北鮮の拉致問題

2002年秋期 2002年11月期 2002年12月期
2003年3月期 2003年0月期 2003年0月期

2002年12月1日〜2002年12月28日
番号 題名 番号 題名
01 歪んだナショナリズム 02 期限切れ食料で大威張り
03 阿房の一つ覚え 04 生贄を貪る日陰者達
05 今更ながら「家族会」 06 皮肉な酷似
07 横並びで統一 08 「第2家族会」が必要か?
09 「一部報道機関」が批判始める 10 如何して名を伏せるのか
11 恐るべき認識

歪んだナショナリズム
何となく強硬.....朝までテレビ
12月1日

 11月29日の「朝まで生テレビ」を、久し振りに最後まで「生で」見た。
念の為に録画もしておいたが、民族派出演などの前評判は看板倒れで、ワイド
ショーの総集編の観があった。民族派では四宮正貴が喚き立てていた程度、社
民党の保坂は「出席しました」の意義しかない。他の出演者も自陣の保身と宣
伝臭が強く、紅一点の中林美恵子も出身した米政府の弁護を流すだけ。一水会
の木村三浩の弁は、イラク問題も含めて殆どが咀嚼困難だった。

 テーマの一つが北鮮への食料支援であった為、この論題にも期待していたの
だが、掘り下げ方や田原総一朗の誘導も拙く、新味が感じられなかった。視聴
者アンケートでは77%が食糧援助の停止を言い、数年前の45%から跳ね上
がった。食料支援での設問が、否か応かの二者択一には無理がないか。現場で
の配布方法や条件、場合によっては強制も考慮出来ないのか。現場からの報告
を勘案した上で、実効ある食料支援策を模索するべきだ。その上でのアンケー
トならば少しは説得力があるのに、単純なものでは反対派・賛成派の自己満足
に終わって仕舞う。

 その後新たに共同通信などが北鮮で、ジェンキンスさんに独自取材をした。
先週末にジェンキンスさんが過労で入院したが、病院で独自の会見が実現した
為だ。立派な二人部屋を独占した厚遇で、一見すると大事は無い様に思える。
本人は心労の所為で心臓や足などに症状が出たと言い、主治医は些か難しい状
態としている。先の報道2件が叩かれた為に、文字通り腫れ物に触るが如き報
道姿勢ではあった。

 これに対する反応で福田官房長官は「また何時もの・・・」として、殆ど意
に介さぬ様子だった。家族会の蓮池事務局長は御定まりの吐き捨てる論調で、
さも迷惑と言わんばかりに不快を露にした。行き過ぎた報道はするべきでは無
いが、各社は家族会や政府に遠慮無く報道して欲しい。先に家族会は政府に対
して、「北鮮からの家族関連の情報は、報道へ流す前に我々に知らせよ」と要
求している。私は情報の中で家族会の意に添わないものを、検閲したり制限し
ているのではないかと推測する。それが当たっているとすれば、先の「24年
間の慰謝料」発言と相俟って、家族会は途でもなく増長している。

 先週末頃から蓮池夫妻の胸から、揃って金日成バッジが消えた。地村夫妻と
曽我さんは相変わらず着用を忘れない。嘗てドイツの圧政下ユダヤ人の胸に着
けられた、「ダビデの星」の様なものだから、蓮池夫妻だけでも外せたのは結
構な事ではないか。残る三人もバッジを着けるには深刻な理由があるだろう。
一般国民は偏った国内情報の中から推測する部分が多く、節度ある北鮮発の情
報に飢えている。家族会や関係者から言われなくとも、北鮮発の情報や報道を
鵜呑みにする者は希少だろう。情報に虚偽や宣伝が多い事を、殆どの国民が知
っているのだから、下手な脚色や解説を付けずに流せば良い。

 若しかしたら真に受ける稀有な事例があるかも知れないが、だからと言って
報道や情報の選択を強制される謂れなど無い。渡朝取材するマスコミが続出す
るのは、被害者周辺や政府からの報道へ対する干渉も一因である。そして報道
自身も、見苦しい同業叩きや可笑しな自己規制をやめるべきだ。高円宮報道を
見て感じたが、被害者に対する日本テレビの姿勢は皇室報道その侭ではないか。
特に日本テレビでは煽り立ては熱心なのに、北鮮飢餓に関する真面目な報道は
殆どされない。所詮ワイドショーにしても、酷過ぎる偏向振りと言える。
期限切れ食料で大威張り 12月4日

