本当は季節を考えると9月末にUPするように企画をあたためておくほうがいいのかも知れないのですが そんな事すると忘れてしまいそうなので勢いでUP!
ネタは 第二小隊が解散して埋立地を離れる日です。
ザザッと書いてそのままなので あとでこっそり加筆訂正するかも知れないです(^^;
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旅立つ日に
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二課棟の備品庫で野明と遊馬は片付けに追われていた。
「野明、そっちおわったか?」
「う~ん あとちょっと。遊馬は?」
「こっちは もういいかな、あと隊員室、片付けないとな」
そういうと 遊馬は 「よっ・・」と言いながら軽く肩を回す。
野明は 「よいしょっ」と声を出しながら棚の一番奥にあった段ボール箱を引っ張り出して机にのせようと持ち上げた。
その途端、箱の底が抜けてバサバサっと書類が床一面に広がった。
「おい、何してんだよ、大丈夫か?」
そういいながら、遊馬は傍に来て散らばった書類を集めはじめる。
箱の底を確認して「ダンボール壊れてたんだぁ」と言いつつ、野明は手近にあった一冊を手にとりパラパラとページを捲った。
「これ 日報だね、懐かしいなぁ」ざっと眺めて 目を細める。
「そうそう、最初の出動って 上野だったんだよね」
「ん? そうだな、3年前のか。」そういいながら 遊馬もちらりと覗き込む。
野明の字で書かれた出動記録。
まるで 『小学校の作文のようだ』と後藤隊長に言わしめたその日誌は3年半近い年月を経て紙が少し黄ばんでいた。
「そんなん読んでたら 今日中に終わんないぞ。」そう言って散らばった書類に手を伸ばし「今 読んだら恥ずかしいと思うけどな」と遊馬は笑った。
カチャリを音がして扉が開くとひろみちゃんが顔を覗かせる。「泉さーん、新型機きましたよ」
「イングラムの見送りせんでいいのかー」太田もハンガーから大声で二人を呼んだ。
「今行くー!」返事をして 遊馬と一緒にハンガーに向かった。
搬入されてくるヴァリアント、そしてキャリアに搭載されシートを掛けられたイングラム3機が簡単な手続きのあと 篠原重工の人たちに引き渡された。
ゆっくりと 動き出すキャリアに後藤隊長以下 全整備班員と第一小隊を含む特車二課全員が無言のまま万感の思いを込めて敬礼を送る。
キャリアの姿が完全に見えなくなるまで誰一人微動だにせずその場に立ちイングラムを見送った。
「いっちゃったね」ぽつりと野明が呟くと遊馬は無言で野明の髪をくしゃっりと撫でた。
野明はその掌の温かさを感じ同時に胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
すぐ後ろでは榊班長の号令の下、整備班が搬入されてきた新型機の初期設定と調整に慌しく動き始めている。
熊耳が皆に、「さ、早くかたづけてしまいましょう」と声を掛け隊員室に向かって踵を返しそれを追って太田、進士、山崎が屋内へ入っていった。
「さ、行った行った」と後藤隊長に促され、野明と遊馬もまた備品庫に戻ってきた。
床に散らばったままだった日報の束を集めながら野明はなんともいえない喪失感と寂寥感に苛まれていた。
2001年9月28日金曜日。
今日でここに出勤するのは最後になる。
10月1日付けで 装備開発課に移動、そのまま篠原重工に出向することが決まっていた。
遊馬も同じ部署に移動して同様に篠原重工に出向する。
同じ部署のパートナー同士がセットで同じ所に移動出向する。こういう人事は異例だと思う。
野明はテストパイロットとして乞われる形で、遊馬はデータ解析要員として。
どちらも得難い優秀な人材で貴重な実戦経験者だ。しかし 警察という組織はあまりそういうことに価値や効率を見出さないところなのでこの人事には 篠原側なり後藤隊長なりの尽力があったであろう事は想像に難くなかった。
また遊馬と同じ職場に居ることが出来る。
