北鮮の拉致問題

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2003年3月期 2003年0月期 2003年0月期

2003年9月17日〜2003年10月29日
番号 題名 番号 題名
01 小泉首相が北鮮訪問 02 北鮮が拉致事件認める
03 北鮮の拉致事件 04 歪んだナショナリズム
05 人質残して監視付き 06 軽薄言動は要らない
07 鼻に付き始めた北鮮問題 08 北鮮に振り回される日本
09 家族達の決断 10 可笑しくなった拉致事件
11 拉致報道を巡って批判続出 12 見苦しい読売テレビ>
小泉首相が北鮮訪問 9月17日

 日帰りの予定で小泉首相が北鮮を訪問している。国内の期待は拉致事件解決
へ向け、掘り下げた話し合いがされる事だ。但し先頃来日したアーミテージ米
国務副長官の意向が大きく作用すると思われるので、会談の内実が米国益を優
先したものに成らない保証は無い。緊迫するイラク情勢は、北鮮に対する脅し
にも成って居り、アーミテージの来日目的は、対イラク政策への理解だけでは
無い。小泉自身が「拉致問題だけじゃない」と言っているから、拉致問題解決
に期待し過ぎると、「裏切られた」と嘆く者が出る可能性が小さからず。

 造った様な硬い表情で北鮮入りした小泉だが、パフォーマンス好きも偶には
使い道があるものだ。唯、国内での様に何でも彼でもパフォーマンスでは、強
かな金正日に見透かされるだけだ。冷淡な応接は適正であり、拉致事件関係者
の懇請を無視して面会しなかったのも良い選択と思う。予見や雑音を排除する
為にそうした言うならば、の条件付だが。北鮮側の対応も極めて事務的なので、
却って実務に絞った会談に成る事が予想され、会談内容と帰国報告に大きく期
待したい。

 長らく「拉致疑惑」とされて来た「拉致事件」だが、この頃では「拉致問題」
と呼ばれる様に成った。よど号関係者や北鮮スパイの供述などから、北鮮が拉
致した事は、一般にも「ほぼ疑い無い」ものと認識されている。私は以前から
「これは拉致疑惑で無く、拉致事件だ。」と主張して来た。寺越ケースなどは
その見本で、北鮮が認め、我が国政府の訪朝団が面会している。拉致と「人道
的海難救助」を摩り替えているだけで、内実は自白付きの拉致事件と断定して
も差し支えないものだ。

 解決の方向だが、つい見逃していたのが「北鮮が認める」と云う事例だ。
これまでの経過から知らぬ存ぜぬで通し、見付かったとしても東欧などの第三
国で偶然に見付かったと云う事に成ると考えていた。何しろ生き証人を手放す
のだから、生半な方法では放さないだろう。洗脳するか或いはきつく因果を含
めた上で、小出しに開放するのが関の山と観られるからだ。「北鮮内の反動分
子が拉致した」ものを、金政権が奪還したとする手段があったのだ。

 テポドンも拉致被害者の存在も在北鮮の日本人妻も、我が国には実質的な人
質であった。一連の対北交渉は、誘拐犯が天下の大道で大っぴらに身代金交渉
をする様なもので、我が国は結果的に多額の金や支援を余儀なくされる訳だ。
北鮮は今回の会談では、先の大戦時に我が国が為した行為の、賠償と謝罪も要
求するとされる。戦時賠償は解決済みであるが、果たして受領した国々の政府
がそれを有効に使ったか。そして被害を受けた国民に対して、適切且つ適正に
還元したのか?過去の政府発言や論壇、ネット討論を見ても、その辺りが一般
に対して明確にされていない。

 謝罪に関して私は見解を決め兼ねているが、政府見解や答弁などを考察し、
更にネット討論を見ると、恐らく謝罪の必要な事があったのだろうと思う。
似非で在ろうが自滅主義史観で在ろうが、保守や右は聞く耳と良識を持つ一般
(サイレント‐マジョリティー)が傾聴する様な論説を展開するべきだ。
特にネットでの自滅主義者の醜態には辟易で、同じく憲法九条改憲と自衛隊の
国軍化を願う者としても大迷惑だ。
北鮮が拉致事件認める 9月17日

 北鮮の金正日が拉致事件を認めた。これに関しては昼間の内に私見を上げて
置いたが、掲示は一切手を加えずに其の侭にして置く事にした。私の最大の関
心は、在外の浜本と云う公使が拉致被害者と面会している等、水面下で政府の
動きが如何なるものであったかだ。小泉が出発前に、拉致事件の被害者家族等
との面会を断った理由が判明した。また、今回の解決の裏には米国の「大きな
働き」があった筈だと思量される。アーミテージ来日の裏に何があったのか。