 外務省の外郭団体が北鮮に非常用食料を出した事で、石原慎太郎が激怒して
いるそうだ。東京都が当該団体に寄贈した物を勝手に、石原都知事の嫌う北鮮
へ援助されたのが気に入らないと云う。極めて勢い込んでいるので、東京都は
大層な物を出したのかと思ったら、都の拠出分は40万食の内の一割程で、然
も期限切れで廃棄対象の食品だ。アルファー米や乾パンの様な物は、期限が到
来すれば訓練時等に試食されたりする。余った物を捨てるには勿体無いと云う
事で、適当な所へ施しているのだろう。たかが4万食の廃棄対象品の事で、嫁
にやった娘が苛められた様な大騒ぎは見苦しい。

 例によって日本テレビと「強硬派議員」、扇動好きな評論家が支援に対する
非難を飛ばしている。流石に「兎に角反対、何でも反対」とは言えず、支援の
方法論に及んでは居る。しかし具体的なものに踏み込まず、殆どの放送時間を
怒りの声紹介と非難に費やしている。常識派の反撃を予想してか、4チャンネ
ルの草野仁は一応、「飢餓は事実だから、支援に意義無しとは言わないが・・
・」と予防線を張っての発言である。また、拉致関連の「地方議員の会」会長
で在り、嘗てネットで問題を起こした土屋敬之も同様に団体を罵った。

 帰国後の家族会や拉致被害者周辺からは、明確に食料支援を阻止する発言は
聞こえて来ないが、従前からの言動を推せば支援反対だろうと推測する。日本
テレビ以外の他番組は実に分かり易い解説で、放棄した食料の行方を声高に云
々するのは如何かとか、強い姿勢ばかりが能では無いとの逆批判も出た。
拉致問題関係者等にすると残留家族は大事な人質だから、間違っても虐待され
たり飢えさせられたりしないとの観測がある。日本人妻や飢餓民は眼中に無い
とは言えないのに。

 帰国した拉致被害者を対象にした支援法案が、参院に於て全会一致で可決さ
れて来年一月一日から適用される。救済対象は他にも山積するのに、大盤振る
舞いの人気取り法案だ。審議途中で幾つかの意見や、他の事例との整合も問わ
れた。しかし、「物言えば唇寒し・・・」の中、「これに物言えば人間ではな
い」と言われそうな雰囲気では、常識や正論を述べる野党が居なかったのも仕
方が無いのか。これも本日決定のイージス艦派遣に、与党内からも反論が出た
のが僅かな救いだ。
阿房の一つ覚え12月7日

 流行している「毅然」に辟易したり、用い方に危惧を感ずるのは私ばかりで
はなかった。12月5日の朝日新聞では揶揄気味に懸念している。9月17日
以来我が国では、「毅然と強硬」が一つ覚えに流行している。時と場合や諸事
情を熟慮する事無く、強い姿勢でいれば間違い無しと「毅然と強硬」一本槍が
風潮だ。中庸も塩梅も考えず二者択一、イエスかノーかで国内外で世渡りが出
来るのか。朝日新聞では極端に選択肢を絞ったこれ等を、「毅然の守、撫然の
守、冷然の守」(守=かみ)と評している。

 対北鮮外交での毅然には外務省がまいっているそうだが、訪朝時に小泉が見
せた「仮面の様に凍りついた」パフォーマンスは、外務省の振り付けだったと
言う。握手はするな、車には同乗するな等々、職員に教えられた通りに演技は
したが、何ともぎこちない大根役者だった。今度は外務省がそれを強く求めら
れているだけの話だ。瀋陽の亡命騒動、不審船、拉致、諸々続いた結果これま
での弱腰外交では、国民世論に言い訳が出来なくなった。外交に国民が目を向
け始めたのと、外務省の不祥事続出が世の目を覚ました。

