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気になること

雨続きで今日の花火大会中止かなぁと考えています・・・
どちらにしても このぬかるみでは土手は凄いことになっていそうなので子供2人連れて行くのは無理でしょうね(^^;

さて書き掛けたのはかなり前で放置していたものです(^^;
ファイルが増えてきてちょっとPC内を整理していたら出てきたので少し手を加えてみました~(笑)
でも やっぱり纏まりのない文章ですね(笑)
誰かの目線で書くって難しいなぁって思います。

以下本文

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気になること
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「篠原、泉をしらんか?」
退勤時間を過ぎ更衣室に向う途中、太田に声を掛けたられた。
「いや、見てないけど。野明に何か用か?」
「いや ならいいんだ。すまなかったな」
そういいながらそそくさと その場を去る。
妙にそわそわした態度が腑に落ちなくて 「なんだありゃ?」と思わず口に出してその後姿を見送った。

手早く着替えを済ませ、更衣室を出たが野明が更衣室に来た気配もない。
今日は日報もさっさと書き上げたし居残るような用事は何も無いはずだと思い、『ハンガーにでも行ったかな?』と思い足を向けた。
ハンガーに野明の姿がないことを確認して 一応隊員室にも顔を出したがやはりそこにも彼女の姿はなかった。
残っていたのは 熊耳、進士、山崎の3人で帰り支度を終え机を片付けたりしているところだった。
「野明 見ませんでした?」
「あれ、遊馬さん帰ったんじゃなかったんですか?」
ひろみちゃんが柔らかな笑顔を向ける。
「いや それがさ、野明見つかんなくて。帰りに飯でも食っていこうかと思ったんだけど。」
「泉さんでしたら さっき太田さんに呼ばれて行きましたよ」
定時に上がれることにホッとした様子の進士が荷物片手に答えた。
「太田と? 何で?」
「さぁ・・・? でもなんだか思いつめたような様子でしたよね、太田さん」
進士が同意を求めるとひろみちゃんは大きく頷いた。
「ここ数日 そわそわして落ち着きがないというかそういう感じでしたよね」
「太田に落ち着きがないのは いつものことじゃないか。」
何でもない風にいいながら遊馬は さっきの太田の様子がチラリと脳裏を掠める。
「最近 やたらと泉さんの方を伺ってたと言うか、気にしていた感じはあったんですよね」
「確かにそうね。ここ数日 態度が不自然というか、集中力が掛けてる感じがあるわよね」
「遊馬さん なにか気がついたことないんですか?」
一斉に言われて考えてみる。確かにここ最近チラチラを野明の方を見てるなとは感じてはいた。
それにさっきの態度だ。一度気にかかると変に気になって落ち着かない。
「俺 ちょっと探してきます」
そう言って踵を返すと心当たりを探してまわることにした。
隊員室に残された三人は 揃って顔を見合わせると「若いなぁ」と口を揃えて笑い、それにしても、と太田の様子がおかしいことに首を捻った。

先ほども探したハンガー、ついでに駐輪場にバイクがあるのを確認して、電算室、更衣室を順番に覗いたが野明も太田も姿が見えなかった。
すると残りは屋上か堤防か。
少し考えて 太田が野明を連れ出したとするならば 好き好んで屋上には上るまいと考えて堤防に回ることにした。
途中 トマトのビニールハウスの傍に差し掛かったところで 人の話し声が聞こえて思わず立ち止まった。
太田の声だと確信して近づき ビニールハウスの角からひょいと顔を出すと、向かい合って立つ制服姿の野明と太田を見つけ、声を掛けようとしたとき太田が言葉を発した。

「というわけなんだが・・・付き合ってもらえんだろうか?」
話の前半が聞こえなかったとはいえ 予想外の言葉に思わず顔を引っ込めてハウスの影に隠れてしまった。
『なんで 俺が隠れなきゃならないんだよ!』と思ったものの一度隠れてしまうと今更出て行くのもばつが悪いし気が引ける。そして 何より野明が何と答えるのかに興味があった。
そっと様子を伺うと俯いて顔を真っ赤にして拳を握り締めている太田の前で 野明は困ったような笑顔を見せていた。
「う~ん・・・でも 私なんかでいいのかなぁ?」
「お前以外におらんだろうが」
真剣な様子の太田に野明が苦笑したかと思うと予想外の回答が飛び出した。
「わかった。いいよ、私でいいなら」
吃驚して思わず 声を上げそうになるのを必死で抑える。
何故、いや それより何が? それもよりによって太田だと?! 
人が大混乱している間にも会話は続いている。
「で、早速なんだか次の非番は空いてるか?」
「今の所予定ないよ、じゃ 明後日ね」
「場所は・・・」
太田が 野明に約束を取り付けているのを耳にして 居た堪れなくなってその場から逃げるように立ち去った。真っ直ぐ寮まで帰ってきたが 大体 彼女でもない野明が誰とどうしようと自由で俺の干渉することではない、とわかっているのに気分はイライラしてちっとも落ち着かない。
今頃になって『夕飯食い損ねたな』と思ったものの部屋を出る気力が沸かずにそのまま風呂にだけ入ってベッドに横になったが、疲れているはずなのに全く眠れなかった。

翌朝 出勤すると始業時刻より5分ほど早いのに自分以外の全員がすでに隊員室に来ていた。
挨拶を済ませて席に着くと隣から 拗ねたような声がした。
「遊馬、昨日さっさと帰っちゃって どうしたのさ?」
「別に」
『あんなの見て待っていられるか! 』と言ってやろうと思ったがやめた。
「一緒にご飯食べて帰ろうと思ってたのに」
「そりゃ 悪かったな」
つい 素っ気無い返事になってしまう。
「・・・なんか 機嫌悪い?」
少し困ったように問う野明に 軽く一瞥を投げるとファイルを片手に立ち上がった。
「別に普通だよ、さぁて 仕事仕事っと・・・」
この話題を続けると何を言い出すか自分で自信が持てなくて電算室に逃げ込むことに決めた。
視界の隅に困惑している野明が見えていたもののそれにはあえて気づかない振りをした。

こういう時に限って出動が掛かることなく野明との間に微妙な雰囲気を漂わせたまま定時が近づいてきた。
あれから野明は何度か話しかけてきたものの、適当にあしらうように返事をしているとその内話しかけてこなくなった。
正直何がこれほどまでに気に入らないのか自分でもよく分からない。
特別な関係ではないのだから 野明が誰とどうしようがプライベートに口を挟める権利はないことは分かっているのに気にかかって仕方がないのだ。
退勤時間間際になって 帰る準備を始めると野明がこちらの様子をチラチラと伺うように見ていることに気がついたが 素知らぬ振りを決め込んで「じゃ、お先失礼します!」と告げて隊員室を後にした。

結局この日も満足に眠れなかった。
今日は非番。太田が野明に約束を取り付けている日だ。
何気なく窓外を見下ろすと 出かける太田が目に入った。
こざっぱりしたジャケットとスラックス。普段余り見かけない格好。
『暇だから』と自分に言い訳をして 太田の後をつけてみることにした。