 何かと不評であった小泉首相だが、今回の事で良い評価をされるとは思わな
いで欲しい。取り敢えずは「ご苦労様」と申し上げるが、小泉の成果とする気
には成れない。偶々その時期に首相であったと云うだけの事と考える。それで
は米国の「陰の尽力」に有り難うかと云うと、単純にそう言える程にはお人好
しではない。イラクは無条件査察に「取り敢えず」合意して、今回は北鮮が拉
致を認めて謝罪までした。米国がこれを材料に、更なる隷属を求めて来るので
はないかと杞憂するのは、強ち私の杞憂ではないだろう。

 日本側が調査を求めた8件11名の被害者(不明者)の内、4名の生存が確
認され、6名の死亡も確認されたという。1名に付いては、北鮮への入国が確
認されていないとの事だ。飽くまでも北鮮側の発表なので、直ちに信用する訳
には行かないが、当面はこの数字を元に検証を進めたい。勿論、今回の発表が
全てでは無く、他にも大なり小なり疑いのある事例も看過出来ない。関連すら
疑われていない不明者でも、北鮮の関与が無いとは言い切れない。今後の予防
に付いては言うまでも無い。

 今回の会見後に金正日が拉致事件に関する調査を発表した。独自の調査結果
で、我が国(北鮮)の反動分子が70〜80年代初めまでの間に計画した事。
拉致目的は日本語と生活様式の習得であり、対南鮮工作にも役立てる目的だっ
たそうだ。関係者は既に処罰(処刑?)された。生存者への面会には配慮する。
実は1998年に私は、これと関連した投稿をしている。参考までに再掲示し
たいので、ご一覧の上で如何に北鮮が異常な国かを感じ取って欲しい。

file:///D|/1新基幹頁/log/1998/bk/1120.html
北鮮の拉致事件9月19日

 十分に予想された事だが、拉致事件絡みで朝鮮学校や同校女性徒に対する嫌
がらせや脅迫が続出している。過去に何度も繰り返された事なのだが、特に今
回は衝撃が大きいだけに、その度合いも大変なものらしい。ネットでも自由主
義史観系とその周辺は、日頃から醜悪な南北朝鮮への暴言や妄言が溢れて居た
ので、今回の醜悪振りは目を覆わんばかりだろう。言論の敗北である。

 小泉首相訪朝から二日が経って、色々と裏事情が露呈して来た。今まで表面
に出て来なかった事を知ると、とても小泉首相に対して御苦労様とは言えなく
なった。被害者の死亡日時を家族に知らせなかった件で小泉は、記者に対して
暫く絶句した後で「遺族の立場があるでしょう」との説得力無き返答をした。
訪朝時の硬い表情はパフォーマンスだけでは無く、被害者の死亡を察知してい
たからだった。
歪んだナショナリズム
何となく強硬.....朝までテレビ

 11月29日の「朝まで生テレビ」を、久し振りに最後まで「生で」見た。
念の為に録画もしておいたが、民族派出演などの前評判は看板倒れで、ワイド
ショーの総集編の観があった。民族派では四宮正貴が喚き立てていた程度、社
民党の保坂は「出席しました」の意義しかない。他の出演者も自陣の保身と宣
伝臭が強く、紅一点の中林美恵子も出身した米政府の弁護を流すだけ。一水会
の木村三浩の弁は、イラク問題も含めて殆どが咀嚼困難だった。

 テーマの一つが北鮮への食料支援であった為、この論題にも期待していたの
だが、掘り下げ方や田原総一朗の誘導も拙く、新味が感じられなかった。視聴
者アンケートでは77%が食糧援助の停止を言い、数年前の45%から跳ね上
がった。食料支援での設問が、否か応かの二者択一には無理がないか。現場で
の配布方法や条件、場合によっては強制も考慮出来ないのか。現場からの報告
を勘案した上で、実効ある食料支援策を模索するべきだ。その上でのアンケー
トならば少しは説得力があるのに、単純なものでは反対派・賛成派の自己満足
に終わって仕舞う。

 その後新たに共同通信などが北鮮で、ジェンキンスさんに独自取材をした。
先週末にジェンキンスさんが過労で入院したが、病院で独自の会見が実現した
為だ。立派な二人部屋を独占した厚遇で、一見すると大事は無い様に思える。
本人は心労の所為で心臓や足などに症状が出たと言い、主治医は些か難しい状
態としている。先の報道2件が叩かれた為に、文字通り腫れ物に触るが如き報
道姿勢ではあった。