 慣れぬ生兵法は怪我の元とも云い、北鮮外交では毅然としたまでは良かった
が、事態打開の為には第三国での非公式折衝に走らされた。松岡洋右が喝采を
浴びた国際連盟脱退は、破滅へと突き進む幕開けと成った事も指摘している。
この頃は世論調査の集計を手抜きする積もりか、「二者択一」が多い様に思え
る。時によって条件付の選択が無ければ、世論は正しい反映が分からない。
人の心は二者択一ばかりで計れるものでは無い。
生贄を貪る日陰者達12月7日

 北鮮に食糧支援をした社団法人「日本外交協会」に対する批判が止まらない。
連日「国益に反する」とか「ペナルティーを科すべきだ」と糾弾が続き、政府
も先走った支援に不快感を示している。外務省と協会の連携と云う見方もある
反面で、民間団体に対する与野党挙ってのバッシングには、過剰介入との声も
ある。社民党や拉致を疑問視していた者への異常なまでの攻撃は、「誰も責め
は逃れられない」事を身勝手に忘れた振りをしている。執念の様な食料支援無
用説も未だ残るが、近頃では種種の理由を挙げた上での支援無用説が主流だ。

 搾取されようが到達率が低かろうが、蒔かない種は芽を出さぬ訳で、支援が
無ければ多くの餓死者が出るのは必至だろう。何と云っても困民に何等の責は
無い。小池百合子もそうだったが、今度は自由党の森裕子参議が声を荒げての
「日本外交協会」糾弾だそうだ。拉致関連の所為で忘れられていた、或いは陽
の当たらなかった議員達やタレントが息を吹き返した。舛添要一、小池百合子、
西村真吾、有田芳生、安倍晋三、平沢勝栄等がそうだ。他にも「毅然と強硬」
志向の者や、北鮮関連のマニアやオタク等が喧しい限りだ。

 12月5日付の朝日新聞は次の様な懸念をしている。
協会が政府とは違う立場の民間組織であることに変わりはない。政府内には
「政府方針と異なるからといって、民間法人の個々の業務にまで行政が口を
挟むことは適切ではない」(外務省筋)と、政界から圧力や制裁を求めるよ
うな風潮を危惧する声がある。
今更ながら「家族会」12月8日

 幾多の疑問を抑え込んでの拉致被害者支援法が成立した。国民栄誉賞と同類
の迎合、安上がりな人気取り政策と言える。家族会は「24年間の慰謝料」を
諦めた様だが、世論の片隅にも正論が遠慮勝ちに出ている。国内に対して増長
気味な家族会に対する疑問等がそれだ。例えば現代コリアの辺・真一氏が世間
を代弁したかの様に、家族会対して次の様に提言している。
「蓮池薫さんは北鮮で日本語教員を遣っていた筈。その関係から当然の事とし
て不明者等の情報を持っているだろう」。「仮令公表は出来なくても、同境遇
の家族会に対しては、何らかの情報提供を考えられないか」との主旨だ。辺・
真一氏は地村保志さんに付いても、同様の情報を持つ可能性を言及した。

 生還を果たした五人と比べると、他の被害者や不明者は余りにも不憫過ぎる。
曽我さんは別としても蓮池・地村夫妻は夫婦揃って生還、大事な人質である残
留家族は、政府などが対応を過たねば先ずは安全だろう。政府や民間がコメ支
援をせずとも、特別待遇の身が飢える事も無い筈だ。その上に支援法でも特別
厚遇の限り。週末に家族会幹部は遅蒔きながら、米大使館でベーカー駐日大使
と面会した。同情的言辞を受けたと言うが、進展に連れて本国の頑なさは明白
に成るばかりだ。米国への働き掛けも遅過ぎ、「下手な動きは逆効果」として
いたのは如何にも及び腰だった。

 金賢姫絡みで最近まで疎外されていた田口八重子さん、特に強く渡朝を希望
する家族会非加入の石岡章さんへの配慮は如何だろうか。家族会は訪朝の必要
無しとして政府も同調しているが、石岡亭さんの家族がそれに束縛される理由
は無い。家族会の蓮池事務局長は「家族会が政治を動かしている」というが、
子供たちが政治の道具に使われていることが大きな問題だ」と言っている。こ
れが可笑しい事で、拉致問題は政治問題なのだ。そして家族会が政治的に動い
ていないと言えるのか。