ついた場所は最近出来た新しいショッピングモールでその入り口には壁に背を預けて佇む野明が居た。
淡い色のカーディガンにカットーソー、ライトグリーンのパンツでそれなりにめかし込んでいるのが心に痛かった。
太田を見つけ小走りに駆け寄ると 二言三言言葉を交わし 建物に入っていった。
色んな店に出たり入ったりしながら 2人で商品を見てまわり、最終的に時計店でかなりの時間を費やし 野明が幾つか手首に嵌めてみる。
暫く店員も交えて話をした後 一つを選択したようでプレゼント仕様にラッピングされた包みを受け取り野明はクスクスと笑っていた。
人のデートをつけてまわることに虚しさをおぼえてクルリを踵を返す。
妙に白けた気分でそのまま寮に帰ることにした。
太田は結局門限ギリギリまで寮には帰ってこなかった。
その日 俺はギュッと胸を締め付けられる感覚と苛立ちのようなものを抱えてやっぱり満足に眠ることは出来なかった。
明日からの仕事考えると気が滅入ってくる。
なんでもない顔をして今までのようにあいつの指揮を取れるのか不安になってきた。
野明が自分から離れていくような気がして そしてその向う先がまさかと思う身近な相手の所だというのが気に障って仕方がなかった。

翌朝 隊員室に入るとそこにはやはり野明が居ていつものように「おはよう 遊馬」と声を掛けてきた。
「おう」と返事だけを返してそのまま黙って席につく。機嫌の悪さが声に出ているのが自分でもよく分かった。
その様子を困った顔をした野明が見つめて、意を決したように話しかけてきた。
「ね、どうしたんだよ 遊馬。最近変じゃない?」
「別に」
「いいたいことがあるなら ちゃんと言いなよ。気になるじゃない?」
思わず 『誰の所為だとおもって』と言いたいのを飲み込み太田の方をチラリと見遣った。
太田は『さも 迷惑だ!』といわんばかりの態度でこっちを見ていてその様子に俺の中の何かがプチンと切れた。
徐に立ち上がると野明に声を掛けた。

「・・・野明 ちょっといいか?」
「・・・うん?」
小首を傾げながらも野明は素直に俺の後をついてきた。
屋上にでて手すりに背を預けるようにして立ち止まると 野明は俺の正面に立って黙って不思議そうな顔で俺を見ていた。
大きく深呼吸をするとゆっくり息を吐き出し、気持ちを落ち着けてから努めて冷静に口を開く。
「なぁ お前 その・・・太田と付き合ってる・・・のか?」
「・・・・・はい?!」
野明は キョトンとした顔をして聞き返す。驚きで声が完全に裏返っていた。
「誰が?」
「お前が」
「なんで?そんなことあるわけないじゃん!」
「何でって・・・お前、この前ビニールハウスのとこで・・・。それに昨日だって2人で楽しそうに出かけてただろう?」
「?? って ええ? 遊馬。あれ聞いてたの?!」
吃驚した顔をした野明は 直後にクスクスを通り越して「遊馬ったら 嫌だぁ」と言ってケラケラと笑い始めた。
目の端に涙を浮かべて「どこから聞いてたのよ?」と言いながら遊馬の腕にぽんと手を添える。
「それに 昨日って・・・遊馬見てたの?」
目を丸くした野明が遊馬の顔を覗き込むとバツが悪くなって思わず視線を宙に飛ばした。
「えっと・・・まぁ・・その偶然な・・・」
まさか 気になって太田のあとをつけたとは言いたくなかった。
「じゃ もしかしてここ数日遊馬の機嫌が悪かったのはそれが原因な訳?」
「・・・そんなんじゃねぇよ・・・」
声に力がない上に顔が火照っているのが分かり頭をガリガリと掻きながら野明の視線から逃れようと目を逸らす。
野明は そんな俺を見て満面の笑みを浮かべると顔を見ようとひょこひょこと動き回った。
「やめろって!」
野明の頭を手で押さえると上目遣いにクスリと笑った野明が嬉しそうに訊ねた。
「ね 妬いてくれちゃった?」
「ばぁか。そんなんじゃねぇよ」
「違うの? なんだ つまんないの」
「お前ね! ・・・で どうなんだよ?」
「どうって・・・ああ! そうか、どうしようかなぁ・・・・」
野明は少し考えてから 思い切ったように一つコクンと頷くと顔をスイっと近づけてきた。
「遊馬、口は堅い?」
「お、おう!」
驚くほどの至近距離にある野明の顔に少し焦りながらも何とか返事を返す。
「じゃ 最初からちゃんと話すから。秘密は守ってよね。私も遊馬に誤解されていたくないし」
後半は呟くような小さな声で言うと野明はにっこりと笑った。

「ね 遊馬、今日って何の日だか知ってる?」
唐突な質問に記憶の引き出しを開けても何も該当する情報が引き出せなくて俺は首を傾げる。
「いや、なんかあったか?」
野明はくすりと笑うと「そうだよね」と言ってから正解を教えてくれた。
「今日は 熊耳さんの誕生日なんだよ」
「へぇ? そうなんだ。それがどうか・・・って あ、まさか!」
思い当たって思わず声を上げた。答えが分かった事と、その意外性、どちらに声を上げたのか。
「そういうこと」
野明はクスクスと笑って続けた。
「だから買い物に『つきあって』あげたの」
「でも あのやり取りは誤解したくなるだろう?」
「やり取りって?」野明は小首を傾げる。
「野明しかいないって・・・」不貞腐れたような顔で言う遊馬に野明は思わず噴出した。
「だって、二課棟に女性3人しかいないんだよ? 南雲さんに買い物付き合ってもらうわけに行かないし 熊耳さんに直接言えないなら 『私しかいない』でしょ?」
「あ・・・」
考えれば物凄く単純なことだ。プレゼントを当人を伴って買いにいけるのは気心が知れた相手だけだ。
太田はお武さんとそこまで打ち解けていないのだから当然買ってから渡したい。
しかし太田は女性にプレゼントを買ったことがないのでその選択に困って野明に助っ人を頼んだのだ。野明は一時的にお武さんと同居していたので持ち物の趣味を俺達の中では一番よく把握しているだろうし。
「私でお役に立てるのかなって思ったんだけど、どうしてもっていうから」
「でも お前太田に何か買ってもらってただろ?」
「本当に見てたんだね~、でも 残念。私は預かっただけだよ」
「預かる? 何で?」
「あんな包みもって寮に帰って遊馬たち 太田さんを問い詰めたりからかったりしないでいられる?」
「・・・無理だな・・・」
絶対 問い詰めてからかうよなぁ。色恋に縁が多い場所じゃないだけに・・・・あっという間に寮全体が妙な祭りになりそうだと思った。

普通の会話ならいくらでも出来るのに「相談に乗ってくれ」の一言がなかなか言い出せずに数日機会を伺い続けてて挙動不審になっていた太田、。そうこうしている内に お武さんの誕生日前最後の非番の日が近づいてきてあの日退勤間際の野明を捕まえ「買い物に付き合って欲しい」の一言をどもりながら漸く口した 。遊馬は この時の会話を聞いたのだ。
野明にしてみれば 「そんな大事なもの選ぶのに 私が口を出していいのかな」という気持ちがあったが真っ赤になりながら年下の自分に頭を下げてまで頼んでいる太田をみて何とか力になってあげたいなと思っ たのだ。
どうしても あの日に声を掛けなくてはいけなかった理由は・・・
非番前日の退勤間際だと遊馬が野明に声を掛けるのがわかっていたからだ。
帰りが遅かったのはレストランの下見。だから 互いにそこそこ小奇麗な格好をしていたわけだ。
事の顛末を聞かされた遊馬は 思わず大きく息をついた。

「成る程ね」
野明が顔を覗き込む。
「お願いだからこのこと秘密にしてよ?」野明が念を押す。
「了解!」
久々にスッキリした気分で返事を返して大きく伸びをした。
「熊耳さん 喜んでくれるかなぁ」
「大丈夫だろ、あんだけ一生懸命選んだんだし」
「伝わるといいよね」
そういうと野明はにこっと微笑んで遊馬に向き直った。

