語る「万華鏡」

(「毒のたわむれ」に書き足す)

毒のたわむれ(どくのたわむれ)

項目名毒のたわむれ
読みどくのたわむれ
分類ミステリ小説

作者
  • ディクスン・カー
  • 公的データ
  • ……ぼくはその時、どんな動機であんなことをする気になったのか分からない。思わず知らずやってしまった所を見ると、おそらく昔のおぼろな衝動に促されたからだろう。昔トム・クエイルとぼくが使った合図のノックである。コツコツと二度ゆっくり叩いてから、手早く三度。ぼくは図書室のドアに向かってそうしていた。
    「誰だ?」と詰問する声がした。
    ぼくはドアを押し開けた。クエイル判事が火先にを赤く染めて立っていた。血の気のない指がダラリとたれて、ビクビクと痙攣している。埃まみれのあの愚かしい大理石像が、判事の後ろから目をぎょろつかせているように見えた。判事が言った。そのが蒼白だった。
    「絶対そんなノックをするんじゃない、分かったな? 絶対にするんじゃないぞ!」
     不可能犯罪の巨匠カーが描く怪奇味と神秘感に満ちた雪の夜の連続毒殺事件!
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