 これに対する反応で福田官房長官は「また何時もの・・・」として、殆ど意
に介さぬ様子だった。家族会の蓮池事務局長は御定まりの吐き捨てる論調で、
さも迷惑と言わんばかりに不快を露にした。行き過ぎた報道はするべきでは無
いが、各社は家族会や政府に遠慮無く報道して欲しい。先に家族会は政府に対
して、「北鮮からの家族関連の情報は、報道へ流す前に我々に知らせよ」と要
求している。私は情報の中で家族会の意に添わないものを、検閲したり制限し
ているのではないかと推測する。それが当たっているとすれば、先の「24年
間の慰謝料」発言と相俟って、家族会は途でもなく増長している。

 先週末頃から蓮池夫妻の胸から、揃って金日成バッジが消えた。地村夫妻と
曽我さんは相変わらず着用を忘れない。嘗てドイツの圧政下ユダヤ人の胸に着
けられた、「ダビデの星」の様なものだから、蓮池夫妻だけでも外せたのは結
構な事ではないか。残る三人もバッジを着けるには深刻な理由があるだろう。
一般国民は偏った国内情報の中から推測する部分が多く、節度ある北鮮発の情
報に飢えている。家族会や関係者から言われなくとも、北鮮発の情報や報道を
鵜呑みにする者は希少だろう。情報に虚偽や宣伝が多い事を、殆どの国民が知
っているのだから、下手な脚色や解説を付けずに流せば良い。

 若しかしたら真に受ける稀有な事例があるかも知れないが、だからと言って
報道や情報の選択を強制される謂れなど無い。渡朝取材するマスコミが続出す
るのは、被害者周辺や政府からの報道へ対する干渉も一因である。そして報道
自身も、見苦しい同業叩きや可笑しな自己規制をやめるべきだ。高円宮報道を
見て感じたが、被害者に対する日本テレビの姿勢は皇室報道その侭ではないか。
特に日本テレビでは煽り立ては熱心なのに、北鮮飢餓に関する真面目な報道は
殆どされない。所詮ワイドショーにしても、酷過ぎる偏向振りと言える。
人質残して監視付き

 北鮮拉致事件の被害者10余名の前調査を終え、外務省の役人連が帰って来
た。折からの台風で関空経由だったが、明日の被害家族への報告の為に、本日
中には報告を取り纏める。稚拙な対応批判に懲りて、厳重な緘口令が敷かれた
らしく、報道陣には完全黙秘だった。そして政府首脳や外務省も木で鼻を括っ
た対応に終始している。注目すべきは北鮮に拉致された、寺越武志さんも同じ
飛行機で北鮮から北京まで飛んだ事だ。北京滞在後の10月5日には、34年
振りに日本へ一時帰国する。同便とは恐らく偶然だろうが、北鮮の政治的意図
は勿論あるはずだ。

 北鮮によると寺越さんは「人道的措置」で北鮮へ渡り、党の要職に就く「所
帯持ち」に成ったそうだ。我が国は勿論、第三国でもこの様な妄言を信ずる者
は居ないだろう。寺越さんも北京空港で待ち構える報道陣には無言だった。
過去の訪朝団との会見には常時「通訳」が同席し、日本側と水入らずでの会談
は不可能だった。中学生の年齢まで日本で生活した者に、何故に通訳何ぞが要
るのだろう。余計な事を話したり、聞いたりしない為の監視役に他ならない。

 寺越さんは北鮮政府の計らいで、「政略結婚」させられたのだろう。北鮮に
は朝鮮人妻との間に子供もあるが、今回は党の訪日団の任務と云う事もあり、
家族は北鮮に残して来た。故郷の石川県にも立ち寄って墓参するが、何処まで
監視無しの行動が許されるか。そして北鮮に家族が残る限りは、単独会見でも
本音は出ないだろう。政略結婚でも何でも、家族や血の繋がりは人の心を縛る
のには、十分過ぎる「質」だから。多くを期待するまい。
軽薄言動は要らない10月03日

 北鮮拉致事件を巡る諸々の発言に接して、犬儒主義を気取って斜に構えた積
もりの者や、兎に角、過激な言を吐いて自己満足に浸る者が目に付いた。この
「思想と言論」HPで幾度も提言して来た事も含めて今一度、論点を纏めなが
ら再提言して見たい。対極や第三者(国)から観れば、議論の入口にすら辿り
着けないものが多過ぎる。死刑論議で「兎に角死刑、絶対に復讐」としか言え
ぬ者と同様に、法や社会規範を無視した妄言を止めない者が散見される。
職場の昼休みか酒場で多く見られ低劣なものや、ネットゴロその侭の無責任な
言動が実社会でも多い。目立つところを以下に列挙して、私なりの批判をしよ
うと思う。


