感想文等 | いよいよ最終話。 この回にいたって、ついに仕置人グループが崩壊する。とは言っても、続く「仕置屋」「仕業人」「新仕置人」。。。の崩壊劇のように暗く重いかたちではない。単に、仕置人稼業が露見し、人相書きがまわったので、解散しよう、ということになった。単純に言ってしまえばそれだけのことだ。後々の仕事人シリーズの最終回と、そこだけ見るとよく似てさえもいる。 仕事人シリーズの最終話と何が一番違うかと言えば、この露見・解散にいたる道筋が、前回「無関心もいけねえな」などと、中心人物であり、情を排せることで要だったはずの念仏の鉄までが思ってしまった、、、そこからのストレートな続きとして、今回では情に絆されるかたちで事態が進行し、そしてついに、 「銭勘定しねえで危ない綱渡りをするのはばかばかしいよな。何となくマシな人間になった気がするじゃねえか」 と笑う念仏の鉄、という画が現出するのだ。 捕縛され、処刑される直前まで行く半次を救出するため、仕置人たちは力を合わせる。主水はもとより、おきんも仕置に立ち上がり、強酸をぶちまけて標的を仕留める荒業を見せる。 そして豪雨の中、棺桶の錠と共に処刑場に乗り込んで壮絶な乱闘をやらかし、「闇の仕置人だ!」と名乗りを上げていく念仏の鉄。 次作「助け人走る」以降の最終回等を見知ってしまった眼からすれば、犠牲者が出ることもなく、仲間の救出にも成功し、1人も欠けることなく解散して旅に出られてしまう展開は、もしかしたら拍子抜けとも見えるかもしれない。 けれど、その別れの場面にも、逆にそれらを知っているが故の驚きが待っている。 江戸を捨て、旅立とうとする鉄、錠、おきん、半次らの前に、旅支度の主水が現れるのだ。 「あんたは何もばれてないし、かみさんやおしゅうとめさんもいるじゃないか」と半次らが諭すのに対し、 「おめえたちと別れるのはなぁ。。。」 と淋しそうに言う主水の姿がある。中村主水の続投となる「暗闇仕留人」以降、仕置屋、仕業人、新仕置人、商売人、そして仕事人シリーズと、主水は次々と新たな仲間と組み、そして別れていくのだが、その別れの段に於いて、自らも共に旅立とうとするのはこの最初の「仕置人」が唯一のことだ。 「おめえだけじゃねえ、俺たちはみんなここで別れるんだ」と鉄が言い出し、驚く他のメンバー。江戸を離れても、みんな一緒にいるものと思っていたようだ。 その方が足も洗いやすいだろう、と鉄は言う。 「念仏、足を洗うつもりか?」と聞く錠に対し、 「洗うかもしれねえ。洗わねえかもしれねえ。だがよ、いつまでも続けたいほどありがたい商売でもねえだろう」 と、鉄は答える。 そして、いつまでもグズグズ言う仲間達に対して、鉄の最後の仕置が下される。 「裏が出たら別れる。表が出たらみんな一緒だ」 投げたコインが土間でころころと回り、見せた面は、裏。 「裏だ……別れようぜ」 そしてさっさと飛び出す鉄。 そして、それに引きずられるように、みな次々と。。。 1人になった鉄は、コインを取り出し、二枚張り合わされ、表が存在しなくなっていたそれを引きはがして空に投げる。 そして、独りごちる。 「世の中……裏目ばっかりよ……」 これが念仏の鉄の、「必殺仕置人」での最後の仕置であり、仕掛だった。 やがて、「暗闇仕留人」で主水はおきん、半次と再会し、さらには長い年月を経て、「新必殺仕置人」で鉄と再会するのだが、、、 とまれ、こうして1つの物語は終わったのだ。 タイトルは「未練なし」と言うが、、、それぞれみな、未練の残る別れだったのだろうけれども。。。(おっぺ)
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