感想文等 | この話はあまりに有名なのだけど、だからといって一般の人が知っているというわけでは全然なく(笑)、いわゆる特撮ファンとかウルトラファンとか、そういう趣味の人にとって有名なだけなので、とりあえず説明から。。。 普通、ウルトラマンというのは、宇宙人か怪獣が悪巧みをしたり単に暴れたりしていて、まずは地球人が作り上げた地球防衛軍みたいなのが戦いを繰り広げ、悲しくも太刀打ちできず敗北し、すると、たいていこの防衛軍の隊員として身をやつしている主人公がウルトラマンに変身して、無事に怪獣やら宇宙人やらを倒す。そういうパターンでできている。 このあたりは、暴れん坊将軍とか大江戸捜査網とか、もちろん水戸黄門とか遠山の金さんとかと全く同じで、つまりは時代劇のパターンと共通なのだけど、このパターンアクション以外のドラマ部分がどれくらい面白いかで、物語としての位置づけが決まってくる。そしてまた、ドラマ部分はどうあれ、このパターンアクションを崩すと、視聴者からクレームが付いたりすることもある。。。水戸黄門がかつて印籠を出さなかったら、「アレが出ないと。。。」と言われて次からは二度と印籠を出さない話は作らなかったそうだ。石坂浩二が黄門になっている今のシリーズについては新機軸で行っているそうだから知らないけれど。 「ウルトラセブン」とか、時代劇でも「新必殺仕置人」とかは、このパターンアクションというものをどっちかというとあんまり顧みていなかった気もするのだが、それはともかく。。。 この「帰ってきたウルトラマン」は、児童向け特撮テレビ映画としてのパターンアクションを貫いた「ウルトラマン」の新シリーズであって、その点、「ウルトラセブン」のようにはパターンを崩してはいなかった。ドラマ的な部分については、ファースト「ウルトラマン」に比べて、主人公の人間的な未熟さやら何やらを描き、だいぶ違うものになっていたのだが、それでも「セブン」のような異様なSFドラマとは違っていた。 それが、この回、「怪獣使いと少年」は、もうとんでもない異様な世界を展開してくれていたのだ。 パターンアクションはきっちり描かれている。ちゃんと怪獣は出てきて、そしてウルトラマンが出現し、怪獣と戦いこれを倒すのだ。しかし、それはほんの数分の話であり、地球防衛軍の出番すらない。出てくるのは防衛軍MATの隊長だけで、しかも、なぜか巡礼か何かみたいな姿で出てくる。 物語は。。。 掘っ建て小屋みたいなものだけがぽつりと立っている空き地っぽいところで、1人の少年がいじめられている。彼は、親もなく、ずいぶん薄汚い浮浪児といった風体で、なぜか空き地をせっせと掘り返しているのだが、そんな異端児を近くの少年たちが迫害しているのだ。その迫害ぶりや、悪口や殴る蹴るといったレベルではなく、穴に生き埋めにして泥水をぶちまけたり、お茶の間で家族揃って見るウルトラマンとは思えないかなりなものだ。 通りかかったレギュラーの少年が見かねて止めると、「こいつは宇宙人なんだ」と口々に言う。だからやっつけているのだと。主人公であり、実はウルトラマンが乗り移っている郷秀樹隊員がやってきて、彼が宇宙人ならMATが対処するからいじめたりするのはやめろと言う。 いじめっ子たちはいったん引き上げるが、郷たちがいなくなるとまたやってきて、獰猛な犬をけしかけたり、再び迫害を始める。 町の大人たちも同様であり、どうもあの子供はうさんくさい、やっぱり宇宙人じゃないのかと、少年がパンを買いに来ても売ろうとはしない。 やがて、郷隊員は真実を知る。少年は宇宙人ではなく、孤児の地球人であり、彼が掘っ建て小屋の中にかくまっている老人こそが宇宙人だったのだ。 老人は、地球の調査に来て少年と出会った。少年は怪獣ムルチに襲われていたところで、老人は超能力で怪獣ムルチを地中に封じ込め、少年を助けた。しかし、地球の汚れた大気のため、抵抗力のない老人は病み、怪獣を封印した際、一緒に地中に埋めた宇宙船を見つけることもできなくなっていたのだ。 少年は、宇宙船を掘り出し、老人と一緒にこの汚れた地球から脱出しようとしていたのだ。 郷と少年、老人が話していると、町の人々が手に手に武器を持って小屋に押し掛けてくる。拳銃を持った警官も一緒だ。 「その子供は宇宙人だということがわかったんだ! 犬を念力で爆発させて殺した! 引き渡せ! MATのくせに、宇宙人をかばうのか!?」 小屋から出てきた郷と少年に詰め寄る人々。 「待て、待ってくれ! 宇宙人は私だ! 私なんだ! その子は私を守ってくれていただけなんだ!」 よろけながら小屋から出てくる老人。 その老人の病み衰えた異様な姿にギョッとする人々。警官が思わず発砲する。 崩れる老人。絶叫する少年。呆然と立ちつくす郷隊員。 老人は死んだ。 すると、老人の能力で封印されていた怪獣ムルチが地中から復活する。逃げ惑う人々。 「助けてくれ!」 そんな人々の中を、郷は呆然としたままただ歩いている。 (勝手なことを言うな。老人を殺したのはあんたたちじゃないか。ああ、あの怪獣は、まるで老人の怒りが乗り移ったようだ。。。) そこへ、なぜか巡礼姿のMAT隊長が現れ、郷を叱咤する。 「郷、何をしているんだ!」 「。。。。。。」 「町が大変なことになってるんだぞ」 はっと我に返る郷。 変身し、ウルトラマンとなり、怪獣ムルチをあっけなく倒す。 事件が終わり、そしてまた少年は空き地を掘り返している。 画面には少年だけが映り、そして、声だけで、MAT隊員と郷が会話を交わす。 「一体いつまで掘り続ける気なんだろう?」 という隊員の声に郷は返す。 「宇宙船を見つけるまではやめないだろうな。彼は地球にさよならが言いたいんだ」 そして終わる。。。
これはとてもわかりにくい物語だ。少なくとも、私なんかには全くわかりにくい。 ただ、こういう物語を、直接リアルタイムで観ていると、どうもあんまり、普通のホームドラマとかトレンディードラマとかを、見たい見たいと思う気持ちにはならないのだった。。。これもトラウマといえば言えるのかもしれない。(おっぺ)
本当に悲し過ぎる結末だと思う。だからこそ記憶に残る作品なんだけど。
同じ日本人が偏見だけで少年をリンチにかけて殺そうとする光景・・・ そんな少年を助けるために病んだ体を晒して身代わりに殺される宇宙人・・・ そしてその怒りを体現するかの様に群集に、化学工場に向かって炎を吹くムルチ・・・ あの時ムルチは地球を汚している原因に向かってたのだ。 汚れた空気に体を蝕まれたと金山=メイツ星人は言っていたが汚れていたのは空気だけじゃない! ・・・・・・子供心にそう思った、そしてそれは今も変わらない。
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