「ところで遊馬、本当に妬いてくれたんじゃなかったんだ?」
少し拗ねたような顔で見上げる野明の髪をくしゃっと撫でながら目線を宙に泳がせる。
「・・・言わせるのか?」
「駄目?」
やれやれと肩を竦めて一度大きく息を吸い込む。
「一度しか言わんぞ。・・・妬けたよ、だからあーゆーのはもう勘弁してくれ」
それを聞くと野明は花が咲くような笑顔を見せた。
「はい、もうしません。」
そういうとクルリと踵を返す。
「さ、そろそろ行かないと怒られちゃうね」
「だな」
野明は嬉しそうに俺の腕を取ると隊員室に向ってスタスタと歩き出した。

2人連れ立って隊員室に戻ると皆が一斉にこちらを見たが 気まずい雰囲気がなくなっているのを察してか一様にほっとした気配が漂い『俺はそんなに険悪な雰囲気をだしていたのか』と思わず苦笑した。
太田がこちらの様子を伺っているのに気づいたが 野明との約束もあるので気づかない振りをしてやる。
その様子に野明がこちらを見てこっそりと笑い 「お茶淹れてくるね!」と言って注文を聞いて回った。
お武さんも席を立ち「手伝うわ」といいながら給湯室に向った。
ふと足元を見ると 野明の机の下には昨日野明が受け取っていた包みが一回り大きな別の店の袋に入れられてそっと置かれていた。
少し考えて その袋をひょいと掴むと太田の席に運ぶ。
「ほら」
紙袋を太田の机の下に置きながらついでのように小声で声を掛けた。
「野明 連れ出すんだったら一言いえよな」
ばつが悪そうな顔をした太田が「すまん」と意外に素直に口にしたので聊か拍子抜けした。
緊張しているような顔が微笑ましく見えて思わず上から目線で「ま 頑張れよ」と声を掛けて背中をポンと叩いて席に戻った。
給湯室から戻りお茶を配り終えた野明が席に着くと 足元の紙袋がなくなっているのに気づいた。
軽く肩を叩くとそっと太田に視線を向けた。
野明は 太田と俺とを交互に見て納得したように頷くと、クスリと小さく笑う。
「秘密守ってね、って言ったのに」
「他の奴らには言わねぇよ。それに・・・太田には言っとかないといけないこともあったしな」
「なによ、それ?」
「いーんだよ、お前は知らなくて」
腑に落ちない顔をして小首を傾げる野明に「いろいろあんの」とだけ言って書類の束をもって立ち上がった。
「電算室いくぞ、野明」
進士とひろみちゃんが用事で部屋を空けた隊員室。
野明も意図を察して遊馬に従った。
キャットウォークを歩きながら 「上手くいくといいね」と笑う野明を見ながら『年末のこいつの誕生日にはプレゼントくらい用意してやろうか』と考えて、でも『まぁこいつなら一緒に買いに行ってもいいのかも知れないな』と思い直す。
それはその時に考えればいいことだ。
けど、人に何かを贈ることをこんなに楽しみに思うことが少し嬉しかった。

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追記

太田さんって結構純粋な人なんでしょうね~と 「惑いの午後」の回で思いました。
根は真面目で 純粋。あれで 暴走しなければもっと女性とも縁がありそうなのに(笑)
香貫花にせよ お武さんにせよ 尻に敷かれそうな女性としか接点がないのが気の毒なところです(^^;
私から見たら 割と謎キャラなんですが嫌いではないんですよ~
だた 私生活が全くイメージできないだけで・・・・

一喝

この三日子供と親戚に振り回されてフラフラ
その上昨晩からの豪雨で驚くほど水嵩の増した道路を通ってきました
無事に帰れそうでよかったー
写真もとったので帰ってからアップして見てもらおうかと(笑)
さしあたり疲弊した心で突発的に思い付いたSSです
携帯で書いているので誤字脱字その他は後程直すかと思います

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一喝
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いつも冷めた顔をして興味の無さそうな様子で話す彼。
ほら 今だって。

「だーかーら そんなの俺らにカンケーないんだって」
頬杖を付きながらため息混じりに言う彼に太田さんが噛みついた。
「貴様ぁ そういう事で世間の平和が守れると思ってるのか?!」
鼻息荒く抗議する太田さんに半眼のまま面倒くさそうに答える。
「世間の平和よりまず自分の平和が先だろうが」
「そういう事だからいつまでも市民に愛される地方警察になれんのだ!!」
「あー鬱陶しいっ!俺はね そーゆーのが嫌いなの」そういうと椅子をクルリと回転させて太田さんに背を向ける。
「篠原ぁ!何だその態度は 大体これだからお前ら即席警官は…」
太田さんが声を荒げるのを背中に聞きながら尚も憎まれ口を叩くその顔は妙に楽しげで 私は思わず小声で訊いた。
「ねぇ 遊馬。本当に鬱陶しいと思ってる?」
すると遊馬は悪戯っ子のような目をして小声で答えた。
「さぁな でもあいつからかうと面白いんだよな」
「うわ 性格悪ーい」
思わず口に出すと彼はニッと笑って椅子を滑らせると私の耳許に唇が掠る位の距離で囁いた。
「それは相手次第だな。お前にだけは甘いだろ?」
吃驚して顔に朱をのぼらせて後ずさると肩を震わせて笑う。
「お前もからかい甲斐があるよな」
暫く私達の様子をみていた太田さんが痺れを切らして声を上げた。
「篠原!聞いとるのか?!」
意地の悪い笑みを浮かべて振り返った彼は心底面倒臭そうな声音で怒鳴り返した。
「んなデカイ声で言わなくても聞こえてるっつーとるんだ!!いま取り込み中なんだから黙ってろよ あんたは!」
「二人ともいい加減になさいっっ!」
お武さんの一喝で一瞬にして態度を改める太田さんにまたこみ上げる笑いを噛み殺しながら「俺は野明の一喝位であんな風にはならないけどな」というと私の頭をくしゃりと撫でた。

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追記
ただいまお出掛けしてます
新幹線 N700系に乗れたので電源もあるし無線LANも使えて比較的快適(* ̄m ̄)
これで子供が愚図ら無いともっといいのにぃ
というわけでただいま帰宅中ですー

駆け引き

ちょっと切ない小説を何件か拝読した直後なので反動で甘くなってしまい・・・あれ?!
似たようなものばっかり書いてるなとおもいつつ・・・

出向中の遊馬と野明。
書いたのはじめてだ、そういえば(笑)

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駆け引き
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「遊馬」
自分を呼ぶ声に振り返ると野明が小走りに駆け寄ってくるのが見えた。
「終わったのか?」
「今日のテストは終了だよ。遊馬は?」
「う~ん もう少し掛かるんだよなぁ」
そういうと野明の顔をちらりと見る。
「待てるか?」
「時間にも拠るんじゃない?」
野明は少し考えるようにして答える。
「明日、明後日は休みか?」
「うん、お休みだよ」
「俺も休みだからさ、ちょっと出かけないか。朝から」
「それはいいけど遊馬、疲れてるんじゃない?」
「平気だよ。だからさ これ」
そう言ってキーホルダーを野明に手渡すと悪戯を思いついた子どもみたいに笑う。
「今日の夕飯、俺シチューが食いたい」
「はいはい」
野明が鍵を受け取ると遊馬は「なるべく早く帰るから」と声を掛けてラボに走っていった。
鍵をポケットに仕舞いながら 『朝から出かける』と『だから』のつながりを考えてこれは『泊まって行け』ということなのかなぁと首を傾げた。
改めて聞くのも何なのでそのまま一旦自分のアパートに帰り簡単な荷物をもって遊馬のマンションに向かう。
途中 食材を買って向うと着く頃には7時近くになっていた。
遊馬がまだ帰宅していないので荷物を部屋の隅に置いて早速調理に取り掛かる。