 横田滋会長は訪朝の意思ありだが、会長の立場から我慢していると伝えられ
る。首相周辺や安倍晋三官房副長官、中山恭子内閣官房参与等も訪朝自制を唱
えていて、これが「全体的な方針」と成っている。手詰まり観も手伝って外務
省内には、「世論」の変化を期待する声も出始めたそうだ。個々の被害関係者
が別対策を訴えた場合には、家族会の意向に縛られない人間味ある対応が望ま
れる。何度も言う様に被害者及び家族の事情は一律では無く、現在の処遇にも
差があり過ぎる。蓮池事務局長は比較的に安全圏からの仕切りを再考せよ。
連日の報道では「焼け太り」の感すら伺える蓮池・地村の両夫妻、拡大する要
求は過去を同情出来ぬ程「鼻について」来た。


 すっかりスポーツ新聞ネタと成り下がり、ワイドショー化した北鮮拉致事件
を総括したい。コメ支援に付いては別稿で述べるが、一部のマスメディアを除
いてこの話題は実に低俗化した。既に知識人や良識派からは、一連の報道姿勢
に苦言や注文が寄せられている。@余りにも強硬路線や北鮮憎しを煽り立て過
ぎる。A興味本位の報道が多く、本質に迫るものが少な過ぎる。B一面的或い
は皮相的な報道が多く、視聴者の判断を過たせる。・・・と云うものだ。

 例えば北鮮のプロパガンダ手法は今や周知なのに、執拗に警鐘を鳴らし続け
るのは視聴者を子供扱いする様なものだ。総攻撃を食った「週間金曜日」やフ
ジテレビにしても、提供されたものを其の侭流すのは何等差し支えない。曽我
ひとみさんを突っ突き過ぎた事で、「週間金曜日」記者は戴けないが。家族会
の蓮池事務局長もそうで、あの激しい口調では自ら自覚する通り、「家族会が
外交に口出しし過ぎる」と言われるのも当然だ。それを多くのマスコミまでが
短絡的世論に迎合して、同業者叩きに参加したのは自滅行為だ。

 日本テレビに恨みは無いがテレビ番組、特にワイドショーでは此所が一番悪
質だ。人道的観点からの報道が皆無なのは何度か述べたが、司会者も出演者も
質が悪く、人相にもそれが如実に現れている。司会の草野仁も陰険だが、有田
芳生、西岡力、佐々淳行、その他マニア連などがそうだ。社民党叩きも見苦し
い半面で、強い者には極端に及び腰だ。家族会にしてもあれだけ言うのならば、
米国に対しても「粘り強く」或る時は「強硬に」交渉するべきだ。ジェンキン
スさん問題にしても、イラクや北鮮問題を背景にした交渉があろうと云うもの
だ。詰まるところ弱い者は叩き、強い者には慈悲を乞うのではないか。

 えひめ丸事件のワドルを派遣するなど、米国はイラク攻撃と対北鮮政策で日
本に協力させたいのは明白だ。この機に乗じてジェンキンスさん問題に対して、
狡猾な面を見せても良いではないか。それも「ジェンキンスには配慮する」と
云う様なものでは無く、「ジェンキンスに興味は無い」或いは「ジェンキンス
などと云う者は知らない」程度の事を言わせないと、在北鮮のジェンキンス一
家の来日は望めない。浮かれ気味の蓮池・地村夫妻に比して、私は曽我さんに
は強く同情するものである。

 「ご機嫌伺い」?で石破防衛庁長官と川口外相が訪米中だが、ジェンキンス
さん問題では何の進展も無い。米政府は懇願に対しても、何も返答して来ない
と云う。米兵の狼藉に対してはあれほど寛大なのに、他者に対しては毅然と強
硬に建前論を振り回す。日本政府は米国に対して、「ジェンキンスさん問題が
解決しないと、日米間系が円滑に運ばない」程度の事は言うべきだ。
また各マスコミも一社程度は、「如何にすれば北鮮貧民の腹を満たせるか」と
云う特集を組んで欲しい。北鮮に残留する拉致被害者の家族達が、一般市民と
平等に飢える事に成らない限り、真面目に取り組む連中は出て来ないのかも知
れない。
皮肉な酷似12月18日

