感想文等 | これまた、小川 洋子さんの作品の中では3本の指に入れられるMy favorite story。 数学の世界を、ここまで美しく繊細に表現した作品を 私は知らない。(しばしば、ミステリー作品などで使われるが) 何故、私が小川 洋子さんの小説が好きなのかと言うと、ストリー展開は いたってシンプルだしドキドキハラハラ度は決して高くはない。巻き起こる事件も登場人物の設定もむしろ控え目なのだ。 しかし、この小説で著されている事件の数々は(事件と呼ぶにはあまりにもささいな出来事ばかりだが…)作者の表現によって、読者の心に刻み込まれる物語となる。 刻まれた物語は、そのときの光や影、においや温度までもがリアルによみがえらすことができる。初めて野球の試合を見に行ったシーンや、ルートの11歳の誕生日のシーンなど、まるでその場で、私が隣で3人眺めていたかのように…。 文章じたい強烈な印象はなく、どちらかと言うと冷たささえも感じるが、それは ほてった体に風をあてるような…渇いたのどを清涼飲料水で潤すようなそんな感覚 に近い。長く連なる数式を レース模様に喩えるあたり!そんなところに、小川 洋子作品の魅力を感じる。(プリシラ)
この「記憶ができない」という症状については、確か北川歩実「透明な一日」で初めて出遭ったんじゃないか、と思う。 それから、荒木飛呂彦「ジョジョの奇妙な冒険」第6部『ストーンオーシャン』の中のエピソードが先行してで、映画「メメント」。 けれど、これらの中で一番印象的だったのが、この「博士の愛した数式」でだったと思う。 とても静かな小説だった。。。ようだ。数学の話だったせいか、森博嗣の小説をしばしば思い出してしまったのだが、もちろん、内容的なものとしては全く関係はない。。。けれど、この静かさは共通しているような気も。。。する。 長い、長い時間を、人生が駆けて行く。それを描くのが、小説というものだろう。(おっぺ)
|