@北鮮はテロ国家だからこの際、武力攻撃を以って報復或いは屈服させろ。

 真面目な発言とは思えないが、百万遍の如くに繰り返して他の発言を受け容
れない。日本が武力攻撃出来る様な法体系が無いし、可能性と言えば米国が行
う何等かの軍事行動の尻馬に乗るしか無い。イラク攻撃計画がほぼ世界中の非
難を浴びている今、何処に「米国による北鮮攻撃」の材料があるのか。始末に
負えないのが、この種の発言者に限って、自説が至高と信じきっている事だ。


A米支援を始めとした全ての援助や、先の大戦に関わる補償等を棚上げ若しく
は取り止めるべきだ。

 北鮮が人質にしているのは拉致事件の被害者だけでは無く、情報から隔離さ
れた自国民も取り引き材料だ。米支援を拒めば「八つ当たり」との非難は、内
外から湧き上がる筈だ。弱い者が更に弱い者を虐めて如何するのか。
そして史実や正邪は置くとしても、我が国は支那や朝鮮に対して非道な事を為
したとされる。被害規模と人数は必ず反論として出て来るし、現に国内からも
出始めている。戦後の清算をしなかった事と、米国の意の侭に主体性無く経済
成長ばかりを追って来た報いでもある。


B一部の保守系政治家にも可笑しな動きがあったが、社会党が北鮮と癒着して
来たのが、拉致事件の解決を遅らせた主因だ。

 社会党も騙されていた可能性が高い。秘書給与疑惑を検証すれば明確だが、
違法行為としての認識が希薄過ぎる。被害者家族が社会党へ相談→社会党が朝
鮮総聯に照会→北鮮労働党に報告→金日成・正日親子に報告との図式が目に浮
かぶ。社会党(社民党)は脇が甘すぎるのと、現実乖離が顕著なだけだ。
拉致問題を利用した政治家や野望家、解決運動を混乱させた者も無責任だ。


C日本国内に於ける全ての北鮮関連の便宜を廃止しろ。国交の必要も無い。

 商銀に対する金融政策は法を適正に執行すれば良く、万景峰号の疑惑が何故
に解明出来ないのか不思議だ。パチンコ業界と総連、北鮮との関連は利権絡み
で、権力の内部も関係している筈だ。どの様な国家とも外交は必要で、何かと
外交下手な我が国にとって、国交の無い事が如何に不利であったか。
Aにも関連して、日本にとっては薮蛇に成るだけで、要は北鮮問題を売国的な
立場で扱って来た全ての者が悪い。朝鮮学校女性徒への暴力や、各施設への脅
迫・嫌がらせは忘八者の極み。正常外交は勿論、非公式な接触も含めて、全て
のパイプを絶てと云う論は狂人のものとしか思えない。無責任の見本だ。

 また、南鮮の存在を考えない暴論が止まないのも不思議で、北鮮と南鮮の二
つで朝鮮を構成すると云う認識が無い。南北離散家族や独特の縁組みを無視し
て、恰も南北が別の国だと誤解している様な愚論は慎むべきだ。闇雲な北鮮攻
撃とか干上らせろとかは、責任の無い一般市民や南鮮までも敵に回す事になる。
更に念押しすれば北鮮で家族持ちと成った被害者に、過剰な注文を出すのは控
えたい。人質を取られて何で自由な言動が出来るのか、来日した寺越さんの件
も、第三者が彼是と干渉するのは間違いだ。



政府の対応、特に外務省が悪い。
 話題に上る職員の風貌から推しても、世間離れした「伏魔殿」との感はある。
報道から推察すると政府よりも外務省の方が立場が上だし、考えにも相当な違
いがあるのは確かだ。鈴木宗男事件では、首相すら逆らえない特別な領域化し
た部分も相当にある。北鮮との外交正常化を急ぐ余りの稚拙、後から判るのに
その場凌ぎの細工をする等の不信条件が多い。外務省改革がどれだけ為された
のか。他省庁の漫画的構造もそうだが、拉致事件、北方領土、一般外交、米国
支援等を一から遣り直しても良いくらいだ。監視が必要な役所に間違い無い。

パフォーマンスは要らない。
 被害者家族の手前などもも考慮してか、控え目だった小泉のパフォーマンス
が復調する様だ。北鮮での厳しい顔もパフォーマンスとも観られるが、従前か
らの様に都合が悪くなると声を荒げたり、駄洒落めいた返答をする事が無い様
に願いたい。政府・外務省と被害家族の窓口として、政府は中山なる内閣官房
参与を当てる事にした。育ちの良さそうなおっとりした振る舞いに、政府の意
図が明確に出ている。葬儀社か宗教団体にでも似合いそうで、これなら過激な
傾向の被害家族の当たりも和らぐとでも期待しているのだろう。私の直感では、
この人は恐らく無神経な或いは世離れした言動が問題に成るかも知れない。

