、夢でも見たのかと思ったが自分の身体についた野明の残り香りがそうではないことを主張する。部屋の中に野明が居ないことを確認して手早く衣服を纏うとリビングの扉を開けた。
明かりの灯るリビングにもやはり野明の姿はなく、コテージから出たのかと不安になって玄関に向う。靴があることに安堵しつつも、どこに行ったのかと首を傾げてリビングに戻り洗面所の扉から明かりが漏れているのに気づいた。
パタンと扉を開けると浴室から楽しげな野明の鼻歌が聞こえてきた。
思わず安堵の息が漏れ、「野明」と声を掛けて浴室の戸を開けると泡風呂で遊んでいた野明がピキッと固まった。
目が合って数秒の沈黙のあと野明は思いっきり悲鳴を上げた。
「いやぁ、出てってよっ、遊馬の馬鹿ぁぁ!」
石鹸だの洗面器だのを手当たり次第に投げつける。
「わ、馬鹿、落ち着けって!」
「早く扉閉めて出てってぇ!!」
「分かった。分かったから物を投げるなっ」
勢い良く扉を閉めると ポムっと音をたててボディスポンジが浴室内に跳ね返った。
扉に背中を預けて、大きくため息をつく。
見つけたことに安堵して不用意に戸を開けたのはまずかったと思うが・・・先刻まで肌を重ねていた相手にこの態度はどうなんだよ、と聊か腑に落ちない感を受ける。
どちらにしても 自分だって汗は流したいしこのままここに居ても野明は絶対浴室に立てこもって出てこないだろう事は明白だった。
ここは前向きに一度着替えを取りにこの場を離れることにした。

泡で楽しく遊んでいると遊馬が「野明」と声を掛けながらいきなり扉を開けた。
吃驚して動作が止った。
自分の格好を見て一気に頬が紅潮して混乱のあまり思いっきり悲鳴を上げると「出てって!」といってその辺りにあるものを手当たり次第にポンポン遊馬に投げつける。
遊馬が出て行くまで ひとしきり騒いで閉まった扉に跳ね返ったボディスポンジがぽてっと床に落ちるのを見て投げるものが手元に無くなったこともあり漸く物を投げるのを止めた。
一気に疲れが押し寄せてきて泡の中に沈みこみそうになる。
先刻まで肌を重ねていた相手とは言え・・・いきなり入ってこられては堪らない。
先の感覚が鮮明に蘇って身体がゾクリと震える感じがした。
胸元に鮮やかに残った遊馬曰く『俺のもの』という印。
目に入ると『遊馬のもの』になったことを想起させる赤い花。
野明は、はぁっと大きくため息をつくと浴槽の淵に凭れ掛かった。
「悲鳴あげちゃったのは 拙かったかぁ・・・」
呟き、先ほど投げつけて物が散乱した浴室に目をとめた。
『遊馬、怒ったかなぁ・・・』
自分の行動に少し凹んでいると再び 洗面所の扉が開く音がした。
今度は先に外から声が掛かる。
「野明。俺もお湯使いたいんだけど?」
遊馬の発言に驚いて慌てて返事を返す。
「ごめん、すぐ出るから待ってて」
「いや 別に出てこなくてもいいんだけど」
「だってっ・・・出るよ。すぐ出るから!」
「泡風呂なんて俺が1人で入っても面白くないの!」
「・・・って 遊馬、私と入るつもりなの?!」
「他に誰がいるんだよ?」
「駄目っ、絶対駄目!私これ以上入ってたらのぼせちゃうもん。すぐ出る、出ます!」

暫く口論した後「野明の作戦負けだよな」と遊馬はくすくすと笑った。
野明はバツが悪くて フイッっとそっぽを向いてしまう。
それを見てニヤニヤと笑いながら正面に座って背を逸らす遊馬は意地の悪い口調で続けた。
「手元のもの全部投げて回収してこなかったら、次に投げるもの何にもないもんな?」
結局着替えを取りに出て行った遊馬は時を置かずして戻ってきた。
投げるものを投げつくしたのを知っていたのでそのまま扉を開けてシャワーを流すと浴槽に入ってきてしまったのだ。
幸いにも広いので野明が膝を抱えてしまえば遊馬が反対の端にいる限り触れなくてもいいくらい距離は取れる。
「出たければどうぞ、シャワー使えば?」
「・・・遊馬の意地悪・・・・」
野明が今、遊馬を直視できないことと、自身の肢体を見られることに躊躇しているのがわかるので強引に入れば逃げ場なんてないも同然、そのことに気付けは遊馬は結構強気だった。
浴槽の中にいれば辛うじて泡が身体を隠す、でも出てしまってはそうは行かないのだ。
「今更何言ってんだか」
そう言ってクスリと笑うと泡を掬い上げ、野明の方に向ってふっと吹き飛ばした。
「もう やめてよ」
小さくなってそっぽを向く野明に遊馬はすいっと顔を寄せる。
警戒して逃げようにも思い切り端に居た為によける場所などなかった。
あっさりと捕まってしまうと頸から肩に遊馬の両手が滑って思わず吐息が漏れた。
「さっきまで楽しそうに遊んでたのに、もうお終いか?」
「・・・あれは 1人だったからっ」
身を捩って逃げようとして下腹部の痛みに思わず顔を顰めた。
「痛むのか?」と遊馬が心配そうな顔を見せる。
「少し・・・」
正直に答えると遊馬は野明をそうっと抱き込んだ。
「・・・悪い、キツかったか?」
「あ・・・えと・・・初めてだったから」
「うん」
「でも 嬉しかったし、遊馬で。・・・だから、いいの」
真っ赤になった顔でいうと遠慮がちに遊馬の頸へ両腕を伸ばし肩口に頬を寄せる。
「それは光栄だな」
本気でそう思った。自分が一番手に入れたかった相手が自分を受け入れてくれる喜びは何にも変え難い。改めて野明を抱き込んでその肌の色に気づく。
風呂の温度はそんなに高くはない、この状況に照れて紅潮していることを割り引いても赤すぎはしないか?
元々野明の肌は白いから赤みが差しやすいにしても首に回された腕にも力が殆ど感じられない。
「おい、野明 お前風呂にどのくらい浸かってた?」
「・・・え? どのくらいって。わかんないな・・・・」
すこし ぼうっとした声で返事が返る。額をコツンとぶつけるとかなり高い温度を感じた。
湯温が低くて気づかなかっただけで、体力を消耗したところに長風呂したことで軽い脱水症状を起こしかけていた。
「ばか、お前。水って・・・ここには無いよなぁ・・・」
自分が押しかけたことで野明が外に出られなくなった事に思い当たり自己嫌悪に陥る。
「ああ もう!とりあえず出るぞ」
抱えて立ち上がろうとすると やはり野明の身体は力が抜けていてその上泡が滑って抱えにくい。
何とか浴槽から出すと上からシャワーを掛けて泡を落とし、バスタオルでくるむ。
そろえてあった着替えを渡し自分は手早く着替えを済ます。
野明に「自分で着れるか?」と聞くとコクンと小さく頷くのを確認して「なんかあったら呼べ!」といいのこしてキッチンに走った。
スポーツ飲料のボトルを手に戻ると野明は寝巻きの袖が上手く通せなくてもたついていて、慌てて手を貸した。
「とりあえず飲め」とボトルを押し付けるが野明は「欲しくない」と首を振った。
感覚がおかしくなっているのがわかる。
「いいから飲め。自分で飲まないなら俺が飲ませるけどいいのか?」
思わず言葉がきつくなる。
困惑した顔をした野明は諦めたようにボトルを手に取ると少しづつ飲み始めた。
その様子を慎重に見守る。半分ほど飲んだところで野明が ほうっと息を吐いた。
ボトルを一旦受け取り、リビングに連れて行くとソファに座らせ再びボトルを渡す。
「ちょっと片付けてくるから、ゆっくりでいいからこれ飲んでろ。何かあったらすぐ呼べ」
言い置いて浴室を片付けに向った。

ソファにすわって手にしたボトルを眺めながらゆっくりと喉を潤す。
ぼうっとしていていた頭が次第に意識を取り戻す。
傍を離れていた遊馬が「気分どうだ?」といいながら戻ってきた。
「ん、平気。また迷惑かけちゃってごめんね」
「酔っ払いの次は 脱水か?」
苦笑する遊馬に 「申し訳ありません」と神妙に謝った。
「いや、今回は俺も悪かった。ごめん」
野明の体調に配慮が足りなかったことを心底悔やむ。
小さく笑うと野明は「気にしないで」といって小さく首を振った。
「今週は遊馬に介抱されっぱなしだね」
「他のヤツがするよりいいさ、それ ちゃんと飲めよ」
「は~い、わかりました。頑張ります」
そういうと野明はボトルに残っていたスポーツ飲料を飲み干した。
ボトルを受け取り野明の身体をソファに横たえゆっくり髪を撫でると野明は安心したように少し目を閉じた。

暫くして野明の目を覗き込んで生気が戻っているのを確認すると「外 出てみないか?」と声を掛けた。
「外?」
「テラスがあっただろ。もうじき夜も明けるし朝焼け見ようぜ?」
「いいね。で、コーヒーでも飲むの?」
野明がくすくすと笑う。
「お前はまだ駄目。脱水起こしかけてるヤツがコーヒーとか紅茶飲むなよな、酒も論外!」
「じゃ 私なに飲むの?」
「水か 麦茶か焙じ茶だな」
「水しかないじゃない」
「じゃ、生理食塩水。作ってやろうか?」
「そんなものいらないって!」
「そんだけ言い返す元気が出てきたなら平気そうだけどな。スポーツ飲料もう一本持ってくか?」
「・・・水でいい」

「立てるか?」
声を掛けて遊馬が手を差し伸べる。頷いて立ち上がろうとすると下腹部がキリリと痛み野明は顔を顰めた。勢いをつけて立ち上がる。
キッチンで水のボトルとグラスに移したアイスコーヒーを調達してテラスに出ると二人並んで腰を下ろした。
夜風がひんやりとして心地よい。
空はうっすらと明るくなりかけていて夜明けが近いことを教えてくれる。
グラスを片手に野明の肩を軽く引き寄せると膝を抱えた野明が頭を遊馬の肩に寄せた。
暫くそのままぼんやりと空を見ていた。
空の色が急速に赤みを帯びてくるのを見た野明が「すごいね」と感嘆の声を上げる。
暗かった空が茜色に輝き、次いで黄金色が混ざり始めるとあっという間に空が白んできて辺りが朝靄に包まれ始めた。
「綺麗なもんだな」
「うん、あっという間に夜が明けちゃった。朝焼けって結構短いんだね」
「10分無いかもしれないな、綺麗に見える時間は」
辺りは濃い霧がたちこめ始めて周囲の木々の間を白く流れはじめている。

暫く黙って遊馬の肩に寄りかかっていた野明が不意に口を開いた。
「遊馬」
「なに?」
「・・・・呼んでみたくなっただけ」
触れて体温を感じているのに遊馬がこのまま霧の中に消えてしまうんじゃないかと不安になった。
キュッと遊馬のシャツを掴む野明の頭に顎を乗せるようにして遊馬がくすりと笑う。
「どこにも行いかないから、安心しろ」
「うん」
「お前こそ行くなよ?」
「行かないよ、それに・・・」
野明は小さく笑うと軽く胸元を押さえ遊馬に悪戯っぽい目を向けた。
「印つけられちゃったし?」
遊馬は軽く目を瞠る。
「言うじゃないか。ご希望なら首筋の目立つとこにもつけようか?虫除けにはなるぜ」
「だめ。見えないところがいいんだよ。秘密って感じがして」
「秘密ねぇ、ま いいけどさ」
にっと笑った遊馬は野明の顎をクイッと持ち上げるとそのまま唇を重ねる。
優しく少し長めのキスを交わしてそっと唇を離す。
「俺の」
「私の」
2人で顔を見合わせてひとしきりクスクスと笑った。

「さて、そろそろ中入ろうぜ。コーヒー淹れてやるよ」
「もう飲んでいいの?」
「そんだけ元気なら大丈夫だろ、倒れたらまた面倒見てやる」
「頼りにしてるね」
野明を支えて立ち上がると部屋に続く掃き出し窓に向う。
夜はもうすっかり明けて空は朝の明るさに満たされていた。

to be continue...

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追記

ええと・・・遂に遊馬 手をだしちゃいました (〃_〃)ゞ
うまくかけない・・・読むのは大好きなんですが(←おいおい!)
頓挫して何度か投げ捨てそうになりましたよ。
書き出すとかなり公開に勇気が要りそうな方向に走りかけ、自分がビビって幾つか削ったネタもあり・・・(笑)
艶物は読むのは好きですが書くのは苦手!ということがはっきりしました(^^;
結果 えらい半端な表現になりましたが今ここが限界でしょうっ、自分! ヽ(+▽+)ノ・・・キュゥ
あと一泊二日で東京に帰れます・・・・
ああ 長い・・・4日とか言わなきゃ良かったぁぁぁ(←かなり後悔・・・・)
入浴剤一緒に使わないの?というご意見も多々あったので 一緒に入れてみましたが結果 野明のぼせて倒れました(笑)
長風呂ってちゃんと水分とっておかないと危ないですよね、というわけで今回はここまでで(^^;

お時間ありましたら一言なりとご意見ご感想などを戴けますと頑張ろうという、糧になります(笑)
単純なので読んでくれる方がいてくださると思うと気合が乗ります☆ 
長くて進まない駄文ですが何とか完結させたいと・・・努力してます~(笑)

では次回ものんびりマイペースに更新して行こうと思いますのでどうぞ宜しくお願いいたします。

軽井沢編9 枕話

軽井沢編 第9弾です

えっと 暑さで溶けそうな頭で書いたためか よく分からない展開になってきました(^^;
自分で自分の首を絞めてる感じがしてますが・・・
前回から一週間 なんとなく週一更新になりつつある軽井沢ですが 頑張りますので宜しくお願いします~☆
まったく時間の進まない話でごめんなさい~(T∇T)

長くて完結はまだ先になりそうですがもう少し続く予定ですのでよろしければもう暫くお付き合いくださいませ~

以下本文

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枕話
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甘い薔薇の香りが鼻を擽り、うっすらと目をあける。
遊馬は無意識のうちに眠っていたことに気づいて頭を軽く振りながら半身を起こした。
体から滑り落ちたブランケットが腰付近に重なり低い山を作る。
目の前には寝巻きのままローテーブルの上に両腕を組み額を乗せて眠る野明がいた。
「まったく 自分が湯冷めするだろうが」
自分に掛けられたブランケットを手にしてやれやれと小さく笑う。

「野明 起きろ。風邪引くぞ」
横着をしてソファから下りずに寝そべった状態で野明の肩を揺すると小さな呻き声をあげて野明がうっすらと目を開いた。
「ん…遊馬?」
軽く身体を伸ばして遊馬の方に頸を巡らせると思いの外近い位置で互いの瞳を見ることになった。
今一つ焦点の定まらない瞳の野明に自分にかけられていたブランケットを掛けてやると野明はくるりと向きを変えて遊馬のいるソファに凭れ掛かり彼の胸元に頭をつけるようにしてもう一度目を閉じた。
遊馬はその髪を優しく撫でてやりながらゆっくりと足をソファから下ろすとブランケットごと野明を抱き込んだ。一瞬驚いたように目を開けた野明はすぐに穏やかな顔で目を閉じると遊馬に身を任せる。
その髪や首筋から仄かに香る芳しいバラの香りが心地よかった。
「いい香りがする」
肩口に鼻を寄せるとくすぐったそうな顔をした野明が「遊馬は遊馬の香りがするね」と言ってくすりと笑った。
「俺の香り?そういえば野明、時々そんな事言うな。でも俺、風呂上りだし、コロンも何もついてないぞ?」
首を傾げる遊馬の顔に ちらりと目線を移すと野明は微かに笑みを浮かべて目を閉じる。
「でも するの、遊馬の香り。なんだかホッとするんだよ」
遊馬は眉間に軽く皺を寄せ、「そうか?」といいつつ嗅覚に神経を集中して『自分の匂い』を探そうとしたが上手くいかなかった。
集中したことで却って薔薇の香りを強く意識してしまい自分の胸元に居る野明が気になってしまった。
「野明、寝るならこんなところで寝ないでベッド使え。寝違えるぞ?」
思わず命令口調になってしまったことに自分でも焦る。
「うん わかった」
野明は胸元につけていた頭をそっと離し少し名残惜しそうな顔をした。
「んな顔すんな。なんなら 添い寝してやろうか?」
照れ隠しも手伝って冗談めかして言うと、野明は思いがけず真面目な顔をして口元に軽く握った左手を添えて逡巡する。困ったような笑顔を向けるだけで答えを返すことはなかった。
『ばか』とか『なにいってんの?』みたいな言葉で流されると思っていただけにこの反応に軽く動揺したが 出来るだけ顔に出さないよう努めた。
暫しの沈黙のあと遊馬が先に立ち上がり「いこうぜ」と声を掛け、寝室へ向うよう野明を促すと思いの他あっさりとそれについてきた。
野明が奥の掃き出し窓のそばにあるベッドに向おうとしているのをみて遊馬が声を掛ける。
「こっち使えよ、そっち朝すげぇ 眩しいぞ?」
「でも、悪いから。昨日もかわってもらったし、遊馬ちゃんと寝てないじゃない」
「俺もそっちは使わない」
「じゃあ・・・あそっか。トランドルベッド出せばいいね。私そこに寝るよ」
名案、とばかりに格納されたベッドを引っ張り出そうとする野明を遊馬は膝を掬う様にしてひょいと抱え上げ、ぽんっベッドの上に置くと、半端に引き出されたそれを足で元の位置に蹴り戻した。
吃驚している野明に向って すいっと顔を近づけると「こっちで一緒に寝ようぜ」と声を掛けた。
「本気?」野明は動揺して顔を真っ赤に染めて聞き返す。
「さっき、嫌だって言わなかっただろ?」
「え・・あ・・うん 言わなかった・・・けど。でも・・・」
「なんだよ、嫌なのか?」
「あの えっと・・そうじゃ・・ない・・・。ないんだけど・・・」
顔を真っ赤にして動揺している野明に半ば呆れて思わず半眼になる。
「ばーか。添い寝したからって無理にどうこうしたりしねぇよ。さっき寂しそうな顔してたから訊いたの。嫌なんだったらあんな顔すんなよな?変な誤解されるぞ。」
「・・・私、そんな顔してた?」
赤い顔のまま上目遣いで様子を見る野明に軽くため息を吐く。
「してたよ、少なくとも俺にはそう見えた。ま、いいさ。無理強いは趣味じゃないんだ。でもお前そんな顔 あちこちですんじゃねぇぞ?いつも無事ですむわけじゃないんだからな。」
そう言って髪をくしゃっと撫で、くるりと背を向けようとした遊馬を見て野明は反射的に彼のパジャマの袖口を掴んだ。

野明の頭を撫でて反対側のベッドに移動しようと足を踏み出した途端、袖口が引かれた。
振り返ると、まるで捨てられた子猫みたいな目で自分を見上げる野明が右手で遊馬の左袖口を掴んでいた。
「いっちゃやだ」小さな声でぽつりというとそのまま下を向く。
「遊馬、やっぱり・・・」
そう言って言葉が止る。そのまま黙っていると袖を掴む野明の手が小さく震えているのが分かって遊馬はその手に自分の右手を添えると、やれやれという様に小さく笑う。
「わかった。言わなくていい」
野明の前に立つと彼女の頭を自分の胸元にぐっと引き寄せてから「じゃ、寝ますか」と声を掛けた。

セミダブルのベッドは2人で寝るには若干狭い気がした。
野明はかなり小柄であるのに並んで寝るには狭さを感じて結局遊馬が野明を抱き込むような形に落ち着いた。野明は少し落ち着かない様子で体の向きをくるくると変えるのでその度に髪と仄かな薔薇の芳香が遊馬を擽った。
「眠かったんじゃないのか?」
一向に落ち着く様子を見せない野明に呆れたように声を掛けると野明は困ったように笑った。
「なんだか眠気が飛んじゃったんだよね」
『まあ そうなんだろうな』と内心思いつつ「なら、またリビングにもどるか?」と訊くと野明は恥かしそうに首を振ると「ここでいい」と言って笑った。

結局野明はうつ伏せの状態で枕を抱え込むという姿勢に落ち着いたらしくそのまま遊馬の方に顔を向けた。
「ね、何か話して」
「何かって・・・ずいぶん漠然とした注文だな」
照明の押えられた室内で至近距離に互いの顔を見ながら話すのはちょっと新鮮な感じがする。
自然声のトーンも下がり遊馬も首だけ横を向くのに疲れて片肘を立て頬杖をついた。
空いた手で野明の髪を撫でる。
話題が特に浮かばないので「なんか聞きたいこと あるのか?」と訊いてみた。
野明は少し考えてから口を開いた。
「遊馬の小さい時のこととか訊いてもいい?」
「小さい頃? いいけど、あんまり面白い話ないぞ。」
「うん。でも聞いてみたいなぁって」
遊馬は暫く考えるように目を閉じてからゆっくり話し始めた。
少し話しては野明の問いに答える。その内に、こんな風に穏やかな気持ちで母や兄、祖父のことを考えたり、思いだしたりして、人に話せていることに驚いた。
父のことに触れないのは野明なりの気遣いなのだろう。
お陰で心がささくれ立つような感覚を味わわずにすんだことにホッとした。
野明は穏やかな表情で話をきいていて、途中から野明に乞われて話しているのか、自分が話を聞いてもらっているのか分からなくなった。
母や兄に対する負い目とか嫉妬とかそういうものにまで言及したことに少し後悔したが野明の表情は穏やかなまま変わることはなかった。

話が一段落すると野明は遊馬の頬に手を伸ばしてにこりと笑う。
「遊馬。自分のこと好き?」
唐突な質問に驚いたが少し考えてから苦笑交じりに答える。
「どうだろうな、面倒臭いヤツだし冷たい男だし。」
野明はそれを聞いてくすりと笑い、その顔を正面からピッと視線を合わせて見つめた。
「でもね、それをひっくるめて『篠原遊馬』なんだよ。」
吸い込まれそうに真っ直ぐな色素の薄い青みがかった瞳。
それが不意に 閉じられると遊馬の額にほんの一瞬温かい唇が触れて離れた。
「いいことも悪いことも、悲喜交々。今までの人生、何が欠けてもこの『遊馬』にはならない。私の大好きな『篠原遊馬』にはね」
そういうと再び枕を抱きしめてうつ伏せになった。
遊馬は 軽く息を吐きながら微かに笑う。
「お前ね、この状況でそんな態度とったら無事でいられなくなっても知らねぇぞ」
野明の身体を自分に向けると軽く抱き寄せる。
野明は抗うことなく遊馬の胸に収まった。
額に唇を落としながら野明に囁く。
「なぁ、俺のものにならないか?」
「遊馬の?」
クルリと野明の視界が回り、顔の脇に両腕をついた遊馬が覆いかぶさるようにして自分を見つめていた。
野明は遊馬と視線を合わせると迷うように少し目線を外す。
「嫌なら無理強いはしない」
真剣な眼差しの遊馬に野明は眼を逸らしたまま小さく首を振る。
「嫌・・・じゃないの。でも・・・」
野明は頬を染めて困った顔で答えを紡ぐ。
「でも?」
「私 こういうの全然・・・」
拒絶されなかったことに遊馬は安堵の息を漏らし、羞恥で顔を朱に染める野明の言葉を遮るように彼女の頸の後ろに手を差し入れてクスリと笑った。
「心配しなくていい。俺が教えてやる」
野明の唇に自分の唇を重ねるとそのままその身体を抱きこんだ。

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追記
うわ~ どうしようヽ(+▽+)ノ・・・
遊馬 手を出しそうな勢いですよ?!
自分で書いていて物凄く困ってます
前向きに話を進めようと思ったらいきなり加速つき始めてる気がするんですが どうしましょう?!

お時間ありましたら一言なりとご意見ご感想などを戴けますと逃げないように頑張ろうという、勇気がでます(笑)
読んでくれる方がいてくださると思うと気合が入るので☆
展開が展開になってきてしまったので 「逃げちゃ駄目だ」を何度となく呟きつつ(^^;
何とか完結させたいと・・・努力します~(笑)

では次回ものんびりマイペースに更新して行こうと思いますのでどうぞ宜しくお願いいたします。

軽井沢編8 芳香

軽井沢編 第8弾です。

前回更新から 既に一週間。
皆様のコメントに支えられて何とか逃げずに書き続けてます☆
先日アップロードに失敗して原稿を喪失してから早2日・・・
なんとか残っていた途中までのデータにつけたしして体裁を整えてみました。
掲示板のメモ機能で続きを書いていたのが敗因でした(T∇T)
最近のスパムメール対策でちょっとデータを弄ったらうっかりUPロードデータを無条件に破棄するようにしてしまい悲鳴を上げましたが時既に遅し・・・

「消えたデータは・・?」という榊班長の声が自分の心から聞こえてくるようでした(T∇T)
ローカル作業ならともかくCGIにUP LOADした状態でマスターを保存していたのでどうしようもありません・・・アーカイブから綺麗に抹消されていました<(TOT)>
今回の教訓。
バックアップはローカルで。はい、反省します(゜ーÅ)

さてさて子供が午前保育に入ってPC時間がますます短くなっております。
物凄く早く帰るので午後公園に行ったりするともうあっという間に夕方に。
上手く時間配分しないと自分の時間がなくなってしまいますね~
これから夏休みに入るとどうなるのか、ちょっと考えないと!

冒頭にも書きましたが最近は各種掲示板にスパムが入ってくるようになってその対策にもおおわらわで悲しいことにサイト巡りも儘なりません・・・掲示板の処遇も本気で考えたい感じですね(^^;

話は変わりまして今回、前回の甘さをまだ引き擦っていたので 読み直すと物凄く気恥ずかしくて書き直しに何度も挫折しそうになりました(^^;
日々ちょっとづつ書いていた部分と消失したため急遽補完した部分がありで最初と最後で文体が違う気がしますが修正するのにもう一度読み返すと全部書き直したくなりそうなのでこのままで。流石に3回目は無理!(^^;
やっぱり相変わらず、のんびりした時間経過です。
とても焦れったい展開ではありますが温かく見守っていただけますと幸いです。

長くて完結はまだ先になりそうですが時間的には漸く折り返し点に到達です。
もう少し続く予定ですのでよろしければもう暫くお付き合いくださいませ~

以下本文

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芳香
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車でコテージに戻る道中、野明は『何となく遊馬の顔が見辛いな』と感じて落ち着かない気分を味わっていた。
遊馬の顔を見たいけど、見れない。
ふとした弾みに遊馬の方に目線を向けてしまうのだが、視界に遊馬の姿を捉えると先刻の事を思い出してしまい居た堪れない気分になって慌てて目を逸らすということを何度と無く繰り返していた。
顔が火照っているのが自分でもよく分かる。
外が暗くなっている為に顔色が見え辛いことが僅かな救い。
無意識に己が唇に指を添えているのに気づいて慌ててその手を膝に置きなおした。

車をコテージに向けながら隣席の野明が先刻から傍目にも明かな程、挙動不審になっている事を遊馬は承知していた。
もじもじとした様子で落ち着き無く視線を彷徨わせ時折、こちらを窺っては慌てて視線を外す。
暗さで顔色がよく分からないが様子からして真っ赤になっているだろう事は容易に想像出来た。この反応に少し引っかかるものがあって遊馬は野明に声を掛けた。
「なぁ、野明」
「な、なに?!」
若干上ずった声で返事が返ってくる。
何となく予想が外れていなさそうだと確信する。
「もしかして お前初めてだったのか?」
「ええ? あっと・・・何が?」
明かに目を逸らし挙動不審さに輪が掛かるのをみて『聞くまでも無かったか』と思ったがここまで言ってしまって引っ込めるのも何かと思う。
「キス」
短く答えると、野明は思い切り動揺してもじもじと手を組み合わせて視線を彷徨わせ、こちらを上目遣いで窺っては、また目線を外す。
『やっぱりな』と思い一瞬こちらの視線も宙を泳いだ。
軽い溜息を聞きとがめた野明が小さな声で抗議した。
「・・・悪い?初めてだと。」
「いや?別に。人其々だからな」
「じゃ どうして・・・」『そんなこと聞くの?』と続けようとした野明の言葉を遮るように遊馬が言葉を継いだ。
「物凄い動揺してるからさ、今。さっきは全身ガチガチになってたし?」
野明はあからさまに動揺して口元に手を添え目線を逸らした。
「だって・・・」
「別に悪いとは思ってないさ。いいんじゃね?たださ・・・」
「何?」
「いや、何でも無い」
『あのキスでこれだけ動揺するなら、これ以上手を出したらこいつどうなるんだ?』と遊馬は心の中で小さな溜息をついた。
「そこまで言って何も無いって言われても・・・」
野明は不満げに顔を顰めた。
「聞きたいなら言ってやってもいいけど、聞いて居た堪れなくなるのは野明のほうだぜ、多分」
それを聞いた野明は目を丸くして動きを止めた。
「・・・じゃ、いい」
その様子が可笑しくて遊馬がクックッと笑う。
「知りたきゃ後で教えてやるよ」
野明はちょっと拗ねたような顔をしてフイっと横を向いた
その顔はやっぱり少し赤く染まっていた。。

程なくコテージに帰り着き、買った物を中に運び込むと遊馬は凝りを解すように肩を回してキッチンに向かう。
「一息入れようぜ。コーヒーでいいか?」
「私さっき買ったティーバッグにする」
「了解。じゃ お湯沸かすか。」
薬缶を火に掛け、その間に2人で買ったものを振り分ける。
殆どが野明のもので靴、洋服、その他雑貨を袋から取り出して紙袋をパタパタと畳んでいく。
「袋から出すとこれだけなのにね」
「紙袋って嵩張るんだよな」
遊馬が呆れたような目を向けたが野明は品物を改めて眺めながら楽しげな様子を見せる。
「こんなに買い物したの凄く久し振りだなぁ」
「たまにはいいんじゃないか?」
野明は袋の中からハーブティを発見するとキッチンに運ぶ。
数種類のフレーバーがアソートになっている箱を開け「どれにしようかな」と物色し、程なくひとつを取り出すと残りをテーブルの隅に置いた。
お湯が沸くまでまだ少し掛かりそうだった。

