語る「万華鏡」

(「裏か表か」に書き足す)

裏か表か(うらかおもてか)

項目名裏か表か
読みうらかおもてか
分類必殺シリーズ

作者
  • 監督 工藤栄一  脚本 野上龍雄、保利吉紀、中村勝行(おっぺ)
  • 公的データ
  • 『十三人の刺客』『大殺陣』の工藤栄一が監督を務めた、劇場版『必殺』シリーズ第3弾。江戸に存在する地下金脈を巡って、闇の金融集団と仕事人が対決するが、次々と命を失っていく。人気のが唯一揃い踏みした同シリーズの代表作。
  • よく言われることだけど、『裏か表か』を映画館で観たときには本当にびっくりした。ぼくは時期的には後期必殺が放送されている頃にファンになったのだが、再放送から入ったので前期者なのである。で、当時の前期者が必殺に抱く思いは、「諦め」だったのではないか。特に映画は、前年が『ブラウン館』だったこともあり、何も期待しないで映画館に行った。
     そうしたら、あの内容でしょ。もう本当にびっくりしたよ。思えばそのときに初めて、監督や脚本家の名前を意識したんじゃないかな。作る人が違えばこんなに違うのかと、いたく感心した憶えがある。最後の大殺陣で、刃物を手にしなかった者はみんな死んだという辺りのリアリズムに、ぼくは工藤監督のこだわりを見て、痺れたものでした。ご冥福をお祈りします。(貫井徳郎氏の日記より)
  • というわけで、『裏か表か』を観た。うーん、やっぱりこれは超傑作。単に映画の中で一番いいというだけでなく、長短八百本に上る必殺の中でも、トップクラスの出来ではないか。今の気分で全必殺ベスト3を選んだら、『仕事屋稼業』の「どたんば勝負」、『新仕置人』の「解散無用」、そして『裏か表か』を挙げるな。
     昔は、主水の個人的な問題なのに、仲間たちが率先して助けに来て、挙げ句死んでいく展開がちょっと不満だった。今回もそれは感じたんだけど、でも少し違う見方もできた。主水が夜道で刺客に襲われ、裏路地に逃げ込んだときにに助けられるシーンで、主水が出てきたら、まだ敵がいるのにすっかり安心してるんだよね。この描写で、主水に寄せる信頼感が覗けた。つまり彼らの間には互いを認め合う気持ちがあったわけで、それがわかると無償で死地に突っ込んでいくのも納得できる。
     まあそんな理屈づけは抜きにしても、あの大殺陣はやっぱりすごい。あれは工藤監督じゃないとできないよなぁ。つくづく惜しい人を亡くしました。(貫井徳郎氏の日記より)
  • 感想文等
  • このズタズタの主水が最後の仕事人主水だ。
    必殺シリーズ随一のぼろぼろというわけではない。
    仕事人シリーズ唯一のズタボロ主水が見られる!
  • これについては、テレビでこの映画の「予告編」を見ているときに興奮を感じたのを憶えている。。。
    それは、ワンシーン――を負っているとおぼしき主水が、よろめくようにゆっくりと歩き進みながら、つと、つぶやく。。。「俺は、こんなことくらいじゃ、死なねえよ。。。」。。。
    そのシーンだけが、「ぽつん。。。」という感じで「予告編」として放送されていた。いや、実際には他のシーンも入っていたのかもしれないが、そこだけがまるでズームアップされたように、飛び込んできた。
    主水だ!」
    と、思った。感じた。「必殺だ。。。。!」と。
    その頃のTVシリーズは、「必殺仕事人V激闘編」を放送中で、「初心に返ってハード指向で」との謳い文句はあっても、どうしても今一歩物足りない、もどかしい、そんな感じを受けている頃だった。自分の裡にある「必殺」が現実に放映されているシリーズとブレていて、満たされていなかった。そういうときだった。
     それが、この映画の予告編で一気に盛り上がった。
     そうだよ、これが中村主水だよ、この「裏の」。単に暗くて渋くて疲れてて、という感じになっちゃった今のTV版は、それはやっぱりもうひとつの「表の」でしかないんだよ、本当の主水はもっとしたたかで、もっとシビアで。。。そんな無い物ねだりのモノ欲しさに応えるような主水の姿がその予告編の映像にはあったのだ。。。これが。。。これが、そうだ、見たかった「必殺」だよ。。。
     そして、実際に観た「必殺!III裏か表か」は、100%ではないものの、充分ひたることのできる重い、熱い、充実した出来の作品だった。「必殺のコンセプトを満たしていない」等々の言い方も聞くけれど、個人的には、これは「懐かしい」昔ながらの「必殺」だから、それで十分うれしかった。。。
     特に、TVシリーズでだんだん形骸化してしまった錺の秀が、この映画では「あっ、本物のだ!」みたいな復活をしてくれているのは、「あっ、主水だ!」と同じことで、ほんとにほんとに感涙ものだったのだ。
     まったく。。。これが必殺仕事人V激闘編の最終回としてテレビで放映されていたなら、激闘編の評価もまた全然違っていただろうに。。。いや、もちろん、映画のクオリティは望めなくてもね。
     一点言うなら、この映画でのは、特に主水への接し方はまるで念仏の鉄だった。脚本の野上龍雄がそういうつもりで書いてしまったのかもしれないけど。そういえば、「必殺仕業人」でも、野上龍雄が書いた回では、仕業人達のお互いへの接し方がまるで仕置人達同士みたいだったものな(笑)(^^;(おっぺ)
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