9時を回った頃 扉に鍵がささるカチャリという音がしたので野明はちょっとしてみたい事を思いついて慌てて玄関に向った。
開錠音がして扉が開くと遊馬が入ってきて 玄関に立っている野明をみて少し驚いた顔をした。
野明は軽く勢いをつけてぴょんと遊馬に飛びつくとその首に腕を絡めてキュッと抱きつき目一杯背伸びをして遊馬の耳の傍で口を開いた。
「おかえり」
「・・・あ・・・うん ただいま」
少し照れたようにして言う遊馬の顔が見たくて腕を解くと口元に手を当てて目線を天井に彷徨わせた遊馬が「遅くなってごめん」と言った。
「ご飯今出来たところだよ、遊馬、ご飯とシャワーどっち先にする?」
野明は一歩前を歩き振り向きながら楽しそうな様子を見せる。
「妙な感じだな、どうしたんだよ?」
「ちょっとね、言ってみたかったの」
「じゃ まず飯にする。で その後風呂な」
「まってて すぐ並べるね」
クルリと踵を返す野明に「今日 泊まって行くだろ?」と声を掛けると「遊馬が望むなら」と言ってクスリと笑った。
遊馬は一瞬 目を瞠ったがすぐにいつもの顔に戻ると野明の背中に声を掛けた。
「じゃ 帰さない」

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追記

この後どうなったかは ご想像にお任せで(笑)

記念日

閑話休題ってことで(笑)
甘甘の軽井沢からすこし離れようとTVで言ってた今日は何の日でしょう、というのをネタにしてみました~

以下本文

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記念日
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二課棟の屋上に上がるとそこに海を眺める相棒の姿があった。
膝に両肘をのせ頬杖をつくようにして 良く晴れた東京湾を眺める。
海風が絶えず吹くので体感温度は然程高くはないが照りつける日差しはもう夏のそれだ。

「何見てんだ?」
「東京湾」
「それは見れば分かる。何か見えるのか?」
隣に腰を下ろし野明の見る方向に目を向けたが特に変わったものは見当たらなかった。
「遊馬、今日何の日かしってる?」
瞳に楽しそうな色を滲ませ軽く首をこちら向けた。
「今日? 7月14日だろ」
少し考えてみたが 記憶の引き出しからは今日に該当するデータは出てこなかった。
「アメリカの独立記念日は4日だし、七夕は先週だよな。盆も中元も明日だし・・・降参、なんかあったか?」
考えるのを諦めて野明に答えを求めると、野明は嬉しそうに笑う。
「遊馬に『降参』って言わせちゃった」
「ったく 嬉しそうに。俺だって何でも知ってるわけじゃねぇよ。 で 何なんだ?」
「『ペリー上陸記念日』なんだって。さっきTVで言ってたんだ。だからここに黒船が来たのか~って思って。」
「お前ね、あれは浦賀沖だろ? 東京湾ったってこっから見える範囲じゃないぜ?」
「そうなの?」
「そう、上陸したの久里浜だろ、たしか。こことじゃ東京湾の端と端」
呆れたような顔をした遊馬に野明が不満げに頬を膨らませた。
「すぐそうやって人の良い気分に水差すんだから」
「付け焼刃の知識で俺に勝とうなんてするからだ」
そういうと野明の額を人差し指で小突く。
「つまんない」
そう言ってフイっと横を向いた野明に向かって声を掛ける。
「じゃあ問題。4月10日が何の日かしってるか?」
「4月? 今7月だよ」
「いいの、クイズなんだから。で、分かったか?」
「ええ?・・・・っと・・・降参」
拗ねた顔をして両手をパッと開く野明に遊馬は「ま、そうだろうな」と小さく呟くとよっと掛け声を掛けて立ち上がった。
そのままタラップに向かって歩きながら後ろ手にヒラヒラを手を振る。
「そろそろ戻らんと太田に怒鳴られるぞ」
野明も慌てて立ち上がるるとその後を追う。
「ね、答えは?」
遊馬は振り向き様にっと笑った。
「書庫調べて見ろよ、すぐわかるから」

定時が過ぎて夜勤に入る前の休憩時間、書庫に足を向ける。
『書庫に行け』といったということは日報を探せってことだよね、とあたりをつけてファイルに整理された過去の日報を取り出し 日付を探す。
漸く見つけた年度の違う2枚の同じ日付の日報をみて、『多分、こっちだよね』と古い方の日報に目をとめた。
「よっく 覚えてたなぁ・・・・」と感心すると同時に嬉しさと気恥ずかしさが混在して頬が緩む。
元の場所に紙を戻して隊員室に掛け戻った。
「遊馬ぁ!」
目的の人物を見つけて声を掛けると、書類片手に遊馬が顔を上げた。嬉しそうに寄って来る相棒に 笑顔で質問する。
「答え、分かったか?」
「うん。これからもよろしくね」
「了解、じゃまず今日の日報書いちまわないと」
「はーい」

楽しげに笑う二人に「職場だぞ、シャキッとせんかぁ」と太田が毒づき「人に喝を入れるのもいいけど、今日の日報まだ出てないようよ?太田君」と熊耳がやんわりと釘を刺す。
いつもの光景に また声を上げて二人で笑った。

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追記

旅行の話ばかりだったのでちょっと二課棟に帰りたくなりました~(笑)
ちなみにご存知かとは思いますが4月10日はアニメで浄名院前でタカアシガニと戦った日ですね(笑) 

誘引

先日 娘と一緒にディズニービデオ見ながら妄想(笑)
取りとめの無いSSです。
他にやること沢山あるのに現実逃避実行中です~

散文ですが それでもいいわという方は 以下本文です♪

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誘引
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天気のいい昼休み。
遊馬を探して二課棟をウロウロする。
隊員室にも 電算室にも ハンガーにもいないとなると後は 屋上か堤防か。
手近なところでまず 屋上に上がると彼は屋根の上ごろんと横になっていた。
「遊馬」
名前を呼んで駆け寄ったが返事が無くて『眠ってるのかな』と思って顔を覗き込んだ。
頭の後ろで両手を組んで片膝を軽く立てるようにして横になる姿はとても無防備に見えて思わずじっと見入ってしまう。
もう一度小さな声で「遊馬」と呼んでみた。
風に吹かれて揺れる前髪、閉じていると分かる意外に長い睫、軽く噤まれた唇。
『少しだけ 触れてみたいな・・・』と思った。
寝ている遊馬に ふっ・・・と吸い込まれるみたいに ほんの一瞬 野明は自分のそれを遊馬に重ねると、すいっと立ち上がって踵を返した。逃げるようにしてその場を離れるとアルフォンスのコクピットに入り込んでハッチを閉める。
自分でも判るほど顔が熱い。心臓が飛び出そうなくらいバクバクと音を立てて、「落ち着こう」と深呼吸したもののなかなかその動悸は収まらなかった。
そっと自分の唇に指を当てると そこが物凄く熱い気がして落ち着かなかった。
自分のしたことに今更ながら動揺して どうしてあんなことをしたのかと羞恥で一杯になる。
「遊馬・・・寝てたよ・・・ね」 それがせめても救い。
知られたらどうなるんだろう? 怒るかな、それとも嫌われてしまうとか。
そう思うとなかなかここから出られない。遊馬の顔を普通に見れる自信がないから。
膝を抱えて丸くなる。もう直ぐ昼休みが終わってしまう。普通の顔が出来ますようにと自分に願を掛けた。

