項目名 | おろち |
読み | おろち |
分類 | コミック |
作者 | |
公的データ | 激しい嵐をさけるため、おろちが立ち寄ったお屋敷。そこには美しい姉妹がふたりきりで住んでいた。姉・エミ17歳、妹・ルミ16歳。だが奇妙なことに、ふたりとも18歳になることを異常なくらい恐れていた。身の毛もよだつような、恐ろしい血筋の家に秘められたナゾとは…? 第2話/骨 第3話/秀才 その少年の名は「立花優」。頭の良い父親と、やさしい母親のもとに生まれた優は、1歳の誕生日の夜、自宅に侵入してきた強盗に首筋を刺されてしまった。一命は取り留めたものの、その日を境に父は無気力になり、母は怒りっぽくなった。母から勉強ばかり押しつけられ、友達も出来ないまま成長していく少年の人生を、おろちは興味深く見守り続ける… 第4話/ふるさと 第5話/鍵 第6話/ステージ ひき逃げが原因で父親を失った3歳児・佑一。事件の一部始終を目撃していた佑一は、子供向けTV番組に登場する“おはようのお兄さん”田辺新吾が犯人であると証言。おろちが傍聴席で見守る中、犯行を否認する田辺の裁判が開かれるが… 第7話/戦闘 第8話/眼 盲目の少女「田口恵子」。工場が建ち並ぶ街の社宅で暮らす彼女は、父親と、彼女を慕って遊びに来る少年・さとると交流するだけのつましい生活を送っていた。目の見えない彼女を心配し見守り続けていたおろちだったが、ある日、父の帰りを待つ恵子のもとに、助けを求めてひとりの男が駆け込んで来て… 第9話/血 |
感想文等 | 自分がどうしてもそうした素晴らしい存在になり得なかったことからくる、反撥、妬み、それ見たことかという溜飲の下がる思いがそうさせるのか? だがそれで説明の付くものでもない。神聖な女性が穢され、淫猥な存在に貶められる変態的な文章を読んだときに感じる異様な興奮は、決して溜飲が下がるといった程度のレベルのものではない。 「聖なるものの堕落」に『興奮』を感じるというのは、特に性的な堕落、淫らさを見せるということに限るわけではない。 楳図かずおという怪奇・恐怖マンガで有名な人がいるけれども、この人の、少なくとも或る時期以降のマンガは、絵的な恐がらせさよりも、ドラマや心理描写の物凄さに真骨頂があった。 有名な「漂流教室」にしても、単に怪虫や未来人などの怪奇なシーンだけで今に至るまで傑作として読み続けられているはずがない。 この作家の、私の最も支持する作品が「おろち」という連作シリーズだ。おろちというのは、連作に登場する美少女の名前で(!)、様々なドラマが発生するとき、あるいはその傍観者として、あるいはかすかな接触者として、あるいは触媒として、機能する。 この「おろち」の最終エピソードが、私を特に惹きつけるのは、それがやはり「聖なるものの崩壊」エピソードだからだ。 楳図作品にはミステリ的要素が多い場合があるので、あまりネタバレはしたくないのだが、あえて書いてしまう。 このエピソードでは、或る犯罪が描かれるのだが、その真犯人は、作中「なんと神々しい」「優しく気高い」というように形容され続けた老女なのだ。 そういうネタだけなら、ミステリにはむしろよくある話だ。「一番疑わしくないヤツが犯人」という決まり文句すら在る。 しかし、この作品では、最後、この「神々しい」「気高い」彼女は、『ブタよりも卑しい』と罵られ、『最後まで口汚くわめきながら』のように描写されるに至る。その部分で、実は私はほとんど性的なほどの興奮をすら感じた。 相手は何しろ老女なのだから、それを対象としての、本当に性的な興奮なわけではない。ここでは、やはり、「神聖なものの崩壊」に対して、私は興奮し、それが性的な感覚をも惹起しているのだろう。 なぜそうなのか。どうして神聖なものの崩壊にそこまで感じなければならないのか。これはわからないことだ。(おっぺ) |