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comic - archive - no.15




孤独のグルメ / 作画:谷口ジロー 原案:久住昌之

営業で常に外回りをしている中年の男が、訪れた町々で飯を食らう、という作品。

ただただ飯を喰う。ほんとそれだけ。
入る店も普通のラーメン屋や食堂といった、とりわけて珍しくないどこにでもあるようなお店ばかり。
だけど、店を選ぶ男には確固たる意志やこだわりがあり「今日は〜〜の気分だから」とか「ここの店は〜〜が絶品なんだ」とか。
また、食事中にもさまざまな事柄に思いを巡らし、味は当然のこと、お店のフインキ、器、テーブル、店内で食事をしている他のお客の様子だとかに、いちいち感慨を見い出す。

読んでいてとても親近感が湧いてくるなあと思ったら、
なんのことはない、自分が外で御飯を食べる時にいつも考えている事ばかりだ。

これを読んで、日常の中のあたりまえの食事というのは、思いのほか大切な事柄が詰まっていたりするもんなんだなあ、と、思ったり思わなかったり。


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作画の谷口ジロー氏は、この作品以外にもこういうタイプの作品をいくつか書いている。
タイトルも『歩く人』『犬を飼う』等々、半端じゃなく地味だ。
内容も負けず劣らず地味。
しかし、そうと思えば『ブランカ』や『神々の山嶺』(文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞)といった壮大で感動的なドラマも書いてみせる。

なんと振り幅の広い人なんだ。
カッコイイなあ。



2003.05.20.Tue