神々の山嶺 / 画:谷口ジロー 作:夢枕獏 先程、読了。 少し呆然としてる。 そんなタイミングで書いみる。 この作品は、タイトルからも分かると思うけど、山にとり憑かれた、もしくは、とり憑いた男達の物語り。 主人公の深町というカメラマンの視点を借りて、羽生丈二という型破りな登山家の生涯を描いていく。 「未だかつて誰もなしえなかった登攀をやり遂げる」 登場する登山家達は、共通してこの野望を胸に秘めている。 「誰にも譲らない。」 焦りにも似た感情を抱きながら、彼等は死と隣合わせの世界へと突き進む。 極限の寒さの中、とても熱い、マグマのような意志で山頂を目指す。 限界が近付こうと、歩みを止めない。 もうどうにも身体が動かなくなっても、諦めることはしない。 「目を見開いて睨め。そして、想え。」 それはもう純粋に「生きる」という意志そのもの。 神の手から己の運命を奪い取る行為。 男達は、命の危険を顧みず登頂を成功させたところで、得るものなどほとんど無い事は知っている。 しかし、己から「登る」ことを無くせば何も残らない事も知っている。 だから、彼等は生きるために山にしがみつく。 それは「男のロマンチシズム」だとかいう甘ったるい言葉で片付けるには、あまりにも泥臭い。 --- 全5巻と、一見短いような印象を受けるかもしれないが、その実、原作者の夢枕獏氏の巧みな構成により、物語りは相当骨太になっている。 そして、その骨太な物語りは、谷口ジロー氏の緻密な描写でもって確実に表現されていく。 全くもって頭が下がります。 久々に、漫画でこんなに力強い「物語り」を読んだ。 この作品は、本当に素晴らしいです。傑作。 これはもっともっと一般で読まれるべき作品だと思う。 物語りの下地も、客観的に見ればいわゆる「スポ根」「ハードボイルド」に着地するし、とっても読み易いので、みなさん是非是非。 → |
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2003.06.15.Sun |