項目名 | また逢う日まで |
読み | またあうひまで |
分類 | 特撮 |
作者 | |
公的データ | |
感想文等 | 「改心ビーム!」とかで悪人が毎回心を入れ替える作品なら能天気に観ていられるだろうが、「ソルブレイン」では真面目にテーマに向き合ってしまった。 結果、「メサイア編」のような掟破りのストーリーも出現し、さながら『ヒーローの出る30分の刑事ドラマ』の様相を呈しても来た。 特筆すべき点として更に、前作の主人公がサブキャラクターの役割で、しかもパワーアップして「レギュラー出演」し始めた、これもあげられるだろう。「ウインスペクター」隊長香川竜馬が、「メサイア編」でゲスト出演したのち、第34・35話の「新英雄九州へ!」前後編で、新たにナイトファイヤーとして登場、その後はずっとソルブレインと共に日本で活躍し続けたのだ。 これもつまり、あまりにテーマ的に重くなったがための、『梃入れ』だったかもしれない。竜馬の存在が「メサイア編」のときのように、大樹にとって自らの立ち位置を定める指針となることは、二度とはなかったのだ。 だが、「新英雄九州へ!」というエピソード自体には、竜馬の新ヒーローとしての復活そのものよりも、重要な意味が存在した。 「ウインスペクター」では、第一話で逮捕した犯人が出獄してさらなる犯罪に走る最終回があり、その結果「人の命を救う」ウインスペクターから「人の心も救う」ソルブレイン誕生へと繋がった。 ソルブレインは、ウインスペクター同様、特定の敵役や組織などはなくドラマを紡いできたのだが、この九州編において1人の「犯行者」とまみえることとなり、彼・高岡隆一こそ、その後幾度となくソルブレインの前に現れ、ついに最終の対峙者となった人間であったのだ。 高岡を「犯罪者」と書かず、「犯行者」と書いてみたのは、かつてのメサイア同様、高岡は「被害者」であり、それが故の「復讐者」だったからだ。 高岡が九州編で試みた犯罪は、自分の両親を死に追い込み、幸せだった自分たち家族から全てを奪った怨敵への復讐だった。 だが、その復讐はソルブレインとナイトファイヤーによって阻止された。この時から、高岡の復讐心は方向を歪ませ、ソルブレインへも向けられるようになったのだ。 秀でた頭脳で産みだす超科学により、高岡は様々な形でソルブレインに挑戦し、大樹たちを苦しめた。高岡の復讐心は尽きることが無いかに見えた。 最終編三部作で高岡は、自分と同じに「被害者」である青年を手駒に使い、新たな挑戦を突きつけてきた。その中で、しかし、利用された青年は漏らす。「もういいんだ。昔のことだ。もう忘れたい。ずっと恨み続けていくのは、つらいんだ」 怨念も憎悪も復讐心も、それは自分へ向かう呪いでもある。 だが、高岡だけは決してそれらを失わない。いや、むしろ彼の憎しみはいや増すばかりに見える。 復讐のことごとくがソルブレインに阻まれているからか。しかし、それだけとも思えない。なにか高岡の「心を救う」ことはできないのか――正木は、決して根からの犯罪者ではないはずの高岡が犯行を重ね続けることに不可解さを感じる。 そして、明らかになる真相。高岡は、復讐心が薄らぐことを恐れ、自らをコンピュータの怨恨のプログラムに繋ぎ、「もうやめよう」という『弱い心』を常にデリートし続けていたのだ。復讐心だけを再生産し続けていたのだ。 対決の場で、正木は、高岡に接続されたコンピュータを破壊して行く。怯え絶叫する高岡。 「やめろ! やめてくれ! 復讐心を持ち続けられなくなってしまう! 復讐を忘れたら……私が私でなくなってしまう!」 嗚咽しながら、高岡は自らの命を絶っていく。失われて二度と戻らない家族を思いながら。 やはり、根本は「メサイア編」と同じなのだ。ヒーローは、主人公たちは、事件を終息させ得ても、「人の心を救う」ことなど果たしてできるのか。「メサイア編」では、辛うじて大樹の純粋な思いがメサイアに届いた。しかし、この最終回において、ソルブレインは高岡隆一を救うことはできなかったのだ。 正木は、高岡の骸を前に、愕然と言う。 「高岡……わがソルブレインの使命は、人の命のみならず、その心をも救うことだった……だが、高岡、とうとうお前だけは……」 あまりに無謀な、ファンタジックなテーマを設定し、苦闘し続けた「ソルブレイン」。それはかつてない挑戦だったと思う。 失敗だったのかもしれない。後続の「エクシードラフト」は、もっと基本的なレスキュー・ポリスに回帰したからだ。 成功だったのかもしれない。レスキュー・ポリスシリーズはちゃんと「エクシードラフト」に続いたし、それに飽き足りなかったように神と悪魔の最終戦争にまで踏み込んだのだから。 だが、失敗であれ成功であれ、「ソルブレイン」は他に類を見ない形でヒーロー番組を全うした。「レインボーマン」や「ジェットマン」や「仮面ライダー龍騎」などのように、「特救指令ソルブレイン」もまた、忘れ得ない物語の一つに数えられるだろう。(おっぺ) |