少しの沈黙の後 野明が口を開いた。囁くような小さな声。
「あの・・・遊馬。さっきさ、その・・・『好き』って言ってくれたでしょ?」
「言った」
「あれって・・・深い意味だと思ってもいいの?」
遊馬は少し間を置いて慎重に言葉を選ぶ。
「そうだな、『深い』って野明が何を指してるのかにもよるけど。俺は野明を好きだよ。パートナーとしても人としても、それから女としても。さっきの『好き』は特に『女として』に重点を置いた心算で言ったんだけど。答えになったか?」
「・・・なった」
頬を染めて目を逸らす姿は職場ではちょっと見られない女の子っぽさがある。
「で、野明はどうなんだ?」
「私?」
「俺、野明の返事聞いてない。配役貰っただけでさ」
ニッと笑って覗き込む遊馬の顔はちょっとだけ意地悪で思わず視線を外してしまう。
「えっと あのね・・・」
「俺のこと好きか?」
コクリとうなずくと意地悪な笑顔そのままに聞く。
「『深い意味』で取っていいのか?」
顔が熱くなっているのを自覚して俯き加減にもう一度コクリと頷くと、遊馬が耳元に唇を寄せた。
「なら、俺の顔見てちゃんと言って。野明の声で聞きたい」
野明の頬に手を添えて自分の方に向き直らせると真っ直ぐに視線を合わせる。
居た堪れなくなって野明が目線を彷徨わせると「こっちみろよ」と言って空いた手で野明の肩を引き寄せた。
真っ赤になってもじもじしている野明の耳元にもう一度「言って」と畳み掛ける。
野明は観念したように大きく息を吸い込むとゆっくり息を吐き出して呼吸を整えた。
顔を上げ遊馬の顔を下から覗き込むように見上げる。
「遊馬が、好き。パートナーとしても、人としても。それから・・・異性としても」
遊馬の答えに準えるように答えを紡ぐ。心臓が飛び出しそうなほどドキドキして顔を逸らしたいのに、頬に添えられた遊馬の手がそれを阻んで野明は目線を少し外すようにして後を続けた。
「だから傍にいて。遊馬」
言い終わるか終わらないかのうちに遊馬の顔が凄く近くに寄ってきて今まで聴いた中で一番優しい声が聞こえた。
「望むだけいてやる」
声の心地よさに思わず目を閉じると遊馬が優しく唇を重ねた。
触れるだけの啄ばむようなキスを数回繰り返したあとゆっくりと優しく野明の唇を塞いだ。
先刻よりも長く甘いキスに野明の体から力が抜けかかる。
更に深いキスに移行しようと遊馬が野明の唇を割ろうとした時 火に掛けていた薬缶が音をたてて沸騰を知らせた。
完全に注意を持っていかれた二人は我に返ると身体を離す。
「あ 遊馬、お湯沸いた」
焦る野明に「ああ」と生返事を返し遊馬が火を止めるとカタカタと鳴っていた薬缶の蓋が動きを止めた。
微妙な雰囲気が流れ自分に背を向けた野明が挙動不審になっているのをみると遊馬はクスリと笑い、背後から野明の耳元に囁いた。
「続きは後でな」
「つ・・続きって・・・」
動揺して真っ赤になっている野明を尻目に沸いたお湯をカップに注ぎ野明の出していたティーバッグを放り込むと「ほら」といって傍に置く。
「適当なとこで取りださんと渋くなるぞ」
言いながらカップにセットしたドリッパーに慎重にお湯を注ぐとコーヒーの香ばしい香りが辺りを漂い始め、自分が妙に上機嫌なことに気づいた遊馬は口の端に笑みを浮かべた。

野明の手にしたカップからレモンジンガーの甘酸っぱい香りが漂う。
ハイビスカスが入っているのでとても綺麗な赤い色をしたハーブティで仄かな酸味が心地よかった。遊馬の手にはブラックコーヒー。
各々自分のカップを手にリビングのソファに腰掛けてTVのニュースを見ていると妙に寛いだ雰囲気になって可笑しかった。
笑えるような内容ではないニュースの場面で野明がクスクスと笑うので遊馬は口元にカップを宛がったまま怪訝な顔で野明を見遣る。
「どうした?」
「不思議だなぁって」
尚もクスクスと笑い続ける野明に首を傾げカップを置いて向き直る。
「何が?」
「今、こうしてるのが。物凄く普通に寛いじゃってるのが可笑しくて」
「何か変か?」
「変っていうか・・・妙?・・うーん、ちょっと違うなぁ」
腑に落ちない顔を見せる遊馬に野明はますます可笑しくなった。
「私ね つい2日前には遊馬とこんなに長く2人で居ることになるなんて思ってなかった」
「そりゃ まあそうだな。俺も思ってなかった」
「なのにね 今物凄く落ち着いちゃってるの」
軽く目を閉じて組んだ両手を左頬にあて『幸せ一杯』とでも書いてありそうなうっとりとした顔を見せる。
「そりゃ良かった」
軽く笑うと遊馬も確かに落ち着く気がした。
それは気持ちが通じた安心感も幾分影響していることは確かで遊馬は野明の顔を覗き込んでその額に唇を寄せた。
「ちょっと遊馬?」顔を朱に染めた野明が気恥ずかしさから思わず顎を引いた。
「遊馬がキス魔だとは思わなかった」
「俺も思わなかった」
2人で顔を見合わせてクスクス笑う。
「とりあえずさ、夕飯作っちゃわない?あんまり遅くなっても困るから」
「じゃ、そろそろはじめるか」
各々手にしたカップの中身を喉に流し込むとキッチンに向かった。
並んで料理を作る、それだけのことが妙に楽しい、と感じる。
それ自体は職場の食事当番の時にもしている事なのでひろみちゃんがいないことを除けば何も目新しいことが有る訳でも無い。
特に何か言わなくてもメニューさえ決まれば慣れた物でお互いが自分の仕事を暗黙の了解で行える。
買ってきた材料を並べて作業に掛かる。
「クリームパスタにする?、それともグラタンにする?」
材料が殆ど変わらないメニューをあげて遊馬に伺いを立てる。
「グラタン。職場で食べないものがいい」
「はいはい」
そういうと野明はクリームソースを作るべく小麦粉とバターを炒め始めた。

小一時間かけてグラタンを作りサラダと一緒にテーブルへ運ぶと遊馬が冷やしておいたビールを取り出してきた。
2人で向かい合って今作ったばかりの食事を摂っていると野明がふと思い出したように呟いた。
「ね、あと二日で東京に帰るんだよね。」
「何事もなければな。なに、帰るの嫌になったか?」
微妙な顔を見せる野明に にやっと笑って応じる。
「そんなんじゃないけど。遊馬と2人でいるのもいいなって」
「そうか?普通のホテルに投泊していたらまた雰囲気が違ったかも知れないけどな」
「かもね。でも一緒にご飯作ったり出来るし、気兼ねがない分こっちの方がきっと楽しい」
「そりゃ 来た甲斐があったな」
「うん、ありがとう遊馬」
「どういたしまして。お礼は帰りに纏めて訊くさ、まずは折角作ったんだから冷めないうちに喰っちまおうぜ」
「うん」
ゆっくりと楽しく食事を進めて食べ終わる頃には2人ともビールで軽いほろ酔い気分を味わい、目が合うたびにクスクス笑う野明を遊馬は妙に穏やかな気分で眺めていた。

食事を終えて片付けが一段落すると野明は買ってきた入浴剤をテーブルの上に並べて「どれにしようかな~」と楽しげに物色し始めた。
「あ そっか。使いたいって言ってたな」
遊馬も横から覗き込む。
「遊馬 先にお風呂使う?」
「なんで?それ使いたいなら野明が先に入ればいいだろ?」
遊馬が首を傾げる。
「だって こういうの嫌だったりしない? バラとかラベンダーとか香りがするのばっかり買ってきちゃったし。泡のとか楽しそうだけど遊馬の後の方がいいかな、って」
「別に俺は野明が気にしないならいいけど。でも先にしないと泡は立たないぞ?」
きょとんとしている野明に苦笑しながら答える。
「説明、読んでみろよ。お湯を注ぐ勢いで泡立てるんだから後から入れてもこういうのは泡にならないの。俺が先に浴槽にお湯を溜めたら少なくとも泡風呂はつかえないぞ?」
「そうなんだ」
感心したようにいいながら裏書を読むと確かにそう書いてある。
「遊馬 詳しいね・・・」
「買うときに説明見てたら分かることだろ、見なかったのか?」
「みてなかった」
「迂闊だなぁ」
遊馬は野明の頭を軽く叩く。
「先に入っていいなら行くけどいいのか?」
遊馬が訊くと野明はコクリと頷いた。
「うん いい。泡じゃないの選ぶから」
「そうか?じゃお先」
遊馬は着替えを取りに席を立った。
「ごゆっくり」
野明が声をかけると遊馬は後ろ手にヒラヒラと手を振ってそれに答えた。

遊馬が去って野明は机の上に並んだ入浴剤から泡になる二つを外して残りの4つを見比べた。
ラベンダーの香りのバスエッセンスに ローズオイル。ラズベリーの香りの入浴剤に、蜜柑の香りのバスソルト。
悩んだ挙句にローズオイルを選択し自分の着替えを取りに寝室へ向かった。
寝巻きと着替え一式をもってリビングに戻ってくると湯上りの遊馬が寝巻きを羽織って出てきたところだった。
石鹸の香りが微かに漂うのにすこしドキリとして急いで踵を返し「じゃ 行ってくるね」と浴室に向かった。
まず湯船に近づいて持ってきたローズオイルのケースを開けるとくるりとひっくり返す。プニプニしたボール状の入浴剤がコロコロと湯船に浮かんだ。
一旦脱衣場に戻ってケースを破棄していると 何ともいえない薔薇の香りがふわぁっと広がってきた。
あまりの香りに嬉しくなった野明はぱたんと扉を開けた。
「あすまぁ!ねぇねぇ すっごいよ。」
嬉しそうな声にTVを見ていた遊馬が振り返ると野明が手招きしている。
開いた扉からは薔薇の芳香が広がっていて何を言わんとしているかは察しがついた。
それでも『付き合ってやるか』、と腰を上げて「どうした?」と声を掛ける。
嬉しそうに浴槽の傍まで遊馬を連れてくると、「ね すっごいいい香り!」と仄かに薔薇色になったお湯を示す。
「すごい香りだな」
「でしょ? ちょっとゆっくり入っててもいい?」
「ご自由に」
「じゃ、あとでねっ」
野明に背中を押されて今度は追い立てられるようにリビングに戻ると再びTVに目を戻した。
部屋にはまだ薔薇の香りが残っていて遊馬は「なんだかなぁ・・・」といいながらソファで大きく伸びをした。

遊馬をリビングに追い返してからぱたぱたと洋服を畳んで浴室に入ると噎せ返るほどの香りが広がっていた。
大きく息を吸い込んでみると鼻に抜ける香りも馨しく嬉しくなる。
湯船に浸かるとオイルが入ったお湯がすべすべと肌に心地良かった。
少し温度の下がった香りの良いお湯にゆっくりと浸かっていると心地よさから少し眠気まで襲ってくる気がする。
とはいえここで眠ってしまうわけにはいかないので軽く頭を振って目を覚ましシャワーの栓を捻った。

入浴を終えてリビングに戻るとソファで転寝している遊馬が目に入った。
そっと顔を覗き込むと思いのほか、良く寝ていて野明は少し考えて寝室からブランケットを運んでくると遊馬の身体にそっとかけた。
手すりに腕と頭を凭せ掛けて無防備な顔をして眠る遊馬を見て、胸の奥がきゅんとする。
そのまま すっと顔を寄せると遊馬の額に一瞬だけそっと唇を寄せた。
顔が赤くなるのを感じてすぐに踵を返し、キッチンに向かうと冷蔵庫からお茶を取り出しコクリと一口飲んで鼓動を落ち着けた。
『キス魔なのは遊馬だけじゃないかも』
自分の行動に動揺して落ち着かなく宙に視線を彷徨わせる。一度 大きく息を吸い込んで気を落ち着けようとゆっくりと深く息を吐き出した。
遊馬の眠るソファの傍に戻ると前に置かれたローテーブルに頭を凭せ掛けて軽く目を閉じた。
ひんやりした机の温度が気持ちよくて野明はそのまま引き込まれるように眠りに落ちた。

to be continue...

=============
追記

焦れったさ炸裂ですよねぇ、こんな感じでごめんなさい(゜ーÅ)
前回の余韻からかものすごいベタベタカップル状態。
でも進展してないのはどうしてなのか(^^;
この先どうしようか・・・今から考えます(笑)
えっと 前向きに。

お時間ありましたら一言なりとご意見ご感想などを戴けますと頑張ろうという、糧になります(笑)
単純なので読んでくれる方がいてくださると思うと気合が乗ります☆ 
長くて進まない駄文ですが何とか完結させたいと・・・努力してます~(笑)

では次回ものんびりマイペースに更新して行こうと思いますのでどうぞ宜しくお願いいたします。

軽井沢編7 撤回

軽井沢編 第7弾です

吐くほど甘い・・・
まさにそんな状態で(^^;
読み返すのすら恐ろしくて誤字脱字があったらこっそり指摘してください☆
やっぱり時間は進みません(笑)
何故サックリすすまないのか。きっと私が纏めるの下手なんですよね、精進します~
さて とても焦れったい2人ではありますがそれでもいいよという方は是非どうぞ(^^)
長くて完結に程遠いですが宜しくお付き合いくださいませ~

以下本文

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撤回
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車は草津方面に向かって走り出した。
野明はきゅんとする感じが止らなくて『遊馬の方をちらりと見ては視線を逸らす』を繰り返していた。
遊馬はそれに気づいてはいたものの何と声を掛けたら良いのか思い厭ねて結局黙ったまま車を走らせた。
20分弱で車が目的地についたとき、遊馬は野明に「ついたぞ」と声を掛けて先に車を降りた。
助手席側にまわると野明が降りて来てきて遊馬は野明の手を引いて建物の方に向かった。

野明は初めて目にする変わった形の建造物に思わず目を奪われた。
夕方になって空が深い青みを帯び地平の裾野に朱の色を残す黄昏時、その建物は中からオレンジ色の温かい光を放っていた。
丁度、建物を真横から見る位置に立っていた野明からは不規則な大きさと傾斜角をもった薄い石の板の間に挟まれたやさしい色の光を透過するガラスがミルフィーユのように何層にも横に連なっていてそれが危うい微妙なバランスを保っているように見えた。
ドミノ倒しの途中を見るような不思議な光景。
それが夕闇に浮かび上がってとても幻想的だった。

野明が息を呑んでその光景を見つめる姿を満足そうに眺める。
「綺麗だろ?」
「うん。すごく綺麗」
「入り口、向こうなんだ。入れると良いけどな」
そういうと野明の背中を軽く押し建物に向かって歩く。
程なく正面に到着すると先程とは随分印象が違って見えた。
石で出来た巨大なアーチが段々と大きさを増して少し角度をずらしながら連なる洞窟の入り口のようなデザイン。
けれどそれはどこか厳かで凛とした空気を放っていた。
遊馬は野明を伴ってそのアーチの入り口に歩を進める。
数メートル入るとそこには木の扉と明るく灯されたオレンジの電球があってその手前はぐるりと一周アーチ状にガラスが嵌め込まれていて外が見えた。
『これがガラスのミルフィーユの中』と妙に感心していると遊馬が木の扉を開いた。
中はとても不思議な空間で何層もの石のアーチとガラスのアーチがやはり不規則に配置され、ラインに沿って無数にはめ込まれたガラスにあしらわれた半月形の透かしが光の微妙な揺らぎを作っていた。
石とガラスの回廊。そこを少し進むと急に天井がぐんっと高くなり左右に分かれた木のベンチと正面には3段ほどの階段と祭壇。左から大きく張り出した不思議な形状の石と木でできた記帳台。
正面に大きく抜けるアーチ型の解放口に風除けのように置かれた石の衝立。
建物の壁には緑の蔦植物が茂り、どこかの遺跡の中にいるようだった。

「教会?」
遊馬に問いかける。石とガラスで出来たそこは思いがけず声が響いて野明は声を潜めた。
「ああ、凄いだろ?」
あたりをゆっくり見回す遊馬に倣って野明もぐるりを首を巡らせた。
「物凄く神秘的だね」
時間も手伝って幻想的に見える石組みの教会。
「『石とガラスで作られた世界でも希少な教会』なんだそうだ」
「へぇ・・・」
「自然をテーマにしたらしいから、風も抜けるし、石壁には水も伝えば緑も茂る。昼間はガラスがふんだんに使われているから太陽光も降り注ぐ。なんかこう厳かな感じしないか、宗教に興味があるわけじゃないんだけど」
「そうだね。なんだか物凄く神聖な気持ちになる」
この場所のもつ神秘的な空気と微かな緊張を含む静謐な雰囲気。華美な装飾など何も無いこの空間にはそれ故になにか神々しいものが宿っていそうな気さえした。
遊馬を振り返ると神妙な面持ちで建物を眺めている横顔に目が留まる。
またトクン・・・と心臓が音をたてた気がした。
きゅっと胸が締め付けられるような感じがして目を逸らそうとしたときに振り返った遊馬と目が合ってしまった。
不思議そうな顔で「どうした?」と問いかける声を聞いて思わず遊馬の胸にぽんと身体を預けた。
『遊馬の匂いがする』その香りに思わず気が緩む。安心をくれる香り、軽く目を閉じると遊馬の心音が聞こえた。その音が心地よくて暫く遊馬の胸に頬をつけてじっと聴き入っていた。
『遊馬が大事。この人が大好き』
そう思うときゅんと心臓が縮むような感覚がして少し苦しかった。

声を掛けた途端、自分に凭れ掛かってきた野明に驚いて遊馬は少しの間固まってしまった。
少し切ないような顔をして自分の胸元に頬を寄せる野明を遊馬は複雑な気持ちで見つめていた。
『特別大事なパートナーのお兄さん』としてはどうしたものか。
遊馬としては野明を仕事のパートナーとしては勿論だが、1人の女性としてみている面がある。
それは先の滝口の一件で遠まわしにではあるが伝えた心算だった。
はっきりと言わないのは己の狡さ故。拒絶されるのが怖くて勝算が無い勝負には手を出せない。
野明はどうなのか、と考える。もしかすると野明にとっての自分は気の合う同年代の同僚としての域を出ていないのかもしれないと思うこともしばしばあった。
こうして旅行についてきても自分を兄の様だといい、同じ部屋に2人で泊まってもこれといって構える様子も無い。
嫌われていることは無いと思うが異性として意識されているのかというのはまた別の問題だ。
野明を失いたくなければ迂闊なことは出来ないが、それでも思いを寄せている女性からこんな風に身体を預けられると流石に遣り切れない気持ちを味わう。
本人にはきっと大した考えは無いんだろう、『傍にいたから胸を借りた』位のもので。
遊馬は自分の両手と気持ちのやり場に困って天井を仰ぎ見た。
夕暮れ時の藍色の空は日が落ちる直前の紅に輝く雲を少しづつ飲み込むように色を落としていった。

野明の手がそっと自分の背中に回されるのを感じてこのまま抱きすくめてしまいたい衝動に駆られる。
迷った末に遊馬は野明の両肩に手を乗せてゆっくりと息を吐き出した。
声を掛けていいものか悩んだ挙句、暫くして野明の小さな細い身体を壊れ物を扱うようにそっと抱きしめて軽く目を閉じた。
腕の中の野明は温かくて少し甘い香りがした。

どのくらい時間が経ったのか、或いはほんの短い時間だったのか。
腕の中の野明が身動ぎする気配がして目を開けると、閉じていた腕をそっと開き野明の顔を覗いた。
あたりは日が落ちて教会の中はオレンジ色の暖かな色の光で満ちていた。
空には一点の朱も無く深い藍色をした空に日の落ちたあたりだけがうっすらと白んでいるのが伺えた。
憂いを帯びたような野明の青い瞳に吸い寄せられるように思わずその顎に手を掛けた。
そっと上を向かせるように手を返した途端、瞳に不安と戸惑いが滲んだ。
軽い罪悪感を覚えて手を離すと、今度は寂寥感と先よりも強い戸惑いの色を浮かべた瞳がこちらを見返す。
その顔は遊馬の胸に切ない疼きを齎す。
浅く呼吸を整えると出来るだけ静かな声を出した。
「嫌じゃなければ目、閉じてくれ」
『嫌なら拒否してくれ』と言わなかったのはそうされるのが怖かったから。
この言い方は狡いのかもしれない、逃げる方法を明示しないのは願望。
緊張で早鐘を打つ心音を意識しながら野明の瞳を窺った。

胸の苦しさに耐えかねて遊馬の背中にそっと手を回した。
この気持ちが伝わればいいと思ったのか、気づかれるのが怖いと思ったのか自分でもよく分からなくて、じっとしていたら遊馬の手がそっと肩に添えられた。
静かに吐き出される息の音が胸の苦しさを弥増し、このままやんわりと拒絶されるのが怖くてぴたりと頬を寄せたまま動けずにいた。
暫くそのままでいると遊馬の手がゆっくりと肩から離れ、野明をやさしく抱きしめるのが分かった。
拒絶されなかった事への安堵と抱きしめられた事による緊張、切なさできゅんと胸が締め付けられるような感覚とが一緒になって思わず目を閉じる。
遊馬の腕の中は温かくて。こんなに複雑な思いを抱えているのにも関わらず、やっぱり一番安心できる場所でもあった。

胸中の嵐が幾分凪いできて野明は意識をはっきりさせようと軽く頭を振る。
いつの間にかすっかり日が落ち室内がオレンジの暖かい光で満たされていてつい先ほどまでとは随分と趣が変わっている。
自分を抱きしめていた腕を開くのが分かってそっと顔を上げると複雑な顔をした遊馬と目が合った。
その目は真っ直ぐで真剣、なのにいくらかの愛惜が篭もっていている気がして思わず魅入ってしまう。
つっ・・と遊馬の手が伸びて自分の顎に掛かり、そっと上に引き上げられた。
意図することが分からずに不安になって遊馬の目を見た。
『遊馬、私にキスしようとしている・・・?』まさかと思う反面、微かに期待も過ぎる。
戸惑いとキスなどしたことが無いことから来る言いようのない不安。
それがそのまま顔に出てしまったのだろう。
遊馬は目が合うとハッとした様子で顎に添えられていた手を離した。
「あ・・・」思わず小さな声が漏れた。
手を離されたことに対する不安と戸惑い、それに『私じゃ駄目だったのかな・・・』という軽い失望感。
一瞬 期待した分だけ寂寥感が増しそれらが入り混じった複雑な感情に追い討ちをかけた。
遊馬はその様子を憂いの篭もった切な気といっていい瞳で見つめてから、いつもより少し低くて感情の読み取り辛い静かな口調で「嫌じゃなければ目、閉じてくれ」と言った。

遊馬は『何が』とは言わなかった。
けど、それはいくら『勘が鈍い』といわれる野明にも分かる。
少し躊躇った。
ここで首を振ったら遊馬はそのまま何事も無かったようにくるりと踵を返すかもしれない。
でも、このまま目を閉じたら・・・私は遊馬の『特別』になれるだろうか?
一度 私の態度に逡巡しながら遊馬はもう一度自分に問いかけている、多分これが最後。
もう一度はきっとない、そんな気がした。
野明は心臓が飛び出してしまいそうなほどドキドキしながら緊張した面持ちで己が瞳を覗き込む遊馬の目を見返し、それからゆっくりと目を閉じた。
全身が緊張して思い切り強張っているのが自分でもよく分かる。
遊馬の手が再び顎に掛かって、ついっと野明の顔を上に引き上げた。
遊馬の吐息を鼻に掛かるほど近くに感じ、全身に力が入ってしまっている野明が思わず顎を引きかける。遊馬は顎を支える手と野明の腰に回した腕に少し力を込めて傍に引き寄せそっと唇を重ねた。
ほんの数秒、唇を重ねるだけの優しいキス。
重ねた時と同じようにそっと唇を離すと遊馬は野明をぎゅっと抱きしめて「お前が好きなんだ」と小さな声で囁くように告げた。
心臓を鷲づかみにされるようなきゅんとする感覚が全身に広がって野明は再び遊馬の胸に身体を預ける。
「遊馬、順番が逆」
「そうだな」
『拒絶されなかった』安堵感と野明を『捕まえた』と感じる安心感。
体中の緊張が一気に解れたような気がした。

ややあって野明が小さな声で問いかけた。
「お兄さんって言ったの、撤回していい?」
「どうぞ。今度は何の役、くれるんだ?」
「・・・やっぱり旦那様がいいな。好きな人に演って貰うなら」
胸に寄せられている顔が熱い。真っ赤になっているだろう顔が容易に想像できて可笑しかった。
「承りましょう、じゃ そろそろ帰って仕切り直そうぜ」
「ん。そうだね」
そう言って顔を見られないようにさっと踵を返す野明を捕まえる。
「もう一回。今度は力抜いてくれ」
そういうと野明の頸の後ろに手を添えて軽く唇を重ねた。
不意打ちを食らった野明が吃驚して抗議する前に遊馬はパッと手を放し腕時計を確認する。
「ここ後20分位で閉館するんだ、早く出ようぜ」
悪びれた様子も見せずに、横に並ぶと野明の背中に手を添えて出口に促す。
名残惜しそうに祭壇を振り返る野明を見ながら「また今度見に来よう」と声を掛けた。
黙ってコクリと頷くのを見て出口の扉を押し開ける。
外はもうすっかり日が落ちて夕焼けの残滓も僅かとなり夜の帳が下り始めていた。
煌煌と光を放つ層を成したオレンジ色の光が夕闇に映えて静かに浮かび上がって見えた。

to be contine...

