感想文等 | 「ビデオテープの証言」の項で、ノベライズの際改題されたのは「ビデオテープの証言」と「黄金のバックル」だけだとか言っていた私がいるが、スマン、ありゃウソだった(笑)、この「忘れられたスター」も、ノベライズで微妙ではあるがタイトルに改変が加えられていた。 ノベライゼーションでの題は、「忘れられた女」。で、実は個人的には、何となくではあるのだが、このノベライゼーション版のタイトルの方が印象に残る。 「別れのワイン」と並んで(個人的には「白鳥の歌」は一歩下がるので)、刑事コロンボの感傷編とでも言うべき作品だと思う。さらに、「別れのワイン」からさえ進んで、ここに至ってコロンボは、いわばエルキュール・ポアロが「オリエント急行の殺人」で選択したのにも程近いエンディングを掴んでしまう。。。ポアロは私立探偵だが、コロンボはそうではない、にもかかわらず。そして加えて、偽装犯人まで一応設定してしまってすら。 これがしょっちゅうなら、「真面目に仕事せよ、警察官」というところだが、「別れのワイン」にしろ「白鳥の歌」にしろ、コロンボはきっちり義務を果たしていた。唯一、今回に限り、いわば共犯者にまでなってしまったに等しい。どうしてコロンボはそんな選択をしたのだろう。。。 今回の犯人像の最大の特徴は、最後の最後、コロンボの口から語られる。「おそらく、もうすでに、、、」 コロンボはだからここで刑事を捨ててしまったのだろう。なぜそこまで踏み切ったのかは分からないことなのだが。 同時に、それはまた、今作の犯人の極めて特異な部分、倒叙でありながらの「犯人の意外性」、これはミステリ作家が幾人か試みた或るネタを変わった形で達成したものにもなっている。 これら、幾つもの特別バージョンテイストが合わさり、この「忘れられたスター」を忘れられない佳作にしている。 でもやっぱり、原題(「忘れられた淑女」)に近いし、「忘れられた女」のタイトルの方が好き(笑)。(おっぺ)
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