それは野明にとって心強いことであることは確かだ。
しかしイングラムから降りて現場に出ることが無くなった野明は遊馬にとって『パートナー』で有り得るのか。
イングラムと共に埋立地を出て行く98式指揮車を敬礼しながら無言で見つめていた遊馬の横顔を見たとき野明は改めてそのことを考えた。
ZEROが配備された時、イングラムに対して後悔の無い様に使おうと決め、心の準備をして来たつもりだった。だから イングラムが八王子に帰り、ヴァリアントを迎え入れることになったそのことに拘りはない。自分もまたここを同時に離れることになったのだがそれも公務員である以上、配置転換というのは起こりうることでそれついても納得しているつもりだった。
にもかかわらず、遊馬と『パートナー』でなくなる自分、というのを想像したことが無かった。
初任からコンビを組んで 事ある毎に口にしていた「フォワードとバックアップは一心同体!」という言葉。それは野明の不安を和らげようと遊馬が言い出したことだった。
しかしそれがある種の呪文のように二人の間に浸透していくと強くなった絆の分だけ離れがたくなっていたのも事実だった。
遊馬の気が荒れて一時期、コンビを解消された時のどうしようもない不安感を今でも覚えている。
熊耳の指揮に不満があるわけではなかった。至れり尽くせりで作業としての効率はむしろ高かったのかもしれない。それでも遊馬の指揮を受けるときの安心感と信頼感に勝るものは無かったのだ。
イングラムを搬出した今、その遊馬と『パートナー』として出動する事はもうない。
そう思うと 心にぽっかりと大きな穴が空いた様な気持ちになった。
日報を集める手が自然、遅くなっていたのだろう。
日報を殆ど1人で拾い終えた遊馬は野明が手にしていた分も取り上げると軽く端を揃え新しく作ったダンボールに入れなおす。
側面にマジックで 『特車二課第二小隊 日報1998.4~』と記入し「ま、こんなもんだな」といって軽く蓋を畳んだ。
遊馬はイングラムを見送った後、すっかり元気のなくなった野明を見て軽く息を吐き話しかけた。
「寂しくなったか?」
「え?」
「イングラム見送ってさ」
一瞬見透かされたのかと思った。けど聞かれたのはイングラムのことだったので野明は小さく首を振った。
「後悔しないように乗ったから、それは平気。ただね、もう 終わったんだなぁって」
自分に語りかけるように軽く目を伏せて考えながら口を開く。
「終わった?」
「そう。ここでの私の仕事は全部。終わったんだなぁって思って」
遊馬は黙って野明を見ていた。その顔は少し困ったような、訝しむような表情で、けれどそれはどこか優しい遊馬らしい顔だと思った。
暫く俯きながら考えたあと胸の前で手を組むようにして一呼吸置くと野明は言葉を継いだ。
「遊馬」
顔を上げまっすぐに遊馬を見る。
「いままで本当にありがとう。私 遊馬とコンビを組めて良かった。遊馬が指揮を執ってくれたから 今日までフォワードでやってこれたんだと思う。3年と半・・・になるのかな。お世話になりました。」
そう言って ぺこりと頭を下げた。
遊馬は少し驚いたような顔をしたがすぐに「どうしたんだよ、急に?」と心配そうに野明の顔を覗き込み俯いている野明を見て静かに呼びかけた。
「おい、野明?」
返事を返さない野明を見ながら 困ったなという顔をして頭を掻くと遊馬は続ける。
「なにも今日でお別れ、って訳でもないだろう? 少なくとも俺達二人は同じ場所に移動が決まってる。知ってるよな? イングラムだってデータ収集用の実験機になるだけで八王子に行けばいつでも見れるさ。・・・何がそんなに不安なんだ?」
野明の頭をくしゃくしゃと撫で、泣きそうな顔をしたまま黙って俯く野明の肩にそっと手を添えた。
「野明?心配要らないさ、ちゃんと一緒にいてやる」そう言って顔を覗き込んだ。
野明は下を向いたまま「もう フォワードでもバックアップでもなくなっちゃったのに?」と小さな声で呟くように言うと涙を零した。
気にしていたのはそこなのか、と遊馬は少し驚いた。