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追記

えっと 吐くほど甘いとは正にこのこと(^^;
続きどころか読み直す勇気すらなくて逃げ出しそうです~
焦れったさに歯噛みした挙句、こんな感じでごめんなさい(゜ーÅ)
ああ こっぱずかしくてこのまま本当に逃げてしまいたい位です。
一言なりとご意見ご感想などを戴けますと逃げたいのを踏みとどまる勇気になります(笑)

次回ものんびりマイペースに更新して行こうと思いますのでどうぞ宜しくお願いいたします。

ちなみにこの教会はモデルがあります。
かなり有名なところなのでご存知の方もおいでかも知れないですね(^^)
興味をもたれた方がいらしたら 公式HPをご案内しますのでお知らせくださいませ。
本当にステキな教会ですよ♪

軽井沢編6 変化

軽井沢編第6弾です

間に個人的に色々で・・・・
でも 皆さんのお陰で元気に復帰です(笑)
今回も長くて時間はあまり進みませんが諸事情によりかなり甘い話に・・・
こんなの野明でも遊馬でもないわ!という意見も聞こえてきそうですが。
そこは二次創作ってことで許してくださいね~

ではそんな駄文ですがお付き合いくださる方は以下の本文へお進み下さいませ。

以下本文

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変化
==============

遊馬に手を引かれて店を出る。
カウベルの音を奏でつつペンションの扉が閉まると野明は後ろを振り返って立ち止まった。
「ね、いいの?」少し困ったような顔をして遊馬の顔を見上げる。
「何が?」
「都さん、遊馬と話したいことがあったんじゃないかなって」
「話はしたさ、さっき。話はきいたし相応の返事もした。野明が気にするようなことは何も無いよ」
あっさりと答える遊馬に少し複雑な気持ちになった。
彼女は遊馬が好きで、それはずっと前から変わらずに今もそうだったんだろうことは容易に察することが出来た。
『久し振り』と言っていたことから 恐らくそれなりの期間遊馬と顔を合わせていなくてやっとあえたと思ったら私を伴ってきた、ということになる。
もし自分が逆の立場ならどうだろうと思うと彼女の様子が気にかかった。
私達がいた時は あっさりとというか寧ろサバサバした様で『降参』と手を上げていたけれど そのあと『こちらに来ないか』と声を掛けたのはそれでも遊馬と少しでも接していたいという気持ちの表れではなかったのか。もしそうならキッパリと遊馬に断られてしまった彼女は今頃 涙を流しているかもしれない。
自分を優先してくれたことを嬉しく思う気持ちと 明確に一線を引かれてしまった彼女に対する申し訳無い気持ちとがごちゃ混ぜになって心の中に複雑な波を立てた。

切なげな顔をして閉じた扉を見ている野明の頭を自分の胸元に引き寄せ抱え込むように抱きしめる。
「他人に振り回されるなよ。滝口を気にしてるんだろうけど、それは仕方ないんだから。俺はあいつと付き合うつもりがないし、その対象に見れない。なのに気を持たせるようなことは出来ないさ。それは野明がいるからっていうだけじゃない。伯母さんもいってただろう? 俺は一度もあいつにそういう感情をもてたことが無い。そういうことなんだ。」
野明は遊馬の胸元に引き寄せられたまま黙って話を聞いていた。
「そうやって人の気持ちに思いを馳せる事が出来るのは野明のいいところだと思うけど、過度にのめり込んで一緒に沈んでいくのは止めてくれ。見てる俺が辛い」
驚いて顔を上げれば苦笑交じりの遊馬と目が合った。
野明は胸の奥がキュンとなって遊馬の背中に手を回すと一瞬だけキュッと力を込めた。
「うん」と返事をすると直ぐにぱっと身体を離し「行こっか」と声を掛けて車に向かって歩き出す。
黙って後を歩く遊馬を視界に捕らえて安心しているのが分かって『やっぱり妬いてたのかな』と思った。

助手席に座って運転する遊馬の横顔を見る。
視線を感じたのか遊馬がこっちを振り返った。
「まずは昨日のショッピングモールでいいんだろ?それとも他に行きたいところあるか?」
「ううん 昨日のとこゆっくり見たい。それに・・・」
「それに?」
「この近辺 何にも分からないから。遊馬にお任せ」
「了解」
その答え方が少し可笑しくてクスクスと笑うと遊馬が怪訝な顔を向けた。
「・・・なんだよ?変なこと言ったか?」
「そうじゃなくて。『了解』って言うのが遊馬らしいなって」
「なにが?」
「なんだろうね。でもきっと私が一番よく知ってる遊馬」
「なんだそりゃ?」
「・・・秘密」
なんだか職場にいて指示をもらっている時みたいな受け答えに少し安心した。
やっぱり『遊馬でないと駄目だな』と思うとそっと遊馬のシャツの袖口を引いた。
遊馬は少し驚いたみたいにこちらを見返すと軽く笑った。
「こーら、運転中。ミッション変え辛いだろ」
「あ ごめん」慌てて手を離す。
「もう着くから。少し待ってろ」
「はーい」なんだか擽ったい気分で返事をすると両手を膝の上において目線を前に向けた。
「着いたら腕でも肩でも組んでやるから」
笑いながら言う遊馬に軽口を返す。
「ホントに?」
「本当。そのかわり逃げんなよ」
「・・・変なことしないでよ?」
「さあな、それは取り方次第だろ。まず行きたいとこ探しとけよ」
そう言って昨日取って来た店舗の案内図を野明に手渡した。
小さな冊子に纏まった地図を開いて感心する。
「広すぎて どこに行っていいのかわかんないね」
「こっちは土地があるからな、東京で仮にこんな物作るとしたらでっかいビルとかになるんだろうけど。散歩がてらのんびり回ろうぜ。」
地図を広げて敷地の広さに改めて驚く。
「道に迷いそうだよねぇ」
しみじみいうと遊馬が呆れたような顔をした。
「お前ね 誰と来てると思ってんだ?ちゃんと案内してやるから安心して店選べ」
その偉そうな物言いに思わず顔が綻ぶ。
「頼りにしてるからちゃんと傍にいてよね?」
「了解。だから離れるなよ?」
「勿論」
一瞬顔を見合わせると互いに仄かな笑みを湛えたまま前方に視線を戻した。
車内に妙に擽ったい空気が漂って野明はすこしドキドキした。

駐車場に車をとめて車外にでると地図を広げる野明の脇に立つ。
「で どこ行きたい?」
野明の指差した一角と駐車場の位置を地図で確認する。
「少し距離があるから寄り道しながらゆっくり行こうぜ」
遊馬はぽんと軽く背中を叩くと野明を促して歩き始めた。
開店直後、更に平日ということもあって人気のあまり多くないモール内を並んで歩く。
暫くすると野明が拗ねたような顔をしているのに気づいて遊馬は『何かしたかな?』と首を傾げた。
時々仲良く寄り添って歩くカップルとすれ違うと野明がちらりとそちらを見遣るのに気づいて可笑しくなる。
野明の肩に手を回して傍に引き寄せた。
「羨ましいなら言えばいいだろ?」
「自分から言うのは負けたみたいで嫌なの」
「勝ち負けの問題かね?大体そんな顔して見てたら同じだと思うけどな」
と言って額を小突くと「やだ 変な顔してた?」朱に染めた顔を両手で覆う。
その顔を遊馬が楽しげに覗きこんだ。
「いや、素直でいいんじゃないの?なんなら肩じゃなくて腰抱いてやろうか?」
野明は真っ赤になって「今はいい」と言ってそっぽを向いた。
遊馬はその様子を見て肩を震わせるようにして笑いを堪えながら「はいはい『今は』ね」というと野明の肩を抱いて歩き出した。

フロアは女性向けブランドの洋服や鞄が主で店も東京で見るものと大差を感じない。
それでも野明が楽しそうに「これ、かわいい」とか「ね これどう思う?」と聞いてくるのでそれなりに受け答えをしながら店舗を巡る。
店舗に惹かれて出たり入ったりして歩いているうちに野明は腕を組む方に落ち着いた様で遊馬の左腕に両手を絡め、気になる店を見つけるたびに引っぱっていく。
それに律儀に付き合う自分に遊馬は少なからず驚いた。

『俺 こういうの苦手だったんだけどな』と昔の記憶を手繰る。
中学、高校、大学、研修校時代を通して何人かの女性と付き合いがあった。
それでも買い物に付き合うのは結構面倒で何かと理由をつけては別行動していた。
『待ってるから好きなもの見て来い』と言ったり『他に見たいものがあるから後で待ち合わせしよう』と言ってみたり。
特に相手の洋服選びに興味も無かったし、結局散々見るだけ見て何も買わずに店舗を次々梯子して挙句最初の店に戻ってまたあれこれと悩んだ挙句、別の店舗に更に移動して・・・みたいな体力を浪費するだけの非生産的な行動に理解など出来よう筈も無い。
欲しいならさっさと買ってしまえばいいし、文句があるなら買わなきゃいい。
それは主観の問題なんだから俺に意見を求めても無駄だとも思っていた。
大体『どう?』なんて聞くときは自分で答えを決めていることも多くて実際に俺の意見が聞きたい訳ではなく同意が欲しいだけ、ということも多かった。
そんなことから買い物に同行すること自体がすっかり面倒になって久しかったのだが。

「ね 遊馬、このシャツ可愛いよね」といいながらクルクルと表情を変える大きな瞳でこちらを見上げる野明に「いいんじゃね?」と笑みさえ浮かべて受け答える自分。
寧ろそれを『楽しい』と感じているあたり少なからず自分は変わったのだろうと思う。
それは野明限定なのかもれないが、それならそれでいいと思った。
他に腕を組ませたい相手がいるわけでもない。
自分の隣で色の違う同じデザインのシャツを両手に持って「どっちがいいかな」と考え込む野明を眺めていると自然と気が和らぐ気がした。
真剣に悩んでる野明の眉間に指を立てて、「ここ、皺できてるぞ」と言って顔を覗く。
「え 本当に?!」
野明はあわてて眉間を押さえようとしたが遊馬が指を退かさないので顔をぐんっと後ろに引いて指を離そうとした。
思わずからかってみたくなって遊馬は指を野明の眉間に当てたまま顔の動きを追う。
怪訝な顔をして左右に首を振った野明にあわせて指を動かすと野明は少し考えて眉間に当てられた指を遊馬の手ごと両手で掴むときょとんとした顔で小首を傾げた。
「これなに?」
「いや 面白いなぁと思って」
クスクスと笑う遊馬に野明は「子供みたい」と笑って遊馬の顔を下から覗き込む。
野明の手を解いて頭をくしゃっと撫でるとそのまま軽くポンと頭の上に手を置きなおした。
「どっちか決めたのか?」
「う~ん 決められないの、遊馬決めて?」
「俺が?じゃこっち」
そう言って薄い水色のシャツを選ぶ。
すると野明は手元のオレンジシャツをワゴンに戻すと遊馬の選んだ水色のシャツを嬉しそうに抱えた。
「コテージに帰ったら着てみようっと。遊馬のお見立てだもんね」
言いながら軽やかな足取りでレジに向う。
その様子をみて『たまに買い物に付き合うのも悪くないな』と思った。

他に何件も出たり入ったりを繰り返し、やっぱり何も買わずに出る店が多いのだが不思議と以前のように面倒とか退屈という風には感じなかった。
大きな芝生の中庭を横切って建物を移動する頃になって野明が思い出したように遊馬をみた。
「お買い物 すっごく楽しいんだけど・・・遊馬退屈じゃない?」
「いや 十分楽しいけど?」
「だって 私ばっかり好きな店に出入りして遊馬つまらなくなかったかなって」
申し訳なさそうに言う野明に思わず笑ってしまう。
「変な気使うなよ。そう思ったらちゃんと言ってる。それに、野明見てるとかなり面白いけどな」
「え なにそれ?」
「いや 楽しそうに買い物するんだなって。俺 洋服買うのにそんな風にしないからさ」
「そうなの?」
「見て気に入ったらサイズと値段見て即決。気に入らないところがあると思ったら買わない、そんなもんだな。その店舗に5分もいれば買うなら買うし買わないなら店出てる」
「遊馬らしいというか・・・でもそれじゃ余計退屈だったよね?」
しゅんとしてしまう野明を好ましく思う。
「そんな顔するなって。寧ろ面白かったけど?野明も女の子だなって」
「え?」
「普段一緒に出かけてもこんな風にゆっくり買い物しないから気づかなかったけど洋服とか小物とか楽しそうに選ぶもんだなと思ってさ。」
「女の子ってみんなそうじゃない?」
「そうかもな。でも野明だから面白いんだよ、多分」
そう言って野明の顔を見遣ると野明は照れくさそうな笑顔を見せた。
「私も遊馬と一緒ですごく楽しい」
遊馬の腕に腕を絡めようとして手にした数個の紙袋が邪魔になる。
「ほら それ貸せよ」遊馬が手を出したので渡そうかどうしようか考えているとひょいっと荷物を取り上げられた。
「自分で持てるよ?」
荷物の中身は全部野明のものだけに気が引けた。
「いいから。大した量じゃないし持ってやる」
そう言って腕を軽く差し出すと「ありがとう」と言って野明は遊馬の腕を取った。

腕を組んで芝の貼られた中庭を歩く。
ふかふかした足元がアスファルトになれた足にはとても新鮮で気持ちがいい。
「ここ裸足で歩いたら気持ちよさそうだよね」
「そうだな、今度は公園にでも行こうか。浜離宮恩賜公園とか芝が綺麗に貼られてるし手入れがいいから裸足で歩いても怪我しないだろうし。」
「恩賜公園?」
「行ったことないか?」
「ない」
「じゃ 天気がよければ次の休みに連れてってやるよ。季節ごとに何かしら花も咲いてるからのんびり散歩するにはいいところだし」
「そうなんだ、楽しみにしてるね」
周りをくるりと見渡すと平日にもかかわらず思いの他カップルが目に付いた。
『自分達もそう見えるのかな』と思って野明はこめかみを遊馬の腕にぴたっとくっつけてみた。遊馬は野明の顔を見て小さく笑うとそのまま歩を進める。
エスコートされて歩くようなちょっと擽ったい気持ちになった。

ふと時計を見ると既に1時を少し過ぎていた。
「昼 食べるか?」
「そうだね のども渇いたし」
「なら レストラン街向こうだったな」
というと遊馬はサクサクと歩き始める。
遊馬にくっついて歩きながら『あの地図、一通り覚えてるのかなぁ』と変なところで感心してしまった。
レストラン街の入り口に着くと案内板に店舗の一覧があった。
「何食いたい?」
「遊馬は?」
「そうだな・・・中華以外。」
その答えを聞いて野明は思わず噴き出した。「うん、私も中華以外がいいよ」
待機任務中は毎日上海亭の出前なのだから外に来てまで中華を食べようとは思えなかった。
結局 無難に和食の店を選択し定食を頼んで食事を済ませるとお茶を飲んで少し落ち着く。
暫くして遊馬が思いついたように野明に向き直った。
「野明 折角軽井沢まで来たんだし買い物が終わったらちょっと珍しいもの見に行かないか?」
「珍しいもの?」
野明は小首を傾げる。
「平日の昼間だしあいてると思うけど。」
「どこに行くの?」
「今は内緒。行けば分かるさ」
悪戯を思いついた子供のような目で話す遊馬は年上なのにとても可愛く見えて思わずくすりと笑ってしまう。
「じゃ連れってて」
「よし、決まりな。まずは買い物の続き行くか」
そういうと荷物を持って店を出た。

野明の行きたがっていた店はすぐに見つかった。
いわゆるバスグッズやフレグランスなどを中心に扱う店舗で遊馬にはあまりというか全く馴染みのない店だった。
嬉しそうに店内を物色する野明に『やっぱりこういう物好きなんだな』と少し感心する。
色とりどりのメイク用品、スキンケア用品から石鹸、入浴剤などが所狭しと並べられていて色んな芳香が入り混じった独特の香りが満ちている。
普段来慣れないだけに『匂いに酔いそうだな』と思う。
野明はというと店内をウロウロした結果、バスグッズのコーナーに足を止めて熱心に何かを選んでいた。
「何見てるんだ?」
声を掛けると野明は子供が何かをねだる時みたいな顔をした。
「ね、入浴剤って買ってもいい?」
「なんで?買えばいいだろ。好きなやつ」
「コテージで使ってもいいかな?」
「そりゃいいけど。ほしいならいくつか買って帰ればいいだろ?」
何か珍しい種類のものでもあるのか、と思って首を傾げる。
「だって普段使えないんだもん」
「なんで?」
「寮はお風呂共用だから。」
「女子寮もそうなのか?」
野明はコクリと頷いた。
ちょっと意外だった。何となく女子寮は個別に浴室がありそうだと思っていたが、男子寮と同様共同浴場になってるらしかった。
「そりゃ 使えないか・・・」
二課棟はシャワー室だし外で泊まるようなことでもない限り使いたくても使えなかったわけだ。
「いいんじゃないか?いくつか気になるのあるなら買っていこうぜ。風呂洗うのが面倒でなればのぼせない範囲で何種類か試せばいいし」
「本当にいい?遊馬こういうの嫌いじゃない?」
「別にいいよ。こういう機会でもないと試せないんだろう?気に入ったやつ買えよ」
そういうと野明は嬉しそうに棚を物色し始めた。
よく見ると本当にいろんな種類のものがあってこれが全部入浴剤かと思うほど変わったものも少なくなかった。
一見ワインのボトルにしか見えないものや 小さなビニールのボールに見えるもの、いろんな色の細かい紙石鹸を詰め合わせたようなものから、どう見ても塩の粒にしか見えないものまで それこそ色んなものがあってこの中から選ぶのは結構大変だろうと思った。
真剣な顔であれこれ手にとっては棚に戻して選ぶ姿はなかなか面白くて暫く黙ってその様子を見ていると悩んだ末に手にした籠に入れた10種類近い入浴剤をじっとみて野明が大きく溜息をついた。
「決まったのか?」
「それが・・・これ以上絞れなくて。でもこんなに使えないしどうしようかなって」
「ちょっと貸せ」
といって野明から籠を受け取って店の端に寄る。
「いくつ位に絞りたいんだ?」
「う~ん あと二日でしょ? 朝夕使ったとしても4つあればいいんだから・・・」
「じゃ 選ぶ余地も残すようにして6つに絞る、というのでどうだ?」
「うん。そうだね」
選んできたものは全て一回の使いきりだったので種類別に大まかに分けて見る。
するといくつか 同じようなタイプのものが混ざっていたので 野明にどれか一つを選択させ残りを切る形であっという間に6つに絞った。
「これでどうだ?」と提案すると野明はコクリと頷いた。
こういうところが 男女の感覚の違いなのかもしれない。
ものすごく合理的にサクサクと物事を決める遊馬に野明は今更ながらに感心してしまった。
「これで欲しいの全部か?」
「待って。もう少し」
そう言ってフロアを駆け回る野明を見る。
『あれだけ嬉しそうにするなら連れて来て正解かな』と思う一方で野明の両親がこんなこと知ったら怒るんだろうなぁとぼんやり考えた。
手を出してはいない。けど飲み会から足掛け5日、男と2人泊りがけで遊びに出てるなんて知ったら 何もありませんでした、といって素直に信じてくれるとは思いがたい。
そんな心配を知ってかしらずかその家の一人娘は無邪気に買い物に夢中になっている。
遊馬は遠くに住む彼女の両親と自分の為に思わず深い溜息をついた。

欲しいものを一通り購入した野明が遊馬の元に戻ってきて「ただいま」と当たり前の様に腕を取る。
それを見て『まあいいか』とそのまま野明を伴って店を出た。
「ここで他に買いたい物あるか?」
「もう十分、この後珍しいもの見せてくれるんでしょ?」
「そうだな、じゃまっすぐ車に戻るけどいいか?」
「うん」
返事を返してまっすぐ車に向かって歩くと以外な程早く車に着いた。
「こんなに近かったの?」
物凄く歩いた気がしていたので野明は少し驚いた。
「行く時は色んなところに寄り道したからだろ。まっすぐ歩けば15分かからないさ」
苦笑する遊馬を見て一緒でなかったら車に戻るのに何分かかっただろうと思う。
というか戻ってこれたのかさえ疑問だった。
後ろ姿を眺めていると視線を感じて遊馬が振り返った。
「なに?」
「少しは私も地図読めるようにならないとなぁって思ったの」
「なんで?」
「私1人でここに戻ってこれる自信なかったもの。地図見ても」
少し拗ねたように言う野明に 呆れたような視線を向ける。
「俺が読めるんだからいいんじゃないのか?ちゃんと着いてきたら迷わないだろ?」
「だって いつでも遊馬がいるとは限らないじゃない?」
「何で?呼べば良いだろ、別に。用が無きゃ付き合ってやるけど?」
当たり前見たいに言う遊馬の顔を覗き込んで少ししかめっ面をして見せる。
「駄目だよ、遊馬。そういうこと言うと、変に期待しちゃうから」
「期待って・・・俺は別に困らないけどな。そういわれると逆にこっちも期待するだろ?野明は困らないのか?」
「あ・・・えっと・・・遊馬ならいいかなぁ・・・って」
最後は聞こえるかどうかくらいの小さい声。
意外な答えに少し目を瞠ったが、うつむき加減で話す野明にあえて問い直すことはしないで普通の調子で話す。
「なら 問題ないんじゃないか?」
「えっと・・・うん。そうかも。」
「ま そういうことだな、車出すぞ?」
「うん お願い」
車がゆっくり走り始めると野明は窓の外に視線をさまよわせながら胸がきゅんとするような感覚にじっと耐えていた。
それはちょっと切なくて幸せな感覚。遊馬を見るとその感じが強くなる気がして長く見ていることができなかった。

to be continue....

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追記

えっとここ数日 激しく凹むことと人様の温かさに励まされることをど同時に体験しまして。
私 凹んだ時になにか妄想すると激しく暗いか 吐くほど甘いものしか出てこないことをはじめて実感しました。
で・・・結果 吐くほど甘いものになりまして(^^;
数日置くと恥ずかしくてUPできそうにないので今のうちに勢いで上げしてまおうかと・・・

長い駄文にここまでお付き合いくださって有難うございます。
完結にはまだまだ遠いお話ではありますが どうぞ見捨てないでお付き合いくださいませ♪

ご意見ご感想などいただけますとやる気が出てきますのでお時間のある方は是非 一言なりといただけますと幸いです。
次回ものんびりマイペースに更新していこうと思いますのでどうぞ宜しくお願いいたします。

軽井沢編5 約束

軽井沢編第5弾です

書いている最中に色んな用事が重なりましてだたでさえ遅筆なのにますます鈍亀状態になっています軽井沢。
どうにか 形に纏まりました(^^;
前回よりは 多少明るく展開しているとは思いますが オリジナルキャラ登場しますので苦手な方はご注意くださいね。

相変わらず 長い割りに時間の進まないお話ではありますが どうか見捨てずにお付き合いくださいませ。
こんな駄文ではございますがご意見・感想などいただけますと やる気か出てまいります(笑)
ではどうぞ よろしくお付き合いくださいませ~

以下本文

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約束
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夜明けまでは まだ時間がある。
雷鳴こそ遠雷に変わったものの 窓に叩きつける風雨は依然激しいままで漆黒と言っていい闇の中、野明は上掛け布団を引き寄せ抱きしめる様に小さく丸まっていた。
時折 窓に打ち付ける雨風のザンッという音が室内に響く。
遊馬の居るほうに首をめぐらせてみたものの 多少闇に慣れた目で見ても遊馬のいるベッドまではそれなりに距離があるためその様子をうかがい知ることは出来なかった。
思わず小さく息を吐くと遊馬から声が掛かった。
「眠れないのか?」
起きていると思っていなかったので少し驚いたものの遊馬の声に少し安堵する。
「うん、やっぱり雨音すごいね。台風みたい」
「場所、変わるか? こっちだとそんなに気にならないぞ?」
「え? いいよ。遊馬の方が疲れてるんだから少し休んで」
「俺はそんなに疲れてないけどな。やっぱ人の使ったベッドは抵抗あるか?」
さらりと音がして遊馬がこちらを向き直った気配がする。
野明も遊馬の方に向き直ってみる。
互いに気配はわかるのに闇に沈んで姿は見えない。
「そんな事ない。けど、他の人のなら嫌かな」
「ばーか。そういうこと言ってんなよ、変な風に勘ぐられるぞ?」
呆れを含んだ遊馬の声が返ってきた。
野明は複雑な思いでクスリと笑う。
自分が本当はどうしたいのか、よくわからなくなってしまった。
すこし考えてから口を開く。
「ね 遊馬 やっぱり変わって?」
「了解」
言うと遊馬は懐中電灯の明かりをつけ 「よっ」と声を掛けて起き上がるとスタスタと歩いてきて「じゃ 交代な」というとベッドの淵に腰掛けた。
野明も すばやく立ち上がると遊馬の居たベッドに移動する。
場所を入れ替わると 先ほどと同じように横になった。
「本当だ あんまり雨音聞こえないね」
「だろ?ちょっとの距離なんだけどな、確かにここだとよく聞こえるな」
「でしょ やっぱり変わる?」
「いや、いいよ。それより 眠れそうか?」
「うん、眠れそう」
そういうと 上掛けの布団を目深に被る。
「遊馬の匂いがする・・・」
思わず小さな声で呟くと 遊馬が軽く溜息をついた。
「気になるなら トランドルベッド出したらどうだ?」
「え どうして?」
「嫌じゃないならいいけどな」
「嫌じゃないよ?」
不思議そうにいう野明に「じゃ 寝ようぜ、夜が明けちまう」というと遊馬も布団を被った。
たしかに そこには野明の香りが残っている気がした。

夜が明けると雨はすっかり上がっていて窓の傍に寝ていた遊馬は眩しさで目を覚ました。
野明は、と思い振り返ると目深に布団を被ったままこちら側を向いて小さく丸まるようにして眠っていた。
遊馬はコキコキと小気味のいい音を立てて肩と首を回すと軽く伸びをしてベッドを降りた。
着替えを掴んでリビングに移動する。
顔を洗って 髭を剃ったあとテキパキを着替えを済ませ再び寝室に戻ろうとして扉の前で手を止めた。
少し考えて 軽くノックしたあと「入るぞ」と声を掛けて扉を開ける。
野明はまだすやすやと眠っていてその寝顔は実に無防備なものだった。
安心した様子で眠る野明の顔を見て安堵する一方で 自分が彼女を思うほど野明はこちらを男として見ていないのだということに軽い落胆も覚える。
『いっそ今 手を掛けてしまおうか・・・』とちらりと過った考えに軽い罪悪感を感じて慌てて頭を振る。
『そんなことをしたら絶対に後悔する』と思いその考えを振り払うようにもう一度大きくかぶりを振った。
時間を確認すると 8時を少し回っていて軽く食事をしてからショッピングモールに入るのならばそろそろ目を覚ましたほうがいい時間に差し掛かっていた。
野明の寝ているベッドに浅く腰をかける。
「野明」名前を呼んだが返事はなく「野明 買い物、朝から行く気ならそろそろ起きろ」と再び声を掛けた。
野明は 「ん・・・」と軽く呻いて身を捩るとうっすらと目をあけて焦点の定まらない瞳をこちらに向ける。
「・・・遊馬・・・ もう朝?」
言いながら 気だるげに半身を起こし軽く目を擦る。
ワンピースの寝巻きを見慣れなくて少し目を逸らした。
「ちゃんと眠れたか?」
「うん 眠れたよ。遊馬は?」
「寝たよ、あそこ結構眩しいのな、朝 それで目が覚めた」
窓際のベッドを示すと そこには燦々と日が当たっていた。
「え、そうなの?ごめんね。今日はちゃんと変わるから」
「ばか、気にすんなよ。それはまたあとで考えようぜ? それより着替えて出かける準備しようぜ。買い物の前に飯食っていかないか?」
「外で?」
「そ。嫌か?」
「ううん、いいけどこんな時間からお店ってやってるの?」
野明は首を軽く傾げる。
「多分な、まだやってるといいけど。」
そういうと遊馬は ベッドから降りると 「じゃ着替えてでてこいよ」といってリビングに向かった。
野明もベッドを降りて着替えを用意しながら 『ひょっとして遊馬はこの辺の地理に明るいのかな?』と思う。
ここにくるときもコテージの場所だけは管理棟から貰った地図で確認したものの それ以外で地図を見ている様子が無かった。
遊馬は普段から最初にざっと地図に目を通すと大体の場所を把握できてしまうところがある。
野明にはない能力で とても頼りになるなといつも思う。
けど先刻の台詞はそうではなくて 『知っている』ことを思い出している感じだった。
そんな些細なことを気にしている自分に野明は少し驚いて苦笑した。

着替えてリビングに向かうと 遊馬はソファに座ってTVを見ていた。
野明に気づくと振り返る。
「30分くらいで用意できるか?」
「うん 出来るよ」
応えると 『うん』と一つ頷くと「じゃ よろしく」と言って楽しそうな笑顔を見せた。
その顔をみて少し嬉しくなって「まっててね」と声を掛けると洗面所の扉を開けた。
緑から貰ったパレットで 教えてもらったように軽くメイクもしてリビングに戻ると遊馬が 「できたか?」と言いながら傍に来た。
コクリとうなずくと 遊馬は野明の顔を軽く覗き込んで 「いいんじゃない?」と嬉しそうにいうと「じゃ 出かけるか!」と言って背中をぽんっと軽く叩いた。

車を走らせて暫くするとペンションが立ち並ぶ一角に入る。
いわゆる観光地からは少し離れた場所でとても閑静な佇まいを見せる地域だった。
やはり一度も地図を確認することなく一軒の瀟洒な水色のペンションにたどり着くと その前に車を止めた。
懐かしそうな顔をして辺りを見回す遊馬に『ここに来たことがあるの?』と声を掛けようとしたが、その前に「入るぞ」といって遊馬が野明の手を引いたので言葉を発するタイミングを逸してしまった。

木で出来た扉を押すと カランカランとカウベルが音を奏でる。
中にいた 年配の女性が「いらっしゃいませ」と声を掛けながら入り口を振り返ると目をまるくして「あら、まぁ!」と言いながら遊馬の傍に歩み寄ってきた。
「遊馬くん? まあ 随分 突然きたわね」
嬉しそうにいう女性に「ご無沙汰してます」と遊馬が笑顔を向けると女性は目を細めて「とにかく 入って頂戴」と窓際の席を勧めた。
野明に目線を向け「かわいいお嬢さん連れてきたわね」と言って遊馬を見遣る。
「まあね、見せびらかしに来た」と言って悪戯っぽい笑顔を見せる遊馬に野明は吃驚して顔に朱をのぼらせた。
「ちょっとまっててね」と言ってご婦人が傍を離れると野明は遊馬の袖を引き小声で話しかけた。
「ね、遊馬 どうなってるの?」
明らかに困惑した顔で問う野明に遊馬は楽しそうに応える。
「どうって? 朝飯食いにきたんだよ。日中は朝から喫茶店として営業してるんだ」
「それは判るんだけど。遊馬 あのご婦人と顔見知りなの?」
「みてて判らんか? 旧知だな。ここ数年来てなかったけど」
「遊馬ん家って 前橋だよね?」
不思議そうに首を傾げる野明を楽しそうに眺める。
「こっちには祖父さんが別荘持ってたんだ。俺は基本、祖父さんとこで育ってるからさ、毎年夏休みはまるまるこっちに来てた」
成る程、と納得すると同時に少し感心する。
「別荘・・・。そっか 遊馬ってお坊ちゃんだったんだよねぇ・・・」
そんなことをすっかり忘れていた野明は眉間に皺を寄せて呟く。
そんな野明を横目に見て遊馬は思わず口元を緩める。
自分を 『篠原の御曹司』として全く意識しないで傍にる野明は本当に得難い存在だと思った。
「そんなんじゃ無いさ。祖父の持ち物だったし、今は親父の管理になってるんで俺は使わないけどな。使う気にもならん」
そう言うと野明の首に腕をかけて軽く引き寄せた。
野明は吃驚した様子を見せたものの大人しくされるがままになっていた。
「で さっきのご婦人は?」
こめかみに軽く頬を寄せる遊馬の顔をくすぐったそうにしながら「どうしたの?人が見てるってば」と抗議しつつ問いかける。
「祖父さんの知り合い。こっちに居るときはよく世話になったんだ。だから 野明を見せびらかしにきた」
「・・・あのねぇ・・・見せびらかすって・・・」
真っ赤になって目線を泳がせている野明にお構いなしで遊馬は頬を寄せて耳元で囁く。
「『彼女にしてやる』っていって連れてきたんだぜ? こっちにに来てから色よい返事を貰ってないけどな」
急に強気に出てきた遊馬にどう対処していいのか分からずドギマギしていると 席を外していたご婦人がお皿とコーヒーを手に戻ってきた。
2人の様子をみて「あらまぁ 仲のいいこと」と言って微笑むとカップを机において「さ、適当に取ってきて」と言って皿を差し出した。
皿を2枚受け取ると遊馬は野明を伴ってバイキング形式になっている朝食のコーナーへ向かった。
野明を解放して食事を皿に盛ると、2人で席に戻る。
遊馬の隣に座ってちらりと顔を見上げると目が合った。
遊馬は小さく笑って野明の髪をくしゃっと撫でるとコーヒーに手を伸ばした。
その様子をご婦人は微笑ましげに見ていて 野明と目が合うと優しい笑顔を向ける。
野明は まだ挨拶もしていなかったことに思い当たって慌てて「あの はじめまして」と頭を下げた。
「あ わりぃ 紹介してなかったんだ」
遊馬が思い出したように言うと、ご婦人は「そうだったわね ご紹介して?」と促す。
「野明、こちらは祖父の友人で昔から夏になるとお世話になってた滝口さん。おれは 伯母さんって呼んでるけど親戚ではないんだ。で こっちが」
言いながら野明の頭にポンと手をおく。
「俺のパートナーの泉野明」
「まぁ パートナーなの?」と楽しげに笑う滝口さんに野明は心中複雑だった。
『パートナー』と言う言葉を 滝口さんがどう受け取ったのか分からないけれどこの場合 仕事上のコンビとしてのパートナーを指している気がした。聞く人によって如何様にも受け取ることが出来るこの単語の便利さに少し歯がゆさを覚えてちらりと遊馬の方窺った。
楽しげに話す遊馬は普段見たことのない顔をしていた。
自分と話すときもリラックスしていると思うけれど 今はまるで親に色んなことを訊いて欲しくて目をキラキラさせる子供みたいだと思った。
お父さんと話すときはもっと緊張感があるし、打ち解けていそうにみえていた実山さんと話すときとも違う。
『こんな顔するんだな』と思わずしげしげと見つめてしまう。
その視線に気づいた遊馬が きょとんとした顔で振り返る。
「どうした?」
「新鮮だなぁって。遊馬ってこんな顔もするんだねぇ」
感心したように言うと遊馬は 「あっ!」と言って少し赤くした顔を左手で軽く覆うとばつが悪そうに「悪かったな」といってそっぽを向いてしまった。
「悪くないよ、ごめんってば。ね 話しててよ」
機嫌を損ねたと思って慌てて遊馬の袖を引く野明を優しく見て滝口さんが呟いた。
「遊馬くんに彼女ねぇ これは都が泣いちゃうわね」
「都さん?」
「姪っ子よ。遊馬くんが大好きでね、でも一度だっていい返事もらえたことがなくて」
「へぇ・・・やっぱり遊馬ってもててたんだ」野明が顔を覗き込むと遊馬は渋面をつくる。
「恋愛対象として見れないものは仕様が無いだろ? 友達だとは思うけどさ」
「昔からそうよね。ままごとに誘っても逃げられちゃうの」と滝口さんが朗らかに笑う。
不意に昨日の会話が思い出されて野明と遊馬は一瞬固まった。
滝口さんはそれを敏感に察して、『何か悪いこと言ったかしら?』という風に首をかしげた。
野明は 『おにいさん』発言を後悔していて今 訂正できるものならしてしまおうかとも思ったがどう切り出していいか分からない。悩んでいると 遊馬が不意に野明の耳元に囁いた。
「なぁ野明 俺の配役って昨日のままか?」
心中の窺いにくい穏やかな顔で問う遊馬に 見透かされたような気がして野明は少しドキリとした。
けれど 訂正するタイミングが欲しかった野明はやっぱり遊馬には敵わないな、と思いながら「あとで 相談しよ♪」といって、にこりと笑った。

