[ 三妖神物語 外伝2 海辺にて・・・・ ] 文:マスタードラゴン 絵:T-Joke

終章 終わりよければ全てよし?

 一夜あけ、再び太陽が天空に座し、地上に焼け付くような日差しを投げかける。
 人々は、昨日の出来事の一切を幻覚の一言で片づけ、自分達の常識を守ることを選んだ。
 勿論、怪物が暴れたなどと言うことは全て、夢である。
 米軍も、失った六機の戦闘機とパイロット達のことを完全に抹殺した。
 書類上では、彼等は機体ともども、訓練中の事故による墜落死として処理されていた。
 何もかもが、常識に収まる範囲で処理されていった。
 真実を認める勇気を持つ者は、ごく限られた者達だけであった。
 その真実を認めている者達もまた、ほかの現実逃避した者達に埋もれて優雅な夏休みを満喫していた。
「お姉さん! 住所と電話番号教えて!」
 ハンサムだが、少々、軽薄そうな青年がそう言って女性を口説こうとしたとき、いきなり後ろに現れた影が、彼の耳を摘んで引きずっていく。
「痛い! 痛い!!」
「仕事だ、行くぞ」
「冗談じゃねえ! せっかく沖縄に来たってのに、一人も口説かないで終われるかよ!
 いきたきゃ、お前一人で行けえ!」
 青年はムキになって怒鳴るが、彼を引きずる女性は全く意に介していない。
「せっかく、南深螺殿からアイテムももらったんだ、試してみたいだろう? 一樹」
「いやだあ! 俺は、ナンパに生きるんだあ!! 離してくれえ!!
 武士の情けじゃあああぁぁぁ!!」
 だが、泣こうが喚こうが、女性の方にはそれを聞く気はさらさら無いらしい。
 砂浜に跡を残して、青年を強引に引きずっていってしまった。
「俺の青春を返せえぇぇぇ!!」
 長く尾を引くえんさの声は、青い空と紺碧の海に飲み込まれ、そして消えていった・・・・
 それを見送った美しい女神と主人、そしてその友人は互いに笑い合った。
「平和だねぇ・・・・」
 平凡なときは平凡なままに過ぎ去ろうとしていた。


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