感想文等 | まず、目次の構成がプロットの妙を期待させ、これだけでワクワクさせてもらえる。本格ミステリにはこういうのが欲しいんだ、と感じる瞬間なのだ。 そして、期待に違わず進んでいくストーリー。 お子様向けではないと言えるかもしれないが、子供が読んで悪いものだとも思わない。たとえどんなにグロテスクだったりエロチックだったりしたとしても。(尤も、この作品を子供に読ませたいとか、読ませる意義があるとか、そんなふうには思わないが。) また、「神様」についても、これがこのミステリでの設定だというのなら、これはこれで問題ない。名探偵の替わりに神様が出て来た。ただそれだけの、設定上のことだと思えばいい。 だから、あとは単にあのエンディングの謎解きをすればいいだけなのだ。 タイトルの「神様ゲーム」を考えると、最後の『天罰』は、神様鈴木の悪戯的なものであり、『共犯者』はやはり父親だったということもあるかもしれない。実際、父親を共犯者と考えれば解決でき、母親にはクリアできない部分が多すぎるのだ。だが、それならもっと直截的に「神様のゲーム」と付けそうな気はする。印象だけなので、それが決め手になるわけではもちろんないのだが。 先に、いくつかのファクターは検証しておきたい。 ☆鈴木くんが「神様(あるいは何らかの超能力者)」でないとすれば、この『見通す』能力はどこから来ているのか。事件そのものとは全く無関係に、なんらかの情報収集の方途があるのか。それとも猫殺しも含めた一連の事件に犯人側のひとりとして関連があるのか。あるいはもっと単純に、メルカトルタイプの名探偵だとしてしまえばいいのか。小学生であっても、御手洗潔という他の例もある以上、否定はできない。 ☆関連科目として、ミチルの死は「天誅」なのか、あるいは事件なのか、さらには殺人だったのか。 ☆さらに関連科目として、最後の超常的現象も「誰」のどういう仕業なのか。 これらにストレートな解答が可能かどうかは、ひとつには「ラビレンジャー」の轢き逃げがいつ起こされたものかもヒントになる。神様鈴木はラビレンジャーの放送に問題が起こることを予測していた。その問題がレッドとブルーの轢き逃げ事件のことではなく、何か別のものであり、轢き逃げ事件はたまたま合致するように発生したのかもしれないが、それも偶然が過ぎるだろう。神様鈴木の「予測」が轢き逃げ事件だと仮定した場合、この事件の発生が予測より遅いものであれば、もちろんトリックも考えられなくはないが、作品の設定として本当に鈴木くんは神様もしくは超常能力者だと割り切ってしまった方がいいだろう。 もし逆に、轢き逃げ事件がかなり前からのもので捜査中だったとなれば、鈴木くんが誰かから(どこかから)情報を入手することは不可能ではない。 作中の説明だけでは、轢き逃げ事件の発生時期は完全には特定できないようだ。しかし、鈴木くんが「飲酒運転での轢き逃げ」と言っている点に注目したい。「飲酒運転」でのという『原因』については、実際逮捕して取り調べが進んでからでないとわからないことだろう。もし逮捕以前から知っているとすれば、それは「神様」でないのなら、「犯人側」か「目撃者」だ。猫殺しに関しても同様である以上、犯人側・目撃者としてダブるというのはやはり無理がある。 無論、「飲酒運転」の語が出て来るのは事件発覚後のことであり、情報収集能力に長けた鈴木くんがいち早く察知していたとしてもおかしくはない。しかし、もし事件が発生してからかなり経ってからの逮捕なら、すぐに「原因は飲酒運転」となるものなのだろうか。ほとんど現行犯に近い逮捕ならともかく、数日以上経過してのことなら、逮捕された方も極力不注意不可抗力でと済まそうとするのではないか? それとも、日本という国では交通事故による人死にでさえも、酒の上のことだと釈明すれば情状酌量されるのか? まさか。(でも、歩きタバコの火が当たって軽く火傷させられても、こっちが逆に「危ないから気をつけろよ」と言われる国だからな、ここは。そうか、こっちが気をつけるのか。知らなかったよ。というか、最初から人込みで歩きながら吸うのが変じゃないか? 変じゃないんだろうな、きっと。ヴー) あまりにも私の知識が足りないので確実さには乏しいが、逮捕当初から飲酒運転と露見していたのは、現行犯かそれに近いものだったから……としてみよう。あるいは逆に、逮捕まで日数がかかったため、逮捕の時点ではまだ原因が飲酒運転であることまでは分かっていない――即ち、ラビレンジャーに異変が生じた朝、そんなことは誰も知ることなどできるはずはないと。 すると、鈴木くんはやはり神様乃至超能力保持者と考えるのが最も有効な受けとめ方になるようだ。 この仮定に基づくなら、ミチル及びエンディング事件は「天誅」であり、犯人は神様こと鈴木ということになる。そして残された謎は、なぜ父親ではなく母親なのか、どういうロジックあるいはトリックでそれが可能になるのか、ここだけに絞られていくわけなのだ。 主人公の推理では、父親こそミチルの共犯者であり、そのロジックは十分な整合性を持っているようだった。単純に、「だがそれは、母親に当てはめても十分に成り立つことなのだ」というわけにはいかない。 仮に「天誅」が決して神様鈴木の気紛れな悪戯などではなく、真実『真犯人ミチルの共犯者』だったから、とすると、父親だったから可能だったと考えられた全てが、今度は母親にかかってくる。しかし、それを成立させるには、さらに『父親は母親の共犯だった』とでもしてみるしかないだろう。つまり、ミチルの共犯者は母親だったから、「天誅」は母親に下ったが、さらに父親もまた母親の共犯者として事件に介在していた。「天誅」の条件が限定されていたから父親には下されなかっただけで、犯人は憧れの少女、その共犯者は自分の両親、しかも少女と母親はレズ・プレイの関係にあった……というどん底のような「真相」が存在していることになる。 そんな物語がこのレーベルで刊行されていいのかというのは、考えなどしない。それは別の場所でさんざんにでも言うのがいい。 それにしても、仮に父親がさらに共犯だったとしても、それだけでは母親が「真犯人」として成り立つかどうかは難しいのだが。。。(おっぺ)
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