建て前論ばかり振り翳すのは良くない。
 北鮮がどの様な国かを知っているのに、一般的な交渉事と同様な進展や態度
を求め過ぎる。第一に死亡者の事だが、原因にしても状況にしても、不自然過
ぎて驚きすら無い。確率論の専門家に数字を計算させれば、分かり切った余計
な評論も静まろう。

 北鮮の言い分の殆どが欺瞞と虚飾、言い訳の為の言い訳と云う事が判ってい
ながら、一般的な対応を続けるのは愚の骨頂だ。出来ない事を求めても前進し
ないのに、何時までも建て前論で憤慨していては成らない。搦め手も考えなけ
れば成らない。また仮令、関係者で在っても、そろそろ極論を諌める時期だと
思う。無責任な「街の声」やネットゴロの妄言も、報道関係者やネット管理者
が取り上げない事だ。
鼻に付き始めた北鮮問題10月14日

 小泉訪朝団が帰国した際に北鮮から持ち帰った、松茸の「お土産」も御粗末
な結果だ。首相等が降り立った1時間後に運び出されたが、トラック(宅配便
に使う大き目の2トン車)二台分もの大量の御土産だった。テレビ局のカメラ
に捉えられて隠し様も無い大荷物で、処分すれば簡単に知れる程のものだった。
拉致事件報道に追われて忘れられたかと思ったが、遂に国会で問題に成ってし
まった。ところが政府首脳も外務省職員も、松茸の土産の事は何も知らないと
言う。貰ったか如何かも知らず、事後の報告も何も無いと言うのは苦しい。

 余得を責めているのでは無く、「犯人」から御土産を貰う神経を難詰されてい
るのだ。首相や側近は外交儀礼上の事を云々するのはと強弁するが、正常な国交
も無い然も日本に対してテロを働いた北鮮から、土産を受け取る姿勢が可笑しい
と云う訳だ。小泉は訪朝以程どでは無いものの、御得意の突き放す云い方で言葉
を濁している。未だ未だ不誠実且つ身勝手な対応ばかりの北鮮、通常の外交態度
の必要な相手とは思えない。つくづく外務省は伏魔殿であるし、有事に弱い我が
国政府は情けない。


 松茸だけでは無い。拉致事件解明に関しては、何時までも詰まらない事で引っ
掛かっているが、関係者はもう少し他の観点からも考えて欲しい。


@「被害者全員が北鮮バッジを胸に付けている」事を、何度も繰り返すマスコ
ミと事件関係者。言動に日本人の「被害者」と云う意識が見られないとの意見。

 外務省が現地で会見した被害者の真贋は置いて、拉致被害者は北鮮の囚人な
のだから、囚人服」たる「バッジ」を付けていても何の不思議は無い。金体制
への恭順と、「首領様のお陰で幸せ」を表す小道具に過ぎない。分かり切った
事なのに、何度も何度も繰り返すのは辟易する。視点・論点を他に移して、為
に成る話題を展開すべきだ。

A小泉訪朝後に北鮮からの通知が、家族より先に報道へされた事に憤慨し、家
族達はこれに強い不快感を示した。以後も些細な「後先」で再び不快を表明し
ている。


 如何にも神経質に過ぎるのではないか。私的な事の全てが報道対象では無い
が、拉致解明と被害者の一時帰国に関する費用の殆どは日本の負担だ。死亡し
たとされる被害者へ北鮮が支払う解決金も、飢える北鮮が払うのは無理だろう。
原資は日本から北鮮に渡る各種の支援や供与であって、詰まるところ我々が取
られる税金から支払われるのだ。被害者家族による「選択」が鼻に付き始めて
いる。外務省の対応が不備なのは言うまでも無い。

B10月15日に予定される一時帰国に際しては、「被害者の会」全員で出迎
える。死亡したとされる被害者の事も、一時帰国者から聞き取り調査したい。
また、警察の事情聴取や政府関係者も聞き取り調査する。


 何度も述べている様に「人質残して監視付き」の帰国、自由にものを言えな
い事を皆も知っている筈。寺越ケースでまざまざ知らされたのだから、被害者
の会と云っても他人が立ち入り過ぎない事を願うものだ。北鮮から同道する監
視は、都内に留め置く方針を貫くべきだ。その上で過剰な報道があれば、北鮮
関係者も視聴するテレビなどで動静が筒抜けと成る。被害者本位で扱い、誰で
在ろうとも自制を忘れぬ事だ。拉致被害者家族で在れば、何でも許される訳で
はない。また、地元同窓生等が計画している様な、如何にも青年会議所的な歓
迎パーティーも考え物だ。

