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OTOMO KATSUHIRO Expositions

大友克洋による解説、紹介文 (単行本)

GORGON BOX/高寺彰彦

Gorgon Box

「童夢」「気分はもう戦争」の時期に手伝っていた、高寺彰彦氏の単行本第2弾。主に「マンガ奇想天外」に掲載された作品を集めています。大友克洋は3ページの解説文を担当。T氏とO氏の電話対談の形をとって書かれています。原稿が進まないO氏、シェーバーの掃除をしながらT氏に(原稿遅延の)先達としての忠告を語る‥‥。笑えます。

ILLUSTRATIONS H/江口寿史

Illustrations H

ご近所さん、江口寿史の初のイラスト集です。これはイラストと、各界著名人のコメントからなる本で、大友克洋のコメントも収録されています。少し前に出した「KABA」と比較しながら「成長する作家」江口寿史を語っています。

無名の人々 異色列伝/平田弘史

Ishokuretuden

大友克洋が敬愛する漫画家の一人、平田弘史の久々の単行本です。大友克洋は巻末に2ページ分の推薦文を寄せています。本書は、権力者側には都合の悪かったために、歴史の中に埋もれてしまった人々の逸話に再度光を当てるというもの。緻密な絵柄と、下調べの積み重ねが、圧倒的なリアリティを持たせています。現在品切れですが、古書店では容易に入手できると思います。

目かくし鬼/マックス・カバンヌ

co;on-maillard

大友克洋も多大な影響を受けたフランス・バンド・デシネ (BD) 界で「色彩の巨匠」と呼ばれているという、マックス・カバンヌの日本語版単行本。自伝的作品で、'91年のフランス・コミック市でグランプリを取っています。表紙だけでもただ者でないと思わせますが、中の絵は‥‥本当に凄いです。綺麗で、かっこよくて、スピード感があって‥‥。しかも、非常に MANGA に近いので、読みやすいです。坂口尚と近い感触もあります。
 大友克洋は「ヨーロッパコミックと私」というタイトルで文を寄せています。前半は、自分とヨーロッパコミックとの出会いについて、かなり詳しく書いています。これは、他のインタビュー等でもあまりいわれていないと思います。また、後半はこの作品について。読み応えのある文章です。作品そのものが非常に素晴らしいので、是非すすめたいところですが、絶版で入手は非常に困難です。

こちら葛飾区亀有公園前派出所 第95巻/秋本治

kochikame 95

ジャンプとともに心中することを決めた漫画家(笑)秋本治のご存じ「こち亀」。その第95巻の巻末文を大友克洋が書いています。しかも、自画像入り。かなり意外な取り合わせですが、これは NHK 教育の番組「手塚治虫の遺産」で対談し、その後寿司屋で話が盛り上がった為に実現したのでした。両氏共に同世代、アイアンマッスル(永井豪でなく、園田光慶の方ね)読み(笑)だということで話に花が咲いたようです。

JELLY TONES/KEN ISHII

Jelly Tones/Ken Ishii

スタジオ4℃の森本晃司がデジタル・アニメーションのクリップ制作を手掛けた「EXTRA」の収録されたフル・アルバム。ケン・イシイのメジャー・デビュー作となるアルバムです (実際には2枚目)。ジャケットや内ジャケには、件のアニメーションからのカットが多用されています。ジャケットとは別刷の解説(?)には、森本晃司と共に大友克洋もコメントを寄せています。抽象的なものですが‥‥。
 なお、誤解されている方が意外に多いようなので一応書いておきますが、「EXTRA」のアニメーションは森本晃司の作品で、大友克洋の作品ではありません。ですから、このジャケットや、シングル、フライヤー等に使われている絵は、森本晃司の作品です。大友克洋ではありません。

大映テレビの研究 完全復活版/竹内義和

daiei TV

「誠のサイキック青年団」の北野誠の相方であり、コラムニストとして知られる竹内義和の処女作、『大映テレビの研究』の増補・復活版。独特なテイストを持ったドラマの製作会社、大映テレビについての思いの丈が綴られた本で、門外漢というか、そういうドラマにはまらなかった人間には何がなにやら。しかし面白いと思う人にとってはこの上なく面白い本であるらしく、この復活となりました。そしてそう思っていた人物のひとりが、何を隠そう大友克洋。短いコメントにて、その愛好度合いを表現しています。しかもあとがきには、故今敏さんに大友さんが旧版を薦めたと言ったエピソードも。

