感想文等 | 主水以外の同心が出てくると、加害者側か被害者側かに当然ながら分かれるのだけど、今作ではなかなか「どっち」なのかが定まらなかった。どちらに転んでもおかしくない――そういうムードをもって描かれていたからだ。こんなところをルーティンワークでないと言えるのだろう。 藤岡重慶も仕事人後期ではしょっちゅう出てきて毎回同じような悪党で同じようなキャラクターをやっていたが、この頃はまだパターンでない悪玉を演じさせてもらえていたようだ。こうでないとやはり観ていて面白くない。ああ、また藤岡重慶か、また牧冬吉かと、別にこの人達が大根役者なわけでもないのに、いつもいつもいつも同じ顔で同じような悪玉でしかないので、なんの驚きもドラマもなく、仕事人後期からは本当にほとんど惰性と小さな期待感で見続けていたようなものだ。 藤岡重慶の「必殺」ベストは、決して「必殺まっしぐら!」の向島の元締ではなくて、「新必殺仕舞人」第10話「喧嘩も楽しい河内音頭」での粗野な親父じゃないかと思うのは、向島の元締には何のバックボーンのドラマもないが、後者にはそれがたっぷりと有った、だからドラマが濃密だった、そんなふうに思うからなのだ。 この「非行の黒い館は蟻地獄」での藤岡重慶は、「喧嘩も楽しい河内音頭」には当然及ばないものの、のちのワンパターンな悪玉とは違い、ちゃんとしたキャラクターを持っていた。藤岡重慶の悪役がキャラクターを持っているだけで感銘を受けたというのも何だか淋しいが……(^^;)(おっぺ)
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