昼休み 食事を終えて少し眠くなったので屋上に出た。
海風が絶えず吹くので気温の割りにすごしやすい。
軽く目を閉じてうつらうつらしていると、階段を上ってくる軽やかな足音が聞こえた。
『野明か』そう思ったものの まどろんだ状態が心地よくてそのまま目を閉じていた。
顔を覗き込む気配と共に 名前を呼ぶ小さな声が聞こえたがもう少し寝ていたくて返事を返さずに寝た振りを決め込んだ。
少しの沈黙の後、気配が近づく。鼻を擽る甘い香りと額に触れる細い髪、そしてしっとりとした温かくて柔らかい何かが唇に軽く触れると直ぐに全ての気配が遠ざかった。混乱している間にパタパタという足音が小さくなり慌てて顔を上げると赤い髪の頭が屋根の下に消えた。
思わず口元を手で覆って「嘘だろ?」と呟く。
自然、顔が朱くなるのが分かった。
直に昼休みが終わる、野明をみて普通の顔でいられるだろうかと思うとあまり自信がなかった。

始業のベルが鳴って隊員室に戻る。
互いに自分の席について思わず相手の様子を窺おうとして顔を見合わせる形になる。
お互いにびっくりして慌てて目を逸らす。
その様子を見た太田さんが訝しげな様子で「お前ら どうしたんだ?」と訊いた。
答えられよう筈も無く2人は同時に答えた。
「何も」
「何もねぇよ」

END

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追記

寝てる人にkissって本当は反則、って思うんですが。
娘にせがまれて sleeping beauty とか見ているとちょっと妄想(笑)
この場合 逆ですが☆
結局このことは無かったことにされちゃうんですかね、このカップルだと(^m^)
それか 付き合うようになってかなり時間が経ってから思い出したように遊馬が持ち出すか・・・?

ご意見 ご感想いただけますと 踊って喜びます(笑)
是非 お時間があれば宜しくおねがいします♪

ジンクス

ツッジーさんのところで 『夢は口にすると本当にならない』という話がでていて可愛いモチーフだなと思いました。
何か浮かんだら書いてもいいよ、とツッジーさんからお許しが出ていたのですっごい一場面だけ思いついたので書いてみました(笑)
前後は ご想像にお任せします♪

以下本文。

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ジンクス
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当直明けの朝 野明は上機嫌でハンガーに続くタラップを下りる。
丁度出勤してきた遊馬と階段の上下で向かい合う形になり、「おはよう」と声を掛けた。
「おう おはよう!宿直ごくろーさん」
すれ違い様に頭をくしゃっと撫でて訊く。
「何か機嫌いいな。いい事あったのか?」
「ちょっとね」
「へぇ、なに?」
「あのね・・・」といいかけて遊馬の顔を覗き込む。
「・・・やっぱだめ!」
「あ?」
「『夢は人に話すとホントにならない』って訊いたから」
そう言って踵を返す。
「なんだよ、そりゃ」
腑に落ちないって顔をしてこっちを見ていた遊馬は再びタラップを上がり出す。
「そうだ」といって顔だけ振り返ると「知ってるか?希望と目標は口にしないと叶わないんだぜ?」といって口の端を上げるようにして笑うと 背を向けて手を振り歩き出した。

野明が隊員室に入ると遊馬はもう席についていてこちらをちらりと見る。
「で、その上機嫌の原因は?」
遊馬の顔を正面から覗き込み くすりと笑うと野明は答えた。
「・・・恥ずかしいから教えない」

END
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追記
野明は何かいい夢見たんですよね。きっと。
なんだったんでしょうか?(笑)

美しいアザ

MEME様から強奪した美麗イラストに勝手につけた駄文です。
見た瞬間妄想が止らなかったこのイラスト。
先に ASAKI様がステキな小説を公開していらっしゃるにもかかわらず、寛大にもMEME様から思い付きを公開してもいいですよ、という優しいお言葉をいただけたので、調子に乗ってUP!です。
ハイテンション状態で勢いのまま書いてしまったのでイメージを壊していないといいのですが。。。
でも 自己満足度はかなり高いです(笑)

では以下本文

こちらは勝手に MEME様にささげます!!!

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美しいアザ
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映画を見て軽く食事を取る、いつもと同じように遊馬と休日を過ごした夕方。
前から見たかったDVDを購入したという遊馬に 「帰りに取りに来いよ」と声を掛けられた。
遊馬の部屋に着くと 「ほい」といってDVDのパッケージを渡される。
タイトルを確認して「じゃ 借りるね」と言ってバッグにしまった。
「コーヒー飲んでくか?」といって遊馬がカップを手にしたのをみて、「私やるよ」とそばに近寄った。
遊馬の持ったカップを受け取ろうとして手を伸ばす。
遊馬が 「あ、ばか!」といって手を引いたときには遅かった。
中には カップをあたためるために熱湯が既に注がれていて、金属製のサーモカップはかなりの熱を帯びていた。
それに取っ手ではなくカップに直接手を触れたので熱さで手を引いたときにはカップを引っぱる形になり野明は肩口から湯を被ってしまった。
「上着 早く脱げ!」といってカップを流しに放り出した遊馬が慌てて野明のカーディガンに手を掛ける。
一瞬上着を取りかけた野明は はっとしたように襟を合わせて「平気、中まで染みてない」と言ってイヤイヤと首を振った。
「何考えてんだ、ばか!早く冷やさないと痕になるだろう!」といって半ば無理やりにカーディガンを剥ぎ取ると 細い肩紐のキャミワンピースが目に入った。
「あ・・・わりい」
それをみて今の自分の行動が気恥ずかしくなった遊馬は思わず目を逸らす。
「中までは行ってないな」といいながら手近にあった自分のシャツを「羽織っとけよ」押し付ける。
受け取る気配がないので 不思議に思って振り返ると野明は両掌で肩のアザを隠すように自らの身体を抱きしめて俯いていた。
「どうしたんだよ? やっぱ痛いのか?」
肩に触れようとすると 野明はビクッとして身を引いた。
「冷やすもの 用意するか?」重ねて声を掛ける。
俯いたまま首を振るだけで返事を返さない野明を横目にみながら カーディガンを拾い上げハンガーにかけた。
少しの沈黙の後、消え入るような声で野明が呟く。
「やっぱり、いやだよね」
「え?」
「・・・痣・・・」肩を抱く腕に力を込める。「やっぱり 引いちゃうよね・・・」
レイバー乗りに特有のセーフティーガードの痕を掌で隠すようにしながら自嘲気味に笑う。
予想外のことを言われて動きが止まった遊馬をみて野明は言葉を継いだ。
「顔の傷跡より、こっちの方が問題だよね、やっぱ魔性の女に・・・・」なるしかないかな・・・と続けようとしたとき、背中から遊馬に抱きしめられた。
「あ・・遊馬・・?」
「わりぃ 今の態度、気にしたなら謝る。痣を気にしたんじゃないんだ。その・・・服がな。焦っただけで。」
そう言って腕に少し力を込める。
「痣のことなら、俺は気にしない。それにそれは勲章なんだろう?」
遊馬が耳元で静かに話す。
「レイバー乗りの自分には、誇りがあるの。けど やっぱりこの痣は時々辛いなって思う。これでも一応 年頃の女なんだし・・・」
俯き ぽつりと呟く姿はとても儚げに見えて遊馬は野明を抱く腕にまた少し力を込めた。
「そうか。けど 俺はこいつを嫌だと思うことはない。むしろ誇りに思うくらいだ。」
そう言って 肩口の痣に唇を寄せると 野明の肩がピクリと跳ねた。
「これは 俺達の絆だからな」 
「絆?」野明が聞きかえす。
「そう、二課でコンビを組んで今まで、一身同体で歩んできた年月の中で少しづつ刻んできた痕。野明と俺が歩んできた時間の刻印だ」
そう言ってもう一度 その痣に唇を強く押し当てる。
「ちょっと・・やだ。遊馬」
唇の触れる肩口が熱く、背筋にゾクリとする感覚が走る。
思わずその手と唇から逃れようと身を捩ると、遊馬は更に力を込めて野明を抱き寄せ暫しの沈黙の後、耳元で静かに囁いた。
「お前が、野明が欲しいんだ・・・」
全身に広がるゾクっとした感覚と 心臓をキュッと鷲づかみにされるような感覚に野明は思わず固く目を閉じた。

END

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追記

この先に行くと思い切り反転しないといけない展開になりそうなのでここまで!ということで(笑)
もし反転をかける内容になるなら もっと自信がつかないと・・・MEME様のイラストに申し訳がたたないので寸止めで(笑)
展開と文章の荒さは そのまま書き出しのテンションの高さなので大目に見てくださると・・・嬉しいです(^^;

お付き合いくださってありがとうございました。
MEME様 ありがとうございます~!!