Telecoma/Dowser

Dowser - Telecoma CD

80年代終わりから石井聰亙(現在は石井岳龍と改名)の映像に付ける音楽を製作し、石井の久しぶりの長編映画「Angel Dust」(1994)の音楽も担当した長嶌寛幸と寺井昌輝によるユニット、DOWSERの1997年発表のアルバム。その帯とライナーには、やはり映画監督の福居ショウジン(1991年の『Pinocchio √964』を長嶌寛幸が担当)と、大友克洋からの推薦コメントが掲載されています。映画『Memories』の「大砲の街」の音楽を長嶌氏が作ったことで依頼されたのでしょう(そもそも長嶌氏に「大砲の街」の音楽を依頼したのが石井聰亙の影響だったんですね)。初めはMijk Van Dykeのような(割とわかりやすい)イメージの曲もありますが、だんだんと形容しがたい音に変化してゆきますね…。ライナーの解説で引き合いに出されているChris Cutlerの盟友、Fred Frithの作る「架空の映画音楽」に近かったり、Steve Reich的だったり。機械的なようでいて生身臭いという、一筋縄でいかない音楽。先入観があるのかもしれませんが、映像…というか動きのある景色のようなものが浮かんでくるように思えました。なかなか面白いです。P.O.N.とかGround Zeroみたいなマイナーな音楽をリリースしていたレーベルで、現在は全く活動していないようですが、このアルバムは結構売れたのか、中古の流通量はさほど少なくないようです。

あっかんべェ一休 上/坂口 尚

Akkanbee Ikkyu

95年に急逝した坂口 尚の遺作である「あっかんべェ一休」の文庫版です。坂口 尚と大友克洋は、お互いにその画風に影響を受け合ったとも言われています。しかし、大友を「動」とすれば、坂口は「静」と言えるくらい、画面から受ける印象が全く違うのではないでしょうか。よく「詩的」などという、安易な言葉で語られてしまいますが、僕は「画面の向こうの微かな空気の動きが感じられるような絵」だと感じています。大友克洋は、「画面の中の物の手触りがわかるような絵」かな?いずれにせよこの人も、強力なオリジナリティを築いた、不世出の漫画家の一人であったと思います。大友克洋は全2巻の文庫版の上巻の帯にコメントを寄せています。

西遊奇伝 大猿王 第1巻/寺田克也

Saiyukiden Daiennou

CG を自在に操る驚異のマンガ家、寺田克也のフルカラーコミックス第1弾。1980年前後に大友克洋がやったように、またマンガ表現の幅を広げた本じゃないでしょうか。絵も驚異的ながら、内容も面白いです。大友克洋は帯にコメントを寄せています。曰く「大丈夫だ、同業者諸君!これでマンガ表現が終わったわけではない!!」。最大級の賛辞でしょう。共に谷口ジローもコメントしています。

HOTEL CALFORiNIA/すぎむらしんいち

HOTEL CALFORiNIA

大友克洋を読んで漫画家を志し、現在はヤンマガの看板作家的地位についている、すぎむらしんいちのブレイクスルーとなった作品と言われています。確かに、無茶苦茶な設定ながら最後まで一気に読ませるし、クライマックスのカタルシスも大きいです。絵も適当なようで実はかなりしっかりとした技術を持っていると思われ、慣れるとクセになります。大友克洋のコメントは帯だけで、しかも(画像で読めると思いますが)極めて簡潔なものです。

大王/黒田硫黄

daiou

この人もまた、マンガ界を震撼させたひとり。その初の短篇集です。力強いタッチと、繊細な描写。それに破天荒なストーリー。手法は特に新しいわけではないと思うんですが、総合力が極めて高いんじゃないでしょうか。とにかく、面白いです。大友克洋は混迷するマンガ業界の中に現れた光明として評価するコメントを帯に書いています。おすすめ!

