語る「万華鏡」

(西遊記(夏目雅子、堺正章 主演))

西遊記(夏目雅子、堺正章 主演)(さいゆうき)

項目名西遊記(夏目雅子、堺正章 主演)
読みさいゆうき
分類ファンタジードラマ

作者
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  • 公的データ
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  • 感想文等
  • 世の中に「西遊記」の物語は山程ある。
     原典やそのジュニア向け等のリライト以外に、たとえば手塚治虫の「ぼくの西遊記」やアニメ版「悟空の大冒険」、本零士がクレジットされている「SF西遊記スタージンガー」、ドリフターズのパペット西遊記「飛べ!孫悟空」というのもあった。
     今、本零士の名が出たが、そういえば「宇宙戦艦ヤマト」もプロットは西遊記らしい。イスカンダルが天竺で、コスモクリーナーがありがたいお経だそうだ。
     「パタリロ西遊記」とか「最遊記」とか、登場人物の名前は同じで世界設定やらが独特なものも見かけた。孫悟空というキャラクターだけ考えれば、「ドラゴンボール」が一番有名どころか。
     個人的には、子供時分に通過した「悟空の大冒険」やジュニア本とで、おおかたのイメージが出来上がっていたと思う。学と徳はあるが肉体的には貧弱で、あまりキャラクターとしても魅力のなかったのが三蔵法師で、彼の弟子たち――孫悟空・猪八戒・沙悟浄がユニークな個性を持っている。……とはいえ、悟浄は河童だというだけで、あまり印象強くはなかった。暴れん坊の悟空とデブで食いしん坊でおっちょこちょいのブタの八戒が印象の中心だったはずだ。
     「スタージンガー」では、三蔵法師を美少女オーロラ姫に変え、弟子達もジャン・クーゴ、ドン・ハッカ、サー・ジョーゴというヒーローにした。ハッカはやはり太っておっちょこちょいだったが、ジョーゴは頭脳派のイケメンになっていた。クーゴは石丸博也が演っていたので(笑)、暴れん坊である。猿ではないが。如意棒ならぬ武器「アストロ棒」を振り回して戦う英雄クーゴは、単純だが面白かったし(なにしろ演じるのは石丸博也だ)、三蔵の位置にいるのが純真可憐なオーロラ姫という図式は新鮮だった。
     だが、その「スタージンガー」よりも驚かせてくれた西遊記が在った。それが、堺正章が孫悟空を演った、そして、夏目雅子が三蔵法師を演じた「西遊記」だったのだ。
     猪八戒に西田敏行、沙悟浄に岸辺シロー、お釈迦様には高峰三枝子と特異なキャストを用意された「西遊記」は、今観てもその壮大さぶり(特撮等は現代のレベルで計れば拙劣なはずだが)に感嘆する。だが、まず堺正章の意外すぎる如意棒アクションに驚いた。八戒や悟浄のドタバタしたアクション(それも味はあったが)とは全く違う、見ていて気持ちのいい棒術使いぶりだった。
     そして、男である三蔵法師を夏目雅子に演じさせた英断。
     この三蔵は決してオーロラ姫のように女性なわけではない。しかし、観ているこちらは当然自然のように女性として、この三蔵を観ていたような気がする。それはそうだ。夏目雅子は女性なのだから。
     そして、夏目雅子の演じた三蔵は、学と高潔さはあるが弱くて無能でという三蔵像をリファインした。確かに腕力はない。超能力も、悟空の頭の金鈷を締めつけるお経くらいしかない。学問はあり、人格も優れているが、やはり無能だ。「私は泳げない。雲にも乗れない……」
     けれど、どこかしら軽侮の対象となっていたそんな三蔵が、この「西遊記」では違っていた。どんな美青年が演じていたとしても臭みが産まれていただろうものを、夏目雅子は美と真摯を以て「高潔なる若き僧」を結実させた。
     愛を説き、人々にも妖怪にすらも慈悲を以て接し、弟子達にはときには厳しく、けれど自分の誤解を悟れば詫びる心を持ち、使命を果たすために全身全霊を捧げる。
     そんな三蔵法師に、暴れ猿の悟空も尊敬と愛情を抱いた。この三蔵と悟空の交情もまた、ドラマの眼目のひとつだっただろう。
     三蔵に激しく反撥しながら気遣い、心配し動揺し自らを反省したりする、そんな悟空がとても印象に残っている。(おっぺ)
  •  何度もドラマ化されていますが、堺正章・夏目雅子の西遊記を越えるものはないのではないでしょうか。
     この作品は、全てが完璧だった。しかも全てがよくかみ合っていた。DVDの特典映像にもありましたが、それは、みんなで知恵を出し合って、本当に協力して作った作品だったからではないでしょうか。ほとんどがアドリブだったというのにも驚きました。アドリブであれだけおもしろくてテンポのいい掛け合いができる俳優がそろっていたということ1つとっても、この「西遊記」はすごいと思う。
     私がはじめて見たのは、中学校の時再放送でだったのですが、特に悟空とお師匠様の人間関係がステキだと思いました。ぶつかりあって、でも相手のために死んでもいいほど大切に思っている・・・『センセイの鞄』や『博士の愛した数式』にも似た、淡々としながら、深い心のつながりにあこがれました。私もあんな関係を持ちたいものだと・・・
     それに、登場人物一人一人が、そこで実際に生活していると思えるほどしっかり存在していました。演じている感がなかった。作られたキャラクターという感じがしなかった。それは演技力は勿論、実際に出演者が仲がよかった、脚本に縛られなかったというような表面的な理由のほかに、俳優それぞれが人間としての魅力を十分持っていたからではないかと思います。それがまなざしによく表われています。まなざしに注目して観てもおもしろいかも。
    (ゆか)
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