パートナー

軽井沢編がまったくの白紙で・・・逃げようかなと思ってコミックを眺めていたら風杜さんがいたので遊馬と話をさせてみようとしたら・・・こうなりました(^^;
なんでこんなに面倒になるんでしょうね?
それは 私に素直さが足りない所為かも知れません。
(今までのお話とは全く無関係なお話です)

以下 本文になります。

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パートナー
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今日は出動もなく一日が終了し 退勤時間になった。
お武さんが報告書にサインをして隊長に提出してくると、「さ、今日はもうあがりましょう」と声を掛けた。
皆 口々に「お疲れ様です」といって帰り支度をはじめる。
机の上を片付けた野明と遊馬も「お先に失礼します」と言って隊員室を後にした。
更衣室で着替えを済ませる。
約束しているわけではないが 早く着替えた方が待っているのが習慣になっていた。
先に着替えを終えた遊馬が 壁に背中を預けて野明を待っているとシゲが通りかかった。
「遊馬ちゃん あがり?」
「そ。今日は出動もなかったし」
「・・・泉ちゃん?」更衣室を指しながらシゲが問う。
「着替えるのおせーんだよな」
シゲは にっと笑った。
「その割りに楽しそうよ、遊馬ちゃん?」
「んなことないって」
「そーお? まいいけどねぇ」
軽口を叩いていると 遠くで榊班長の「シゲ!こら どこ行きやがった!!」と言う怒鳴り声が聞こえてきた。
「あ やべ。またね~ 遊馬ちゃん」
そう言ってシゲが姿を消すと入れ替わりに野明が更衣室から出てきた。
ブラウスに薄手のパーカー、ホットパンツという軽装ではあるが色が全体的にパステルカラーで普段のTシャツとジーンズという出立ちとは少し雰囲気が違う。
遊馬の傍に駆け寄ると「おまたせ」と言って歩き始めた。

ハンガーを出て少し歩くと、野明が遊馬の顔を覗き込むようにくるりと回りこんだ。
「ね、この後暇?」
「なんかあるのか?」
「あのね」といいながら デイ・バックの中から一枚のチラシを取り出した。
「これ、行きたいなぁって。関東、初出店なんだって」
それは 汐留に新しくできたパーラーのものだった。遊馬もチラシを覗き込む。
「ふーん 俺 甘いもの苦手なんだよなぁ」というと渋い顔をする。
「じゃ 遊馬はコーヒー飲んでていいから。ね、駄目?」
「こーゆーとこって 女ばっかりだろ? 俺はいいよ」
遊馬は興味がない、とばかりに手をひらひらと振って見せた。
こういうときは もう何を言っても無駄だと経験で判っている。
野明は 諦めたようにしゅんとして、「つまんなーい」と頬を膨らませた。
そこへ 二人の背後から声が掛かる。
「へぇ? そんな店ができたんだね、泉さん 僕とどう?」
吃驚して振り返ると 二人の背後に風杜がにこやかな笑みを浮かべて立っていた。
突然のことに吃驚して野明が固まっていると 遊馬が笑みを浮かべているのに目だけはあからさまに不機嫌な光をたたえて言った。
「風杜さん、来てたんですか?」
「松井さんの付き添いでね。」あくまでも穏やかな笑顔で風杜は答える。
「今日はもう?」
「用事はおわったよ、後は帰るだけだ」といって野明に向き直る。
「ということなんだけど、僕と行かない? 篠原君は乗り気じゃ無いみたいだし。」
「あの・・えっと・・・」と遊馬を見遣る。
遊馬は苦虫を噛み潰したような顔で風杜を見遣り、野明はそれを見てどうしたらいいのか図りかねた。
「このあと時間はある、ということでしょ。泉さん?」
先刻のやり取りを聞いていたのだから 「予定があるんです」という誤魔化しは使えない。
野明が困っていると風杜は更に続けた。
「それとも 篠原君以外とはいきたくない?」
遊馬は 風杜に鋭い目を向けた。
そんな言い方をしたら 野明は絶対断れない。知っていてそう言った事が判った。
案の定、野明は「そういうわけじゃないです」と答えてしまった。
予想していた通りの答えに 風杜は「なら 行こうか」といって野明の髪をくしゃりと撫でた。
それは自分が野明にするものと同じ仕草で。
それを見た遊馬は すごい勢いで野明の頭を強引に引き寄せると聊か乱暴な手つきで髪をクシャクシャにするように撫でると、「行くな」と声を掛けた。
「遊馬?」野明は頭を抱えられたような格好のままびっくりして声をかける。
いつに無く怒ったような顔をして自分を抱え込んでいる遊馬を見て野明は小さく溜息をつく。
「・・・判った。だから離して?」
野明が言うと 遊馬は視線を風杜に向けたまま黙って手を緩めた。
遊馬の腕からするりと抜け出した野明は風杜に向かい合うように立つと申し訳なさそうな顔をして言った。
「ごめんなさい。やっぱり行けないです。」風杜は野明をみて微かに笑うと 遊馬に視線を移した。
やや不満そうな顔をして、遊馬に問いかける。
「篠原君は 一緒に行かないんだよね、その店」
遊馬は風杜から視線を外さずに静かに答えた。
「好みじゃないですね、けど 貴方が野明と二人で行こうとするのはもっと気に入りません」
「なるほど。で、君が連れて行ってあげるのかい?」
穏やかならざる雰囲気に野明が口を挟む。
「あの、いいんです。別の友達と行ってもいいですし。」
「泉さん、僕は駄目で『別の友達』なら篠原君は怒らないと?」
「あ・・・えっと・・・」野明が言葉に詰まると「篠原君と話したいんだ」といって野明を制した。
「改めて訊こうか、篠原君。君が泉さんをそこに連れていくのかい?」
「貴方と行く、というくらいなら俺が行きますよ」
「消極的だね、自分も楽しむつもりが無いなら泉さんに失礼じゃないか?でないと彼女は君に気を使わなくてはいけない」
二人の会話を真ん中に立って聞くことになってしまった野明は居た堪れない気分だった。
『どうしてこうなっちゃったんだろう』と野明が困惑している間にも言葉の応酬は静かに続いていた。
「君は 泉さんの何なんだい?」静かに しかし誤魔化しを許さないまっすぐな目線で遊馬を見る。
「パートナーですよ」遊馬は短く答えた。
「それは仕事上のことだね、プライベートでもそうかい?」
「そんなことを・・・」答える義務はない、と続けようとした遊馬の声に被せるように 風杜は静かに言った。
「僕はプライベートのパートナーになりたい、と思ってるからね」といって野明に目線を向ける。
野明は驚いて目を丸くしたまま、固まってしまった。
その様子を捉えて小さく笑うと、遊馬に目線を戻し言葉を継ぐ。
「仕事の上で君が泉さんのバックアップ、指揮担当としてコンビを組むパートナーだということは理解しているよ、けどそれはプライベートなところまで介入するものではない、と思うんだけど、違うかい?」
「仕事の上のパートナーは俺でも、プライベートでは貴方がパートナーになりたい、とそういうことですか」
「今、そう言った筈だよ?」
「それは 野明が決めることですよ、俺じゃない」
その言葉に野明は遊馬を振り返る。不安気な瞳が大きく見開かれていて今にも泣き出しそうに見えた。
遊馬は野明の瞳をまっすぐに見返すと、ゆっくり風杜に視線を合わせた。
「でも 俺 退くつもりは無いですよ、公私どちらも」
そういうと もう一度野明に向き直る。
「お前は 俺にとって唯一のパートナーだからな」
野明は遊馬を見つめて、やがてこくんと頷くと、風杜を振り返った。
言葉を選ぶようにゆっくりと、しかしはっきりした口調で告げる。
「ごめんなさい、風杜さん。『私のパートナーになりたい』と思って下さって有難うございます。けど 私は風杜さんのパートナーにはなれません。」
そう言って頭を下げた。
「篠原くんのパートナーだから?」
真摯に問う眼差しを受けて野明はきちんと向き合うように答える。
「私が遊馬のパートナーになりたいから。もし望んで貰えるならこの先も共にありたいと思うからです」
まっすぐに目を見て答える野明に風杜は相好を崩した。
「君自身に 面と向かってそういわれるとこれ以上争っても無意味だね」
「はい、すみません」野明は穏やかに笑った。
風杜は野明に向かって頷くと、遊馬に問う。
「君はそれを望むのかい?」
「他に望むものはないですよ」
そう言って野明の顔を見る。嬉しそうに笑顔を返す野明を見て遊馬もまた笑顔を返した。
風杜は「そうか」というと二人に背を向けて「邪魔したね」というと二課棟の方へ戻っていった。
残された野明と遊馬は暫く風杜の去った方を見ていたが やがてどちらからともなく顔を見合わせた。
「帰ろっか?」と声を掛け野明はバス停に向かって歩き出す。
少し後ろを歩いていた遊馬が野明の背中に声を掛けた。
「汐留、寄っていくか?」
野明はきょとんとした顔で振り返ると、「さっき嫌だっていわなかった?」と聞き返した。
「気が向いたから寄ってやる」
頭の後ろで両手を組み目を逸らす遊馬に、野明はくすりと笑う。
「ホントにホント?」
そばに駆け寄って来ると嬉しそうに顔を見上げる。
遊馬が「嘘は言わん」と言うと野明はにっこり笑って「ありがとう」と言った。
遊馬の手首を掴むと軽やかな足取りで「乗り遅れたら寄れなくなっちゃうよ」と言ってバス停まで走りだす。
後をついて走りながら遊馬もまた野明と「この先も共にありたい」と思わずにはいられなかった。