首代引受人/平田弘史

Kubidai Hikiukenin

平田弘史の最新単行本。ただし、これは復刻版です。1970年代前半に描かれた、「首代」の取り立てにまつわる悲話が綴られています。とにかく、圧倒的な迫力は一見の価値あり。大友克洋の推薦コメントは帯にあります。「選集」で装丁を手掛けてからこれで3度目の単行本推薦。本当に好きなんですね。ただ、大友克洋の肩書きが「映像作家/アニメーション映画監督」になっているのはちょっと‥‥。

映画『ヴィドック』DVD DTS プレミアム・エディション

Vidocq DVD Special Edition

劇場公開時の新聞広告で推薦コメントを寄せた、映画『ヴィドック』のDVD初回限定盤。そのビニール・パッキングに貼られたステッカーに、荒木飛呂彦と共に大友克洋の推薦コメントが掲載されています。が、DVD発売予告チラシと同じもの…ということは、最初の新聞広告とも同じ…。発売会社のアスミックは、結局ずーっと同じコメントを使い続けたのでした。

鉄人 第1巻/矢作俊彦・落合尚之

Tetsujin 1

ハードボイルド作家であり「気分はもう戦争」の共作者、矢作俊彦原作作品。作画は落合尚之。現代を舞台としたロボットもので、さすが矢作俊彦らしく随所に毒のある作品になっています‥‥が、もちろん基本は少年マンガ。まだ1巻で話はスタートしたばかり。今後に期待しましょう。大友克洋は帯に推薦文を寄せています。→全4巻で完結しました。

蟲師 第3巻/漆原友紀

Mushishi 3

現代とも過去ともつかない日本を舞台に、蟲と呼ばれる妖怪のような生き物との関わり合いを綴ったファンタジー。作者は98年にアフタヌーン四季賞を取り、その後連載スタート。なお、この作品以前のペンネームは志摩冬青。同作品に関するインタビューが「季刊エス第1号」に掲載されています。大友克洋は帯に推薦文を寄せています。 しかしまさかこれが5年後の映画化の布石であったとは…2002年当時は全く想像出来ませんでした。

少年レボリューション/ダディ・グース

Shonen Revolution

1969年に「砦の下に君が世界を」でデビューし、1970年代中盤まで漫画アクションを中心に散発的に作品を発表しながら、長編「長いお別れ」を最後に漫画界から忽然と姿を消してしまった幻のマンガ家、ダディ・グースの初の作品集。デビューから1974年までの多くの作品を網羅しています。ネームは明らかに時代のものですが、劇画ともアメコミともつかないタッチは今見ても新鮮で、さらに当時の掲載誌を見るとその書き込み、構図の取り方等の異質さは歴然。日本のマンガ家の系譜から完全に切り離されたところに存在した、まさに孤高だったと言えるでしょう。そして、1980年代にこのマンガ家の思想を受け継いだマンガが誕生しています。そこでは久方ぶりにダディ・グースも筆を執っており、また過去の作品からの引用と思われるモチーフ、構図が散見されました。その作品は「気分はもう戦争」。ダディ・グースの代理人たる矢作俊彦と、マンガを描く必要がなくなったと彼に思わせた一人である大友克洋の合作でした。大友ファンは、大友克洋の帯コメントに従って、読みましょう。なお、この作品集に収録されていない作品では「ヴィートルズだって夏を歌えない (週アク '69/12/18)」、「命枯れても… (アク増 '70/07/30)」、「焼けっぱちのブルース (週アク '71/01/24)」、「タイトル不明 (増ヤン '71/7/27)」、「シリーズ:少年レボリューション (ミュージック・レター掲載(?))」、「長いお別れ(ハヤカワ・ミステリ・マガジン)」などの存在が確認されています。また、一部作品は矢作俊彦名義。以下初出情報:

  1. 「神様の代理人」週刊漫画アクション 1974年7月18日号、25日号
  2. 「馬鹿ばかしさの真只中で犬死にしちゃうための方法序説」週刊漫画アクション 1972年23月23日号、30日号
  3. 「マリー・アントワネットのチリ紙交換」タッチ社・タッチ 1971年11月号
  4. 「学聖の星 '70の部 ON THE BEACH」サンデー毎日増刊・これが劇画だ 1970年2月6日号
  5. 「砦の下に君が世界を Macbeth '69」週刊漫画アクション 1969年9月25日号
  6. 「ドンキホーテ!! お前は誰だ? SAMOURAI JAPON」週刊漫画アクション 1969年11月6日号
  7. 「マリー・アントワネットの下駄占い」週刊漫画アクション 1971年5月6日・5月13日号
  8. 「雪の女王 AND NOW I SAY, HELL NO!」平凡パンチ女性版 1969年12月24日号
  9. 「お八百屋おシッちゃん」双葉社・パピヨン 1972年5月26日号
  10. 「風船の皮をむいてみな」週刊漫画アクション 1973年5月10日号、17日号
  11. 「おちめのヨタさん」週刊漫画アクション 1974年10月24日号

