感想文等 | 山ほど「積ん読本」が揃ってきたのだけれど、やはりというかとりあえずというか、「龍臥亭幻想」から。 なんだかんだ言いながら、島田荘司の新作となると食指が動く。これは折原一の新作のケースと似ている。特に、今作は御手洗潔と吉敷竹史の「競演」だというのだから(ただ「推理がクロスする」だけらしいけれど(笑))、ますます後回ししかねる類なわけだ。 物語自体は、前作(というか関連する前作)の「龍臥亭事件」同様、あまり本格ミステリという感じではなく、けれど高木彬光風の推理小説だ。それでも、帯の著者の言葉にあるように、少し「異邦の騎士」がらみのところがあって、そこのところは気を引かれる。 閑話だが、カバーと思っていたのが「ほとんど帯」!で、帯を取ったらまるでカバーを取ったかのようなカバー(笑)で、しかも本当にカバーを取ったら、そこには全くカバーと同じ、カバーを取ったかのようなカバーを取った部分が出てくる(爆)という、このほうがよっぽどミステリの趣向だよという装丁はわざと?(笑) それだけ或る意味力を込めた本なのだろうけれど。寧ろ、この帯は帯と見るべきではなくて、「ダブルカバー」という豪華版なのだと見るのがいいのかも。 字組みが少し大きく緩やかなので、細かい字がぎっしりという方が好みの私には、少しスカスカ感があって寂しいというのはあるけれど、無い物ねだりだろう。 「競演」と言うほどではなくとも、やはり同じページ内で、「御手洗」と「吉敷」のふたつの名前が出てきているのを見ると心はいささか躍った。でも、一番感情が動いたのは、 「女嫌いはやめたのか?」 「何? それが一番訊きたいのか?」 の部分で、笑い転げたんだけど(笑)。 謎自体とその解決は、御手洗が電話で聞いただけで解いてしまうわけだから、もちろんここしばらくそうであるようにたいした謎ではない。吉敷が、石岡に告げられた御手洗のヒントを解読する、という予想された流れで、予定調和めいた集束だった。 それにしても、御手洗が吉敷にとって「有名人」であるというのは解るが(噂になりうる人物について、「ああ、その男なら」と中村や牛越から実像を聞けるわけだから)、逆に石岡や里美にとって吉敷が「有名人」のようなのはちょっと不思議だった。警察官である吉敷が、どんなに怪事件を解決しても、御手洗のように個人的に著名になる道理はない。吉敷についての情報源はせいぜい通子くらいなのではないか。しかも、前回の事件のときには、通子が吉敷について語っているわけではない。この点が本作の一番の謎に違いない。いつか、解かれるのか?(笑)(おっぺ)
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