END

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追記

汐留のお店はもう出来てからかなり経ちますが行きたいお店があって其処をイメージです。
本文で店について触れていないので 余計な裏設定なんですけどね(笑)

最後まで 駄文にお付き合いくださって有難うございました(^^)
感想などいただけますと励みになります。

風杜さんの扱いに愛が足りないのは・・・遊馬に注ぐ愛が大きいからです。ごめんなさい~

旅立つ日に

本当は季節を考えると9月末にUPするように企画をあたためておくほうがいいのかも知れないのですが そんな事すると忘れてしまいそうなので勢いでUP!

ネタは 第二小隊が解散して埋立地を離れる日です。
ザザッと書いてそのままなので あとでこっそり加筆訂正するかも知れないです(^^;

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旅立つ日に
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二課棟の備品庫で野明と遊馬は片付けに追われていた。
「野明、そっちおわったか?」
「う~ん あとちょっと。遊馬は?」
「こっちは もういいかな、あと隊員室、片付けないとな」
そういうと 遊馬は 「よっ・・」と言いながら軽く肩を回す。
野明は 「よいしょっ」と声を出しながら棚の一番奥にあった段ボール箱を引っ張り出して机にのせようと持ち上げた。
その途端、箱の底が抜けてバサバサっと書類が床一面に広がった。
「おい、何してんだよ、大丈夫か?」
そういいながら、遊馬は傍に来て散らばった書類を集めはじめる。
箱の底を確認して「ダンボール壊れてたんだぁ」と言いつつ、野明は手近にあった一冊を手にとりパラパラとページを捲った。
「これ 日報だね、懐かしいなぁ」ざっと眺めて 目を細める。
「そうそう、最初の出動って 上野だったんだよね」
「ん? そうだな、3年前のか。」そういいながら 遊馬もちらりと覗き込む。
野明の字で書かれた出動記録。
まるで 『小学校の作文のようだ』と後藤隊長に言わしめたその日誌は3年半近い年月を経て紙が少し黄ばんでいた。
「そんなん読んでたら 今日中に終わんないぞ。」そう言って散らばった書類に手を伸ばし「今 読んだら恥ずかしいと思うけどな」と遊馬は笑った。

カチャリを音がして扉が開くとひろみちゃんが顔を覗かせる。「泉さーん、新型機きましたよ」
「イングラムの見送りせんでいいのかー」太田もハンガーから大声で二人を呼んだ。
「今行くー!」返事をして 遊馬と一緒にハンガーに向かった。

搬入されてくるヴァリアント、そしてキャリアに搭載されシートを掛けられたイングラム3機が簡単な手続きのあと 篠原重工の人たちに引き渡された。
ゆっくりと 動き出すキャリアに後藤隊長以下 全整備班員と第一小隊を含む特車二課全員が無言のまま万感の思いを込めて敬礼を送る。
キャリアの姿が完全に見えなくなるまで誰一人微動だにせずその場に立ちイングラムを見送った。

「いっちゃったね」ぽつりと野明が呟くと遊馬は無言で野明の髪をくしゃっりと撫でた。
野明はその掌の温かさを感じ同時に胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
すぐ後ろでは榊班長の号令の下、整備班が搬入されてきた新型機の初期設定と調整に慌しく動き始めている。
熊耳が皆に、「さ、早くかたづけてしまいましょう」と声を掛け隊員室に向かって踵を返しそれを追って太田、進士、山崎が屋内へ入っていった。
「さ、行った行った」と後藤隊長に促され、野明と遊馬もまた備品庫に戻ってきた。
床に散らばったままだった日報の束を集めながら野明はなんともいえない喪失感と寂寥感に苛まれていた。

2001年9月28日金曜日。
今日でここに出勤するのは最後になる。
10月1日付けで 装備開発課に移動、そのまま篠原重工に出向することが決まっていた。
遊馬も同じ部署に移動して同様に篠原重工に出向する。
同じ部署のパートナー同士がセットで同じ所に移動出向する。こういう人事は異例だと思う。
野明はテストパイロットとして乞われる形で、遊馬はデータ解析要員として。
どちらも得難い優秀な人材で貴重な実戦経験者だ。しかし 警察という組織はあまりそういうことに価値や効率を見出さないところなのでこの人事には 篠原側なり後藤隊長なりの尽力があったであろう事は想像に難くなかった。
また遊馬と同じ職場に居ることが出来る。
それは野明にとって心強いことであることは確かだ。
しかしイングラムから降りて現場に出ることが無くなった野明は遊馬にとって『パートナー』で有り得るのか。
イングラムと共に埋立地を出て行く98式指揮車を敬礼しながら無言で見つめていた遊馬の横顔を見たとき野明は改めてそのことを考えた。