「ところで何 滝口来てるの?」
「今 ここで働いてるのよ。もうすぐ降りてくると思うけど」
そういい終わるか終わらないかのうちに二階から軽い足音と共に髪の長い女性が降りてきた。
「伯母さん 二階掃除終わったよ」と言いながら店内を見渡して 野明たちと一緒に席に着く滝口さんを見つけるとスタスタと寄ってきた。
「なあに 伯母さんのお客さん?」と言って遊馬の顔を見るなり顔をポッと朱くする。
「篠原君!?」
「やぁ 久しぶり」軽く笑顔ものせて会釈すると都は「本当久しぶりだねぇ!」と言いながら遊馬の背中に抱きついた。
野明は吃驚して少し身を引く。
肩に顎を乗せるようにして 「何時来たの?」とか「別荘に泊まってるの?」とか話しかける。自分がいつも遊馬にしていることを人がしている、その光景をみて複雑な気分になった。
遊馬がやんわりと 都を離そうとしているのに彼女は簡単に離れようとはしなくて遂に遊馬が「滝口 離れて」といいながら腕を引きがした。
 「なによ、久しぶりに会ったのに、ケチっ!」と言って都が背中から離れると野明はなんだかホッとして小さな溜息をついた。
「私も コーヒーとって来る」と言って都がその場を離れると 遊馬の手が伸びてきて野明の頭を掴み自分の胸元にグッと引き寄せた。
「変な顔してたぞ、妬いたか?」
「・・・・ちょっと複雑。」
その答えに一瞬目を丸くした遊馬は「心配すんな」と言って小さく笑った。

その様子を少し離れたところで見ていた都は驚いて固まってしまった。
自分には決してしてくれなかった仕草で 隣の女性を抱き寄せる遊馬を見て激しい嫉妬感を覚える。
見ているのが辛いなぁと思う一方で 傍にいて話をしたいとも思う。
ここで去るのもあからさまな気がして出来よう筈も無く、意を決して伯母さんの隣の席に戻った。
正面に座る野明を 思わずしげしげと眺めていると 気づいた野明が目線を上げた。
「はじめまして」と言って会釈をする野明の言葉を引き継ぐように遊馬が声を掛ける。
「野明、こちら滝口都さん。伯母さんの姪だな、で 滝口 こっちが泉野明、俺のパートナーだ」
いいながら 頭にポンと手をのせる仕草はとても自然で普段からそうしているだろうことが窺えた。
「彼女・・・?」
思わず訊いてしまうと遊馬は野明の顔を見てから「俺はそう思ってるけど?」と応えた。
野明は何もいわずにただ遊馬の方を見て頬に朱をのぼらせている。
「そうなんだ」
いいながら 改めて野明を観察してみる。
短い赤みの強い髪、小柄で快活そうなどこか幼さの残る雰囲気の女の子だった。
遊馬の好みだといっていた ストレートの黒髪を持つ、色白の知的美人とは随分違うなと思った。
それに少しでも近づこうと頑張っていた自分が少し虚しくなって伸ばしていた髪を無意識に弄ぶ。
微妙な沈黙を嫌った野明が殊更 普通に声を掛けた。
「遊馬、コーヒー淹れて来ようか?」
「ん? ああ、たのむわ」
そう言って少し残っていたコーヒーを飲み干すと野明にカップを手渡した。
「滝口さんは?」と伯母さんにも声をかけると「じゃぁ 戴こうかしら」といってカップを差し出した。
野明は 自分のを合わせて3つのカップを小さいトレイに載せると「行ってくるね」と席を立った。

野明が離れると都は徐に遊馬に声を掛ける。
「好み、変わった?」
「なんで?」
「ロングの黒髪、色白で知的美人がいいんじゃなかった?」
「それはそれで好みだけどね、でも あいつは違うの。」
「好みじゃないってこと?」
「まさか。野明は特別なんだ、虐めるなよ?」
目を眇めていうその顔は本気で『虐めたら承知しないぞ』という雰囲気を漂わせていて都は面白くなかった。
「折角 篠原君好みの女になろうって頑張ってるのに。」
「それは申し訳ないけどさ。前にも言っただろうけどそういう風に見れないんだよね」
「彼女はいいの?」と 野明に目線を送る。
「いいも何も ほかの男と口利くだけも面白くないね」
さらりという遊馬に「大した執着心じゃない」といって溜息をついた。
「そ あいつにはそれが上手く伝わってないけどな」
「こんだけ はっきり宣言しといて?」
呆れたように言う都に 多少バツが悪そうに遊馬は目を逸らす。
「本人にちゃんと言ってないんだよ、俺が」
「・・・なんで?」
あれだけ人前でいちゃつきながらどうして、と心底不思議そうに言う都に遊馬は不貞腐れたような顔を見せた。
「言って拒絶されたら立ち直れないの、俺が。あいつ失うのは嫌なんだよ」
「って・・・あんだけベタベタしてて 断られることもないでしょうに?」
「あいつ人がいいから人前で拒絶ってあまりしないからな。本当はあれで 弾かれないか気が気じゃないんだよ、こっちは」
「彼女に相当入れ込んでるのね」
「ほっとけ。だから あいつに余計なちょっかい掛けるなよ、本気で怒るからな」
強い口調でそういわれて 都は肩を竦めて溜息をついた。
「わかったわよ、で 私は失恋確定な訳だ?」
上目遣いで拗ねた顔をして見せる都に「悪いな」とさらっと言うと遊馬はトレイを持ってゆっくり歩いている野明に視線を移す。
「あいつでないと 駄目なんだ」
都も野明の方に視線を巡らせる。
「あすま」と試しに名前を呼んでみると 目線を一瞬だけ都に移した遊馬はすぐに野明に視線を戻した。
「その呼び方は野明の特権だからな。今まで通り苗字で呼んでくれ」
「・・・そっか。私のことも名前で呼んでくれないの?」
「呼ばない。それも野明の特権、本人は気づいてないのがイタイけどな」
「そっか。冷たいなぁ」
「知らなかったのか?」
「今までは皆に同じだったから気にしないで済んでたの。『特別』扱いされてる人を見ちゃうと他人には冷たいなって実感した」
都が溜息をつくと 遊馬は「さてと・・・」といって立ち上がる。
「どうしたの?」
「野明。ったくあの馬鹿、席外したつもりなんだよ。お前と話すことがあると思ったんだろ。気使いすぎなんだよな」
そういうと野明の元に歩いていく。
二言三言言葉を交わして 額を軽く小突いたりしている様子を見て都は大きく肩を落とした。
「勝ち目がないわね、都?」とそれまで 黙って会話に耳を傾けていた伯母が苦笑交じりに声を掛ける。
「悔しいけど 篠原君が夢中なんじゃどうしようもないわね」
頬杖をついて肩を竦め伯母に向き直る。
「あれだけ 堂々と惚気られてキッパリ断られると涙も出てこないわ」
「ご愁傷様」
「遊馬くん 律儀よね」というと伯母は可笑しそうに笑う。
きょとんとした目で「何が?」と問う。
「遊馬くんね 御祖父さんのご葬儀のときに『もう貴方が軽井沢にくること無くなっちゃうかもしれないわね』、っていったの。そうしたら 『来ますよ、いつか彼女でもできたら連れてきます、伯母さんは俺の母親代わりみたいなもんだからね』ってそういったのよ」
「・・・・そう」
都は連れだって席に戻る野明と遊馬を見ながら残っていたコーヒーを一息で飲み干した。

「野明」
遊馬が歩いてくるのを見て野明が笑顔を向ける。
「遊馬。ごめん コーヒーすぐ持っていくね」
野明の手にあるトレイに空のままのカップが乗っていることを確認し、遊馬は苦笑しながら背を押す。
「コーヒー注ぐのに何分掛けるんだ? 気の回しすぎだ、馬鹿」
いいながら 野明の手からトレイを取り上げると 3つのカップにコーヒーを注ぐ。
2つには普通に。一つには少なく。
少ない一つに砂糖と牛乳を注いでカフェオレにすると「いこうぜ」と声を掛けて席に向かう。
野明はその後をゆっくりついていった。
「ね、遊馬」背中に声を掛けると 遊馬は立ち止まって顔だけ振り返った。
「どうしてここで朝ご飯食べようって おもったの?」
「約束したんだ、伯母さんと」
「約束?」
「後で話してやるよ、とにかく座ろうぜ」
そう言って野明の傍まで戻ってくると手を引いた。

席に着くと 遊馬はコーヒーカップを自分と伯母の前に置き、カフェオレを野明に手渡した。
何もいわなくても 自分の好みを把握してさりげなく気遣ってくれることに少し嬉しくなる。
「ありがとう」というと得意そうな顔で「どういたしまして」と笑顔を見せた。
その様子を向かいの席から眺めていた都が野明に話しかけた。
「えっと 泉さん?」
突然名前を呼ばれて慌てて視線を向ける。同席している人がいるのに失礼だったかなと思う。
「はい、すみません。 滝口さん、でいいのかな。」
隣にいる伯母と同じ呼び方になるので野明が少し悩んでいると都の方から助けを出す。
「『都』でいいよ。伯母と同じじゃ呼び辛いでしょ?」
「有難うございます。あの、私も『野明』でいいですよ」
「そう? じゃ野明さん、怒らないでね。単刀直入に聞くわ、篠原君のこと好きなの?」
「え?」突然の質問に吃驚して目を瞠る。
都の瞳をじっとみて真剣に訊いてるんだと確信して、誤魔化しや半端な回答は彼女に失礼だなと判断した野明は一度目を閉じ、大きく深呼吸すると しっかりと都の瞳を見据えて答えた。
「遊馬はとても大切な人です。都さんの仰る『好き』というのが恋愛対象ですか?という質問ならそれだけに答えるのは難しいんです。遊馬とは仕事の上でもコンビを組んでいますしそういう面でもかけがえの無いパートナーだと思っています。でも もし遊馬にプライベートで他に親しい女性が出来てしまったらきっと凄く辛いだろうなと思う。遊馬は私にとって凄く『特別な人』なんですよ。上手くいえなくて ごめんなさい。これでは答えになりませんか?」
ゆっくりと 言葉を選ぶように目を逸らさず真摯に答える野明を見て都は大仰に肩を竦めて見せた。
「・・・いいえ十分です。降参」
といって肩の高さで両手をパッと広げると遊馬に視線を向ける。
「だそうですよ、篠原君?」
「ったく 余計なことするなって。そういうのは自分で・・・・」
といいながら 手で顔を覆うようにして呻くその顔が少し朱い気がして野明はくすりと笑う。
遊馬にもちゃんと伝わったかな、と思いその顔をそっと窺った。

「ごちそうさまって感じよね」
言い捨てると都は遊馬に別の話題を振る。
「ね 日帰りするわけじゃないんでしょ どこに泊まるの、あの別荘?」
話題が変わったことに安堵して遊馬はそれに乗った。
「いや、コテージ借りてる」
「え そうなの?勿体無い。自分ちの使えばいいのに」
「実家に連絡取るの 嫌なんだよ」
「相変わらずよね、今シーズンオフで部屋空いてるしここに来たらいいじゃない?ね、伯母さん?」
と伯母さんに話題を振ると彼女は困ったように笑った。
「それは遊馬くんが嫌よね?」
「え? 嫌って言うか・・・」
答えに詰まる遊馬に伯母さんが助け舟をだす。
「折角彼女と旅行にきて 保護者と小うるさい小姑みたいな女のいるところに泊まりたくないわよ、ねぇ?」
苦笑する遊馬に都は交渉の矛先を野明に移す。
「そうなの? じゃ 野明さんは?」
「え? わ、私ですか?」
急に振られて動揺する野明に遊馬が慌てた。こういうとき 押し切られやすい野明の性格をよく知っている。
「ね 野明さんも折角なら賑やかな方が楽しいよね?」
「えっと、あの・・・」いいながら遊馬に助けを求める野明を見て遊馬は強引に会話に割って入った。
「駄目。もう荷物も置いてあるし今更移動なんてする気はないの」
というと、野明に「言いくるめられるんじゃない!」と釘を刺した。
野明はホッとした顔をして「ごめん」と返事を返し、都に「すみません」と頭を下げた。

遊馬は時計を確認すると「そろそろ 行こうぜ」と野明に声を掛ける。
「どこか行くの?」
都が問うと「買い物、デートだから邪魔すんなよ」と釘を刺す。
伯母さんが可笑しそうにクスクス笑い、野明は2人の間で反応に困って複雑な表情をしていた。
「伯母さん 会計お願い」と遊馬が振り返る。
「今日はいいわよ」
「いや でも・・・」
「約束どおり報告に来てくれたんでしょ? だからお祝いね、安いものだけど?」
「やっぱり 覚えてました?」といって遊馬が嬉しそうに笑う。
伯母さんは静かに頷いて「また 来て頂戴ね。用事なんてなくていいんだから」といい、ヒラヒラと手を振った。
遊馬は 照れくさそうな顔をして「必ず」というと野明の手をとる。
野明も「ご馳走様でした」と挨拶をして遊馬に連れられて店を後にした。
店内に残った 伯母と都は暫く閉まった扉を眺めていたがやがて気を取り直したように「さて お仕事しましょうか」といって伯母が先に立ち上がった。
俯いている姪の肩をぽんと叩いて「少し休んでから降りてらっしゃい」と声を掛けて厨房に向かう。
都は「そうする」と声を掛けて二階への階段を上り、自室にあてがわれた部屋のベッドに倒れこむと「私の方が長く見て来たんだけどなぁ」と呟いて枕を抱え込んだ。
さっきまでは まるで流れなかった涙が後から後から流れてなかなか止らなかった。

to be continue.....

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追記

二人きりにしておく展開に困って 可愛そうな女の子登場です(^^;
でも 遊馬って基本的に冷めたヤツだと思うので自分が気を持てない相手にはこんなもんなんだろうな、と勝手に妄想(笑)
で やっぱり 2時間くらいしか経たないノロノロ展開です(^^;
さっさと買い物行きなさいよって感じですよね(←いや 悪いの私ですが・・・)

長い駄文に最後までお付き合いくださいまして有難うございます
もし よろしければご意見、ご感想などいただけますとやる気が出て参ります(^^)
それでは まだまだ完結には程遠いお話ではございますが どうぞ見捨てないで見守ってやってくださいませ。

軽井沢編4 言霊

軽井沢編第4弾です
書いている最中に色々ありまして 最初に書いたものと全然違う話になってしまいました(^^;
おかしいなぁ・・・・
とはいえ なんとか形になったのでとりあえずUPしてみようと思います。
相変わらず 長い上に完結まではまだまだ道程が長いですがどうぞ見捨てないでやってくださいね(^^)
ご意見・感想などいただけますと やる気か出てまいります(笑)
ではどうぞ よろしくお付き合いくださいませ~

以下本文

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言霊
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「お先~」
先に入浴を済ませて リビングに戻ると野明はソファに沈むようにして眠っていた。
「おい、こんなとこで寝たらか風邪ひくぞ?」
声を掛けて肩を揺さぶると 気だるそうに目をあける。
「ん・・・遊馬 おかえり」
「ただいまって・・・いいから寝るならベッド使えよ、風呂 空いたから入ってきたらどうだ?」
眠そうに目を擦る野明に「立てるか?」といって手を差し出す。
差し出された手を取ると野明はゆらりと立ち上がり「お風呂いってくるね」と足元に纏めてあった手提げを持って浴室に向かった。
ふらふらと浴室に向かう野明を見送って『大丈夫か?』と思いはしたがついていく訳にも行かないので「おう」とだけ返事をして先ほどまで野明の転がっていたソファに深く腰をかけた。

程なくして 脱衣所の方から「わぁ!」という歓声があがり「遊馬ぁ!」と呼ぶ声が聞こえた。
呼ばれる理由には何となく心当たりがあったので よっと声を掛けてソファから立ち上がると扉の前に立ち「なんだ?」と声を掛けた。
カチャと戸が開き、すっかり眠さがとんだ様子の野明がひょっこり顔をだす。
「遊馬、すごいね!外」嬉しそうに遊馬の手を引いて浴室の戸を開けると板塀で囲まれた坪庭がライトアップされて掃き出し窓の外に浮かび上がっていた。
露天風呂気分が味わえる室内風呂といった感じだ。
「さっき見た」と苦笑して答えると、「あ、そうか。そうだよね」と野明は少しシュンとしてしまった。
その様子に思わず笑みが漏れる。
「いいさ。見せたかったんだろ?」
野明の頭をくしゃっと撫でて「サンキューな。」というと野明は笑顔を見せた。
「すっごく綺麗なんだもん。でも そうだよね、先に入ったならみてるよねぇ」心もち眉根寄せて言う。
「気にすんな、さっさと入って来いよ。ご希望ならお供しようか?」
にっと笑って言うと 野明は吃驚した顔で振り返り「希望しない!」といって慌てて背中を押すと遊馬をリビングに追い出した。
「ぜ~ったい 覗かないでね!」というとピシャンと扉を閉める。
遊馬は思わず吹き出すと 再びソファに向かう。途中 キッチンに向かい冷蔵庫からビールを一缶取り出した。

ビールを片手に暫くTVを眺めていると入浴を終えた野明が出てきた。
「おまたせ~」
「おう」
声を掛けると野明はスタスタと遊馬の傍にやってきて隣にぽすんと座る。
「ただいま」
「おかえり、それ似合ってるじゃん」
野明は今日買ったワンピース型の寝巻きを着ていた。
襟ぐりにフリルとリボンのついた可愛らしいデザインのそれは 肌触りのよいサラサラした生地で出来ていた。
「なんか・・・変じゃない?」野明は着慣れない寝巻きに落ち着かない様子で問いかける。
「いいんじゃないか? まぁ職場に持ってはいけないけどな」
「それは 無理だよね」
そう言って顔を見合わせて笑う。
遊馬の手にあるビールに目をとめて「私も持ってこようかな」とキッチンに向かった。
冷蔵庫を物色してウーロン茶をみつけるとグラスに注いで持ってきた。
「お茶?」
「うん。お酒は今いいかな、と思って」
「そっか」
そういうと再びTVに目線を戻す。静かな目をしてニュースを見ている遊馬の横顔を眺めながらゆっくり手にしたウーロン茶を飲む。
たまに短い会話をしながらただ並んでTVを見ているだけなのにひどく安らいだ気分になった。
ニュースが終わると遊馬は大きく伸びをする。
「そろそろ寝るか~」というと洗面所に向かった。
野明も慌ててその後を追い、二人で歯を磨き、顔を洗う。
リビングの明かりを落として寝室に入ると、遊馬は昨日と同じように「どっち使いたい?」と訊いた。
出入り口に近い方と 睡蓮のある池が望める掃き出し窓のある方。
少し悩んだ末に野明は 掃き出し窓に近い方のベッドを選択した。
遊馬は出入り口に近い方のベッドに入ってさっさと横になり、野明もそれに習って横になる。
「電気消すぞ」
リモコンを片手に遊馬が振り向く。
「うん お願い」
そういうと 部屋の明かりが落とされた。

少し間があいて遊馬の声がした。
「なぁ、もう寝たか?」
「ううん 起きてるよ」
「さっきの質問。」
「え?」
「俺の役は何か、聞いてない」
「あ、えっとね・・・」少し考えるような間のあとで野明は答えを紡ぎだした。
「おにいさん・・・かなぁ」
「兄貴?」
「私 兄弟いないからさ、ちょっと憧れるんだよね。お兄さんとかいたらいいなぁって」
「ふーん。そんなもんかね? じゃ、いい兄貴演じてやるよ。おやすみ 野明」
「うん おやすみ 遊馬」
挨拶を交わすと野明はあっという間に眠りに落ちた。

規則正しい野明の寝息が聞こえるようになるまでそれ程時間は掛からなかった。
遊馬は野明に背を向ける様に大きく寝返りを打つ。
「兄貴ね・・・」小さく呟くとゆっくり息を吐き出した。
なるほど無防備でいる訳だ、と妙に納得すら覚える。
『仲のいい兄貴』の姿を思って一緒に買い物を楽しんだりちょっとした旅行に出たりする。
それを意識しているか否かはともかくとして兄弟なので平気だよね、位の感覚なのだろう。
実際の兄弟がそんなに仲睦まじいとは思わないが野明の理想の範疇はこんなところなのかもしれない。
事実自分には兄がいたが尊敬はしていていても男同士の兄弟でもあり、年が離れていた所為もあってべったり仲良しということは決してなかった。
とはいえ ここまで一緒についてきた訳だから嫌われてはいないとして、『彼女にしてやる』と声を掛けて『迎えにきて』と応えたのだからもう少し意識してもいいんじゃないのかと思うと 軽い脱力感に見舞われる。
焦ってどうこうしようという心算も無かったが 聊か拍子抜けしたような気分になったことは確かだった。
頭だけ野明の方を振り返ると安心しきった顔をしてすやすやと眠っていて それを確認すると再び顔を戻し眠ることに決め、目を閉じた。

夜半を過ぎた頃 ものすごい雨音と雷鳴で野明は目を覚ました。
掃き出し窓にものすごい勢いで雨と風が吹き付けていて外はさながら嵐のようだった。
時折 稲光と雷鳴が響き窓の外がカッと白くなる。
野明は そっとベッドから脚を下ろすと窓のそばに歩み寄った。
眠りに落ちたときからそんなに時間は経っていないのに外の天気は一変していて窓の外は紗がかかったようで視界が殆ど効かなかった。雷光が時折視界を白く染める。
外には 殆ど明かりは無かったが コテージ同士を繋ぐ小道には申し訳程度の街路灯が配置されていてその近辺だけが仄かに明るかった。
ふと 遊馬のいるベッドの方を振り返るとこちらに背を向けるようにして眠っている姿が目に入った。

『おにいさん・・・かなぁ』
自分で言った言葉を思い出す。
『俺の役は何?』そう訊かれて言葉に困った。焦って口から出た言葉は『おにいさん』だった。
けど、それは本当は少し違う気がする。
遊馬は 『遊馬』であって私の中でどんな役を担ってますか、と訊かれても一言でいえない。
きっと遊馬はこんなことまで考えて質問したわけではないと思う。
単純にままごとの話が出たので配役を訊いて見ただけなのだろうけれど、それをサラリと返す余裕が自分には無かった。
遊馬は仕事上のパートナー、気の合う友達、休日もつるんで遊ぶ仲間。
それから手のかかる子供みたいで 信頼できる兄のような親友のような人だ。
でも 恋人ではない。
はじめにままごとみたいだと言ったのは2人で家事をしているのが『新婚さんみたい』と思ったからだ。
ということは その時の遊馬の配役は『旦那さん』だったことになる。
でもそれを言うのは恥ずかしくて言葉を濁した。もしそう言って遊馬に拒絶されたらこの後どんな顔をして過ごしたら良いかわからなかったから。
遊馬に拒絶されるのが怖いということに思い至って初めて納得する。
『そっか、私、遊馬が好きなんだ』
多分仕事の相棒とかそいういうものとは違うところで、『遊馬』が好きなんだ。
そう思うと まともに遊馬の方を見ているのが辛くなった。
「あんなこと いわなきゃ良かった」と思わず口に出して呟いた。
あんなことが『ままごと』と引き合いに出したことなのか遊馬を『おにいさん』と言った事なのか自分でも図りかねて小さく溜息を吐いた。
雨足は弱まることなく降り続き 雷鳴も断続的に響いている。
雨の日は あまり良くない記憶が多いなとふと思った。
エコノミーに載った遊馬がグリフォンにつぶされた時も 熊耳さんが撃たれたときも二課棟に内海たちが乗り込んできたときも雨が降っていていた。
少し寒さが増した気がして両手で自分の肩を抱きしめる。
大きく息を吐いた時 轟音がして視界が真っ白になった。
思わず声を上げてその場にしゃがみ込む。
地面が少し揺れ、窓ガラスがビリビリと振動し反響音が辺りに響いている。
至近距離に落雷があったんだ、と気づくまで数瞬かかった。

その音と振動で 遊馬も目を覚ました。
「どうした?」
「落雷。近くみたい」
応えると遊馬はリモコンを操作して明かりをつけようとした。
「停電か?」
そういわれて外を見ると先ほどまで点いていたはずの街路灯が消えているのに気がついた。
「そうみたい、街路灯も消えちゃってる」
「そうか、野明 起きてたのか?」
布擦れの音と共に遊馬の声が聞こえる。
「うん、雨音で起きちゃった」
遊馬の気配を感じて振り返るとすぐ後ろで同じように外を見ているのが気配でわかった。
完全に真っ暗になってしまったので 部屋の中も外も視界が無い。
「ここに立っていても仕方がないし、リビングに行くか?」
「でも 向こうも真っ暗でしょ?」
「ガスは使えるだろ、コーヒー飲まないか? 目が覚めちまった」
「うん、でも・・・」
「明かりだろ? ここ動くなよ、部屋の隅に確か・・・」と言いながら遊馬が動く気配がして程なく懐中電灯の明かりが点いた。
「すごい、よくそんなの有ったね」
野明が感心していると、「部屋に入ったときに非常灯の位置とか確認しなかったのか?」と逆に不思議そうに訊かれた。
野明は「しなかった」と言ってクスリと笑う。こういうところが遊馬だな、と思う。
いつでもちゃんと色んなことを想定して行動している。
行き当たりばったりな自分との違いを見て『やっぱり遊馬といると安心』だと思った。

リビングに入ると 遊馬は野明をソファに座らせ「ここで待ってろ」といって玄関に向かい、そこからもう一つ懐中電灯を持って帰ってきた。
一つを野明に手渡し 自分も一つ手に持ってキッチンに入る。
ガスコンロのつまみを捻ると青い炎が踊った。ガスが点くことを確認すると水を入れた薬缶をかける。
沸騰するまでの間にインスタントコーヒーと砂糖、マグカップを取り出して並べた。
冷蔵庫から手早く牛乳を取り出すと小さめの片手鍋に移して直ぐに残りを冷蔵庫にしまった。
小さな火をつけたコンロのうえに片手鍋を載せると丁寧に温める。
「てつだうよ」と言って腰を浮かせた野明に「いいから座ってろ」といって手際よく作業を進める。
程なくしてコーヒーと カフェオレを作りおわるとまずカフェオレを野明に手渡した。
次いで 自分のコーヒーを取りにキッチンに戻り ついでとばかりに開封済みのポッキーも手にして戻ってきた。
とりあえず懐中電灯を一本TVの上において手元を照らしもう一本の明かりは消した。

