OK Works 1 (1973-1978) | Home

OTOMO KATSUHIRO on Magazine

短編「ハイウェイスター」

単行本『ハイウェイスター』収録の「ハイウェイ・スター」は、『漫画アクション増刊 1976年9月1日号』に掲載されました。一つ前の作品は、その余りにもリアルで無残な表現で衝撃を与えた「犯す」。しかし今度はうって変わって「痛快カーアクションマンガ」とでも呼べそうな、非常に読みやすい作品となっています。絵柄も硬質なタッチがやわらかくなり、「劇画」と「マンガ」の中間的なイメージの画面となっていることも、それまでの印象と大きく異なるものです。後に『文藝別冊 総特集 ちばてつや』のインタビューの中で、この作品から「わかりやすいマンガを描くことを意識した」と語られており、意図的な路線変更だったことが示されました。またこのことは、現存する最古のインタビュー掲載誌『東京情報 '78年12月号』の中でも「(傷天などと比べハイウェイスターが軽快な作品で驚いたというインタビューアに対し)あのあたりから、話のふくらみを展開させていけるようになった」という発言があり、リアルタイムでも作風の変化を意識していたことが窺えます。
 作風、絵柄的な変化と共に、作中でのお遊びも始まりました。『文藝別冊 総特集 いしいひさいち』でのインタビューで、いしいひさいちを知ったのが、アクション編集に原稿を届けた後に貰った「Oh! バイトくん 2巻」だということが語られています。その本は1975年発行なので、大友克洋が読んだのは1975〜6年なのでしょう。そうすると、作中で女の子が被っている「中核」と書かれたヘルメットは、「バイトくん」の影響ということもあるかもしれません。また、車体に描かれた「FIRE-BALL」の文字は、タイトル「HIGHWAY STAR」と共に、ハードロック・バンドDEEP PURPLEの曲名からとられたものです。また、主人公が埼玉県警なのは、この作品が描かれた時に大友克洋が埼玉県の南浦和に住んでいたためと思われます。
 さらに、その作中の女性は、当時まだ出会って間もない頃だったと思われる、後の大友克洋夫人がモデルです(『ジャストコミック '82年3月号』掲載「奥様インタビュー」による)。マンガ家で編集者で評論家の飯田耕一郎氏は、大友論を載せた『耳のない兎へ』の表紙に、冒頭でヒロイン的女性が「野グソよ」と入っているコマを引用して大友克洋の感覚が普通でないことを表現しています(恐らく)。が、その女性に実在のモデルがいること、しかもそれが彼女である事を加味すると、その「普通でない感覚」はより一層際立つのではないでしょうか。

この作品は上記雑誌に掲載された後、『漫画アクション増刊 1979年1月5日号』に再録されました。

この時期のアクションは入手困難です。

漫画アクション増刊 1976年9月1日号 特集 ギャンブル

Weekly Action Supp '76/9/1
タイトル作家頁数
グラビア:小泉れい子 4c撮影:長町凌志・構成:永沼濬吾4
匠シリーズ 予想卿 2c岩本久則4
GAME ON THE ROCK 2c4p佐多みさき29
HIGHWAY STAR大友克洋24
嗚呼!オリンピック室戸みさき4
最終回という始まり福山庸治23
回転ロード八作昇2
雀狂哀歌 木牌の音が聴こえる(エッセイ)石井清司1
創刊10周年記念特別企画! キャラクターでつづる 漫画アクション10年史 2c編集部7
夏嵐 2c扉村野守美20
兵隊さんの獄中記二階堂正宏4
国際線スッチャデスすぎやまチヒロ4
世紀のサラリーマン極津家平助!おづ賛平4
’76年版「海の美女」型録 2c編集部5
濡れたパイパン 2c3p作/依田功、画/間宮青児&加藤和25
ギャンブル適性診断企画構成/湯沢純生、イラスト/風見ふう4
ポーカーフェイス宮腰義勝24
天愚堂閑々録作/雁屋哲・画/神田たけ志24
はめはめゲーム 2c笠間しろう8

単行本『ハイウェイスター』収録の「HIGHWAY STAR」が掲載されています。この号の特集は「ギャンブル」で、そのテーマに沿った作品として「HIGHWAY STAR」が描かれたものと思われます。アオリは「スピードに賭けるのは趣味と実益とおれの商売さ!!」。
 雑誌と単行本では、ネームの細かい部分に至るまで変更はありません。

この号では創刊 10周年を記念して、漫画アクションに登場した作品を、キャラクターを中心に紹介しています。古い号の表紙や作品リストがあり、資料価値が高いです。また、福山庸治の作品は単行本未収録。単行本に収録されている作品で最も古いものと同時期で、絵柄は山上たつひこ風。


漫画アクション増刊 1979年1月5日号 特集 愛

Weekly Action Supp '79/1/5
タイトル作家頁数
グラビア:荒木経惟の写真小説 同級生愛 4cモデル:沢田多絵、篠原ジュン・撮影:荒木経惟4
わが純情 聞いちゃんしゃい 2c4p長谷川法世25
漫画ジャーナル いくつかの愛の逆説 (エッセイ:最終回)川本三郎2
特集/愛永美ハルオ1
ポルノ パートI石井隆21
HAPPY LOVE室戸みさき6
誇り高き男福山庸治25
コペ転ドラマ お菊その愛 (エッセイ)上杉清文2
特集/愛紫 兆子1
’78 ヤブニラミ アイドル大賞 2c編集部4
HIGHWAY STAR大友克洋24
白い虚塔米川功真5
人をまだ愛しもせず…… (小説)田槇道子2
特集/愛ウノカマキリ1
顔振り峠 2c4p作/三木孝祐・画/三枝由里29
そのエネルギーをロケットの噴射力にして未来空間に突き抜けられるような 愛 (エッセイ)白井佳夫2
愛の告白二階堂正宏1
長い夜三山のぼる26
毒羅魔愚乱 -どぐらまぐら- '78作/北河正郎・画/松森正25
愛の三重奏 2c4p岩本久則4

単行本『ハイウェイスター』収録の「HIGHWAY STAR」を再録した漫画アクション増刊です。アオリは「読者の圧倒的な要望に応えて再登場の話題の傑作」。確かに話題の傑作で、単行本の出ていなかった当時としては再録の要望はあったのだと思いますが、それよりも、この号のすぐ後に出る『アクションデラックス No.1』に「FIRE-BALL」が載るので、その宣伝の意味が大きかったのではないかと思われます。作中の車には「FIRE-BALL」と描かれていますし。
 初出誌からの変更は、アオリのみです。

福山庸治の作品は単行本未収録。上記1976年の作品から随分絵が変わって、大友克洋の影響をかなり受けている時期のものです。


OK Works 1 (1973-1978) | Home

This page last modified at .