語る「万華鏡」

(裏切者)

裏切者(うらぎりもの)

項目名裏切者
読みうらぎりもの
分類コミック

作者
  • 三原順(おっぺ)
  • 公的データ
  • はみだしっ子」シリーズPart12(おっぺ)
  • 感想文等
  • そして、いよいよサーニンの物語が始まる……
     マックスの「奴らが消えた夜」と同様に、「山の上に吹く風は」から直接続く形で始まる――いや、すでに「山の上」で出てきていた少女がそのまま出てくる分、さらに連続性は強いと言えるだろう。
     そしてサーニンは出会う。エルと。エルバージェと。
     ――馬という生き物にさほど思い入れもない。それでも、サーニンとエルとのむすぼれは解る。あとあとグレアムが、クークーのことはよくわからないけれど、サーニンクークーをどれだけ大事に思っていたかはわかる、と言ったように。
     笑えないサーニンを唯一癒せたのがエルバージェ……サーニンはいつも、なにかしら「はみだし」た者と特に強い愛着でつながるのかもしれない。アンジーら仲間たちはもちろん、エルバージェ、クークー……
     そして「裏切者」というキーワード。
     裏切られた……と人は言う。私の期待は裏切られた。私の信頼は裏切られた。こんなに信じたのに。こんなに愛したのに。
     こんなにも、返礼のあることを願っていたのに、と? こんなにも報われることを……報われたいと……
     いったい、故意に、悪意を持っての裏切りが、本当にどれほどの数も転がっているのだろう。
     それでも……
    「私の期待は裏切られたから」
    「私の愛情は支払いを停止しました」
     ……
     この「裏切者」には、あまりにも多くの想いが詰まっている。信頼することの難しさ。それは、勝手な押しつけや、幻想でしかないかもしれないのに。
     けれどまた同時に、裏切られてなどいないのに、そんなふうに感じ、思い込んでしまうのもまた。
     どれほど多くの「裏切り」を、「期待」を、「信頼」を、思い、言い、重ねてきたことだろう。
     誰も「裏切られた」などと言わない世界は、楽しいのか。哀しいのか。(おっぺ)
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