「いつから起きてたんだ?」
ブラックのコーヒーを口に運びながら静かに話しかける。
「何時だろう、30分くらい前かも。雨と雷の音、凄かったんだよ」
「そうか、場所変われば良かったな。落雷があるまで気づかなかった」
「私が向こうにするって言ったんだもん。遊馬が気にすることないよ」
そういうとカフェオレを啜る。「あ おいしい」と呟くと「そりゃ よかった」と遊馬が笑った。
少しの間沈黙が続き、遊馬が心配そうに口を開いた。
「なんか元気ないな、もしかして雷怖いのか?」
断続的に雷鳴が聞こえてはいるがさっきほど至近距離の音ではなくなってきていた。
「雷が怖いって言うんじゃないんだけど、さっきのはびっくりした」
「あれはなぁ、俺も起きたし」
「でも、雨はあまり好きじゃなくなった気がする。ここ暫く 嫌なことがある時は雨の日が多かったから。」
そういうとカップをテーブルに置き 額を膝につけ丸くなるようにして両脚を抱える。
「それは今日も嫌なことが有ったって事か?」
目線を外すようにして静かに問う声に思わず顔を上げる。
「『雨が好きじゃなくなった気がする』ってのは 今そう思ったってことだろ?」
「・・・あ・・・・」
野明は心の中で舌打ちしたい気分だった。
考えに沈んで勝手に自己嫌悪に陥っていて言葉の選択を誤った。
以前からそうだというなら『なくなった気がする』ではなくて『好きじゃない』というべきで無意識に出た言葉だったためそこまで気が回らなかった。
そして殊この件に関しては自分の中の問題でこのタイミングで口に出して、まして遊馬に聞かれるのは一番避けたいことだった。
誤解を解かなくてはと思う一方で 自分でも整理がつかないことをどうやって説明すればいいのかわからずに逡巡していると先に 遊馬が口を開いた。
「着いてきたの、後悔してるならそう言えよ? 幸いにも今のところ何も無かったわけだし夜が明けて雨足が落ち着いたら東京に帰るか。」
とても穏やかな口調でそう言って野明の頭をポンと軽く叩くと マグカップをもって立ち上がる。
野明は慌てて遊馬のパジャマの袖口を掴んだ。
「ごめんなさい、そうじゃなくて。違うから、そんなこと言わないで」
何に対してなのかはっきりしない後悔の念と 遊馬が離れていきそうな不安感で 胸がぎゅっと締め付けられるような感覚が走り涙が出てきた。
一度出はじめると もう止まらない。あとから後から涙が溢れてきて顔を上げていられなくなり俯いた。
その様子を吃驚したように見ていた遊馬は 困った顔をしてもう一度ソファに座りなおした。
「野明 どうして泣くんだ?」
カップを置いて 顔を覗こうとしたが野明は袖口を掴んだまま完全に下を向いて顔を上げようとしない。
少し考えて、袖口から野明の手を離し肩にそっと手を掛けると身を強張らせる気配がした。
遊馬は黙って手を離しソファの背もたれに手を掛け直した。
野明が落ち着くのを待つように遊馬は何も言わずに雨音に耳を傾けていた。
暫くして、小さな声で「ごめん上手くいえない。でもお願い もう少しだけ傍にいて」と言うと遊馬の胸元にコツンと額を押し当てた。
遊馬は少し驚いたものの、小さな溜息を吐き『気の済む様にさせてやるか』と思った。
「了解。いい兄貴 演じてやるって言ったからな。傍にいてやるよ。その代わり 無理はするな。帰りたくなったら ちゃんと言え」
そういうと 野明はイヤイヤと首を振る。
「・・・帰るのはやだ。遊馬と一緒に居たいの」
そう言って遊馬の胸元に頬を寄せた。
『いい兄貴を演じてやる』という遊馬の言葉に激しく後悔した。遊馬を『おにいさん』と言ったのは自分。それなのにその通りにしてくれると言う遊馬に今更何を言えばいいのか判らなくて胸が軋む思いがする。
自分の発した言葉を今頃になってとても恨めしく思った。

胸元に頬を寄せて身体を預けるようにしている野明を横目にみて遊馬は内心溜息を吐いた。
『いい兄貴を演じてやるよ』と言ったのは自分だ。
野明がそう望んでいるのだから好きにさせてやろう、と思った矢先にこれだけ無防備にしな垂れかかってこられると正直眩暈がしそうだった。
『これは兄貴の役割なのか?!』思わず野明に問いただしてしまいたくなる。
少しはこっちの気持ちも察して欲しいものだと思わずにはいられなかったが 今それを言うのは精神的に不安定になっているらしい野明には酷なことだと思いぐっと飲み込んだ。
とはいえいつまでも この沈黙に耐える自信がなくて何か話題を探す。
「復旧しないな」
「え?」
「電気。落雷の磁場の影響なら数秒で復帰するだろ。変電設備のブレーカーが原因なら30分もあれば復旧するはずだし。どこかで 電線が切れたのかもな」
「あ・・・そうだね。あれからどの位たったの?」
遊馬は腕時計を確認すると時間は午前3時を少し回っていた。
「一時間ってとこか。切れてるなら復旧は夜が明けてからになるかもな。雷も大分収まったことだし夜明けまでまだ2時間以上ある。そろそろ向こうに戻るか」
野明の頭をポンと軽く叩くとTVの上から懐中電灯を取り野明に手渡す。
自分も机の上に置いていた懐中電灯を手にして野明の背を押した。
各々 ベッドに入って「おやすみ」と挨拶を交わすと布団に包まって明かりを消した。

2人とも互いに自分の発した言葉に少なからず縛られてしまい簡単に眠りに就くことは出来なかった。

to be continue...
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追記

日記の方を見てくださった方はご存知かと思いますが一度殆ど書き上げた原稿を雷に打たれて消失してしまいまして 最初はもっと幸せ一杯であったはずのお話が書き直すとこんなことに・・・(T∇T)
保存中に電源が落ちたためPCごとリカバリと言う激しく切ない状態に追い込まれてその他SSと描きかけだった挿絵も消失・・・
なので挿絵なしです(笑)
なにしろ今回は話が暗くなったので書いて楽しいところがなくなってしまったというのも一要因です(^^;
この2人 先日から完全に寝不足だと思うんですが・・・大丈夫でしょうかね?(笑)
書いた自分が言うな!って感じですが・・・・

長い駄文に最後までお付き合いくださいまして有難うございます。
完結までの道は長そうなので挫折しないように頑張りたいと思います。
ご意見、ご感想等のコメントをいただけますとそれを糧に頑張れますのでお時間のある方は是非宜しくお願い致します(^^)

軽井沢編3 配役

軽井沢編第三弾

やっとコテージに着きました(笑)
お泊り旅行の一日目 スローペースでスタートです(笑)
まだまだ完結には程遠いですが・・・最後までお付き合いいただけますと幸いです。

以下本文です

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配役
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「ここに泊まるの?」
野明は目の前のコテージを見て遊馬の顔を覗き込む。
「そ。連泊するならこっちの方が経済的だし、何より気兼ねなくていいだろ?」
言いながら 遊馬は鍵を開けて中に入る。
パチンと部屋の電気をつけると、車に荷物を取りに戻った。
野明も慌てて後を追う。
一通り荷物を運び終えると 遊馬はコテージ真横にある駐車スペースに車を入れてくるといって外に出た。

1人残った野明は室内をぐるっと見てまわる。
ダイニング机の上に建物の説明と注意書きのような冊子があるのに気付き手にとった。
間取りは大きな1DKといった造りで 16.5畳のリビング・ダイニングにカウンターキッチン、隣室はセミダブルのベッドが2台ある13.5畳もある寝室。お風呂とトイレ、洗面所はきちんと独立していて、バスルームには大きめの窓があり外囲いにかこまれた坪庭を見ることができる造りになっている。寝室の窓からは睡蓮の浮かぶ小さな池が望め、大きく張り出したベランダには専用のバーベキュー台もあるらしい。
典型的な貸し別荘。
野明は冊子を置いてキッチンに向かう。
戸棚を開くと一通りの食器や炊飯器などの家電、調理器具、調理道具に食器洗い用のスポンジや洗剤、塩、醤油をはじめとする簡単な調味料も用意されていた。
洗面所も覗いてみれば 洗濯機も物干し台もあるし、掃除機他掃除用具も一式、タオルやバスマット、シャンプーやリンスに石鹸まで揃っていて 冷暖房も当然完備されていた。
「至れり尽くせりだね」と思わず口に出す。
「ホテルより充実してるだろ?」と帰ってきた遊馬が玄関口で答えた。
「本当だね、ないのは食料品と着替えくらい」
「だから 買い物してきだんだろ?」
遊馬は愉しそうに笑って買ってきた食料品と寝巻きなどの入った袋を手にしてキッチンカウンターにドサッとおく。
「冷蔵庫 冷えてるかな?」といいながら扉を開け中からひんやりした空気が流れ出すのを確認すると袋の中身を冷蔵庫に入れ始めた。
野明も駆け寄って「やるよ」と声を掛けたが、遊馬は「いいから座ってろ」と言ってテキパキと冷蔵庫の中に買って来た物を仕舞い込んだ。
手持ち無沙汰になってしまった野明は寝室を覗きに行く。広い部屋に結構な間隔をあけて2台のベッドが配されていた。『随分無駄に場所使ってるなぁ』と思って近づくと 其々のベッドの下にトランドルベッドが用意されているのをみてこの間隔の広さに納得する。
そういえばダイニングのいすも4客あったしここは4人まで泊まれる建物なんだと得心が行く。
バスルームを覗けばそこもかなりの広さで『ひろみちゃんでも足が伸ばせそうだ』と思うくらい浴槽も広く ファミリー層でも十分に対応できる施設だと知れた。
床も浴槽も綺麗に洗ってあるのを確認して遊馬に声を掛ける。
「ねぇ 遊馬ぁ お風呂って沸かす?」
時間はもう8時を回っていて遊馬は少し考えて答えた。
「順番に入ると時間掛かるしな、沸かしといてくれ」
「はーい」返事をして野明は全自動給湯器のボタンを押した。

リビングに戻ると遊馬は既にソファに座ってTVを見ながら寛いでいて野明に軽く『こいこい』と手招きをした。
「なあに?」といってそばに寄ると「座れよ」といって自分の隣をぽんっと叩いた。
「そこに?」
「嫌ならいいけど?」
「座らせてもらおっかな」
遊馬の横にぽすんと座って顔を見上げる。
「ほら」
グラスに移した缶チューハイを野明に手渡すと、自分もビールの入ったグラスを手に持った。
「おつかれさん」と軽く笑う。
「疲れたのは遊馬でしょ? 私運転してないし」
遊馬の顔を覗き込む。
「そうでもないさ。大した距離じゃないしな」
さらりと言う遊馬に 少し不満気な顔で頬を挟むように両手を添えて言う。
「目の下に隈できてるよ。大丈夫?」
「ばーか 気にしすぎ。今日はもうあとゆっくり休むだけだし明日になったら消えてるさ」
言いながら つまみに出していたポッキーを一本野明の口にぽいっと放り込む。
野明は遊馬の頬から手を離してポッキーの尻尾を人差し指で押しながらポリポリと食べると「ならいいんだけど」と呟いた。
TVを見ながらお酒とつまみを手にリビングでまったりと過ごす。
暫くしてから野明は 「あ!」と声を上げた。
「ご飯前にこんなの食べてよかったのかな・・・」
「そういや 惣菜買ってたよな、確か・・・」
そういうと二人でキッチンに向かい冷蔵庫とレジ袋を開く。
買ってきたものを机に並べて幾つか選ぶとお皿に出してダイニングテーブルの方に運んでいく。
遊馬も飲みかけのビールやチューハイをダイニングテーブルに移動させた。
「野明、お茶とコップな」
「お茶ってあったかいの淹れる? それともペットボトルの?」
「そうだなぁ 熱いのくれ」
「はーい」
返事をしながら急須に買ってきたティバッグの緑茶を入れてお湯を注ぎ抽出を待つ間に湯呑みを探してお湯で温め お茶を注いでテーブルに運ぶ。
「はい お茶」
「サンキュー」
お茶を受け取る遊馬を見て野明は『なんだかなぁ』と思う。
いつも二課でしている事とやってることは全く変わらないのだが何となく浮き足立っている自分が居る。
遊馬の正面の椅子に座って食事を摂りながら、ふと思った。
「ね、遊馬」
「ん?」
「向かい合って座るってあんまりない気がしない?」
二課ではいつも隣に座る。食事もそうだし普段の席も隣同士だ。
「そうか? ・・・そうかもな。それがどうかしたのか?」
「ちょっと新鮮だなぁって思って」
「新鮮ねぇ。そういうもんか?」
不思議そうに首を傾げる遊馬に野明は「うん」と頷いてみせる。
「なんかちょっと変な感じ」
両手で顎を支えるように肘を突いて遊馬の顔をしげしげと眺める。
「・・・なんだ?」
遊馬は怪訝な顔をして箸をとめた。
「何ってことも無いんだけど・・・」
何と言って良いかわからなくて言葉に詰まる野明をみて、遊馬は「ふーん」としたり顔で頷く。
「なんとなく落ち着かない、違うか?」
悪戯っ子のような笑顔で楽しげに問う。
「えっと・・・そう・・・なんだと思う。良くわかんないんだよね」
困った顔で答える野明に目線を合わせると クックッと笑う。
「あんま悩むなよ そんなんであと3日保つのか?」
「・・・悩んでる様に見える?」
「見えるけど、違うのか?」
「・・・どうなんだろう?」
「ほら それだ」笑いながらそういって席を立つと野明の隣の席に移る。
「隣の方が落ち着くなら 並んで座ればいいだろ」
頭の後ろで手を組んで軽く伸びをすると「折角 遊びに来たんだから楽しくやろうぜ。」といって野明の髪をくしゃっと撫でた。

食事が一段落して 使った食器を片付けにキッチンに入る。
野明の洗った食器を遊馬が綺麗に拭いて棚に積み戻していった。
食事当番の時に何となく出来上がった分担。
いつもと同じ作業なのに 妙にそわそわした気分になった野明は遊馬にくすくす笑いながら声を掛けた。
「なんか ままごとしてるみたい」
「え?」
「家付き 実物大のままごと」
「・・・・まままごとねぇ・・・」成る程、確かにそうかも知れない、と思う。
「遊馬は子供の時にやらなかった?」
「・・・あんま 記憶に無い」
「え~ そうなの? 近所の女の子とか公園でやってるのに巻き込まれたりとかさ?」
「小さい時は公園とかあんま行かなかったしなぁ。爺さんと住んでたから。」
「そうなの?」
「庭で大人相手に過ごす時間の方が多かった。学校上がってからは外でも遊んだけどな」
「学校に上がると 男の子巻き込んでのままごとってしなくなるよね。嫌がられちゃうし」
「家に来た客の子供と数回やったくらいかな、多分。すぐ逃げるから相手が怒るんだよな」
溜息混じりに言う遊馬に野明は笑った。
「遊馬らしいというか。興味ないと全然乗ってくれなさそうだよね」
「楽しいと思うか? 男があんな遊びして。何が悲しくて会社帰りのサラリーマンの役とか演じなきゃならんのだ。」
「へぇ? 旦那さん役だったんだ、それは好待遇じゃない」野明はクスクス笑う。
「なんで?」
「そりゃね、好意がある人ほど旦那さん役にしたいじゃない。そうでない人は子供とか赤ちゃんとか果ては近所のお店の人とか演らされるんだよ。そういうの無い?」
「さあなぁ・・・そういうのは記憶に無いなぁ・・・・」
「遊馬 モテモテだったんだ♪」
「そういう問題か?」遊馬は呆れたような顔で野明を見下ろす。
「そりゃ 旦那さん役に指名するなら好きな人がいいじゃない? それ以外の役指名されたこと無いならモテモテじゃない」
からかう様に言って笑う野明を横目に遊馬はにやりと笑う。
「じゃ、野明。お前は俺に何の役くれる?」
虚を突かれて野明の動きが止まる。
遊馬はにやにやと笑いながらもう一度聞く。
「実物大のままごと、なんだろ? 俺の役は何?」
「えっと・・・」
口ごもる顔が赤く見えるのはチューハイの所為ばかりでもないだろうと思いながら野明の顔を眺める。
更に一言いってやろうか、と思った時 給湯システムが軽やかな電子音で浴槽に湯が張れたことを知らせた。

「あ 遊馬! お風呂沸いたよ」
あからさまにホッとした顔をして話題を逸らす野明に思わず小さく笑いその話に乗ってやる。
「先 入ってくるか?」
「私 用意あるから遊馬先でいいよ。」
「そっか? じゃお先。」
「ごゆっくり」と小さく手を振る野明に 片手を上げて返事をすると着替えを手に浴室に向かう。

『逸らされた質問の答えはおいおい聞き出すさ。時間は有るんだし』そう思うと遊馬は妙に楽しい気分になって浴室の扉を開けた。

to be continue....

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追記

なかなか時間が進みません(笑)
時間経過から行けば 2時間くらい?!
このままのペースでうっかり4日設定してしまった休日を何回で書ききるのでしょう?(^^;
まずは ここまで 長い駄文にお付き合いくださって有難うございます。

軽井沢編2 お出掛け

今度は出発の野明サイドです。
最初は別行動ですものね(笑)
というわけで 軽井沢編第二弾。
皆様の暖かいお言葉に支えられて書いてます(笑)
どうぞよろしくお願いします!!

以下本文です

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お出掛け
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野明が寮に戻ると 11時半を少しまわっていて人気疎らなコモンスペースを抜けるとまっすぐ自室に向かった。
部屋の前で鍵を出していると、これから出かけようとしていた緑が野明に気づいて声を掛けた。
「野明、今帰り?」微かに含みのある笑顔で問いかける。
「うん、だたいま、これから出勤?」答えながら鍵を開けて扉をひらく。
「今日は夜勤。お昼食べに出ようかと思ったの。野明は?」
「とりあえず着替えて このあと出かける」
「そうなんだ? 篠原君も一緒?」
「後でむかえに来るっていってたよ」
「そうなんだ~」とにこにこと笑う緑の顔に野明は少し怯んだ。
「な、なに?」
「い~え♪ お昼、買いに行こう。話聞かせてもらうわよ?」そういうとさっさと野明の手を引いて近くのコンビニに向かった。

コンビニで弁当と飲み物を購入し野明の部屋にやってきた緑は含みの笑顔を見せながら手早く買ってきたものをテーブルに並べた。
野明がアンサンブルを脱いでTシャツとホットパンツに着替え緑の向かい側に座ると、弁当をつまみながら徐に緑が口を開いた。
「ね、あの後、どうしたの?」興味津々といった様子の緑に野明は気圧される様に身を引いた。
「どうって・・・飲み直そうって遊馬が。それで東口のバーに行った」
「へぇ? 良かったじゃない。で?」楽しそうに後を促す緑に野明はバツが悪そうに続けた。
「酔っ払って、寝ちゃったの」
「誰が?」
「私が。」恥ずかしくなってちょっと目を逸らす。
「・・・嘘でしょう?」緑は目を丸くして言った。「あんた 蠎(うわばみ)じゃない?」
「蠎って・・・。でも そうなの。注意されたんだよ、飲み方に気をつけろって。・・・でも寝ちゃったの」
野明は ほうっ・・・と息をついた。
「そう。それで どうなったの?」目を眇めて緑が先を促す。
「どうやっても起きないし電車もないからって 遊馬がホテルに運んでくれたの」
こういうことを普通に話せるようなタイプではないとおもっていただけに、さらりという野明に緑は少なからず驚いた。
「え? じゃぁ・・・」一線を越えたのか、と聞こうとする前に野明が続けた。
「で Tシャツとか買ってきてくれて、着替えてシャワー浴びて、酔いが醒めるまで面倒見てもらちゃった」
「・・・・・・それで・・・?」
「それでって、それだけだよ。其々 ベッドで朝までねてて起きて帰ってきたらこの時間に・・・って 緑?」緑の眉間に小さく皺が寄っている。
「其々って シティホテルに泊まったの?」
「うん、ツインの部屋を取ってくれて。」
緑は まじまじと野明を見た。
「で? よもや何もなかった、とか言わないわよね?」
「何もって、何もないよ。叱られたけど。 『一応 年頃の娘なんだから行動に気をつけなさい』って・・・」
緑は呆然とした顔で野明を見て、その後天井を仰ぐと はぁーっと大きく溜息をついた。
上手くやってねと言っておいたはずなんだけど・・・そう思い眉間に人差し指を添えるようにして軽く目を閉じる。
「それで 手も出されることなく帰って来れちゃったわけね?」
そういうと野明の顔を覗き込んだ。「そういう言い方しないでよ」と野明は拗ねたような顔で答える。
「遊馬は 『酔っ払いには手を出しません』って。そういうの嫌なんだって」
緑は『へぇ、意外に生真面目なんだ、篠原くん』と思い軽く目を瞠る。
「大事にされてんじゃん、野明」
「・・・そうかな・・・?」野明は小首を傾げる。
「じゃないの? だから素面でないときに手を出して後悔したくないってことでしょ? 何も拗ねることじゃないわね。」
「別にそういうことで拗ねてるわけじゃないって」
「そういわれるのが嫌なら せめてほろ酔いで済む程度にしとくのね。」
「だから そうじゃなくて・・・」
「はいはい いいわよ、何でも。で 今日これから出かけるって?」
「あ うん。そうそう、軽井沢行こうって。」
「軽井沢って今から?」時間を見るともう1時を過ぎている。確かに日帰りできない場所ではないがそれでは 大して遊ぶことも出来ずに疲れに行くようなものだろう。
「もしかして 泊まり?」
「今週、準待機だから」野明は目を少し逸らすようにして答える。
「そっか」緑は含み笑いを見せた。
「じゃ 荷物の用意とかあるか。私、一旦部屋に戻るわ、後でお化粧してあげる♪」
そういうと食べ終わったお弁当の容器をテキパキと片付けて「後でね~」と手をヒラヒラ振りながら部屋を出て行った。
部屋に残された野明は一息置くと「さて」と声を出して立ち上がり荷物を纏めるべくクローゼットを開けた。
ボストンバッグに着替えや洗面道具などを詰めると寮の受付に降りて外泊届けを提出する。
部屋に戻ると再びクローゼットを開いて『何を着ていこうかな』と端からハンガーを滑らせるようにしながら中身を物色していき、悩んだ末に麻で出来た生成りのワンピースを手に取った。
いそいそと着替えて姿見の前でくるりと回ったりしているとコンコンと扉がノックされて緑が顔を出した。
「どう?用意終わった?」
「うん、大体ね」
野明が答えると、緑は野明の格好を見て「ふーん」と言いながら口の端に笑みを浮かべる。
「いい心がけじゃない?」というと野明の頭をぽんぽんと叩いた。
「じゃ お化粧しましょうか♪」というと楽しそうに野明に化粧を施す。
昨日とは違う色のパレットを使って手際よく色を乗せていくと最後にリップの上にグロスを重ねた。
「うん、完成!」といって満足そうに頷くと手鏡を取り出す。
「どう?」
「ありがとう」野明は暫く鏡を覗いてから「色で雰囲気って変わるんだねぇ」としみじみ呟いた。
昨日はピンク系の色が多かったのでどちらかと言えば甘い感じのメイクだったが 今日はグリーンやブルーが入っていてちょっと凛とした感じの仕上がりになっていた。
「今日は服が生成りだからね」と言いながら緑は小さなメイクパレットを2つ野明に差し出す。
「使い方教えてあげるから座って」というと野明にメイクの方法をレクチャーし始めた。
一通り説明すると 小さなポーチに寒色系と暖色系2種類のパレットと小さなグロスとリップを入れて「はい」と野明に手渡した。
「ちょっと使っちゃってるけど、あげるわ。私はこの色あんまり使わないし。」
「え、でも・・・」
「頑張ってらっしゃいって意味込めて。取り敢えずもって行きなさいよ。中身はトライアルキットの寄せ集めだから気にしないでね」というと にっと笑って言った。
「リップの色は薄いのにしてあるから、ついちゃっても目立たないように」
「なっ・・・・!」野明が顔を真っ赤にして緑の方を見ると、緑は楽しそうにケラケラと笑った。

暫くして 野明の携帯電話が軽やかな音を立てた。
遊馬が自分で設定して行った着信音なのでディスプレイを確認しなくても相手は彼だとわかる。
「はい、もしもし」
「あ、俺。今から車でそっちに行くけど大丈夫か?」
「うん どのくらいかかる?」
「30分見といてくれ」
「わかった、気をつけてきてね」
野明が電話を切る。
「すぐ来るって?」
「30分くらいで来るみたいだよ。」
「そっか、忘れ物ない様にね。楽しんでらっしゃい♪」」緑は笑顔で野明の肩をぽんと叩いた。

30分もしないうちに再び携帯が軽やかな音を立て、遊馬の到着を知らせると野明はボストンバッグとハンドバッグを手に部屋を出る。
寮の玄関を出たところで ハザードを出して止る車を見つけた。
遊馬が降りてきてボストンバッグを受け取ると「荷物、これだけか?」と声を掛け、助手席の扉を開けた。「先 乗ってろよ」と促し手にしたボストンバッグをトランクに仕舞う。
運転席につくと遊馬が「出るぞ」と声を掛けとゆっくりと車が走り出した。

走り出してすぐ「交通情報検索してくれ」といって遊馬は野明に自分の携帯を手渡した。
「えと、どうやって?」困った顔でそれを受け取ると一応ディズプレイを開いてみる。
そもそも機械が苦手な野明は基本的な通話とメール以外の機能を殆ど使いこなすことが出来ない。
レイバーに乗れることと機械が得意なことは全く別問題なのだ。
遊馬がアプリケーションの使い方を説明したが野明は結局理解することが出来ず 車が関越に乗ったこともあり携帯での検索を諦めてラジオで情報を取得することを選択した。
ハイウェイ・ラジオの電波を捕まえると交通情報に耳を傾ける。
道中大きな混雑は報じられておらず順調なドライブが出来そうだった。
「碓氷軽井沢I.C.まで ノンストップで一時間半ってとこだな」
遊馬が前を見ながら口にした。
それは野明に語りかけたというよりもラジオの情報を分析した結果が口をついて出ただけ、という口調だった。
「そんなもんで着くの?」意外な近さに驚く。
「でないと、準待機中に出かけられないだろ?」呆れたような顔で言われ、準待機であることを忘れかけていた野明は惚けたように「そっか、準待機・・・」と呟いた。
『途中、寄りたいところはあるか』と訊かれたが、まるで土地勘のない野明にはまったくわからず、苦笑した遊馬はそのまま運転を続けた。

隣でハンドルを握る遊馬の顔を何とはなしに眺める。
いつも見慣れた遊馬の横顔。
初めて会った頃より少し精悍さを増した顔、シャープさを増した顎のライン。
今まであまり意識してみることがなかったその顔をまじまじと見ていると心臓の鼓動が早くなる気がして少し落ち着かない。
一度目を逸らして目線を前方に向けたものの、すぐに遊馬の方が気になってまた目線を戻した。
『どうしてこんなに 落ち着かないんだろう?』
遊馬の運転する車に乗るのは初めてじゃない。
任務中、指揮車に同乗する事もあれば、キャリアを運転する遊馬の隣に乗ったこともある。
研修や説明会の時には公用車で相乗りすることもあったし 遊馬の助手席に座ること自体はさして珍しいことではない筈だ。
休日を共に過ごすことが多いため私服が珍しい、ということもない。
なのにどうしてこんなに落ち着かないのだろう。
泊まりで出かける、ということがその一因なのかもしれないが、月の半分は二課棟で泊り込みになる中で宿直室で雑魚寝したことも一度や二度ではないし、二人でということなら着任間もない頃に手違いの結果とはいえ酒田の旅館で同泊した経験もあった。さらに遊馬は北海道の実家まで押しかけてきて泊まって帰ったことすらある。
何かにつけて 『初めて』ということがこれほど乏しい相手というのも珍しいと思う。
まして 彼とは付き合っているわけではないのだから。
野明は今朝、彼が発した『彼女にしてやる』という言葉を思い出しその真意を測りかねた。
かといって 今更『あれは 本当か』と問い直す勇気もない。
結果として自分は『迎えにきて』といい、彼は迎えに来たのだからそれが答え、と取ることもできるかも知れないが、はっきりとした返事をもらえたわけではない野明は結果不安を抱えることになってしまった。
自分のあの答えは告白したも同然で、それに気付かないでいるほど遊馬は鈍くないだろう思う。
『遊馬はどう思っているんだろう?』と考えながら野明は暫くの間、運転を続ける遊馬の横顔を眺めていた。

藤岡のJCTを通り上信越道に入って暫くすると 遊馬が不意にこちらを向いた。
一瞬目が合ったが遊馬はすぐに目線を正面に戻し、「どうした?」と声を掛けた。
「何が?」
「落ち着かないみたいだからさ、気が進まないなら無理せずに帰るか?」
考えていたことを見透かされたような気がして吃驚した。
「あの、違うよ、遊馬。気が進まないなんてそんなんじゃないの。そうじゃなくて、なんか変に緊張しちゃって・・・なんだろうね?」
答えながら、『そうか、私 緊張してるんだ』と納得する。と同時にどうして緊張するんだろう、と不思議に思った。
「嫌じゃないならいいんだけどな、なんか有るならちゃんと言えよ?」
遊馬が自分を気遣ってくれているという嬉しさと くすぐったさが同時に感じられて先刻までとは違う意味でそわそわする。
「うん。ありがとう。でも帰るのは・・・やだ。」と答えると恥ずかしさも手伝って遊馬の顔から目を逸らした。
「了解。じゃ、少し気ぃ抜いとけよ? 緊張が感染るだろ?」
言いながら遊馬が左手を伸ばし髪をくしゃっと撫でる。その心地よさで緊張が解れていく気がして笑顔を返した。
もうすぐ高速を降りる、という頃になって遊馬が『宿に向かう前に買い物に行こう』と言い出した。
『ホテルじゃないから入用なものを揃える必要がある』というので「どこに泊まるの?」と訊いたが楽しげな様子で「行けばわかる」というだけで教えてくれない。
少しむくれると「お楽しみってやつだな」と言いながら額を人差し指で小突き、楽しそうに声を上げて笑った。

高速を降りて着いた先は とても大きな商業施設だった。
「こんなところがあるんだ~」と素直に驚く。ショッピングモールというのは買う買わないにせよテンションが上がる。
「今日は あんま時間ないからざっと要るものだけ買うようになるけどな、明日ゆっくり来ようぜ?」
テナント数が総計200を超える施設では とても一日、ましてやこんな時間にやってきては回りきれよう筈もない。
遊馬とならんで歩きながら 横顔を見上げると 遊馬と目が合ってなんだか擽ったい様な胸がキュンとするような感覚になった。
「えっと、腕 組んでもいい?」と訊くと少し驚いたような顔をした遊馬はそれでも 「どうぞ」といって腕を差し出してくれた。
嬉しくてその腕にぴったりとくっついて歩く。
『こんなことは二課にいるときには絶対出来ないな』、と思わずクスリと笑うと遊馬は「なんだよ?気持ち悪いなぁ」と言って顔を顰めた。

遊馬の指示にそって、ちょっとした食べ物や飲み物などを買い込みならがらショッピングモールを歩く。普段コンビニでお弁当を買うのとは違ってすこしワクワクした。
フロアガイドに一度ざっと目を通しただけで大体の位置を把握してしまったらしい遊馬は迷うこともなく目的の店を効率よく回って買い物を済ませていく。
『こういうところが凄いんだよね』と内心舌を巻きながらついて歩いた。
寝具を扱う店舗に着くと遊馬はワゴンに入った寝巻きをざっと見て「これでいいか」と無造作に一つを選び取った。
「野明もなんか買っとけよ、向こうにないから」
「うん、わかった」
店内を物色しながら ふと遊馬に聞いてみる。
「ね。遊馬ってパジャマ着るんだ? 」
「普段はきねーよ、持ってないし。宿直んときはスウェット着るけどな。」
「持ってこなかったの?ないのがわかってるのなら持ってくればいいのに。」
「予備は二課棟のロッカーの中、使ってたやつは乾いてないの。準待機入ってからずっと出かけてるだろ?」
「あ、そうか。」
「俺はなくても構わないけどね、寮に居るときみたいに下着でウロウロされてもいいなら」
野明の顔を覗き込んでにっと笑うと野明は顔を赤くして目を逸らした。
「・・・それは 困る・・・」
「だろ。で、決まったか?」
「ごめん。まだ」
遊馬の見ていたのと同じようなワゴンを覗きに行こうとしてふと店先に吊るされていたワンピース型の寝巻きに目が留まる。
襟ぐりにフリルをあしらい肌触りのよい生地で出来ている可愛らしいデザインのものだった。
思わず一度手に触れたものの、すぐに手を離しワゴンに向かおうとすると遊馬が声を掛けた。
「気になるなら それにすりゃいいじゃん」
野明は驚いて振り返った。
「こんなの似合わないって!」
「そうか? 取り合えず今日、試してみりゃいいじゃん。高いもんじゃないし。」
ハンガーにつけられているPOPを見るとSALEがかかってる商品で手ごろな値段だった。
とはいえこういう寝巻きを着たことがないので興味半分、羞恥半分で踏ん切りがつかない。
少し考えていると『時間ねぇぞ』と時計を確認した遊馬に急かされる。
「明日もくるよね?」
『気に入らなかったら明日違うのを買おう』と思い遊馬に確認する。
「ああ。明日はちゃんと午前中から見に来ようぜ」
「じゃ 取り敢えずこれにする」
そう言って レジに向かった。

他に数店舗を手際よく梯子して一通りの買い物を終える頃には閉店を告げる音楽がモール内に流れ始めていて二人は急いで車に戻った。
トランクに荷物を詰め込むと遊馬は 「じゃ、宿に向かいますか?」と言って車を走らせた。
国道に沿って暫く走り、脇の小道に入るとコテージの点在する地域に入った。
一軒のログハウスの前で車を止めると、遊馬は「待ってろ」といって車を降りていく。
『ここに泊まるのかな?』と明かりのついたログハウスを眺めていると 遊馬が地図と鍵を手にして帰ってきた。
再び車を走らせて更に国道から離れていくのに不安を覚えて思わず声を掛ける。
「ね、どこまで行くの?」
「もう着くさ」と悪戯っ子のような笑顔で応じる遊馬を訝しむ。
更にもう一度 脇道に入ると間もなく遊馬は車を停止した。
「着いたぞ」といって車を降りた遊馬を追って慌てて車外にでると目の前には外装が木で出来た小さめのコテージがあった。

to be comtinue....