イングラムの事でも、移動先のことでもなく野明をこれだけ落ち込ませていたのが自分との関係だと思うと意外な気がした。
軽く笑って野明を自分の方に向き直らせると、静かな声で語りかける。
「ばぁか。何言ってんだ、野明は俺のパートナーだろ。」
「でも・・・」
「でもじゃない。それとも嫌なのか?」
野明は慌てて首を振った。少し不安が残る目で遊馬の瞳を見返す。
「フォワードじゃなくても?」
「フォワードじゃなくても。初任からコンビ組んで3年半、そんなに信用無いか、俺?」
野明の瞳をじっと見る。不安に揺れる大きな目。
「いいの? まだ『パートナー』で居ても?」
「当たり前だ、他に誰がいるんだよ? わかったら泣くのをやめる! 太田辺りに見つかると『泉に何をした!?』だのってうるせーからな」
野明の額を人差し指で軽く突付くと にっと笑った。
野明が落ち着くのを待って隊員室に戻るため備品庫の扉を開けようとした時、遊馬はふと思いついて足を止めると野明に向き直った。
「なぁ」というと 軽く笑って手を差し出す。
野明が不思議そうに見返すと 「手、出せよ」と言った。
言われるままに手を出すと、その手を遊馬がしっかりと握る。
そしてこう言った。
「なかよくやろう」
遊馬は悪戯っ子のような目で野明を見る。『おぼえてるか?』と目で訊かれる。
思い出す、初めて隊長にポジションを告げられたときのこと。
思わずくすっと笑いながら野明は応えた。
「どーやって?」
二人で顔を見合わせて笑う。
「しっかりやろうぜ、相棒」
遊馬が背中を軽く叩くと野明は嬉しそうに笑いながら「よろしく」と応じた。
二人連れ立って隊員室に戻ると皆がそれぞれに自分の机を片付けていた。
二人の姿に気づいた太田が声を掛ける。
「おう、向こうは終わったのか?」
「うん、終わったよ」
「あとは机ん中だけだな」言うと遊馬は徐に紙袋を取り出し適当に中のものを放り込み始めた。
「遊馬ぁ そんな風にするとあとで大変だよ?」
「んなことは あとで考える。まずここを空にするほうが先だろ?」
野明は溜息をつくと自分の机の整理に取り掛かった。
3年半の間に 徐々に増えていた私物をより分ける。
「ね、遊馬 カメラもってない?」
「今か?」紙袋にぽんぽん物を入れながら遊馬が顔を上げる。
「あとでさ、皆で記念写真撮りたいなぁって」
「ふーん 鞄に入ってる。後で隊長たちにも声掛けるか?」
「そうだね」
そう言って野明が皆を見回すとそれぞれが笑顔で頷いた。
就業時間まであと30分。
埋立地を離れる時間が近づく中、帰りに皆で飲みに行きましょう、と進士が提案した。
記念撮影が終わった後、反対する者などなく皆でここに揃う最後の日の夜を居酒屋で飲み明かした。
また必ず皆で会いましょうと約束をして、それぞれが埋立地に別れを告げる。
10月1日からは それぞれが新しい場所で仕事につく。
それでも ここで出会った人たちはかけがえのない仲間できっと折に触れて連絡を取るだろう。
その時 昔話に花が咲くのだ。キラキラ輝く夏休みのようなあの3年半について。
end
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追記
ドラマCDの日報編を聞いていたら 埋立地を離れる日のお話が出てきました。
この回の野明と遊馬のやり取りが軽妙でとても好きだったので ここから何か広げたいなぁと妄想すること2日。
握手する二人の絵を落書きしたことでここに強引につなげてみました(笑)
この絵 実は自分が結構気に入ってしまいましてこれをネタに2,3本 妄想が膨らみつつあります(^^;
気が向いたら書くかも知れません。
ツッジー 2009年05月29日(金)23時10分 編集・削除
野明の不安な気持ち、それに応える遊馬・・・。
良い関係ですよねー本当に・・・。
ジーンときました!!
遊馬かっこよすぎ!!!
さくらさんの書く遊馬は
すごく野明に優しいですね・・・。
惚れちゃうよ(*⌒∇⌒*)テヘ♪
2・3本??
書いちゃってくださいなー(*⌒∇⌒*)テヘ♪
楽しみにしとります(≧∀≦)