 北鮮拉致事件の関係団体のシンボルマークは、平和団体のものと酷似してい
る。平和派のブルーリボンキャンペーンがそれで、米国の報復一辺倒な姿勢を
批判する集まりだ。戦闘的且つ強硬好みの拉致関係団体が、平和派のシンボル
マークを盗用したとまでは言うまい。そうだとしても、取り立てて苦言を呈す
事も無い。何れにしてもブルーリボンは昔から抵抗を意味し、不当なものに反
抗するシンボルとして使われて来た歴史がある。下らない使い方をしなければ
それで良い。
横並びで統一12月19日

 拉致被害者5人が新潟県庁に於いて、家族会の仕切りの中で共同会見をした。
帰国後2ヶ月を過ぎても進展の無い状況下で一つの区切りとして、そして打開
策の一つとして国民の関心を繋ぎ止める目的だろう。何ともぎこちない会見だ
ったのは矢張り、家族会の仕切りの所為ではなかったか。予め提出された質問
に答えると云うもので、蓮池事務局長の立会いが恰も北鮮の手法を想起させた
のは考え過ぎか。自由質問もあったが、触れ込みの割には低調な会見だった。

 蓮池事務局長は前日、「金日成バッジの着用は、支援してくれる国民に対し
て失礼なもの。外させたい。」と発言していた。本日は5人共バッジを着けず
に出席した。ダビデの星の様なものだから、あの様なものを着けずに済めば結
構な事だ。しかし全員が横並びの言動は、如何しても意図的なものを感じさせ
る。曽我ひとみさんからは「残留家族の報道では、事前に内容その他を知らせ
て欲しい。」との要望が出された。これまでの家族会見解と同じ発言に、少な
からぬ違和感を抱いた。

 報道の検閲に繋がりかねない「ご相談」は大いに疑問で、要は節度と人間性
に留意すれば良い。如何に曽我さんといえども事前通告の必要は無い。バッジ
の件も発言の横並びも、甚だ不自然なものを感じた会見だった。北鮮では自由
にものを言えないだろうが、日本でも五十歩百歩と思う。バッジの件は放って
おけば良かった。中山参与は「家族が北朝鮮にいるので着けていた方が良い。
世間は分かってくれる」と気遣い、地村さんの父も心配をしたと云う。北鮮の
異常性を考えれば、着用する事が失礼だとは思わない。下らない「統一」だ。

 家族会会長の横田夫妻が訪朝を予定しているそうだが、横並びの一枚岩では
無理があり過ぎると云う事だ。ジェンキンス一家やヘギョン一家を、蓮池・地
村両家と同一視するのが間違いだ。特にヘギョン一家は、法的には完全に「あ
ちらの人」との認識があるのか。めぐみさんとキム・チョルジン氏の婚姻があ
からさまな策略であっても、あちらの「家族」を分断するのは不可能だろう。

 寺越友枝さんは息子の武司さんを被害者認定する様に政府へ求めたが、政府
からは明確な答えは無い。武さん自身が「私は拉致被害者ではない」と発言し
た事がネックだが、北鮮の監視下では真実を話せないのは自明だ。外雄さんと
昭二さんの件もあり、不明当時の状況とその後の北鮮の対応からも拉致事件で
ある事は説明を待たない。また、会見場には増元照明さんの厳しい顔も見えた。
5人以外の被害者や不明者の情報が殆ど無くなったが、支援法成立などで他の
家族との落差が大きくなった。亀裂に繋がらねば良いのだが。
「第2家族会」が必要か?12月24日

 12月24日に横田夫妻が安倍・官房副長官等と会談、訪朝問題などを話し
合ったと云う。会談には蓮池透らの家族会会員も立会い、結果として横田滋さ
さんは訪朝を留保する事に成った。妻や息子が訪朝に懐疑的と云う事もあるが、
矢張り家族会の意向を無視出来なかったとの見方が有力だ。会談終了後の記者
会見では、無表情で「軽々な訪朝・・」等と批判的言辞を吐く蓮池透の横に、
憮然とした表情の横田滋さんが居た。