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追記

軽井沢編第二弾は 野明側の出発でした(笑)
話がすすんでませんね(^^;
この先は一緒に行動することになる(筈)ので 両サイド書く事は・・・多分しないと思うんですが・・・・進まないし、話が(笑)
次回の更新は ・・・未定です~。
来週にかかるかも?!

軽井沢編1 出発

見切り発車で とうとう出発!
終着点の見えないまま遂に連載開始です(←遂に連載と公言しましたよ、何回で終わるんだろう?!)
不評でしたら途中で打ち切りも覚悟で(笑)

怒涛の(?!)軽井沢編 スタートです♪

皆様に励まされ アドバイスも戴き、更に途中で別の妄想が炸裂して頓挫していた軽井沢編ですが、悩んでいても筆が進まないので思い切って纏まらなくてもいいや~と始めてしまいました(^^;
今まで以上にまとまりのない駄文ですが暖かく見守っていただけると嬉しいです(笑)

では 以下本文です 

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軽井沢編1 出発
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遊馬が寮に着いた時にはもう12時を回っていた。
流石に平日なので出勤している者も多く寮の中は人気が少ない。
部屋に戻ると 一気に疲れが襲ってきて思わずベッドに倒れこんだ。
昨晩も寝ていないわけではなかったが精神的な疲労感が大きかった。
『このまま少し寝ちまうかなぁ』とも思ったが 『車や宿の手配が先だな』と思い直し勢いをつけて身体を起こす。
大きく伸びをするとPCに向かい検索を始めた。
レンタカーの予約を済ませると宿泊先の検索に取り掛かり表示された連絡先に直接携帯で予約を入れて到着が夜になる旨を告げると電話を切った。
寮の受付に外泊届けを出し、荷物を簡単に纏める。
時計を見ると午後2時を少し回っていた。

軽井沢までなら練馬から高速に乗れば2時間かからない。
電車を利用するなら東京駅から1時間もあれば着いてしまう。
準待機中でも行ける範囲の小旅行としては妥当な距離ということになるだろう。
荷物と手間を考えると車の方が楽だと考え車を手配した。
一通りの手続きを終えて車を受け取ると、野明に電話を入れる。
数回コールした後、野明が電話に出た。
「今から車でそっちに行くけど大丈夫か?」
「うん どのくらいかかる?」
「30分見といてくれ」
「わかった、気をつけてきてね」
電話を切ると遊馬は東雲に車を向けた。

30分もかからずに東雲の寮に着くと野明に電話を掛ける。
程なく野明が大き目のボストンバッグを抱えて寮からでてきたのを確認すると、遊馬も車から降りてバッグを受け取った。
「荷物、これだけか?」
コクリと頷く野明に助手席の扉を開けて『乗れよ』と促し、遊馬はトランクを開けながら声を掛けた。
「これ、後ろで良いよな」
「うん、平気」
荷物を積んでトランクを閉めると運転席につく。
「じゃ、出るぞ。忘れ物ないな?」
「大丈夫」野明が答えると 車はゆっくりと走り始めた。

練馬I.C.方向に車を向けながら 野明に交通情報の検索を頼んで携帯電話を渡す。
こういうものがあまり得意ではない野明は 「どうやって 探すのか判らない」といって携帯をダッシュボードの脇に置くと、ラジオをつけて交通情報を探すことにした。
練馬から高速に乗って暫くすると ハイウェイ・ラジオの電波を捕まえた。
午後3時前の関越道は特に目立った混雑もなく流れは順調で、今のところ上信越道にも目立った混雑や渋滞の情報は上がっていない。午後5時を過ぎる前に首都圏を抜けさえすればスムーズに目的地までつけそうだった。
「碓氷軽井沢I.C.まで ノンストップで一時間半ってとこだな」
「そんなもんで着くの?意外に近いんだ」野明が驚いた顔をしたのを見て苦笑する。
「でないと、準待機中に出かけられないだろ?高速降りてから宿まで30分くらいあるかもしれないけどな」
「そっか、そうだよね。準待機・・・」半ば忘れていたように言う野明に一瞬呆れたような目を向けたが すぐに前に向き直る。
「S.A.寄りたいところあるか?近いから寄らずに行くならそれでも良いけど、この道沿いは結構大きいところがあるぜ」
「えっと。よくわかんないんだよね・・・」困ったように笑う野明に『こいつに訊くのは間違いだよな』と納得して軽く溜息をつく。
「走りながら考えるか」というと「ごめんね」と拗ねたように野明が呟いた。

交通情報通り道路は空いていて50分ほどで関越道から上信越道に入る。
いつになく口数が少ない野明にちらりと目線を走らせると 丁度こちらを見ていた野明と目が合った。
目線を前に戻し声を掛ける。
「どうした?」
「え? 何が?」野明は少し慌てた様子で返事を返す。
「落ち着かないみたいだからさ、気が進まないなら無理せずに帰るか?」
何気なく問う。
無理強いをするつもりはなかったし、昨日の今日で泊まりに出かけるというのも年頃の女性としては複雑なのかもしれないと今更ながらに思った。
野明は少し吃驚した様子でこちらを見ながら焦ったような口調で言う。
「あの、違うよ、遊馬。気が進まないなんてそんなんじゃないの。そうじゃなくて、なんか変に緊張しちゃって・・・なんだろうね?」
「嫌じゃないならいいんだけどな、なんか有るならちゃんと言えよ?」
「うん。ありがとう。でも帰るのは・・・やだ。」最後は聞き取り辛い位小さい声で言った。
その答えに遊馬は少しほっとする。
「了解。じゃ、少し気ぃ抜いとけよ? 緊張が感染るだろ?」
言いながら左手を伸ばし野明の頭をくしゃくしゃっと撫でると野明は「ごめんなさい」と嬉しそうな笑顔を見せた。
.
時計を確認すると午後4時を少し回った頃で碓氷軽井沢I.C.に着くのは午後4時半前後だなと予想を立てる。
「野明、もうすぐ高速降りるけどS.A.寄らなくても平気か?」
「うん 平気。もう着くの?」
野明の質問に 軽く笑って答える。
「宿までは高速を降りてもう少しある。その前にちょっと買い物に行かないか?あんまりゆっくりしてる時間はなさそうだけどな」
「お買い物?いいね。なに買うの?」
「食い物とか あと色々。泊まるのホテルじゃないから細かいもの買っとかないとな」
遊馬は愉しげな笑顔をみせた。
「そうなんだ。どこに泊まるの?」
野明は小首を傾げる。
「行けば判る」
にっと笑って答えると「教えてくれてもいいじゃない?」と野明が少しむくれる。
それを見た遊馬は「お楽しみってやつだな」と言いながら野明の額を人差し指で小突き、楽しそうに声を上げて笑った。
小突かれた額に手を当てて「なんだかなぁ」と野明は上目遣いで天井を見上げると小さく肩を竦めた。

程なく高速を降りると遊馬は車を軽井沢駅方向に向けて走らせる。
15分ほどで大きなショッピングモールに到着した。
「こんなところがあるんだ~」と野明は素直に驚いた。
飲食店を含めると200店舗以上が入っている巨大アウトレットモール。
嬉しそうな野明の反応に遊馬は満足気な笑みを浮かべて車を降りる。
「今日は あんま時間ないからざっと要るものだけ買うようになるけどな、明日ゆっくり来ようぜ?」
「本当に? ありがとう、遊馬」
ぴょんと車から出てきた野明は遊馬のすぐ横に並んで歩きながら見上げるように顔を覗く。
目線が合うとはにかむ様に笑った。
「えっと、腕 組んでもいい?」
予想外の言葉に遊馬は軽く驚いたが「・・・どうぞ」と腕を差し出した。
野明は嬉しそうに自分の腕を絡めてぴとっと寄り添うようにして歩きはじめる。
その様子は普段二課で見かける少年のように元気で溌剌としたイメージとは違い 『女の子』の仕草だよなぁ思う。見慣れない一面をここ2日で立て続けに見たような気がした。
生成りのワンピースを着た野明と二人並んでショッピングモールを歩く。
野明はきょろきょろと店を眺めながら遊馬に問いかけた。
「ね 何が要るの?」
「そうだな、寝巻きって持ってきたか?」
野明が首を振る。
「じゃ 先ずそれだ。それから洗面道具とかは?」
「それは持ってきたよ」
「あとは 食料品だな、飯と酒とお茶、あとつまみも欲しいかな」
そういうと 遊馬はフロアガイドを手にり現在位置を確認するとさっさと移動し始めた。

一通り必要なものを買い揃えて時間を確認すると7時近かった。
閉店を告げる音楽が鳴り始めていて二人は急いで駐車場に戻り荷物をトランクに詰めて車に乗り込んだ。
「じゃ、宿にむかいますか?」
野明の顔を覗き込むようにして遊馬が声を掛ける。
「はい。お願いします」
買い物で上機嫌になった野明は笑顔で応じた。
遊馬は 中軽井沢方面に向かって車を走らせる。
国道を20分ほど行き、脇の小道に入るとコテージが点在するエリアに出た。
明かりの灯る一軒のログハウスの前に車を止めると遊馬は「ちょっとまってろ」といって車を降りていった。
5分ほどで地図の描かれたコピー用紙と鍵を手にして帰ってくると再び車を走らせる。
「ね、どこまで行くの?」
国道から逸れて山に入っていく車に少し不安気な顔で訊ねる。
「もう着くさ」
遊馬は悪戯っ子のような顔で笑い、更にもう一度側道に入ると少し進んだところで車を止めた。
「着いたぞ」
と言うと遊馬はさっさと車を降りる。
野明もあわてて外に出ると目の前には外壁が木で出来た小さめのコテージがあった。

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追記

先ず 軽井沢に着きましたよ~
宿泊先はコテージでした♪
次回の更新は・・・・出来れば今週中くらいには(^^;
間に全く違う更新が入るかも知れないので見やすいようにカテゴリの整理も考えたいと思います(笑)

the after night

ここしばらく気合を入れて描き込む系統の絵を描いていたので反動でものすごい適当に絵を描きたくなりました(笑)
色もいい加減に塗って 線もタブレット直描きにしたら勢いも手伝ってか 意外に可愛く描けました。
先日 書き掛けのお話を設定の都合上 没にしてしまったのでこれに何かつけようかな・・・と思いついたのが 「Irreplaceable」の後日談みたいなものです。
野明の服がアンサンブルから何故かワンピースになっていたり 腰の紐とか袖口の飾りがなくなっているのは・・・ご愛嬌です(笑)
今更書き直すのは無理ですね~
描いたときのテンションが もうない(笑)

というわけで おまけの劇場 無駄に長いのもご愛嬌で(^^;

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the after night
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野明をお姫様抱っこして新宿を歩くこと暫し。
やがて 大通りに出るとこのまま歩くのは人通りの関係で難しくなってきた。
10時半を少し回り 大型店舗の多くが店を閉めても飲食店やゲームセンターと言った娯楽関連の店舗は未だ煌煌と灯りを燈し夜の街に繰り出す人は引きも切らない。
『他人にぶつかりそうだな』と思った遊馬は自分の肩口に顔を埋めるようにして目を閉じている野明に声を掛けた。
「歩けるか? 大通りに出たからさ、ぶつっかちまう」
声を掛けられて野明がパッと顔を上げる。「あ、うん。平気」
言いながら少し名残惜しそうに額を一度肩にコツンとあてる。
「いいか?」言いながら足を支える手をそっと下げると、野明は軽く勢いをつけてぴょんと飛び降りた。
スカートをぽんぽんと軽く叩いて皺を伸ばすと遊馬に預けていたバッグを受け取り肩に掛けた。
軽く促すと 後ろ手を組みながら遊馬の隣を歩き始める。
慣れないミュールの所為なのかそもそも人ごみを歩くのが苦手なのか、何度も他人にぶつかっては「ごめんなさい」とか「すみません」を繰り返している野明に『これじゃ 抱えてた方が良かったか?』と内心溜息をつきながら 「ほら」と言って腕を差し出した。
「摑まってろよ、危なっかしい」
野明が少し戸惑うような顔を見せたので にっと笑いながら「何なら肩とか腰とか抱いてやろうか?」というと野明は「いい」と言って遊馬の腕をとった。
二人で腕を組んで歩く。
「ね どこに向かってるの?」
「東口」
「東口?」
「そ 朝までやってるバーに行こうかと思ってさ」
「そんなところあるんだ?」
「新宿だしな、始発までやってる店は結構多いぜ?」
「ふーん」
「折角 めかし込んでるんだしな。いい店に連れてってやるよ」
遊馬は楽しそうに笑う。
野明は自分の格好をざっと見て「おかしくない?」と遠慮がちに訊いた。
「そんな格好はじめて見たからな、いいんじゃない?似合ってるよ」
意外にさらっと口から出た褒め言葉に言った自分が少し驚いた。
野明は はにかむように笑いながら「ありがと」というと絡めた腕をしっかりと抱えなおした。

東口側に出ると大通りから一本裏手の路地に入る。一軒の雑居ビルの前までやってくると遊馬は地下に降りる階段を躊躇することなく下りはじめた。
「ここ?」野明は地下に下りる薄暗い階段に不安そうな顔を見せた。
「そ。地下にある店なんだ。嫌か?」
「ううん。そうじゃなくて・・・こういう店初めてだから」
落ち着かない様子で遊馬の腕を掴みながら階段を下りると目の前に大きな木の扉が見えた。
遊馬は躊躇うことなく扉を開けるとさっさと中に入っていった。
中は結構広い空間だった。オレンジを基調にした間接照明が品良く配されていてカウンターとテーブル席が並んでいる、雰囲気のいい店だった。
遊馬がスタッフと二言三言やり取りをして 案内されたのは軽い個室風に仕切られたボックス席だった。
野明と向き合うように座ると、「さて、何にする?」といってドリンクメニューを差し出す。
中をパラパラと捲って 野明は途方に暮れた。
酒屋の娘とは言え、カクテルと言うのは守備範囲外だった。
名前を見てもどんなものなのか皆目見当もつかない。いくつかは居酒屋のドリンクメニューでも見たことが有る名前の物もあったが普段 興味を持ってみていなかったのでどんなものか思い出せもしなかった。
メニュー自体はベース毎に大まかに集められているのだが そのベースにしても知らないものが多く並んでいて、それがわからなければどうしようも無かった。
野明は自分で選ぶのを諦めて遊馬にメニュー返す。
「よく判んないや、お願いしていい?」
「いいけど。どんなのがいいんだ?」
「どんなのって言われても・・・どんなのがいいんだろう?」本気で悩んでいる様子を見て遊馬は「飲みやすいとこから行くか」とオーダーをかけた。

程なく野明の目の前にはオレンジ色の液体が入ったフルート形のシャンパングラスが、遊馬には無色透明でライムが飾ってあるタンブラーが運ばれてきた。
「とりあえず乾杯しようぜ」そう言ってグラスを持ち上げる。
野明も慌ててグラスを持ち上げ目の高さでグラスを合わせるとリンっと澄んだ音が響いた。
二人で目を合わせると どちらともなく笑い出す。
「やぁだ 遊馬」「ガラじゃないよな」といってひとしきり笑うと其々のグラスに口をつけた。
「・・・おいしい・・・これ なぁに?」
「飲みやすいだろ?」
「うん、ジュースみたいだね」そういうと 野明はグラスの中身を一息で呷ってしまった。
「あ おい!そんな飲み方するヤツがあるか!」遊馬が止めた時にはもう中身は空っぽになっていた。
「どうかしたの?」不思議そうな顔をして小首を傾げる野明に遊馬は思わず頭を抱えた。
「あのなぁ、それはミモザっていってシャンパンなんだよ、ベースが。喉越しがいいと思ってそんな飲み方すると倒れるぞ?」
「・・・そうなの? 日本酒コップで散々飲んだって遊馬止めないじゃない? 平気だよ、こんなの。」
「カクテルってのは 口当たりや喉越しがいいものが多いけど 結構きくぜ? アルコール度数は日本酒よりも高いのも多いし。気をつけろよ?」
「遊馬 心配性じゃん」野明は楽しそうにくすくすと笑いながら「遊馬、おかわり♪」と言って空いたグラスを軽く振って見せた。
「・・・はいはい・・・」遊馬は諦めたように追加オーダーを出すと自分もグラスに口をつけた。
「ね 遊馬のはなに?」言いながら身を乗り出すようにして遊馬の手からタンブラーを奪うと口をつけた。
「うわ・・・」と少し顔を顰める。「なんか アルコールって味がする。」
「ジントニック」言いながらタンブラーを奪い返す。
「調子に乗ってあとで悪酔いしても知らんからな」
「平気だってば。私 お酒強いもん。こういうところ来たの初めてだから何か楽しい♪」
「そうか? そりゃ良かった」

お通しにあたる乾き物と オーダーしたサラダ他 数点のつまみを適当に食べながら他愛のない話をする。
午前12時を回った頃になって 何杯目かのカクテルを空にした野明が 突然それまでの上機嫌から一変して拗ねたような口調で訊いた。
「ね 遊馬ぁ、遊馬はどうしてここをしってたの?」
「あん? ああ、前に来たことがあるんだ。」何の気なしに応えると野明は しゅんっとした様子で「そりゃそうだよねぇ。遊馬にだって彼女の一人や二人や三人や四人・・・」と言って頬杖をつく。
ペースを加減しながら飲んでいたため左程酔いのまわっていなかった遊馬は野明の様子を見て「おい、酔ったのか?」と心配そうに訊いた。
遊馬の声が全く耳に入っていないらしく野明は「だからカクテルとかにも詳しいんだ」と言いながらテーブルに顔を伏せる。
遊馬が呆れたような顔をして「おい、本当に大丈夫か?」と声を掛けると野明は「平気だもん」と呟いてそっぽを向いてしまった。
いきなり情緒不安定になった野明を前に 『さて どうしたものか』と考えていると不貞腐れたような顔をした野明が口を開いた。
「他の子ともここでこうやってお酒飲んだんだ?」
「は?」
「今みたいに親切にしてさ」ちょっと傷ついたような顔でポツリと言う。
「何言ってんだ、お前?」何のことを言われているのか判らずに遊馬が首を傾げる。
少し考えて、「あ そうか。もしかして前に来たのが誰か、って勘ぐってる訳か?」と訊ねた。
野明が答えないので、『説明が足りなかったか』と思い言葉を継ぐ。
「前に来たのは昼間。ここ昼はカフェとして営業してるんだ。来たのは都庁の帰りで 隊長と松井さん、風杜さんと俺の4人。気になるなら訊いてみるといい。」
顔を覗こうとしたがそっぽ向かれているので表情が見えない。思わず苦笑する。
「夜来たのは今日がはじめてだよ」
「・・・ホントに?」
「本当。ちなみに此処に皆を連れてきたのは風杜さんだ」
野明は拗ねたような目をしたまま少し顔を上げる。顔に赤みが差していて酒がいくらかまわってるな、と一目でわかった。『飲むペースが早すぎるんだよ』と思ったが口には出さなかった。
野明は「その4人で?そうなんだ~」というと両手で顎を支えるようにして顔を上げると軽く目を閉じたまま続ける。
「女の子ときたわけじゃ なかったんだ」幾分ホッとした声に聞こえた。
「なんだよ それ、妬きもちか?」と冗談交じりにいうと野明は少し考えるように小首を傾げ「そうなのかなぁ? 良くわかんないや」と呟いた。
まさかそんな返事が返ってくると思っていなかった遊馬は少し驚いて 逆に聞き返してみた。
「お前こそ そんな感じで合コンに参加してるわけか?」
「え? まさかぁ 今日はね 特別なの。合コンとか行かないもん。」
「ふーん で、何が特別だったんだ? その格好」 
今日一番の関心事といっても過言ではないその理由を訊く。
「これ?」野明は自分を指差して遊馬の顔を見る。
遊馬に「そう、それ」と言われて、まじまじと考える。
メイクと服は緑がしてくれたのよね。で なんでこうなったのかって・・・・
思い出して野明の顔に朱がのぼった。
どうしよう、『遊馬に女の子扱いして欲しかったから』だなんて、こんなこと言えない。絶対無理だ。
その様子を見ていた遊馬が怪訝な顔をしている。
そこで野明の口から出た言葉は「・・・恥ずかしいから 教えない」だった。
「なんだそりゃ?」遊馬は拍子抜けしたように言うとそれ以上追求するのをやめた。

空になったグラスを両手で持ちながら野明が「おかわり欲しい」という。
遊馬はその様子を見て「まだ飲むのか?」と言ってグラスをひょいと取り上げた。
「なんだか ふわふわして とってもいい気持ち」
遊馬は頬杖をつきながらそれを眺め、「それを称して酔っ払いっていうんだよ」と笑った。
「酔ってません」
そう言ってテーブルの端に手を掛けて立ちがると益々ふわふわした。
「おい、気をつけろよ」遊馬が慌てて立ち上がる。
「へーき♪」と言って遊馬の傍に近寄ると ぽすんと遊馬の胸に倒れこんだ。
「遊馬のにおいがする」といって嬉しそうに背中に手を回す。
予想外の行動に吃驚した遊馬は思わず天を仰いで、「勘弁しろよ、酔っ払い」と言いながら溜息をつき 手のやり場に困って右手で自分の顔を覆った。
立っていても仕方がないので野明を抱えたまま腰を下ろす。
不意に自分にかかる野明の重さが増した気がして慌てて「おい、野明?」と声を掛けたが返事がない。顔を覗き込むと 無防備な顔ですーすーと寝息を立てて眠っていた。
「野明 起きろ。こんなとこで寝るな」
肩をゆすっても耳元で「起きろ」と言っても起きる気配がない。
時計を確認すると0時半をすこしまわったところだった。
「・・・どうしろって言うんだよ・・・」遊馬は思わずため息を吐いた。

今から東雲の寮に連れて帰るには電車がない。野明を送ったあと自分が寮に帰れなくなるからだ。
かといってタクシーでまわるのも距離がありすぎる。
今が4時とか5時ならこのまま肩を貸してやってもいいのだが4時間以上は双方に負担が大きすぎた。
カラオケボックスとかまんが喫茶みたいなものに移動することも考えてみたがカラオケは2人で入っても野明を横に出来るだけの空間がある部屋には入れそうにないことは明白だし、まんが喫茶にいたっては治安の問題からもこんな状態の野明をつれて入る気にはなれなかった。
裏通りに行けば場所柄 イカガワシイ宿泊施設が軒を連ねているのは判っていたがこれだけ無防備に寝ている人間を喩え手を出す気がないにしても合意なしに連れて行くのは気が引けた。
結局 携帯電話でシティホテルの検索を掛けて部屋を探すことにする。
首都圏のシティホテルは空室の稼働率を上げるために深夜になっても空室が残っている場合、特定の方法でリザーブすると格安で素泊まりできるプランを持っているところが多い。そういうのを纏めて扱うサイトが携帯電話やコンビニの端末にあるのだが、以前作業が深夜にかかった時に面白半分で携帯に登録していたのを思い出した。
野明を片手で支えて携帯を操作し、此処から10分ほどのシティホテルに部屋を見つけた。
どうしたものかと もう一度野明の顔を眺めて「起きろよ」と声を掛けて肩をゆすってみたが反応は無かった。遊馬は大きく息を吐くと「決定」のリンクをクリックして部屋をとると野明と荷物を器用に抱えて店を出た。

とりあえず 部屋に着いたものの起きる気配のない野明をそっとツインベッドの一つに横たえて軽く肩を回すと一旦部屋を出た。
一階にコンビニが併設されていたのでそこに降りて白いTシャツを手に取った。
野明の服のサイズが良くわからなかったので取り合えず自分に合うものを2枚買って部屋に戻る。
暢気に寝息を立てて寝ているのを確認するとタオルとガウン、寝巻き代わりの浴衣、買ってきたTシャツを掴んでシャワーを浴びてくることにした。
熱めの湯を浴びながら思い切り溜息を吐く。
無防備にも程がある、最初に飲み方に気をつけろってあれほど注意したのに。
今までだって居酒屋で飲み明かすようなことがあっても野明が先に潰れることなど無かった。
とはいえカクテルはベースが日本酒のものはあまりないので野明は日本酒と焼酎以外にはあまり強くないのかも知れないと思った。
何れにせよこのことは他の男に知られたくないなぁとぼんやりと思う。
歯も磨いてできることをとりあえず終えると Tシャツの上に浴衣とガウンを羽織り部屋に戻る。

このままにしておくと服が皺になりそうだな、と思って寝ている野明を起こしにかかった。
「野明 起きろ」軽く身体をゆすると寝返りを打つようにコロリと転がったが起きそうには見えなかった。
仕方なく先刻コンビニで買ってきたスポーツドリンクのボトルを首筋にピタっとくっつける。
「きゃぁっ!」と悲鳴を上げて野明が目をあけた。
やれやれ、と溜息を吐くと「起きたか?」と声を掛ける。
野明はまだぼんやりしているのか 軽く頭を振ると半身を起こし「あ おはよう、遊馬」と普通に挨拶をした。
「おはよう、じゃないの! 状況、理解してるか?」
「へ? あ、うん。・・・・ってここどこだっけ?」
焦点の合わない瞳でぼんやりと周りを見てそれから 困った顔をしている遊馬に目をとめる。
「ここは ホテルの部屋だよ。店で寝ちまうからここに連れてきたの」
騒ぐだろうなぁと思って見ていたが反応は意外なほど素っ気ないものだった。
「・・・そうなんだ。ごめんね、迷惑掛けて」野明は 素直に謝ると床に下りようとした。
慌てて遊馬が手を貸すと 足がふらついてまた遊馬に寄りかかった。
「大丈夫か?」
「うーん、自信ない。こんなにふわふわした感じがするの初めてかも」
「酔っ払い」
「ごめん」といいながら遊馬の腕を放して歩こうとしたが「いいから 座ってろよ」といわれて再びベッドの淵に腰を掛けた。
遊馬はさっきのペットボトルを手に取ると「飲めるか?」と言って差し出す。
野明はコクリと頷いてペットボトルを受け取るとゆっくりと喉に流し込んだ。
半分ほど飲んだところで 少し落ち着いたのか目の焦点が大分合ってきた。
「気分どうだ?」
「えっと ふわふわしてるけど 悪くはないよ?」
「頭は? 痛くないか?」
「うん なんかぼーっとした感じはする。でも、ガンガンしたりはしてない」
「そうか」と言いながら頭をクシャクシャと撫でると時計を確認する。もう2時前だった。
「な、その服、吊るしとかないと皺になるぞ。着替えてこいよ」
そういうと 浴衣とガウン、それにTシャツとタオルを野明に押し付ける。
「シャツはデカイと思うけどな、ないよりあった方がいいだろ? ついでにシャワー使って目を覚まして来い」
そういうと遊馬は部屋の奥側に配置されたベッドに向かった。
野明は手の中の着替えと遊馬を見比べて 「ありがとう」というと大人しくバスルームに向かった。