刑務所の前 第2巻/花輪和一

keimusho no mae vol.2

異彩を放つ作品群でカルトな人気を誇っていた花輪和一を大ブレイクさせた『刑務所の中』。映画化もされて一躍メジャーに躍り出た後、その刑務所に入るまでの顛末を描いた作品が開始されました。それが『刑務所の前』。ビックコミックオリジナルの増刊号で連載され、全3巻で完結したその話は、彼のマニアックすぎる銃への愛着(犯罪領域だったわけですが)と、中世日本の少女の物語とを交錯させて描かれました。その第2巻の帯に、大友克洋がコメントを寄せています。…が、コメントなのか、ただ単に大友克洋が好きといってるから名前載せました的なものなのか、微妙ですが…。いずれにしても、銃に興味が無くとも非常に面白い本なのは確か。土の中で腐っていた銃を、丁寧に、時間をかけて修復してゆく作業など、かつてプラモデルやガレージキットに熱中したことがあれば、共感できる部分があるのではないでしょうか。とはいえ、作品としては『刑務所の中』の方が面白いかな。特にムショの中であんバタサンドを隠れて食べるシーン!あれ以上ソウルフルなマンガ表現に出会ったことはありません。

自転車で痩せた人/高千穂遙

yasetahito
yasetahito obi ver2

第2刷以降の別バージョン帯


狼たちの曠野』で装画を手がけたり、映画『クラッシャージョウ』で設定画を描いたりしたのみならず、特に80年代には非常に近いところにいたSF作家、高千穂遙。思い出すのは四角いお顔。当時も別に太っていたわけではないけれど、その後椎間板ヘルニアを患ってからは運動を全くしなくなり、検査の数値が最悪に。その彼が持ち前のオタク気質をフルに発揮して、ランス・アームストロングと同じマシンを購入、玄人はだしのトレーニングで別人のように引き締まったという事の次第をしたためたエッセイ。さすが小説家、読み始めるとグイグイ引き込まれていきます。面白いです。そしてこの本の帯には、大友克洋の推薦コメント(推薦コメント?)が踊ります。しかも、第2刷以降は別バージョンも。確かに使用前、使用後の顔写真が効果的ですね。

虎よ、虎よ!(新装版)/アルフレッド・ベスター

Tiger, Tiger

ベスターの『虎よ、虎よ!』。とりあえず「読め」。そんな強い言葉が口をついて出てしまうほど、SFの古典中の古典の一冊。もしジュブナイルSF(「キャプテン・フューチャー」とか)が好きな子供が中学生くらいになって何か読みたいと言ったとしたら、真っ先に頭に浮かぶ本の一つではないでしょうか。その『虎よ、虎よ!』が新装版となって2008年に再出版されました。といっても変わったのは装画のみ。中身は以前と同じです。…多分。写植が大きくなっているかな?以前の本は誰かに借りパクされちゃったので比較できません…。ま、いずれにせよ中身は昔から素晴らしいものですので、寺田克也という鬼才による新しいパッケージで、より多くの人の目に留まればもっけの幸いといったところでしょうか(…でも前の生頼さんの「あのシーン」を思わせるイラストも好きだったんだよな〜...ちなみにこんなページも…みんな拘ってるな〜)。そして、装画に加えてもう少し目を引かせるために、初刷りに付いた帯には夢枕獏と大友克洋からの推薦コメントが掲載されています。どちらも短いものですが、必要充分なんじゃないでしょうか。まあ、とりあえず読みましょうよ。

アンカル/アレハンドロ・ホドロフスキー、メビウス

L'Incal

大友克洋とメビウス。切っても切れないこの2人ですが、日本でのメビウスの扱いは不当に低いまま幾年月が過ぎてゆきました。「謎の生命体アンカル」からいったい何年が経過したことか…。まあ、メビウスについて論じるのは、日本にも少なからずいる熱心なファンの方々にお願いします。この本は、序盤しか邦訳されていなかった代表作「アンカル」の完訳版。いくらマンガ(含むBD)は画が命とは言っても、ストーリーがすんなり入ってこないとその魅力を受けきることはできないと思います。そういう意味で、我々の母国語である日本語で読めると言うことは素晴らしいこと。僕はこの本で初めて「アンカル」を真っ当に読むことができました。感謝です。原作はホドロフスキーです。大友さんとも「オメガミックス・ウォー」でニアミスしました。で、大友さん。松本大洋氏と共に、帯に推薦文を提供しています。もし読んでなければ是非。(全く余談ですが個人的には翌2011年に邦訳版が出た『エデナの世界』の方が数段好みでした。こちらも是非是非)

