語る「万華鏡」

(「ハッピー・バースディ」の一部削除)

ハッピー・バースディ(はっぴーばーすでぃ)

項目名ハッピー・バースディ
読みはっぴーばーすでぃ
分類ホラー小説

作者
  • 新井素子
  • 公的データ
  • あなたが傍にいてくれるからあたしはとっても幸せ。初めて書いた小説が新人賞を取って、ベストセラ−になったのも、あなたが勧めてくれたから。だけどあたしを脅かす、一本の電話がかかってきて-。大学の先輩だった公人と結婚したあきらは、家ではもちろん、仕事でも成功し、幸せな時間を過ごしていたはずだった。だが、たった一瞬の偶然の出会いが、あきらの世界を壊しはじめる。
  • 日刊ゲンダイに掲載された書評です
    「このサイコ・ホラーを書くに当たって、典型的な変質者は登場させたくありませんでした。それに幼児虐待でトラウマを抱えるとか、多重人格とかも。日本の場合、そこまで家庭が壊れていないことも信じたかったし、やはり私が感情移入できるサイコ、それを書きたかったんです」
     99年「チグリスとユーフラテス」で日本SF大賞を受賞してから3年、待望の書き下ろし長編である。現代の社会病理の一つといえるストーカーをモチーフに、日常の中で人の心が壊れる恐怖を描いた力作でもある。
     主人公は30歳を越えたばかりの女性作家あきらと予備校生の市原裕司。
     容姿と男のような名前に、子供の頃から極度のコンプレックスをもっていたあきらは、幸せの絶頂にあった。大学の文学サークルの先輩で、出版社勤務の公人に励まされるまま作家になり、話題の新人賞を受賞。しかも今は公人はあきらの夫だ。
     一方、裕司は自信満々で挑んだ大学受験に失敗、浪人の身。田舎の母親の執拗な電話攻勢にもキレかけていたそのとき、あきらの取材現場に居合わせた裕司は、傲慢なカメラマンと取材記者の態度に、そしてあきらが自分が滑り止めで受けた大学出身であることも知り、憤り、憎悪する。
     やがてあきらのもとに届く「い・い・き・に・な・る・な・よ」というメッセージ。さらに追い打ちをかけるように公人が交通事故死して、あきらの中で何かが確実に壊れ出す……。
    「私、壊れていく女ってけっこう好きです、どこかきれいで(笑い)。でもあきらのように耐えて耐えて自己主張しない女って、実は敵に回すとものすごく怖い、彼女たちはものすごく強い女でもあるんです」
     物語の本当の始まりは、あきらが壊れてしまった後の展開だ。失跡したあきらの裕司への意外な復讐が始まるのだ。そしてタイトルの「ハッピー・バースディ」が意味するものが、怖い。その恐怖の正体は読んでのお楽しみ、である。
    「男性の皆さん、ご自分の奥さまには気をつけてあげないと危ないですよ。せめて家事に割いてる時間分ぐらいは、遊んであげないと(笑い)」
     主人公あきらの体調にシンクロし、地獄の思いを味わったという著者自身の、リアルな恐怖譚。
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