『大事』ということ
10000Hit記念に ASAKI様に戴いた作品です。
ASAKI様のご厚意で掲載を許可していただいたので、UPしちゃいます。
「二課時代で!」という無茶をお願いして書いていただいたASAKI様の初二課作品!!
本当にありがとうございます!!(^^)
「なぁ」
「なぁってば、ペン貸して」
「ね、悪いんだけど、名前を呼んでよ」
野明がムスッとしながら、ポイッとボールペンを渡す。
珍しく機嫌が悪いらしい。
「わりぃ。」
機嫌が悪い理由はわかる。
ついさっきまでの事件のせいだ。
ブルドックを乗り回し、人質を取った犯人。しかし野明は簡単に仕留めた。だが、犯人が投降したのちに、警官の隙を見て人質を殴った。
犯人と人質は同僚の関係で、女性問題でもめた。恋人をとられそうになった犯人がキレて同僚と喧嘩になったのだ。
「ねぇ、なんであんな風に、たかが女性のことでもめて、仲間割れしたあげく、レイバーを使って犯罪侵すかなぁ」野明は報告書を書き上げ、大きくため息をついた
「あ?」
「だから!」
「泉さん。報告書出来たら提出して」納得いかない野明が俺に噛み付こうとした瞬間、熊耳さんが声をかける
「あ、はい。すみません」
「あのね、犯罪はダメよ。でも人は頭でわかっていても心では理解出来ないことがあるのよ」
「はい…」
「あなたがレイバーを大切に思ったり、人質の方の身を心配するのは悪いことじゃないけど…篠原くんにいつまでも絡まない!」
わかった?と優しい笑顔で言われた野明は少し落ち着いたのか、お茶をいれに席を立った
「あ。」給湯室に行った野明を追いかけ、俺も火にかけられたやかんの近くに立つ「俺が、本日茶坊主」
「そっかぁ。遊馬だったっか…」
「お武さんに言われたこと気にしてるのか?」
「うっ。」
「図星だな」ちょっと赤くなった顔を指差し、笑う
「私の考え方はまだまだ子供だよね」
「そっかぁ?」
「たかが女性って言っちゃったけど…その人にとっては大切だったんだよね」
「まぁな。手段は間違ったけどな」
「お武さんも大切な人がいたから…」言葉に詰まり、お茶の葉を探す手が止まる
「そこは気にしなくていいさ」
「え?」
「彼女はきっと割り切ったはずだ」茶筒を野明に渡すと、ニコッと受け取る
「うん。でも、謝る」
「って、言うと思った」
「遊馬~ぁ…あ、遊馬にも謝る。ごめんなさい、八つ当たりして」素直に頭を下げた野明の肩に手を置き、アイスクリームの奢りで手を打つ!と耳打ちしてやる
夕暮れになり、空が朱く染まり始めた頃、俺達第二小隊は夜勤についた
「事件、起きないといいね」野明がアルフォンスに寄り掛かりながら言う
「お武さんに謝ったのか?」「うん…笑ってた」
「良かったな」約束のアイスクリームを食べながら、俺は野明の話しを聞く
「ね、遊馬好きな人いる?」
「はぁ?いきなりなんだよ」「気になる!」
お前アホか?気になるって意味わかってんのか。
「お前は?」
「なんだよー質問で返すなんて」
「好きな女作る時間がこの勤務体制でどこにあんだよ」
「だよね」
「お前は?風杜とかアピールしまくりだけど…」言った後にしまった!と思ったが、もう取消は出来ない
「風杜さんがアピール?仕事仲間でしょ?」
「仕事仲間って…」
「遊馬さ…」俺がうだうだ風杜のことを考えてる間に、野明は全く違う話しをしだす
「私、まだまだ未熟者で情けないよ」
「野明?」
「お武さんの…ことも傷つけた。遊馬…にも八つ当たりした…」
「うん」
「自分の…感情だけで物事を判断しようとして…馬鹿だよ…」時折、声が震える。泣いているのは、自分の幼さを後悔してのことか。
野明の右手を引っ張り、抱き寄せる
「馬鹿だ。大馬鹿だ」
「う…うっっ…」
「情けない奴だ」
「うっうっ…」
「俺にまで八つ当たりしやがって」
「あす…ま…ごめ…ん」
俺の胸に顔をつけ、小さく泣く野明に言ってやる
「今は俺が傍にいてやる。だからたくさん泣け」
「あすまぁ~」
俺の名前を呼ぶと同時に、背中に腕を回し、しがみついて泣く
ひとしきり泣くと、野明はスッキリした顔でありがとうと言って、離れた
「どういたまして」
「さっきの…さっきの質問だけど」
「はぁ?さっき?」
「好きな人の話」
「あぁ、あれか」
「好きかどうかなんてわかんないけど…」
「けど?」
「私は遊馬が大事」
いきなり告白めいたことを言われ、心臓が高鳴る
「こうやって失敗しても、泣かせてくれるし、私の感情を受け止めてくれる」
確かに野明の感情の変化は手に取るようにわかる。でもそれは野明だって同じはずだ。
「そりゃ、俺も同じ」
「へ?」
「俺が馬鹿やった時も凹んだ時も、お前が受け止めてくれるだろ」
「パートナーだもん」
「パートナー…か。」
「うん。一心同体でしょ」
「俺も、野明が大事だ」
その言葉をどう野明が受け取ったかはわからない。でも、俺は…
パートナーとしてだけではなく、女としても…。
「な、好きな男が出来たら、1番最初に教えろよ」
「え~なんでよ」
「別に。興味あるだけ」
「じゃー遊馬も!私に最初に教えてよ。約束!」右手の小指をつきだし、ニカッと笑う
「約束しなくても、お前に1番に教える羽目になる」指切りをしながら、ボソッと答える
「え?何?」
急に近づいた野明の顔に、心音が波打つ
「なんでもねーよ!」ごまかすように俺はおでこに指を放つと、あいつは「いったぁ~い」と撫でる
「あ、赤くなっちった」
「もう!こいつ~」
俺の背中に飛び付き、腕を首に巻き付ける
「ぐえぇ、苦しいぃ」華奢な野明の腕を掴む
こんなに近くにいて、いつも触れ合っていて、何にも感じない男がいるなら、お目にかかりたい。
何よりも大事で、手放したくない存在。
「俺、今日の犯人の気持ち、ちょっとわかるな」
「えー」
「お前もそのうちわかるさ」
「何よ、大人ぶっちゃって」
「そ、お前より大人!」
後ろから抱きしめ、一緒に夜空を見上げる
「「あ!」」
スーッと流れて消えていく刹那の光
「ここでも見えるんだな」
「願いごとした?」
「あんな一瞬で出来るか」
「私はしたよ」
「ずっげ」
俺が野明の願いを知るのはずいぶん後になってから。
互いに大事な人だと認めるのは、ずっと後になってから…。
END