 後難を恐れてか家族会に対する真っ向からの批判は未だ無いが、政府見解や
家族会、その周辺に対して疑問を投げ掛ける意見は出て来た。家族会などの主
張では、「一枚岩で纏まるべき」「北鮮の策動に乗るな」「横田滋さんが拉致
される危険あり」等だ。他には「先に要求した事に対する回答が無い」「これ
で幕引きとされる」もあり、「帰国済み被害者の残留家族が現れて、私達に帰
国の意思は無い」等と言わされると云う可能性も指摘されている。

 横田家の妻子や家族会は「横田めぐみの奪還が本筋で、ヘギョンさんとの面
会を第一義的に考えるのは間違い」との考えだ。家族会会長でもある横田滋さ
んは、その立場からも翻意を迫られたのかも知れない。何やら周囲から子供扱
いされて、滋さんが四面楚歌の感も否めない。拉致被害者は個々の事情が大き
く違い、夫々の思いも違って当然だ。拉致問題の解決は元より、まともな交渉
すら望めぬ現状では、「粘り強く毅然として」「一枚岩で団結」は余りにも建
前論に過ぎる。

 家族会会員でなければ拉致問題に関して物が言えぬ事が問題だ。金日成バッ
ジを外す件にしても、外さずとも国内的には何等問題が無かった筈だ。内に向
けて或いは批判が許されぬ者へ対して、強がって見せても滑稽なだけだ。バッ
ジ外しにしても私には、蓮池透の勝手が通っただけと思える。この件に関して
は「百害あって一利無し」ではないのか。政府から見放された寺越友枝さん、
北鮮協力者と誤解されて疎外されて来た田口八重子さんの家族、強い訪朝の意
思を持ち続ける松木薫さんの家族(家族会に非加入)を思う度に、「第2家族
会」の必要を感じる。

 北鮮協力者と言えば、蓮池薫さん等は工作員に対する日本語教師だったそう
だ。後に成っても口外出来ない事を、彼等が遣った可能性も捨て切れない。勿
論、反対は命と引き換えに成る「強制」だった事は説明を待たないが。
「一部報道機関」が批判始める12月26日

 家族会や救う会に何等の批判も出来ず、安倍・官房副長官等を持ち上げるだ
けのテレビ報道にも、漸く正常な批判が見られる様に成った。12月25日の
テレビ朝日に横田夫妻が出演して、ゲストの山本晋也監督やテレビ朝日の川村
晃司などに心情を語った。先の訪朝希望を家族会の「説得」で翻意、来年初頭
の総会に諮るとした横田滋さんは穏やかな口調で、訪朝は決して我侭では無い
と訴えた。山本監督は踏み込んだ内容では無いものの、「家族会が個人の領域
に立ち入り過ぎる」「蓮池透発言は心を傷付ける」と批判した。

 確かに24日の会見での蓮池透発言には、年長者や目上(会長)に対して無
礼なものだった。「軽軽に訪朝・・・」は無礼と言うよりは増長、「ヘギョン
さんはめぐみちゃんでは無い」がそうだ。息子の様な年齢の蓮池透から「軽軽
に」あしらわれ、憮然とした表情に成ったのは当然だろう。横田滋さんの話で
は表立ったでは無いものの、訪朝を支持する声は少なからずと言う。早紀江さ
んは訪朝には慎重な立場で多くは語らないが、苦悩の滲む表情が憐憫を誘わせ
た。

 また、家族会事務局次長の増元照明さんは、「先の質問(150項目の質問
その他)にも答えが無い状況での訪朝は反対だ。」との意見だ。これも建前論
だが、鳥越俊太郎が言う様に「それでは何時に成ったら行けるのか。10年そ
れ以上の長期に渡る可能性もある。」との意見を説得出来ない。増元照明さん
は「現状での訪朝は危険」とも言うが、政府の保護の下で最終的には横田滋さ
んが納得ずくで行っても良いではないか。

 横田滋さんは闇雲に訪朝を希望して居らず、立会人や条件に付いて考えた上
での希望だ。出席者達の疑問を纏めると、「拉致問題が全て解決してないと、
家族会は訪朝を許さぬのか」「個々の事情を考慮するべきで、一律な対応は間
違い」「人の心に立ち入り過ぎ」等々の正論が出た。訪朝に反対或いは慎重を
期す意見を総合してみたい。

