公的データ | 雨が小止みなく降り続いていた。夕闇の、寂びれた旧道ぞいのモーテルへ、若い女が自動車を乗り入れた。女の眼には、何かに脅えた不安の影がちらついていた。その女・・・メアリ・クレインは勤め先の金を拐帯して、フェアヴェイルに住む恋人のもとに逃げる途中だったのだ。だがモーテルの主人、ノーマン・ベイツにやさしく迎えられると、不安も薄らぎ、すすめられるままに、夕食を共にした。ノーマンは今も独身をつづけている中年男。母親が、若い女を毛嫌いして、寄せつけなかったからだ。話を聞きながら、歯がゆくなったメアリは、母親を病院に入れてはどうかとすすめた。とノーマンは激しく否定したのだ。「母はきちがいじゃない!」しかし・・・その夜、彼女の浴室に忍びこんだのは、鋭く光る肉切りナイフをふりかざし、鉛色の白粉を塗った老女だった。・・・・・・(ビッチコック映画原作)
|