 始まったばかりの衆参補欠選挙戦で、小泉のパフォーマンスが疑問視されて
いる。御得意の調子で「北鮮が被害者を殺した」絶叫するのだが、死亡を信じ
ていない被害者家族や、死因を病死等としている北鮮が反発するのではないか
との懸念だ。事の性質からパフォーマンスを控えて来た小泉は、先のノーベル
賞2名受賞辺りから浮かれ気分が出て来た様だ。
北鮮に振り回される日本
ブッシュと金正日がほくそえむ日本の混乱10月23日

 拉致事件被害者五人が一時帰国しているが、予想した通りの言動に失望する
関係者の焦りが報道された。一つ覚えの様に繰り返される北鮮バッジの件は置
くとしても、帰国者の立場を再認識する思い遣りが希薄だ。寺越さんの振る舞
いで判る様に、北鮮に伴侶や家族を人質取にられた上での一時開放なのだ。
当局の指導による口裏合わせは当然だし、横田めぐみさんにしても伴侶は北鮮
人で、DNA鑑定で実子とされた「キム・ヘギョン」も北鮮人だ。

 「二夫婦」が北鮮に残して来た子供達だが、手続き上は北鮮籍と成っている
筈だ。拉致された結果で北鮮で子供をもうけたのだから、子供達は日本人とさ
れるべきと云う意見は尤もだ。問題は子供と云っても夫々が成人かそれに近い
年頃である事だ。北鮮人としての意識を持ち、立場や恋人があれば日本側が期
待する様な意識を持つとは限らない。曽我ひとみさんの夫は亡命米兵と云われ
て、北鮮で宣伝活動の様な事もした為か、米政府が犯罪人として扱っていると
云う。身柄の引き渡しも予想される日本への入国を決断する可能性は如何だろ
うか?

 洗脳とまでは断じないが、今回帰国した五人は相当に教育成果のあった模範
囚なのだろう。こう成った責任が本人に無いのは言うまでも無いが、蓮池さん
辺りには戴けない振る舞いが散見される。然程気安い間柄とも思えない人達に
対して、誰彼構わずに頭を叩いたり撫でたりするのは見苦しい。私は帰国当初
の浜本富貴恵さんが明る過ぎたのは、これまでの反動と喜びや虚勢かと思って
いた。如何もそればかりでは無さそうで、半ば北鮮人に成り掛かっているのか
或いは北鮮への迎合が過剰なのかは判らない。

 蓮池さんの兄や浜本さんの父親が言うには、「五人を北鮮に返して仕舞えば
二度と戻らないかも知れない」「帰国させずに子供達を日本へ呼び寄せろ」と
の事だ。これは正論と思うし、相手が北鮮ならではの現実性がある。然もここ
へ来て北鮮が、「子供達の11月中の帰国は認めない」と言い出した。詳細は
不明だが、人質外交である事は否めない事実だ。唯、帰国させられない理由が
子供達自身が望まないとか、一時帰国中の「親達」が望まないと成れば、事は
難しく成って仕舞う。既述の様に近い将来、子供達に恋人や伴侶が出来たり、
「先ず先ずの」社会的立場が保証されたりすれば、一家揃っての帰国は更に困
難に成る。

 少し前に聞かれた「拉致されたのだから、家族も含めて強制的にでも連れ戻
せ」は、流石に声が小さく成った。帰国者の北鮮に残された子供達は、中学生
位の年頃から21歳までの難しい年代と言える。一時帰国者達を北鮮に送り出
さないと云うのは分かるが、子供達や伴侶を強引に呼び寄せる事は慎重に考え
ねば成らない。浜本さんの父親達が言う様に、小泉首相を始めとした政府の言
い草で、「被害者と家族が決める事」と云うのは何とも責任逃れに聞こえる。

 しかし、地元や「友人」達の対応も極めて疑問に感ずる。人寄せパンダでも
あるまいに、連日の歓迎行事と友人の来訪は如何か?水入らずに成れないから
との理由で逃避した先の温泉にまで、押し掛けるマスコミも阿房過ぎる。私は
一部の友人達の振る舞いを「青年会議所的」に見えると評したが、説得も良い
加減にしないと、己が願望の為に家族団欒の場機会を奪うだけだ。
単にテレビに映りたいと取れる風な連中も散見され、人生最大の決断を迫られ
ている被害者達の足を引っ張るのは程々にするべきだ。連日の訪問と歓迎行事
は、単なる馬鹿騒ぎにしか見えなくなって来た。
家族達の決断10月25日

 北鮮に引っ張られ気味だった拉致事件関係者の「帰国」が、浜本さん等家族
の強い要望で一転した。一時帰国中の五人はこの侭留まり、北鮮に残る家族を
「定住」含みで呼び寄せる事になった。蓮池、奥土、浜本の3家族が、この侭
帰国させたら二度と戻らないかもと危惧したもの。背景と問題点は以下の通り。