ZEROが配備された時、イングラムに対して後悔の無い様に使おうと決め、心の準備をして来たつもりだった。だから イングラムが八王子に帰り、ヴァリアントを迎え入れることになったそのことに拘りはない。自分もまたここを同時に離れることになったのだがそれも公務員である以上、配置転換というのは起こりうることでそれついても納得しているつもりだった。
にもかかわらず、遊馬と『パートナー』でなくなる自分、というのを想像したことが無かった。
初任からコンビを組んで 事ある毎に口にしていた「フォワードとバックアップは一心同体!」という言葉。それは野明の不安を和らげようと遊馬が言い出したことだった。
しかしそれがある種の呪文のように二人の間に浸透していくと強くなった絆の分だけ離れがたくなっていたのも事実だった。
遊馬の気が荒れて一時期、コンビを解消された時のどうしようもない不安感を今でも覚えている。
熊耳の指揮に不満があるわけではなかった。至れり尽くせりで作業としての効率はむしろ高かったのかもしれない。それでも遊馬の指揮を受けるときの安心感と信頼感に勝るものは無かったのだ。
イングラムを搬出した今、その遊馬と『パートナー』として出動する事はもうない。
そう思うと 心にぽっかりと大きな穴が空いた様な気持ちになった。

日報を集める手が自然、遅くなっていたのだろう。
日報を殆ど1人で拾い終えた遊馬は野明が手にしていた分も取り上げると軽く端を揃え新しく作ったダンボールに入れなおす。
側面にマジックで 『特車二課第二小隊 日報1998.4~』と記入し「ま、こんなもんだな」といって軽く蓋を畳んだ。

遊馬はイングラムを見送った後、すっかり元気のなくなった野明を見て軽く息を吐き話しかけた。
「寂しくなったか?」
「え?」
「イングラム見送ってさ」
一瞬見透かされたのかと思った。けど聞かれたのはイングラムのことだったので野明は小さく首を振った。
「後悔しないように乗ったから、それは平気。ただね、もう 終わったんだなぁって」
自分に語りかけるように軽く目を伏せて考えながら口を開く。
「終わった?」
「そう。ここでの私の仕事は全部。終わったんだなぁって思って」
遊馬は黙って野明を見ていた。その顔は少し困ったような、訝しむような表情で、けれどそれはどこか優しい遊馬らしい顔だと思った。
暫く俯きながら考えたあと胸の前で手を組むようにして一呼吸置くと野明は言葉を継いだ。
「遊馬」
顔を上げまっすぐに遊馬を見る。
「いままで本当にありがとう。私 遊馬とコンビを組めて良かった。遊馬が指揮を執ってくれたから 今日までフォワードでやってこれたんだと思う。3年と半・・・になるのかな。お世話になりました。」
そう言って ぺこりと頭を下げた。
遊馬は少し驚いたような顔をしたがすぐに「どうしたんだよ、急に?」と心配そうに野明の顔を覗き込み俯いている野明を見て静かに呼びかけた。
「おい、野明?」
返事を返さない野明を見ながら 困ったなという顔をして頭を掻くと遊馬は続ける。
「なにも今日でお別れ、って訳でもないだろう? 少なくとも俺達二人は同じ場所に移動が決まってる。知ってるよな? イングラムだってデータ収集用の実験機になるだけで八王子に行けばいつでも見れるさ。・・・何がそんなに不安なんだ?」
野明の頭をくしゃくしゃと撫で、泣きそうな顔をしたまま黙って俯く野明の肩にそっと手を添えた。
「野明?心配要らないさ、ちゃんと一緒にいてやる」そう言って顔を覗き込んだ。
野明は下を向いたまま「もう フォワードでもバックアップでもなくなっちゃったのに?」と小さな声で呟くように言うと涙を零した。
気にしていたのはそこなのか、と遊馬は少し驚いた。
イングラムの事でも、移動先のことでもなく野明をこれだけ落ち込ませていたのが自分との関係だと思うと意外な気がした。
軽く笑って野明を自分の方に向き直らせると、静かな声で語りかける。
「ばぁか。何言ってんだ、野明は俺のパートナーだろ。」
「でも・・・」
「でもじゃない。それとも嫌なのか?」
野明は慌てて首を振った。少し不安が残る目で遊馬の瞳を見返す。
「フォワードじゃなくても?」
「フォワードじゃなくても。初任からコンビ組んで3年半、そんなに信用無いか、俺?」
野明の瞳をじっと見る。不安に揺れる大きな目。
「いいの? まだ『パートナー』で居ても?」
「当たり前だ、他に誰がいるんだよ? わかったら泣くのをやめる! 太田辺りに見つかると『泉に何をした!?』だのってうるせーからな」
野明の額を人差し指で軽く突付くと にっと笑った。

野明が落ち着くのを待って隊員室に戻るため備品庫の扉を開けようとした時、遊馬はふと思いついて足を止めると野明に向き直った。
「なぁ」というと 軽く笑って手を差し出す。
ファイル 17-1.jpg
野明が不思議そうに見返すと 「手、出せよ」と言った。
言われるままに手を出すと、その手を遊馬がしっかりと握る。
そしてこう言った。

「なかよくやろう」

遊馬は悪戯っ子のような目で野明を見る。『おぼえてるか?』と目で訊かれる。
思い出す、初めて隊長にポジションを告げられたときのこと。
思わずくすっと笑いながら野明は応えた。

「どーやって?」

二人で顔を見合わせて笑う。
「しっかりやろうぜ、相棒」
遊馬が背中を軽く叩くと野明は嬉しそうに笑いながら「よろしく」と応じた。

二人連れ立って隊員室に戻ると皆がそれぞれに自分の机を片付けていた。
二人の姿に気づいた太田が声を掛ける。
「おう、向こうは終わったのか?」
「うん、終わったよ」
「あとは机ん中だけだな」言うと遊馬は徐に紙袋を取り出し適当に中のものを放り込み始めた。
「遊馬ぁ そんな風にするとあとで大変だよ?」
「んなことは あとで考える。まずここを空にするほうが先だろ?」
野明は溜息をつくと自分の机の整理に取り掛かった。
3年半の間に 徐々に増えていた私物をより分ける。
「ね、遊馬 カメラもってない?」
「今か?」紙袋にぽんぽん物を入れながら遊馬が顔を上げる。
「あとでさ、皆で記念写真撮りたいなぁって」
「ふーん 鞄に入ってる。後で隊長たちにも声掛けるか?」
「そうだね」
そう言って野明が皆を見回すとそれぞれが笑顔で頷いた。

就業時間まであと30分。
埋立地を離れる時間が近づく中、帰りに皆で飲みに行きましょう、と進士が提案した。
記念撮影が終わった後、反対する者などなく皆でここに揃う最後の日の夜を居酒屋で飲み明かした。
また必ず皆で会いましょうと約束をして、それぞれが埋立地に別れを告げる。

10月1日からは それぞれが新しい場所で仕事につく。
それでも ここで出会った人たちはかけがえのない仲間できっと折に触れて連絡を取るだろう。
その時 昔話に花が咲くのだ。キラキラ輝く夏休みのようなあの3年半について。

end

============
追記

ドラマCDの日報編を聞いていたら 埋立地を離れる日のお話が出てきました。
この回の野明と遊馬のやり取りが軽妙でとても好きだったので ここから何か広げたいなぁと妄想すること2日。
握手する二人の絵を落書きしたことでここに強引につなげてみました(笑)
この絵 実は自分が結構気に入ってしまいましてこれをネタに2,3本 妄想が膨らみつつあります(^^;
気が向いたら書くかも知れません。

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