@行けば横田滋さんが拉致される危険がある。(平沢代議士)
A一枚岩の団結を尊重し、他の家族の事も考慮しろ。軽軽に動くな。
B関係者に面会しても真実は得られず、「私達に帰国の意思無し」とされて
「これで決着」とされて仕舞う。
C交換条件としてコメ支援や経済協力、対米交渉の使い走りにされるだけだ。
Dカードは日本が持っている。焦っているのは北鮮だから、日本は待ちの作戦
で相手が折れるのを待て。
E影響は他の被害者や不明者にも及ぶ危険あり。

 ・・・と云うところだろうか。@の訪朝者の危険に付いては政府関係者の同
行は必須だが、警護は兎も角として一部関係者の言う捜査官などの同行は、北
鮮が受け容れないだろう。Aは滋さん自身が何度も言う様に、個々の事情に対
して考慮が無さ過ぎる。Bは当然予想される結果で何時、誰が行っても同じ事
だ。要は相手の言い分から真実を探るしか無く、「貴方が行っても丸め込まれ
るだけ」と言うのは、余りにも他人を子供扱いした思い上がりだ。それでは何
時、行けば良いのかと反論されれば、誰も責任ある答えは出せない。

 CやDはどちらかと云うと対北鮮強硬派の常套句だが、拉致問題とは別に真
の支援は必要だ。問題は有効な支援策を論ずる者が少なく、問題を摩り替える
意見が多い事こそ問題だ。Dなどに付いては「拉致問題でカードを持つのは北
鮮ではないか」と言って遣りたい。今までの経過を振り返れば、日本が毅然と
して強硬に振る舞っても「女の腕まくり」と直ぐに分かる事だ。阿房の一つ覚
えは良い加減で止して欲しい。Eに付いても、これを言ったら何も出来なく成
って仕舞う。バッジを外した事や、「帰国出来た五人」の帰国後の言動が、E
を無視したものでは無いと言えるのか。

 これは大原則として横田滋さんの自己責任に帰するのではないか。横田家で
は滋さんの他は全員、訪朝に反対或いは慎重な意見だ。先ずは横田さんの「家
族」内で十分な検討が成される事が肝心だ。滋さんが繰り返す「ヘギョンがめ
ぐみで無い事は分かっているが、問題を摩り替えないで欲しい」を、理解して
あげねば成らない。「騒いだ事」で生死が分かれたと云う意見にも分があるが、
騒がなかったら解決したのかと反論して置く。仮令そうだとすれば、騒いだ人
のお陰で「帰国出来た五人」が在るのかも知れない。

 個々の事情の相違を検証すると、蓮池夫妻と地村夫妻は共に生還して、残留
家族は一応の安全を得ている。曽我ひとみさんは母が不明の侭での単身帰国だ
が、ジェンキンスさん達の残留家族は一応安全とされる。折角安否が確認出来
ているのに、下手に騒いで帰国が遅れたり、危害を加えられたりするのは嫌だ
と云う事かも知れない。これも個々の事情と言えるが、別視点では勝手な言い
分と評価する事も出来るのではないか。

 同じく反対或いは慎重とされる増元照明さんも、本当の安否を知りたい気持
ちは強くて当然だろう。これも別の見方をすれば、一応は死んだ可能性がある
から、急いで訪朝する意思が無くても可笑しくは無い。横田滋さんに対しても
同じ気持ちを求めるのかも知れない。しかし、めぐみさんが「死亡した」とさ
れても、ヘギョンさんの居る横田さんとは事情が違う。娘の恵子さんが「死ん
だ」とされ、最も強硬と評される有本さんにしても、矢張り事情が違うのだ。

 テレビ番組での常識的な発言にある様に、「慎重に時期を待てと言うが、そ
それでは何時まで待てば良いのか」には誰も責任ある答えは出来ない。北鮮の
策動を危惧する声にしても、これだけ北鮮情報が溢れている現状では、常識あ
る者は言われなくとも内実は知っている筈だ。子事も扱いする前に、己の思い
込みや我侭を省みろと言いたい。