@日長国交正常化交渉の始まる前に、帰国中の五人の許へ北鮮に残る家族を呼
び寄せる事を要望した。これに対して北鮮が「11月中は学校行事が忙しく、
来日は無理だ」等、理由に成らない返答を返した為だ。他にも被害者や北鮮に
残る子息達を、外交交渉の材料にする意図が見られた為もある。


 以前からそして今も拉致事件を、自己の宣伝材料に使いたがる政治家達が居
た。今回、一連の関連報道を見る限りでは、平沢勝栄代議士の論が一番まとも
に思える。寺越さんの事例を見ても帰国者の言動を見ても、北鮮に残した家族
を慮って自由にものが言えないのは明らか。何が起きても不思議ではない北鮮
相手で、帰国中の被害者を返した場合に二度と帰国出来ないと危惧するのも無
理は無い。裏目に出る危険もあるが、他に有効な策があるとも思えない。

 万が一に悪い結果が出ても、日本で待っていた家族達を責める事は無理だろ
う。年老いた父親達が言う様に、小泉首相や政府が「ご家族、ご本人のご意向
を尊重する」と言うのは、難しい外交判断を被害者や家族に押し付けるもの。
悲壮な決意で声を上げた家族に、政府は真摯な対応で応えるべきだ。朝のニュ
ースで腹が立ったのは、小泉が例の調子で「ご本人達の意向を尊重・・・」な
どと、一連の醜聞国会で見せた他人事の様な態度だった事だ。阿房の一つ覚え。


A家族会と政府は在北鮮の「家族」全員の帰国を言う。残留家族は北鮮籍で在
っても、元来は拉致犯罪の結果での北鮮籍だから問題は少ない。この辺りは日
本の家族が言うところの「現状復帰」で通る。しかし、横田めぐみさんの遺児
と伴侶、曽我ひとみさんの伴侶たる元米兵は、望んで渡朝した者や元々の北鮮
人である。特に元米兵の場合は米当局が逮捕するとしていた「犯罪人」。


 平沢勝栄代議士曰く「米政府には話すが、遠い昔の事で時効」との見方も出
来るが、北鮮の色に染まったであろう元米兵が簡単に来日するか?めぐみさん
の遺児であるキム・ヘギョン嬢は来日の可能性はある。しかし恐らく政略結婚
と思われる伴侶は如何だろうか。遺児が日本定住と成れば、血の繋がりの薄い
横田夫妻が北鮮の家庭を引き裂く結果とされて仕舞う。「悲嘆に暮れる××さ
ん」などと宣伝材料にされはしないか?また、家族分断には国内からも疑問の
声が湧き上がる事が予想される。


B24日のニュースで地村保志さんが、「発言を彼是と憶測されて困る。諸事
情を考慮して欲しい」旨を話した。この人は一見して栄養不良や疾病を疑える
程に苦労の跡が見られる。簡単に人質と言っても、死亡とされた者が本当に死
んだか否かは未確定。日本人妻や他に知られざる人質の存在も否定出来ない。
現時点での詮索は勿論、回復後の事情聴取も一筋縄では行かないだろう。自分
等だけが助かった後に、残された人を慮らぬ言動はしないのではないか。


 警察の事情聴取はにべも無く断られた様だが、個々人の責に帰さぬ事で余り
無理押ししない方が良いと思う。何にしても未確認事項が多過ぎるのだから、
急がずに済む事は時期を見て行えば良い。それにしても誰か主体か不明の歓迎
行事や、物見遊山的な取材や訪問は良い加減でやめたら如何か。


C田中真紀子騒動で外務省の伏魔殿振りが露呈、瀋陽事件等で世間離れした実
相が明らかに成った。結果として五人は定住の方針だが、諸事が進まなかった
裏には、北鮮と帰国日時を約束した外務省との都合があったと云う。10月2
8日頃の帰国(北鮮への)を北鮮と約束したのが外務省。その約束があるので
被害者達は一旦、北鮮へ戻って欲しいと考えていた様だ。拉致犯罪国と約束も
信義もあろうものでは無いが、世間離れした風貌揃いと云い、この伏魔殿を何
時まで放置して置くのだろう。

可笑しくなった拉致事件10月26日

 悲喜が分かれた今回の「一時帰国」が、政府外務省などの対応で更に混迷し
ている。配慮の足りない報道や地元の対応は、解決に関わる運動や家族会内に
不要な波紋を招く危険がある。