遊馬は 奥のベッドに胡坐をかいて座るとTVを見るともなしに眺める。
『もっと騒ぐかと思ったんだけどなぁ』と野明の反応にホッとしたのか拍子抜けしたのか。
場馴れしてるってことでも無いんだろうけどなぁ、そんなことを考えているうちに野明が部屋に戻ってきた。
着ていた服をハンガーに掛ける様子を見て声を掛ける。
「目 覚めたか?」
「大分ね。」
遊馬の傍に座ると「本当にごめん、迷惑掛けちゃった」と申し訳なさそうな顔をした。
「これに懲りたら あんな無茶な飲み方するなよ?」
「反省してます」
「なら、よし。 ところでさ、野明、驚かないんだな?」
「なにが?」きょとんとして聞き返す様子に惚けている感じはなかった。
「普通さ、寝てる間にホテルに連れ込まれてたらもう少し焦りそうなもんだけどな?」
頬杖をついて野明を見遣る。
野明は口元に手を当てて少し考えてから「そうだよねぇ」としみじみ呟いた。
「普通に 『おはよう』は無いよな、いくらなんでも。」
少しの沈黙の後、「うん 変だよね。でも・・・」と考えながら言葉を選ぶように続ける。「連れ込まれた、とかそういう危機感 感じなかったんだよね。今もそうなんだけど。」というと困った顔で遊馬を見た。
遊馬は天井を仰ぐと大きく溜息をついた。
「お前ね、仮にも年頃の娘がそんな無防備でどうするんだよ? 相手によっては無事ですまない事もあるんだからな」
呆れたような口調で言われて野明は しゅんとした様子で小さく呟く。
「だって 遊馬なんだもん」
「あ?」
「遊馬がそうした方がいいって判断して連れてきてくれたんでしょ? だったらそれが正しいのかなぁって」
思わず野明の顔をまじまじと覗き込んでしまった。
「正しいって、そういうもんか?」
「遊馬のこと信じてるし。色々考えてくれた結果がここなんだったらそれでいいって思ったのかなって、今思った。」
「今?」
「そ さっきはそういうことまで考えてなかったんだけどね。遊馬の判断を無条件に信じてるんじゃない? だから不安がないっていうか・・・遊馬が言うなら大丈夫って・・だから 目の前に遊馬がいて逆に安心しちゃったんだよね、きっと。」
叱られた子供みたいな顔して言う野明に「その結果が 『おはよう』か?」と言うと遊馬はやれやれと肩を竦めた。
「全面的な信頼を頂けるのはありがたいんですけどね、少しは考えろよ?一応 俺だって健康な成人男子だし?」
言われて野明は改めて自分と自分の周囲に目を配る。
「あ そうか、そうだよね。」急に状況が飲み込めてきたのか顔が真っ赤になってきた。
「今頃赤くなるなよ、迂闊なやつ」
「あの、えっと・・・」急に慌て始めた野明を見て『やっと頭が回ってきたみたいだな』と呆れ半分で様子を見る。
よっと声を掛けて ベッドから降りるとコンビニの袋から水を取り出し「飲むか?」と声を掛けた。
野明がブンブン首をふったので黙って一気に1/3ほど飲み干すとボトルをナイトテーブルの上に置き、ついでに時間を確認する。
「さて、ともう3時前だな。折角 ベッドのあることまで来たんだから少し寝とけよ?」
言うと遊馬は2台のベッドを示して野明に「どっち使いたいんだ?」と訊いた。
最初に寝かされていたほうと、今座っている方。
野明は少し考えて「そっちにする。」と最初にいた方に慌てて移動した。
「焦んなくていいから ゆっくり動けよ?」そういうと自分は空いた方のベッドに腰掛ける。
各々 寝る場所が決まると遊馬はシーツを引き寄せてごろんと横になった。
野明も同じように横になりながら遊馬の様子を心配そうに伺う。
視線を感じで振り返ると不安気な顔をした野明と目が合った。
肩肘をついて頭を起こす。
「安心しろ。手ぇ出したりしないって約束してやる」
「うん。」返事をしながら野明は複雑な顔をして見せた。
「信用できない?」
「そうじゃなくて・・・」と野明が言い澱むと遊馬はすいっと目線を外して言った。
「言い訳するのも、されるのも御免だからな。こういう時に手は出さん。判ったらさっさと寝ちまえよ? 俺も寝る」
そういうとそのまま目を閉じてしまった。
野明はその様子をみて「うん、おやすみ 遊馬」といって同じように目を閉じた。

翌朝 野明が目を覚ますと遊馬はぐっすりと眠っていた。
時計を見ると7時を少し回っている。
お酒の匂いが残っているような気がして、もう一度シャワーを浴びようと掛けておいた服を取りに行き 部屋のゴミ箱に気がついた。
中には Tシャツが入っていたと思われる袋が2つ無造作に捨てられていて、野明は今自分が着ているTシャツは遊馬が買って来たという事に改めて気がついた。
『ないよりいいだろう?』といって無造作に手渡した遊馬を思い出し、ここの寝巻きが浴衣であったことに思い当たる。その気遣いに思わず笑みが零れた。

シャワーを浴びて軽く化粧を施して部屋に戻ると 遊馬は起き上がってTVを見ていた。
「おはよう 遊馬。」と声を掛ける。
遊馬は「おう」と短く返事を返すとベッドから降りてズボンを手に取ると「俺も浴びてくるわ」といってバスルームに向かった。
遊馬のいたベッドに腰掛けるとTVを眺める。
遊馬のいた辺りはまだ少し暖かくて野明はぽすんとそこに倒れこんだ。
結局 遊馬は宣言どおり野明に一切手を出すことなく夜があけた。
それにホッとしたのか、残念に思ったのか自分でも良くわからなかったが何かあったら今ものすごく気まずかったのかなと思うと やっぱりこれでよかったんだ、と思えた。

暫くそのまま目を閉じていると 頭の上から遊馬の声が降ってきた。
「こーら、二度寝するとチェックアウトに間に合わなくなるぞ」
見上げると 遊馬はTシャツにズボンを身につけて苦笑していた。
時計は8時半を少し回っていて 「チェックアウトって何時?」と訊くと「10時」と短く答えて遊馬はベッドの上に胡坐をかいて座った。
身体を半分起こして 見上げると目線をおとした遊馬と目が合った。
「化粧 したんだ?」
「緑みたいに上手く出来ないんだけどね」照れくさくなって笑う。
「それは練習次第だな」軽く笑うと「いいんじゃね?」と言って髪を撫でる。
その手はとても心地よくて思わず目を閉じると遊馬は呆れた声で「本当に無防備な奴だな」といって頬に手を添えた。
ファイル 21-1.jpg
「こんなこと 今回だけだぞ?」そう言って苦笑する。
「こんなことって?」思わず聞き返すと まっすぐに目線を合わせて遊馬が言った。
「次 同じような事が有ったら手を出さない保証ないからな。」
眉間に皺を寄せて小さい子供に注意するように言われてしまった。
「はい、以後 気をつけます」思わず 神妙に返事をする。
「よし。じゃ 出る準備するかな」と言って大きく伸びをすると遊馬は洗面所に向かった。
その後姿を見ながら野明は何となく幸せだなぁと思った。
用意を終えた遊馬が野明に声を掛ける。
「な この後どうする、寮に帰るか?」
少し考えて「やっぱ洋服は着替えたいかな」というと、遊馬は「だよな」と頷き「じゃ帰るぞ」といって手を差し出した。

ホテルをでて駅に向かって歩く。
「準待機って あと4日だっけ」野明が話しかけた。
「ん? そうだな」
野明は 少し考えると小さな声で言った。
「ね、もう少し一緒に居ていい?」
遊馬は軽く目を瞠る。
「いいけど、一旦帰るんだろ」
「うん、一度着替えてその後ね」
「どっか行きたいとこあるのか?」
「う~ん どうしようかなぁ」
嬉しそうに話す野明を見て遊馬が提案する。
「軽井沢、とかどうだ?」
「この後?」
「そ、四日あるし」
「四日?」
その言葉の意味を考えて泊まりの旅行ってことだと気付いてドキッとした。
「遊馬、さっき 行動に気をつけろって言わなかったっけ?」
一度気付くとドキドキして顔を見れない。
「だから、確認とってんだろ?」楽しそうに遊馬は笑う。
「・・・そーゆーのは 彼氏と行きたい」野明は顔を赤くすると目を逸らした。
「俺も彼女と行きたいけどね。で どうする?」
逸らした顔を追うように野明の顔を覗く。野明は視線を外すようにして答えた。
「・・・彼氏が出来たら考える」
遊馬はにっと笑って耳元で囁いた。
「じゃ来いよ、彼女にしてやる」
言われて心臓がキュッと縮まる感じがした。
「・・・・偉そうなんだから」
わざと大きな溜息をついた。少し黙っていると「で、返事は?」と悪戯っ子のような目で遊馬が返事を促す。
恥ずかしくてそっぽを向いたまま「・・・あとで迎えにきてね・・・」と小声で応じた。
それを聞くと遊馬は悪戯っぽい笑顔のまま続けた。
「了解、あ そうだ、『手を出さない保証はしない』からな?」
吃驚して顔を上げると目線があう。
野明は「そういう事いう?」というと遊馬の腕に額をつけたまま暫く顔を上げられなかった。
顔を真っ赤にしている野明を見て遊馬は声を上げて笑った。

END

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追記

無駄に長い割には うちの遊馬は結局手が出せませんでした(笑)
次回は 少しは手が出せるのか?
別に続く予定は無いのですが(笑)
結局 軽井沢に行ってもあんまり進展がなさそうなのが さくらのとこの遊馬です(^^;
長いおまけ駄文にお付き合い有難うございました~

Irreplaceable

このお話は先の三作品
「ガールズ・トーク」
「心を占めるもの」
「歩速の選択」
の目線違いのお話になります。

先の三作は野明側からを中心にした目線になっていてこちらは 遊馬側を中心にみた形になります。

teraさまから パウダールームにいた間、座敷はどうなっていたのか興味があります、というお言葉を戴きそれならば、と思って書きはじめたのですが・・・
思ったより大変でした。
あったんですよ、最初は描写が。
ただ本文全体が長かったので割愛したんですけど。
単独で紹介できるほどのネタでもなかったので少し広げてみようとしたら、最初に書いてしまった話の展開と時間軸に結構縛られるので思った以上に苦労しました(^^;
よく一つのお話を視点をかえて書かれる方がいらっしゃいますがそれって凄いことなんだな、と痛感(T∇T)
辻褄を合わせるために文章と展開が自分でも不自然かなぁと思うところも多々ありますが・・・
そこは初心者ということで大目に見てくださいね(^^;

こんなんでいかがでしょう?(笑)

以下本文です

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Irreplaceable
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今日は 朝から定期健診だ。
今回は人間ドックを含むので 昨夜から食事も制限され、夕方まで病院に缶詰。
いつもなら 野明と一緒にぶらぶらしているのだが今日は一日別行動。
付き合っているわけではないので それが普通といえばそうなのだが一緒にいる時間が長い分いないと何となく物足りなさを感じる。病院 特にこういう検査の時はとかく待ち時間が長いのだ。病院内ゆえに携帯電話で暇をつぶすことも出来ず かといって指定されている待合所を離れるわけにも行かない。
お仕着せの検査着は糊が効き過ぎてお世辞にも肌触りがいいとは言えないものでこんなものを着て一日過ごすのは結構苦痛だった。
『あいつがいたら少しは気がまぎれるだろうに』そう思うとますます退屈に拍車がかかり思わず はぁーっと大きく息を吐いた。
「篠原、彼女がいないと退屈か?」一緒に健診に来ていた小池が頬杖をつきながら訊いた。
「ばぁか、んなことねぇよ。第一 彼女って誰だよ?」同じように頬杖をつきながら訊き返す。
「誰って・・・泉さん。いつも一緒だろ?」
「パートナーだからな、付き合ってるわけじゃない」言いながら思い切り伸びをすると間接がコキコキと子気味のいい音を立る。
小池は意外そうな顔をして、「そうなのか?」と訊いた。
「当たり前だろ? 公務でコンビ組んでるだぜ。休みが同じってだけだよ。」
「そうかぁ?」それだけの理由でそれこそ公務でも顔を突き合せなければならない相手と休日まで一緒に居たがるものなのかと思ったが小池は突っ込むのをやめた。
「そ。職場が同じだから変な気を使わなくていいしな。」
「同じだと気を使うんじゃなくて?」
「非常召集とか 緊急出動が多いからさ。今週だって準待機だけどいつ待機命令がでるか解らないし。そういう時 気が楽だろ?」
「そういうもんかねぇ?」
「そういうもんだよ」
そう言って壁の時計を確認するともう3時を回っていた。
「あーあ やっぱ一日潰れちゃったなぁ」遊馬は心底つまらなそうに言うと肩を落として溜息をついた。

結局 全ての検査を終え、病院を出たときには6時を回っていた。
「すっかり遅くなっちゃったなぁ」と言いなら小池は携帯の電源をいれた。
遊馬も肩を回してこりをほぐすと携帯の電源を入れ留守電とメールの着信を確認した。
予め健診で一日潰れそうだと伝えてあったこともあって野明から連絡が入った様子は無かった。
聊か残念に思い携帯を閉じると一瞬 野明に電話を掛けようかと思ったが時間が遅い。
今から呼び出したところで寮の門限を考えるとゆっくり食事が出来るわけも無かったし、大体 野明が寮にいるとしたらもう食事の時間に差し掛かる頃だ。今更 引っ張り出すのには無理があるだろう。遊馬は携帯をポケットに仕舞うとカタカタとメールを返信している小池に視線を移した。
一通り返信が終わると小池は遊馬に声を掛けた。
「篠原、飯どうする?」
今から帰っても寮の食事には間に合わない。外で食べるか買って帰るかということになる。
「小池は?」
「武田が新宿で飲んでるからこないかってさ、篠原もいこうぜ」
「俺も?」
「どうせ寮に帰っても飯無いだろ、コンビニで買うなら居酒屋の方がうまいぜ」
「・・・確かにな」
「じゃ きまりな、詳しい場所聞く」
そういうと小池は武田に電話を掛けた。

新宿駅を出て10分ほど歩くと目的の店に到着した。
日本庭園風の内装で個室に区切られた客席を持つ小奇麗な店舗。
入り口で予約名を確認している小池を見て遊馬は訝しむ。
男だけで飲むには小洒落た雰囲気。
予約名を確認したということはたまたまここに来たわけではなく席を確保してあったということだ。 
遊馬は他に誰が来ているのかと訊かなかったことを悔やんだ。
1人できて予約は取らないだろう、ということは同行者がいるのだ。
案内する店員の後ろを歩いていくと奥まったところにあるひときわ広い個室の前に着く。
「小池、他にだれがいるんだ?」 不機嫌さが入った声で問う。
「武田と寮の同期が二人来てる。あとは・・・武田の知り合いの女性が4人かな・・・」
最後の方は小声になってばつの悪そうな顔をする。
「合コンだなんて聞いてないぜ? 俺がそういうの嫌いだって知ってるよな?!」空腹感も手伝って気が短くなっている。
小池は「言ったらこなかっただろ?」と拗ねたような顔をみせた。
「当たり前だ。俺は帰るからな。」と踵を返しかけた時、店員が開けていた障子から武田が顔をだした。
遊馬の顔を見るとにっと笑って、悪びれた様子を見せることなく「そこで騒ぐと迷惑だからさ、とにかく入れよ」と手招きをした。
遊馬は低い声で「小池、後で覚えてろよ」といって一睨みすると不貞腐れたような顔で座敷に入った。

中に入って部屋をぐるっと見回すと予想外の人物と目が合った。
「・・・野明?」思わず名前を呼んだ。
呼ばれた野明は上ずった声で返事をしたが動揺して顔が引き攣っていた。
綺麗に化粧を施しふわふわした如何にも『女の子』という薄紫のアンサンブルを着てサワーのグラスを両手で抱えている。
自分と出歩く時こんな格好をしてきたことは無い。化粧っ気も無いラフなスタイルに足もともスニーカー。酒だって日本酒をコップでグイグイ飲み干すような女なのに。
合コンに行く時にはこうして気合をいれてお洒落してしおらしくするわけだ。
そう思うと妙に面白くない気分になったが、ここで野明に噛み付いても仕方がない。冷静になろう、と大きく息を吐いた。
目線を外して俯いた野明から 目を逸らすと武田たちの近くに座る。

変に緊張した雰囲気を察した武田が場の雰囲気を抑えるように乾杯の音頭をとった。
野明を見ると相変わらずグラスを両手で抱え すっかりしょげた様子で俯き加減にちびちびとサワーを飲み続けていた。
野明とは付き合ってるわけじゃない。その野明がどんな格好をして休日に何をしようがどこに行こうが自分が口を出すことじゃない。
そう思って遊馬は黙って飲み食いに集中することにした。
それでも着飾った野明が視界に入ると何故か裏切られたような気分になって仕方が無かった。

暫くすると野明が鞄を引き寄せ隣の女性に何か話しかけているのが目に入った。
気遣わしげな視線を向ける女性に軽く首を振り、そっと障子を開ける。
『帰るつもりだ』と思った瞬間 急いで席を立ち野明の肩を掴んだ。
驚いて振り返った野明の髪から甘い香りが漂ってきて鼻腔を擽る。
「何だよ、帰るのか?」野明の瞳が揺れるのを見て言葉を継ぐ。「俺が来たからか?」
野明は俯いて視線を合わせない。
「違う、遊馬が来たからじゃないよ」
「じゃ、なんだよ」
思わず口調がきつくなる。
「遊馬の所為じゃない。でも遊馬 怒ってるでしょう?先刻だって黙って向こうに行っちゃうし。」
目線を合わせない野明に少し苛立つ。自分に野明の行動を縛る権利は無いのだから文句を言う筋でないことはわかっていたが 黙って帰ろうとするのは気に入らなかった。
「あ? あー・あれはさ・・お前の所為ってばかりじゃないし、ちょっと気が立ってたから・・・て・・・おい、泣くなよ?」
話していると 突然野明がぼろぼろと涙を零し始めた。驚いた遊馬は思わずその顔を覗き込んだ。俯いたまま泣いている野明をみていると、イライラしていたことがなんだか馬鹿らしくなって思わず溜息が出た。
「当たって 悪かったよ」そう言って髪を撫でてやると野明が嬉しそうに目を閉じた。無防備なヤツだなぁと思う。
「あんまり泣くと化粧落ちるぞ」というと「うん、そうだね」と顔を上げ少し笑った。取り敢えず席に戻るよう促すと素直についてきたが、いつもらしからぬしおらしい態度に何となく落ち着かなかった。
泣いてすっかり化粧が落ちたことに気付いた隣席の女性に連れられて化粧直しに出て行くのを見送ると身体からどっと力が抜けた。

取り敢えずその場に座り込む。
甘い香りのする髪と、化粧を施した顔、ふわふわした洋服。あんな野明は見たことが無かった。
右手で顔を覆って溜息をつく。
「馬鹿野明。なんだよ、あれ・・・あんな格好で合コンとかでてんじゃねぇよ」
面白くない気分だった。
「俺と出かける時にはしてきたこと無いくせに。」声に出したつもりは無かった。
しかし ふと我に返ると部屋にいた人間全員が目を丸くしてこちらを見ていた。
「え・・・なに・・?!」思わず問いかける。
全員が お互いに目を見交わしてまた視線を戻す。
ヒヤリと背中に冷たい汗が流れた。
気まずい沈黙のあと にぃーと笑いながら武田が口を開いた。
「つまり 篠原はここに彼女が居たのが気に入らなかったわけか?」
聴かれていたことに気づき顔に朱がのぼる。
「え、いや 別にそういうわけじゃ・・・」慌てて否定しようとしたがもう遅かった。
「自分以外の為におめかしして来たのが気に入らなかったんだ?」人の悪い笑みを浮かべて皆が次々と話しかける。
「いや・・・あの・・・だからさ・・・」
「普段の野明ってノーメークだもんね、格好もラフだし。それは篠原君ショックだったわよねぇ」
こうなるともう だれも遊馬の話など聴いてくれない。
少なからず落ち込んでいたところにほぼ正鵠を射られた格好になったため反論に力が入らない。
「泉さんが浮気すると思ったとか?」
「だからさ・・・そんなじゃないんだって。大体 俺と野明は付き合ってないの!」
思わず声を荒げると皆一斉に呆れたような顔を向けた。
「本当に?・・・・うそでしょ? 休みの度に二人で出かけてるじゃない?」
「それでも。本当に何もないのっ。男として見られてないんだから手の出しようが・・・」
言ってしまってから あっと思ったが取り返しはつかない。
男性陣はにやにやと笑い 女性陣は微かに頬を染めてクスクス笑いながらこちらを見ている。
「そうだったんだ?」
「野明 鈍感だからねぇ」
「てっきり付き合ってると思ったのに 意外だったな~」
「けど こういうところに参加するのは気に入らなくて文句つけるわけだ」
「彼女じゃなくても?」
「だから やきもちなんだろう? 泉さんも苦労するよなぁ。付き合う前からこれじゃ・・・」
「安心しろって、誰も泉さんにコナかけたりしてないさ。篠原の大事な『パートナー』だもんなぁ?」武田がにやにやと笑い 女性陣も 「いいなぁ『パートナー』だって~」といいながら きゃぁきゃぁ盛り上がる。
遊馬は 仏頂面をして胡坐を掻くと「なんでこうなるんだよ」と頭を抱えた。

野明たちは戻ってくると 座敷の様子が一変していることに驚いて「どうしたのよ?」と問いかけたが みんなニヤニヤ笑って遊馬を見るだけで何も答えないし遊馬自身も「なんでもねぇよ」と答えるだけだった。
野明が遊馬の隣に座りながら目の前の女性二人に話を振ったのをみて相手を一睨みするが、相手は肩を震わせ「話しちゃ駄目だって」と言って笑い、緑が小池と武田に目を向けると 笑いを堪えきれなくなった二人が大声で笑い出してしまった。
次いで他の奴らも笑い出し、目の前の女性二人はけらけらと笑いながら 「篠原君って 可愛いわ~」とか「がんばれ~」と言いつつ人の頭をぽんぽん叩いた。
遊馬はばつが悪くて仕方なく、遂には「勘弁してくれよ」と言いながら机に突っ伏した。

そのまま暫く凹んでいると野明が顔を覗き込んできた。
化粧は綺麗に直されていて大きな瞳を瞬かせ「遊馬ぁ?」と声を掛ける。
髪がサラサラと揺れ甘い香りが鼻腔を擽る。
この数分の間に気力と体力を根こそぎ失ったような気がして机に顎を乗せたままこっちを覗き込む顔を眺め「なんだよ」と応じる。
「どうしたのさ?」と聞く声に こいつ睫長かったんだなぁと、関係の無いことを考えた。
きょとんとした顔をして能天気に顔を近づける野明に「・・・・お前が悪いんだからな」と言うと ふいっとを反対を向いた。
「私?ね 私何かした?」野明が慌てたように声を掛ける。
俺の居ない所にそんな格好で出歩くから、見たことの無い顔を見せるから、落ち着かなくて仕方が無い。そんなことを認めたくないのでそのままそっぽをむいて黙っていた。
部屋の奥で武田と小池が緑になにか説明していたようだがもう どうでもよくなってそのまま放っておいた。
暫くそうしていると武田が唐突に「この話題はここまで!」と宣言して事情を知りえなかった野明が不満の声を上げたが、野明以外の全員がひとしきり笑った後にそれを了承した。

その後、先の件には触れないまま飲み会がいっそ和やかといってもいい雰囲気で進行したのだがここで生まれた変な連帯感は弱みを握る連中がつるんでいる、という感じがして遊馬は心中穏やかでなかった。
野明も服装や化粧の所為なのか、それとも別の要因があるのか図りかねるところではあったが、いつもと違い大人しい態度でサワーをコクリコクリと口に運んでいる。
時折 ちらりと遊馬の顔を見て安心したように前を向く。
その様子は先刻までの落ち着かない気分を凪ぐには十分なものだった。
ふいに野明が腰を浮かせ机の真ん中に置かれたビールのピッチャーに手を伸ばすと横から手を伸ばした武田が、「女の子は重いものを持たない」と言って野明を制した。
野明が少し戸惑い気味に頬を朱くしながら笑うのをみて 『そんな顔 みせてんじゃねぇよ』と思わず眉根を寄せる。
それに気付いた小池が遊馬の反応を面白がるように口を開きそれに皆が乗った。
「泉さんって 可愛いですよね~、そういうところ。」
「確かにね、野明って女の子扱いされるのに慣れてないから弱いのよね、こういう扱いに」
「新鮮な反応よねぇ」
「女の子扱いされないんだ?こんなに可愛いのに。勿体無いなぁ」
言われた野明は「やめてくださいよぉ」と恥ずかしそうに手元のグラスで顔を隠して俯いた。

黙ってその様子を見ていた遊馬は意外な反応だなぁと思い野明に問いかけた。
「・・・して欲しかったのか? 女の子扱い」
「え・・・?! あの、えっとね。」真っ赤になってどもる野明を見てそうだったのか、と思う。
「お前そういうの嫌がると思ってた」というと「なんで?」と聞き返された。
「なんとなく」と答えると今度は野明は少し困った顔をして見せる。
「ま、いいけどな」あっさりとこの話題を切り上げると残っていたビールを呷りながら『そんなもんなのかなぁ』と考える。
職場の環境が環境だけに これといって女性というのを意識して対応することは少ない。
それは野明だけでなく南雲隊長も熊耳さんもそうだったからその方がいいんだろうと勝手に思っていたがもしかすると野明は不満に思っていたのだろうか? 聞いてみたいような気がしたがここで聞くとまわりが五月蝿そうなのであとにしよう、と決めた。

そろそろ場所を変えようということになって 一旦店を出る。
時間も10時を回って気温も少し下がり ひんやりとした空気が酒で火照った肌に心地良かった。
終始 隣で機嫌よくサワーのグラスを傾けていた野明は店の外に出ると軽い足取りで前を歩き、時折くるりと振り返るとスカートのすそがふわりと広がった。
その様子に如何にも『女の子』だよなぁと思いながらゆっくりと歩を進める。
他の面々は野明の少し前を次に移動する店を相談しながら歩いている。
遊馬のとなりで歩調をあわせる緑が前をいく野明を見ながら口を開いた。
「来た時 随分機嫌が悪かったじゃない?」
「小池が嵌めたからだよ、俺、合コンとか出ない主義なの」遊馬もまた前を見て答える。
緑は小さく「ふうん」というと言葉を継ぐ。
「それは生い立ちの所為? 野明の所為?」さらっと言いにくいことを訊いてくる緑に一瞬強い目を向けた。
「黙秘権は?」と返す。
「使いたい?」と言って強い視線を返された。
誤魔化すのを諦めて遊馬は小さく肩を竦めると少し考える。溜息を吐きながら「今は両方、だな」と答えた。
『野明の所為か』という質問を 今更否定するのも馬鹿馬鹿しかった。
「両方、ね」緑は小さく笑うと悪戯っぽい笑顔を見せながら続ける。「野明も合コンとかには出ない主義なのよ、知ってた?」
遊馬は意味を図りかね一瞬戸惑ったが 含み笑いを見せる緑の顔を見て「なるほどね」と呟いて空を仰ぎ大きく息を吐き出した。
緑はやれやれ、というように溜息を吐き遊馬の腕をポンっと叩くと「ま、上手くやって頂戴よ?」と言い置いて軽く駆け出すようにして他の面々に合流していった。

自分を追い越していった緑に気付いて野明がこちらを振り返ると駆け寄ってくる。
遊馬の腕に両手を絡めるようにして軽く引っぱり「急ごう」と促す野明に「いいよ」と答えると「見失っちゃうよ?」と小首を傾げる。
「平気だよ」というと野明はきょとんとした顔をした。
少しづつ皆と距離が開いてくると野明の瞳に不安そうな色が出てきた。
それでも腕を放して『先に行くね』とは言わない。その様子を見ながら面白いな、と思う。
皆と合流したければ走るなり、携帯で連絡をつけるなりすればいいだけでそこまで不安に思うことは無いだろう。
それは向こうにしても同じことなのだが 緑の『上手くやって頂戴』というのをそういうことだと捕らえれば 仮にこのまま逸れたとしても今日のところは向こうからの連絡はまずないだろうと思えた。
そうなったら後日、連中にからかわれることは必至だが後のことは後から考えればいい。上手く乗せられたような気するが『まあいいか』と思うことにした。

ふと野明の方を見下ろすと不安そうな顔でこちらを見上げていた。
それは皆と逸れそうなことに対してなのか、遊馬が黙りこんでしまったこと対してなのか。
遊馬は少し考えてから ゆっくりと話しかけた。
「なぁ 飲みなおさないか?」野明は驚いて目を丸くした。
「今から?」
「そ。殆ど飲んでないだろ? 折角めかし込んで来たんだし居酒屋じゃなくてバーとか行くか?」
顔を覗き込んで様子を見る。ほんのり頬を染めた野明を見て『嫌がってるわけじゃなさそうだな』と思った。
俯き加減で「あ・・えと・・皆が・・・」とごにょごにょ呟きながら時々 ちらりと上目遣いで顔を伺う様子はなかなか見物だった。
「あっちは心配要らないさ。大丈夫だよ」軽く笑うと不思議そうな顔をして物問いた気に首を傾げた。

その様子に ちょっと悪戯心が沸く。
わざと少し低い声を出し耳元で囁くように声を掛ける。「女の子扱い、してやろっか?」
野明の顔が真っ赤になるのを見ながらひょいと『お姫様だっこ』をしてやる。
「え? あ ちょっと 遊馬ぁ?」と真っ赤な顔をしてじたばたする野明に「あんまり暴れると落ちるぞ?」と声を掛ける。
拗ねたような目で遊馬を見上げると小さな声で訴えた。「あの・・・降ろして貰える?自分で歩く」
その顔は結構可愛いな、と思いつつ「やだね」と答えた。
胸元に腕を突っ張って一生懸命降りようとする野明に苦笑しながら、どうしたら大人しくなるかなと考えて。
半分は冗談、半分は本気で もう一度耳元に囁く。
「ちゃんと女の子扱いしてやるから、大人しく抱かれてなさい」
顔を覗き込むと野明は一瞬呆気に取られて動きを止め、腕を突っ張る気力をなくした。
そして赤かった顔を更に朱に染めると顔をぽすんっと遊馬の肩口に伏せ小さい声で「馬鹿ぁ」と言った。
大人しくなった野明を満足気に眺めて「どこに行きたい?」と問いかける。
野明は肩口に額を押し当てたまま小さな声で「お任せします」と答えてそのまま更にキュっと顔を伏せた。
遊馬は軽く目を瞠り野明を見遣ったがその顔はしっかり伏せられていて見ることが出来なかった。
額を押し付けられている肩口の温度で『相当顔赤いんだろうなぁ』と思うと可笑しくて仕方が無かった。
遊馬は「了解」と返事をしてから 少し考えて東口にあるバーに行こうと決めてゆっくり歩き始めた。
駅から近くて軽く食事も摂れ、席も個室が多いバーとしては珍しい店だ。でもゆっくり向かい合って話すには丁度いいだろう。
明け方まで開いているので始発まで飲み明かしてもいい。
歩きながら 野明に話しかける。
「寮に連絡しなくて平気か?」
「え?」野明はきょとんとした顔をする。
「門限。今日中には帰れないぞ?」
「あ・・」少し考えるような顔をする。
「帰りたいなら今から送る」そう言って顔を覗くと野明は「・・・・・ううん。平気」といって小さく首を振った。
「じゃ、いくか?」と声を掛けるとはにかむ様に笑いながら「はい」と返事をした。

END

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追記

ちょっと長くなってしまいました(^^;
2部に分けるような話でもないし・・・
ちなみに最後に遊馬が向かおうとしている店にはちゃんとモデルがあります。
新宿東口に行くことがあったら探してみてくださいね♪
割と有名なお店のようですよ☆

それにしてもこの時点でもまだ「付き合ってない」ということですよね(笑)
いいのかな それで(^^;

では 最後までお付き合いくださいまして有難うございました!!