2ND/河村康輔

Kawamura Kousuke 2nd

大友克洋GENGA展のメイン・ビジュアルを手がけたアーティスト、河村康輔の初の単独作品集。コラージュによる独特な世界観の作品を作り続ける河村康輔の、シュレッダーを使った作品に移行する前の作品を主に収録しています。全ページ、モノクロ。シュレッダーを使った作品のインパクトは大きいですが、GENGA展のメイン・ビジュアル(この作品集には収録されていません)もシュレッダー以前の作品であり、同じ時期の作品を知るのに適していると言えるでしょう。手作業の積み重ねによる、丁寧な狂気。そんな印象を受ける作品が並びます。紙質、作品の裏面にも気を配ったブック・デザインは、むしろモノクロであることが有利に働いていると言えるかもしれません。但し、実際の作品は切り貼りによる厚みがあり、印刷されたものとは全く違う質感です。興味があれば、展示会に足を運んでみると良いと思います。

ポテン生活 第9巻/木下晋也

Poten Life 8

講談社週刊モーニングとその関連雑誌、更にはモーニングの公式サイトなどの隙間を埋める脱力系マンガ「ポテン生活」の第8巻。これまでは大きく考えて「技巧系」と言えるマンガ家の作品に推薦コメントを寄せてきた大友克洋ですが、それらとは随分異なる選択と言えるでしょうか。とはいえ、これだけどうでもよかったりくだらなかったりするネタを飽きさせずに読ませる木下晋也のテクニックは、意外にも技巧派なのかもしれません。少なくとも、いしいひさいちの遺伝子は継いでいるハズです…なんて分析っぽいことはどうでも良くて、単純に面白いので是非どうぞ。なお、この帯コメント(コメント引用?)は、『芸術新潮 2012年4月号 大特集 大友克洋の衝撃』のロング・インタビュー末尾での発言がきっかけ(ここから引用?)となっているものと思われます。

海獣の子供 第5巻/五十嵐大介

Igarashi Daisuke Kaiju-no-Kodomo 5

アナログな質感。一見たどたどしいような描線。しかしトーンに頼らず、細かな線の積み重ねによって、リアルな画面を生み出すその手法は、明らかに松本大洋の、更には70年代の大友克洋の系譜と言えるでしょう。アフタヌーン四季賞出身で、モーニングやアフタヌーンで作品を発表していた五十嵐大介が、小学館IKKIに軸足を移したのは2003年。その後『魔女』を経て、2006年から始まった現代日本を舞台とした海洋ファンタジー大作『海獣の子供』が、この5巻で遂に完結となりました。その作品、そして五十嵐大介に惜しみない賛辞を送る大友克洋。簡単なものではありますが、イラストもあります(書籍情報で大友イラストもあると聞いたときには本の中に入るのかと思いましたが帯だけでした。贅沢な帯だ!)。「イメージの奔流」とはこのことか、と思うような圧倒的な画面の連続には、誰もが息をのむでしょう。他作品とともに、おすすめです。

この本及び作品集『海獣とタマシイ』発売記念として行われた、池袋リブロでのサイン会に参加してきました。その際に、同席されていた担当編集氏と五十嵐大介氏本人から、この大友イラスト&コメントが実現した経緯を少しだけ教えて貰えました。それによると、もともと担当編集氏が大友さんに帯コメントを書いて貰えるか打診したのだそうですが、なしのつぶて。ところがもうダメだ、と諦めかけたところへ「ちょっと待って貰えれば」と、大友さんから連絡が。「(編)それはもう」「(五)なんなら発売遅らせますw」ということで、このイラスト&サインが実現したのだそうです。このお話から得られる教訓。1.大友さんとはなかなか連絡が付かない(周知の事実)。2.連絡が来るときは突然(周知の事実2)。3.実現させたいと思ったら延期も辞さない覚悟で(周知の事実3)。(2012.8.26追記)

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