@被害者達の10月末の北鮮へ「帰国」する約束を反故にした為、北鮮との信
頼関係が揺らぐとの意見がある。一見するとこれは奇妙な理屈であり、犯罪人
との間に信頼関係とは何だと思う。よくよく考えるとこれが無視出来ないとこ
ろが、北鮮のしぶとさと我が国政府の外交下手だ。但し、一時帰国者達を北鮮
に返さないとの決断は良い判断だと思う。万一に不本意な結果が出たとしても。

A横田さんの孫に当たるキム・ヘギョン嬢を、横田夫妻や政府は日本へ招くと
言う。これは可也困難に成ったのではないか?めぐみさんの夫は正体不明だし、
孫本人の意思と人権もある。支援などを引き合いに出したとしても、先行の一
時帰国者が事実上、定住する運びと成った事からも北鮮が渋るだろう。
先にも述べたがキム・ヘギョン嬢と、元米兵ジェンキンス氏の北鮮に於ける家
庭を壊す事に成りかねない。全ては北鮮と、対応の遅れた日本政府の責任だ。

B一方で死亡とされた人達の家族は遣り切れなさが募る。テレビでは連日、蓮
池夫妻と地村夫妻そして曽我さんが出て来る。第三者が本人達を彼是と言うの
も難だが、本人も報道も地元も少しはしゃぎ過ぎと思う。解明に繋がる事には
殆ど黙し、他の家族からの質問にも素っ気無い。

 増元照明さん等が言う「死亡宣言された家族が忘れられている」とは、政府
に対する怒りであると共に肝心な事は語らずに、他の場面でははしゃぎ回る帰
国者へ対する苛立ちもあるだろう。24年間の北鮮生活に全ての原因があるの
は間違い無く、責任は北鮮にある事も間違い無いのだが。
拉致報道を巡って批判続出10月27日

 朝日新聞やテレビ局と毎日新聞が独自に行った、キム・ヘギョンさんへのイ
ンタビューが批判されている。内容に踏み込み過ぎている点がある事や、取材
に至る経緯に北鮮を有利にする要素があるとの事。祖父母に当たる横田夫妻が
強い不快感を示した他、蓮池さんの兄や有本さんの父が疑問視している。曽我
ひとみさんの関係者は、ひとみさんが涙を流して視聴していたと語る。報道を
見た他の被害者達の反応は特に無いと云う。

 他局の報道では「北鮮の代弁者に成ってしまった」とか、15歳の娘が単独
で取材に応ずる訳が無いから、北鮮に政治利用されてしまったとかの批判が幾
つかあった。時期的にも配慮が足りず、日朝会談にも悪影響を与えるとの事。
私は番組を見て居らず、未だフジテレビの説明も見て居ないので何とも判断出
来ない。繰り返し批判しているのが以前から、今回の取材団の一員たる朝日新
聞と犬猿の仲である日本テレビなので、これだけで判断するのは拙速だ。フジ
テレビの説明を見る必要がある。また、何かと批判に走って自己の不出来を糊
塗する風潮も疑問だ。
見苦しい読売テレビ10月29日

 フジテレビ10月25日の放映を巡って、読売(日本)テレビ挙げての、フ
ジテレビ等に対する非難が見苦しくなって来た。テレビ放映の件は反対意見が
賛成を上回っており、拉致被害家族の意見も同様と思われる。配慮が足りなか
った点はあるし、時期が悪かったとも言える。読売グループが毎日新聞、朝日
新聞との間には、強い軋轢がある事は誰もが知るところだ。特に朝日新聞と読
売新聞の中傷合戦は児戯に等しいものだった。読売が曝け出した今回の醜態は、
これまでの恨みを此所ぞとばかりに晴らすかの様だ。

 フジテレビは既に釈明しているし、先の報道に肯定的意見もある。取り繕え
ば何でも良しでは無いが、関係家族達や否定派のゲストを集めて、同じ事を繰
り返して非難するのは扇動行為にも見える。北陸など各地から中継する女性ア
ナウンサーまでもが、ほぼ同様の語り口なのは笑って終う。普段から舌鋒鋭い
平沢勝栄代議士が殆ど非難しないのは、この辺を疎ましく感ずるからか?己が
執念で、不和を醸成して如何するのか。


 社民党(旧・社会党)の御人好し振りには何度か触れたが、目を吊り上げて
執拗に罵る保守党の小池百合子も如何かと思う。この代議士は土井たか子を上
回る得票率を狙ってか、同じ選挙区から立候補した経緯がある程、ライバル意
識が強い様だ。この場合も他の毒舌議員は然程の土井批判はしていないので、
熱心振りが際立っている。全体を観ると、陽の当たらぬ立場で燻っていた人物
が、格好の機会とばかりに弁舌を振るっている様だ。拉致事件の政治利用は慎
んで欲しい。

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