タイトルの ”Irreplaceable”は 置き換えられない、かけがえのないという意味です(^^)

だれか私にタイトルをつける才能を下さい・・・

歩速の選択

今回、いよいよ3部作(になってしまいました・・・)の完結編(笑)
広げた風呂敷は畳めたのでしょうか?
何しろ 見切り発車で開始した素人の初書き超大作です。
温かい目で見守ってくださいね。(^^;

このお話は
「ガールズ・トーク」
「心を占めるもの」
に続く3本目になります。
通して見ていただけますと嬉しいです。

では 以下からが本文です。
ご興味を持ってくださったかたへささげます(^^)

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歩速の選択
=================

このままじっとしていると泣きそうな気がしたから。
野明はそっとハンドバックを引き寄せ緑に「悪いけど先に帰らせて」と小声で告げた。
緑は野明と遊馬を等分に見やって眉根を顰める。「ごめん・・・」と申し訳なさそうに続けた「こんなつもりじゃなかったのよ」
「わかってる、大丈夫だよ」
野明が入り口の障子戸をそっと開ける。
部屋を出ようとすると、後ろから肩を捕まれた。
「何だよ、帰るのか?」先刻までの穏やかな顔ではなくて ちょっと不貞腐れたような顔をしていた。
「俺が来たからか?」小さな声で畳み掛けるみたいに耳元で話す。
トクン・・と心臓が跳ねる気がした。
「違う 遊馬が来たからじゃないよ」
「じゃ なんだよ」
「遊馬の所為じゃない。でも遊馬 怒ってるでしょう?先刻だって黙って向こうに行っちゃうし。」
野明は俯いたまま目線を合わさずに話し、話しているうちに涙がぼろぼろと落ちてきた。
「あ? あー・あれはさ・・お前の所為ってばかりじゃないし、ちょっと気が立ってたから・・・て・・・おい、泣くなよ?」
遊馬が来てくれた、気に掛けていてくれた、それだけで嬉しくて涙が出てきた。
遊馬は困った様に野明の顔を覗き込むと大きく息を吐いて「当たって 悪かったよ」といって髪をくしゃくしゃっと撫でる。
心地のいい大きな手、その感触が気持ちよくて思わず目を瞑る。
「あんまり泣くと化粧落ちるぞ」
「うん、そうだね」
化粧しているのにも気づいてくれてたんだ、と思うと嬉しかった。「取り敢えず 席に戻ろうぜ?」促されて席まで戻る。
目が合うと緑はほっとした顔をして「折角のお化粧が台無しね」といってバッグを引き寄せ直してあげるからいらっしゃい、と私の手を引いて立ち上がった。

パウダールームで緑が手際よく化粧を直す。
「さてと こんなもんかな」そういうと自分もリップを少し塗りなおして道具を仕舞う。
「ところでさ、篠原君 何だって?」
「何って 何が?」
「いろいろ。何であんなに機嫌が悪かったのかとか、その格好についてとかさ」
「なんにも。」
「なんにも?」
「うん。私が1人で泣いて有耶無耶になっちゃった」
「なんだかなぁ・・・」緑は不満気に頬を膨らませた。
「でも 一つわかった」野明はにっこり笑って言った。「遊馬って特別なんだなぁって」
緑は小さく肩を竦めると「今頃 何言ってんだか・・・」と大きく息を吐いた。

個室に戻ると座敷の様子が一変していた。まず 遊馬がさっき武田が座っていた野明の隣席にいた。
遊馬は仏頂面で胡坐をかき頬杖をついていて、女性陣二人はくすくす笑いながら顔を見合わせている。
残る4人の男性陣はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべて遊馬を見ていた。
事情が飲み込めない 緑と野明は入り口で立ち止まって「どうしたのよ?」と問いかけたが皆が一様に顔を見合わせてくすくす笑うだけで、遊馬も「何にもねぇよ」とぶすっとした様子で答えるだけだった。
なんだか妙な具合だなぁと思いつつ遊馬の隣に野明、その横に緑が座る。
こういう時の遊馬に何を聞いても無駄なのは良くわかっていたので野明は正面に座る女性陣に話を振ることにした。
「ね 何かあったの?」
「それがね・・・」二人で顔を見合わせてくすくすっと笑い話し出そうとすると、遊馬が鋭い視線を投げてそれを制する。
それを受けて二人は肩を震わせて笑いを堪える。「・・・話しちゃ駄目だって」余程 面白いことがあったんだろう。
今度は緑が男性陣に物問いた気な目線を送ると武田と小池がふき出すように笑い出した。
するとそれまで我慢していた女性陣と残り二人の男性陣も盛大に笑い出し、女性二人にいたっては「篠原君 可愛いわ~」「ん~ 頑張れぇ!」といって机越しにぽんぽんっと頭を叩いたりし始めた。
遊馬は体を震わせて黙っていたが遂に、「勘弁してくれよ」と言って机に突っ伏してしまった。

「遊馬ぁ?」顔を覗き込むようにして野明が声を掛ける。
「・・・なんだよ・・・」脱力したような声が返ってくる。
「どうしたのさ?」
「・・・・お前が悪いんだからな」そういうとフイッとそっぽ向かれてしまった。
「私?ね 私何かした?」
遊馬はそれっきり何も答えずに不貞腐れていて、その間に武田と小池から大まかに状況を聞いた緑は「ふ~ん」と言いながら他の男性陣同様、人の悪い笑みを浮かべて遊馬を見遣っていた。
困り果てた野明が緑を見ると、彼女は「努力って結構報われるものみたいよ」笑った。
「さて これ以上篠原を虐めていても何だからこの話題はここまでな!」と武田が宣言し、他の者もひとしきり笑った後「了解~」と応じた。
野明だけが事情を全く把握できないままだったので「え?ちょっとまって、どうして?」と訊いてみたがみんな一様に、「この話題はもうおしまい!」といって誰も質問に答えてはくれなかった。

その後は皆で談笑しながらの飲み会になったのだが野明達が化粧直しをしていた間に起きた何かがすっかりこのメンバーを打ち解けさせたらしくかなりざっくばらんな雰囲気になった。
野明も始めのように氷が解け切るまでマドラーをまわし続けることも無くグラスを空ける。
空になったジョッキに気づいた野明がビールを注ごうとピッチャーを持ち上げようとすると武田が「重いからやるよ」と声をかけた。
「この位 大丈夫ですよ」
「いいから いいから、女の子は重いもの持たない」とピッチャーを取り上げると武田が悪戯っぽく笑った。
こういう扱いに慣れていない野明は「じゃ、お願いします」というと照れたように笑う。
その横で遊馬は 面白くないぞという顔をして武田と野明を見遣っていた。
「泉さんって 可愛いですよね~、そういうところ。」と小池が声を掛ける。
「確かにね、野明って女の子扱いされるのに慣れてないから弱いのよね、こういう扱いに」緑が応じ、「新鮮な反応よねぇ」と女性陣も話に加わる。
「女の子扱いされないんだ?こんなに可愛いのに。勿体無いなぁ」と武田。
野明はなんだか居た堪れないような気分になって「やめてくださいよぉ」と手元のグラスで顔を隠すようにして言った。
黙ってその様子を見ていた遊馬が意外だなという風に目を丸くして野明に問いかけた。
「・・・して欲しかったのか? 女の子扱い」
「え・・・?! あの、えっとね。」真っ赤になってどもる野明を見て、「ふーん」と呟く。
「お前そういうの嫌がると思ってた」少し考え込むような顔をしてぼそっと言う。
「なんで?」
「なんとなく」
今度は野明が考え込む。
「ま、いいけどな」遊馬はあっさりとこの話題を切り上げると残っていたビールを呷った。

3時間余りが過ぎた頃 場所を変えようと言うことになって皆で店を出た。
ひんやりした空気が酒の入った身体に心地いい。
機嫌の直った遊馬に安心した野明は上機嫌でスカートをヒラヒラさせながら緑と遊馬の少し前を跳ねるように歩く。
時折くるっと振り返って二人の顔を確認するとまた跳ねる様に歩いていく。
周りから見ればほろ酔い加減で浮かれているようにも見えるが 緑と遊馬は野明があれくらいのサワーで酔っ払うなどとはサラサラ思っていなかった。

「ところで篠原君?」前を見ながら緑が口を開く。「来た時 随分機嫌が悪かったじゃない?」
「小池が嵌めたからだよ、俺、合コンとか出ない主義なの」遊馬もまた前を見て答える。
「それは生い立ちの所為? 野明の所為?」さらっと言いにくいことを訊いてくる緑を一瞥して視線を前に戻すと「黙秘権は?」と返す。
「使いたい?」そう言うと一瞬強い視線を送って来た。
遊馬は小さく肩を竦めると軽く溜息を吐きながら「今は両方、だな」と答えた。
「両方、ね」緑は小さく笑う。
「野明も合コンとかには出ない主義なのよ、知ってた?」
遊馬は一瞬目を瞠ると「なるほどね」と呟いて空を仰ぎ大きく息を吐き出した。
緑はやれやれ、というように溜息を吐き遊馬の腕をポンっと叩くと「ま、上手くやって頂戴よ?」と言い捨てると野明の更に前を行く他の面々に合流していった。

緑が自分を追い越していったのに気づいて野明が後ろを振り返り、複雑な顔をした遊馬がゆっくり歩いているのを見ると走り寄る。
「みんなと結構離れちゃったね」そういうと遊馬の腕を取って「急ごう」と促した。
腕をとられた遊馬は少し考えてから「いいよ」といいそのままのペースで歩き続けた。
「見失っちゃうよ?」野明が小首を傾げるのを見ながら、ああ言ったということは後は緑がなんとかするんだろうと漠然と考えて「平気だよ」と答える。
遊馬の腕を取ったまま少しづつ距離が開いていく皆の後ろ姿と遊馬の顔を不安そうな瞳で交互に見つつも野明は決して1人で走って行こうとしない。
『面白いもんだなぁ』とゆっくりと歩を進めながらしみじみ野明を観察する。
大体そんなに不安な顔をしなくても合流したいなら今からでも走ればいいし、見失ったとしても携帯で連絡をつければいい。
それはこちらからがそうであるように 向こうから見ても同じことだ。
けど、このまま逸れても向こうからこちらに連絡は来ないだろうと思えた。先刻のはそういうことなんだろうと。緑に上手く乗せられたような気がしなくもなかったが『まあいいか』と思うことにした。

考え込み黙ってしまった遊馬に野明が不安そうな顔を向けていた。少し間をおいて遊馬が口を開く。
「なぁ 飲みなおさないか?」野明は驚いて目を丸くする。
「今から?」
「そ。殆ど飲んでないだろ? 折角めかし込んで来たんだし居酒屋じゃなくてバーとか行くか?」
顔をほんのり朱くした野明が小さな声で「あ・・えと・・皆が・・・」とごにょごにょ呟く。
「あっちは心配要らないさ。大丈夫だよ」軽く笑うと野明が不思議そうな顔をした。
その様子が可笑しくて悪戯心がふっと沸く。
「女の子扱い、してやろっか?」と耳元に囁くと野明が何か言うより早く膝の裏側と背中に手をまわし、ひょいっと抱き上げる。
「え? あ ちょっと、遊馬ぁ?」
真っ赤になりながら動揺してじたばたする野明を面白そうに見ながら「あんまり暴れると落ちるぞ?」と呆れた様に言った。
ファイル 9-1.jpg
「あの・・・降ろして貰える?自分で歩く」
「やだね」
遊馬の胸元に腕を突っ張って一生懸命降りようとする野明に苦笑しながら、再び楽しそうに耳元で囁く。
「ちゃんと女の子扱いしてやるから、大人しく抱かれてなさい」
顔色も変えずにしれっと言い放つ遊馬に、野明は呆気に取られて腕を突っ張る気力をなくし、朱に染めた顔をぽすんっと遊馬の肩口に伏せた。
その様子を確認して遊馬は満足気に笑い、顔を覗き込んで「どこに行きたい?」と訊く。
顔を上げられない野明は額を遊馬の肩口にきゅっと押しあてたまま「お任せします」と小さな声で答えた。
遊馬は軽く目を瞠ると「了解」と返事をしてすこし考えてからゆっくりと歩き出した。

遊馬の腕の中で思い返す。今日 寮を出るときに思ったこと。
かわいい服を着て、綺麗にメイクをして、甘い香りを纏うことで周りの反応は変わるのか?
勿論それだけで変わるわけではないだろうけれど。
先刻聞いた緑の言葉を思い出す。「努力って結構報われるものみたいよ」

END

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追記

何とか風呂敷畳んでみましたが 結構強引に畳んだので綻びだらけです(^^;
壮大な処女作ってことで笑って許してください(^^;

突っ込みどころ満載ですが今はこれが精一杯かなぁ。文才が欲しいです(T∇T)
折角なのでお姫様抱っこさせてみたんですが絵にすると成人男女に見えないですねぇ。補導されそうですよ、夜中歩いてたら(笑)

長い駄文でしたが最後までお付き合いくださった方々、本当に有難うございます。
また コメントもすごく励みになりました。これに懲りずにまたお付き合いくださると幸いです。

心を占めるもの

こっそり書いていた駄文の続きです。

ここからでも読めますが 内容は「ガールズ・トーク」の続きになっています。

続きは?
と訊かれて調子に乗って書き出したは良いけれど・・・
無駄に長くなってしまった為取り敢えず 一部を先行公開状態に。
いきなり連載状態になってしまうあたり本当に行き当たりばったりです。
そしてこの大風呂敷、畳めるんでしょうか、私・・・

それとツッジー様~ 今回挿絵断念です(笑)
何しろ絵にして面白い場面が全く無い、というのが難点で。
完結するまでには一枚くらい入れたいと思います(←弱気)

では 小学校レベルの作文で 且つ無駄に長いお話になってきましたが・・・
ご興味を持ってくださった方へささげます。

では どうぞ。

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心を占めるもの
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野明と緑は待ち合わせ場所になっている新宿の居酒屋に向かった。
他愛も無い話をしながら野明は久しぶりに二課以外の人と沢山話したなと思った。
二課はすごく居心地のいい職場だけど常に限られた人としか接しない職場でもある。
その上、月の半分は当直として泊り込むわけで 妻帯者の進士ですら家に帰る日数より職場にいる日数の方が多いだろう。
そういう関係においては 寝食をともにすることで互いを熟知し気心が知れている反面、相談し辛いことや話しにくいことも出てくる。
ましてあの職場には女性が極端に少なく、同年代の女性は1人もいなかった。
そんな理由からも他愛も無い、けれど職場では言いにくいことを話すには緑はうってつけで、且つ彼女はそういうことを興味本位で掘り下げたりしない。
野明にとってはとても有難い友人の1人だった。
はっきりと口にしたことはない遊馬に対する複雑な感情も彼女は何とはなく察している雰囲気があって、もしかするとそれは野明自身よりも良く見えているのかも知れなかった。

「さて ついたね」
緑が入り口で予約している旨を告げると店員が「こちらへどうぞ」と二人を奥の座敷に案内した。
店内は小洒落た日本庭園を模していて、客席の殆どが個室のようになっている。
通路には玉砂利に飛び石が配置されていた。
おもわずキョロキョロろしてしまう野明に緑は「おもしろいでしょ?」と笑う。
案内された部屋に入ると既に席についている人がいた。
自分達を含めて女性4人、男性3人。
「女性が少ないんじゃなかったの?」と聞くと「向こうが5人だったはずなんだけど」と野明に耳打ちして、先に来ていた男性に声を掛けた。
「武田、残りは? 来れなくなったの?」
「いや、なんか少し遅れるって」
「そ、じゃ先に始めちゃおうよ。待ってても時間勿体無いしね」
そういって店員を呼び「はじめてください」と告げると、飲み物をオーダーした。
一通り飲み物が行き渡ったところで 「武田」と呼ばれた男性が「じゃ 取り敢えず乾杯!」といい皆でグラスをカチンと合わせ飲み会が始まった。

野明はグレープフルーツサワーのグラスを手にして無意識にマドラーをクルクルと回していた。
何か落ち着かないのだ。居酒屋には遊馬とだってよく行く。その時には景気よく日本酒をグイグイ飲めるのに、今はそういう気分になれなかった。
それは小洒落た店構えの所為かもしれないし、着慣れない洋服とメイクの所為かも知れなかったが、変な緊張感みたいなものがあって気が緩まない、というのが正直なところだった。
野明のそんな様子に「難しい顔しないの、それとも篠原君がいないとつまらない?」と緑は苦笑しながら声を掛けた。
「え? そんなことないよ、楽しんでるよ」野明は慌てて否定すると サワーをクイっと呷った。

「泉さんって 雰囲気変わったよね?」
武田が突然声を掛けた。野明は 「え?」といって小首を傾げる。会ったこと、ある人だっけ・・・? 全く思い出せなかった。
「なあに? 武田いきなりナンパ?」緑がからかう様に言い、「気をつけなさいよ~」と野明の肩を小突く。
交番勤務だと言った武田と野明には接点はない、研修校も自分は早稲田だったが武田は三鷹だったという。どこで会ったのか・・・。
「僕のことは覚えてないよね、でも特機の適正試験を受けに行った奴の中では有名人なんだよ、泉さんは」
「・・・ああ あの中にいたんですか?」
「うん、あのシュミレーターに乗って真面目に交番勤務から始めるべきだって身に染みた」
野明は平気だったのでなんともいえないのだがあれはかなり評判が悪く体験者の殆どが居住性の悪さにギブアップしたというある種の伝説になるようなものだったのだ。
「あれから出てきて ”もすこしゴツゴツうごいてもいいな” なんて言ったのは泉さんだけだったよ。ましてそれが小柄な女の子だったわけだからね、みんな君をよく覚えていると思うよ」
「・・・あはは・・・そうですか」 なんだかちょっと恥ずかしくなってグラスを口元に持ってきて顔を少し隠してみる。
「あの時は始め 男だと思ったんだよね、ショートカットだったし。それが随分 女の子になったなぁって」
そういわれて野明の顔に朱がのぼる。そんな風に言われたことが無かったので免疫が無い。
「・・・えと・・・どうも・・・」といいながら俯いてしまう。
そんな野明を横目で見ながら「ほらね、それらしい格好すればちゃんと女の子扱いされるのよ」と言って緑は野明に笑顔を向けた。

その後も相変わらずお酒の進まない野明はすっかり氷の解けたグレープフルーツサワーのマドラーをクルクル回しつつ当たり障りの無い会話を皆と交わしていた。
「女の子になったなぁって」と言われて思ったことは 今のこの格好を遊馬がみてもそう思ってくれるのかなということだった。
見て貰いたい気はするけど いつもと全く違うこの格好を見られるのはちょっと抵抗があった。
「似合わない」と一言で否定されるかも知れない。考えて思わず溜息をつく。

「泉さん 退屈?」
「え・・あ、違います。ごめんなさい、なんか普段着慣れないものを着てると落ち着かなくて」
思わず吐いた溜息が 他人に思わぬ気を使わせてしまったことに気づいて野明は慌てて顔の前で手を振る。
「そうなの? よく似合ってるのに。それからさ、」そういうと武田は野明の手にあるグラスをひょいと取ると机の端に置いた。
「新しいの頼んだら?もう味がしないでしょう?」
「有難うございます」野明は普段されないこの手の気遣いに少し動揺する。
こういう扱いに慣れていない為どう対処していいのか戸惑っていた。

新しくオーダーした飲み物を持って店員が障子を開けたとき通路の方から声が聞こえた。
一瞬 耳を疑う。その間もその声はちょっと怒った様に誰かと会話を続けていて。
やっぱりそうだと確信した時 野明は動揺して思わず立ち上がってしまった。
緑が可笑しくてたまらないという顔をして私を見上げ「座ってなさいよ」と手をひいた。
「なんで・・・? 緑は知ってたの?」ちょっと恨みがましい視線を向ける。顔が多分真っ赤だ。
「健診にいってたんでしょ?捕まるかどうか判らなかったじゃない?」としれっと言ってのける。
障子の外からは「合コンなんて聞いてない」とか「そういうの嫌なんだよ」とここまで来てダダをこねる声が聞こえる。
野明はその声を聞きながらどうしたら良いのか判らずに緑の横で縮こまっていた。
会いたいのか、会いたくないのか・・・自分でもよく判らなくなっていた。
武田が「しょうがないな」と言って席を立ち入り口に向かう。
「そこで騒ぐと迷惑だからさ、とにかく入れよ」そういって声を掛けると男性が二人部屋に入ってきた。
「小池、あとで覚えてろよ」不貞腐れたような顔をしてやや不機嫌そうにいって室内をざっと一瞥した彼と・・・目が合った。

「・・・野明?」
「え? あ、はい」動揺して声が上ずっているのが自分でもわかる。引き攣ったような笑顔を浮かべて返事を返す。
遊馬は野明の格好をざっと眺めると ふーっと息を吐く。
野明は緊張と気恥ずかしさで真っ赤になって俯いた。
程なく遊馬はふいっと視線を外すと男性陣が固まっている辺りに黙って腰を下ろした。
微妙に緊張した空気が漂う。
武田が気分を切り替えるように もう一度乾杯の音頭をとり場を繕う。
その後は 遊馬も特に不機嫌さを表に出すことなく穏やかに飲んでいたし野明もちびちびとサワーを飲み続けた。
暫くすると野明の顔の火照りも収まり、ついでに浮ついていた気分もどこかに行ってしまった。
後には 妙に寂しい気分が残る。
緑が時々気遣わしげに視線を向けるのがわかったので頑張って笑うことにした。
気を使ってもらうのは余計に辛いから。

つい先刻まではこの格好をみたら何か言ってくれるかなとか どんな顔をするだろうとか 似合わないって言われたら辛いだろうなとか色々考えていたけれど。
似合わないって言われるよりも関心を持って貰えないという方がよほど辛いのだということに初めて気がついた。
他の人に褒めてもらっても、さりげない気遣いで女の子扱いしてもらっても それは違うんだと。
「似合わねーな」と言われても「なんだよ、それ」と小馬鹿するのでも何でもいいから。
私は遊馬に構って欲しかったんだ、そう気づいたら凄く悲しくなった。

to be continue...
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追記

なんだか暗くなってきました。
そもそも別行動の日をネタに無計画に始めたものでつじつまが合わなくて(^^;
遊馬なかなか出てこないし来たと思ったら結構不機嫌です。
このまま続けて収集がつくのでしょうか?!

ちなみにでてくる男性陣の名前は コミックの1巻目で適正試験を受けに来た人からそのまま貰いました(笑)

ガールズ・トーク

こっそり 駄文小屋を開設しました。

こちらは さくらが初書きしたPAT系駄文です。
文才がないのに強引に書き出したためクオリティに責任もてませんので「苦手」という方はどうぞそのままスルーして下さい(^^;

ちなみに ここにでてくる 「緑」さんは ゆうきまさみさんのコミック版1巻で予備校時代の寮の同室者の名前をそのままです(笑

では 小学校作文レベルでもいいわという心優しい方は以下へお進みくださいませ~
 
==============
ガールズ・トーク
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今朝 野明が寮で朝食をとっていると予備校時代からの友人、緑に声を掛けられた。
「ね 野明 今日休み?」
「うん 今週は準待機だから」
「今日は 彼氏と出かけないんだ?」
「・・彼氏じゃないって。ただの同僚。今日は出かけないよ。定期健康診断だって」
「そうなんだ~ ま、いいけど。じゃ今 野明に彼氏はいないんだ?」
「・・・・そうだね」
応えて ちょっと胸がキュッとなる。でも遊馬とは付き合ってるわけではない。
気の合う同僚、仕事上のパートナーというだけで。
「ね、じゃ今日飲み会きなよ。合コンみたいなものだけど女の子足りないんだ~」
「合コン・・・」
それはちょっと気が進まないなと思って困った顔をしていると
「彼氏いないならいいじゃない? それとも篠原君に悪いなって?」
「なんで遊馬にそんな・・・大体 彼氏じゃないって言ってるじゃない? 遊馬だって私のこと女だと思ってないよ」
「どうしてそう思うの?」
「・・・・そういう扱いされたこと・・・ない・・し?」
小さい声でそういうと 緑は可笑しそうに「してほしいんだ、そういう扱い♪」といって笑った。
「別にそういう意味じゃ・・・」
「そういう意味なんだよ、それを不満に思ってるってことはね。」
そうなのかなぁ・・・と少し考え込んでしまう。
「それにはさ、まず女の子らしくしてみようか♪」と楽しそうにいうと緑は私を自室に引っ張り込んだ。

楽しそうにクローゼットから洋服を引っ張り出したりメイク道具を揃えたりしながら野明に話しかける。
「野明ってよく篠原君と出かけてるじゃない? でもあんまりメイクとかしないよね?」
「・・・しないね。」
「洋服もすごくラフだし」
「うん。でも職場だと化粧はレイバーに乗る時邪魔になるし、服装だって制服かスウェット、さもなければTシャツかノースリーブに短パンってことも多いから今更 畏まるのもなんだかね・・・」
「・・・・特車二課って 男ばっかのとこなんでしょ? 野明も年頃の娘なんだからさ、ノースリーブに短パンって格好でウロウロするのはどうなのよ?」
緑は呆れたようにいいながらテキパキと野明にメイクを施していく。
「そんなの誰も気にしてないと思うよ? それこそ女扱いされてないんだから。」
「どうだかね」
本人がどう思っているかはともかくとして 野明は美人ではないが快活で明るいし 可愛い部類に入ると思う。
そういう娘がそんな格好でウロウロしていては無関心なヤツばかりではないだろうに。緑は小さくため息をついた。
ファンデーションを塗り終わった時点で手を止めてクローゼットから引っ張り出してあった洋服をとっかえひっかえ野明に宛がってみる。
今ひとつ納得行かない様子で少し考えてから「そうだ!」とポンっと手を叩くと今度は押入れの中から紙袋を引っ張り出してきた。
中から薄い紫色でサラサラとした肌触りのボレロとノースリーブのワンピース、金糸の縫い取りのあるカットソーがセットになったアンサンブルが出てきた。

「うん 似合うじゃない」緑は満足げに頷くと再び道具を取り出してメイクを再開した。
「ね この服、新品じゃない?なんだか悪いよ」野明が洋服を脱ごうとすると「あげるわよ、それ」というと緑は溜息をついた
「え?だって。」
「着れないのよ、それ。バーゲンでサイズを確認しないで買っちゃったら、胸周りがきつくて着れないの」
「・・・胸周りが・・・?」野明は自分の胸元を確認する。随分と余裕が感じられた。
「そ。だからあげるわ。あっても虚しいんだけど、捨てるに捨てられなかったのよ」
「いいの? じゃ ありがとう、今度何かお礼するね」
「いいよ、そんなの、捨てるより有意義でしょ?」
そういうと緑はクスクスッと笑った。

「さて、終了!」そういうと緑は クローゼットに備え付けの姿見の前に野明を引っぱって行った。
メイクをして ふわふわするスカートを穿いている自分、というのが見慣れなくて恥ずかしい。
「変じゃない?」と聞くと「私のセンスに文句があるの?」といって緑が笑った。
「なんか 女の子みたいだなぁって・・・」
「女の子でしょうが? たまにはこういう格好してみたらいいのよ」
「あはは・・・照れくさいんだもん、今更」
「そう?」いいながら緑はメイク道具と他の洋服を片付けつつ”今更”っていうのはさ・・対象を限定してる時に使うんだよ、と思ったけどあえて口にはしなかった。
そのあと携帯で何通かメールのやり取りをして「よし! 野明も参加ね」といって肩を叩いた。

自分の部屋に着ていた洋服を戻しに行って シューズボックスからミュールを探し出して履きかえる。
滅多に使わないのだが 可愛かったので正月に衝動買いしたものだった。
「履く機会なんてないかとおもったのにね」と呟きつつ 小さめのハンドバックに持ち物を入れ替えて部屋をでた。
出てきた野明をみて緑は満足げに頷くと「仕上げ」といって甘いベリー系の香りのミストをさっとふりかけ「さ、出かけるわよ」と言って先に立って歩き出す。
すこしかわいい服を着て、ちょっと綺麗にメイクして、仄かに甘い香りを纏って・・・
そうしたら 周りの反応が少しは変わるのかな? そんなことを考えながら野明は緑と二人駅に向かって歩き出した。

END

========
追記
========

日参している日咲さまのサイトでガールズトークが展開されていて、いいなぁ かわいいなぁということでちょっとこっそりチャレンジ。
初めて書いた文章なので おかしい所が多々ありそうですが・・・
温かい目で見てやってください(^^;

また書くことがあるかというと・・・それは謎(笑)
ちなみに サイズを確認しないで洋服を買って失敗したのは実話です。あれから ものすごいサイズを見るようになりました(^^;
バーゲンとはいえ 無駄金使った~って後悔して心優しい知人に差し上げました☆

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