 それにしても日本テレビは悪質だ。12月26日の報道では横田さんの再翻
意を揶揄するが如き報道姿勢で、訪朝の必要無しとの方向へ誘導する内容だっ
た。北鮮事情にしても徒に揶揄、冷笑する意図が強過ぎる。金正日は兎も角と
して、南北朝鮮市民や良識ある日本国民には不愉快な報道姿勢だ。他局も各新
聞も、興味本位な低俗番組枠を削るべきだ。スポーツ新聞や週刊誌等、低質な
「一部報道機関」に任せて置けば良い。売名目的の出演者も要らない。

 来年初頭の家族会総会で如何云う結論が出るのか。70歳と若くは無い横田
滋さんの年齢からすれば、何時に成るかあやふやな「解決」や進展を待てと言
うのも酷な話だ。安全且つ実効ある訪朝を考えても良い。「第2家族会」は飽
くまでも最後の方策、蓮池透等が自重して家族会を壊さぬ様にせよ。分裂はそ
れからの事だ。
如何して名を伏せるのか12月26日

 田中実さん拉致事件では、関係した犯罪者等の情報が伏せられている。しか
し、この件は過去に公表された事実で、知る者は知っている事である。


 田中実さんは昭和24(1949)年生まれで、神戸市東灘区に住む身寄り
のないラーメン屋店員だった。店を経営していた韓という朝鮮人が工作員で、
「海外旅行に行く」と言って誘われ、昭和53(1978)年6月6日に成田
から出国、ウィーンに向かった後消息を断っている。ウィーンで拉致されモス
クワを経由して平壌に至ったと思われる。 

 以上のことは、北朝鮮工作員の指導の下日本国内で活動していた地下工作員、
張龍雲の証言によって明らかにされた。朝鮮総連系在日朝鮮人の張は昭和47
(1972)年以来 、在日の非合法地下組織「洛東江」のメンバーとして活
動してきた。
恐るべき認識12月28日

 蓮池薫夫妻が12月27日に故郷で、今年最後と云う記者会見をした。何時
も通りの管理された陳腐な形式で、検閲済みの10余りの質問が日本テレビ記
者の進行で始まった。自由質問が幾つか許されたが、飽くまでも予告質問に関
連したものに限られた。返答の殆どは夫が答えて、妻は促されて語る場合が多
かった。薫氏は全体に激しい口調で且つ、断定的なものが目立った。明らかに
兄の蓮池透に影響された論調だったが、幾つか気に成る事もある。

 バッジの件は矢張り「統一」の様だが、飽くまでも個人の意思を強調してい
た。北朝鮮公民の権利と義務と言いながら、許し難い事をする国とも断じてい
るのが理解出来ない。これは管理下の発言だと思ったのが、「残留家族と第三
国での面会は絶対にしない。」と吐き捨てた事だ。米英と戦争に成って北鮮が
崩壊すれば別だが、状況を正しく認識すれば出て来ない発言ではないか。
「好きで北鮮には行っていない」との建前論だが、来日以外の策は断じて受け
容れずで大丈夫か。解決の機会が少なくなるばかりか、影響が他の被害者に波
及する危険は考慮したのか。

 「拉致事件を外交カードにされるのは許せない。」として、政府にも注文を
付けた格好の発言もした。蓮池透の影響を受けたのだろうが、拉致事件は外交
問題以外の何と言えば良いのか。発生当時から外交の道具ではなかったのか。
外交カード化は許さぬから第三国案は駄目と言うのは、兄弟揃って単なる駄々
っ子に過ぎない。また、同じ日に横田滋さんが再度の翻意をした様で、取り敢
えず早期の訪朝は考えないと発表した。無念の表情に不本意が現れていた。

 蓮池兄弟達は自分等の事は声高に言うのに、不明者の情報その他には口を閉
ざしている。横田滋さんの失望や苛立ちは大きい筈で、その事も訪朝への熱い
思いと成っているだろう。松木薫さんの家族にしても同様だ。蓮池・地村夫妻
の元へは、嫌がらせの電話や手紙が多いと聞く。例の支援法の所為だけで無く、
自己の都合良く振る舞い過ぎるからだろう。一枚岩と言うならば、もう少し他
人の事も心すべきではないか。一方的な会見や声高の要求は、それこそ支那や
北鮮を思わせる。

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