感想文等 | 印象の濃淡ということで言えば、「動物園のオリの中」同様にあまりピンと来るエピソードでない。 ひとつには、前回が濃密な中編「階段のむこうには…」だったから、というのがあるだろうし、もうひとつは、私個人が「ダンスして発散する」という行動に経験も関心もない、ということがあっただろう。 グレアムとアンジーがディスコで激しく踊り、その感情の放出の中で、特にグレアムの「殻」が損なわれて行く――これは、のちのちの「トリスタン」でいかにも陽気そうにピアノを弾くグレアムの「前哨戦」なのかもしれないが…… ひとつ記憶に残る部分を挙げるなら、ダンスで荒れ狂ったあと、それを振り返ってアンジーが言うセリフ……「あれは刹那的だ」と――。 あそこ…せつな的だ 離れ小島でひとり遊びしてるみたいだ… むしろ、この評価こそが読んでいた私にもしっくりくるものだった。一過性の、本当に一時の感情の狂奔。それは、酒にしろ、他の何かにしろ、決して「解決」ではないし、読んでいた当時の私には「逃避」にしか思うことさえ出来なかった、だから、このエピソードにはあまり……そういうことなのかもしれない。 そしてグレアムは独りごちている。 ボクはもうボクなんか信じないよ… この言葉は私の中のどこかに、根を据えて居座ってしまっている言葉だ。。。 手を握りあうよりもっと強い助けを… さもなくば手を握る相手もいらない ――いっそすっきりあきらめがつく―― グレアムは、ここで初めてのように認識した。自分に対してさえ捨て鉢になっていても、例えばマックスを「ダシにしていれば」、自分を自分で支えられる。。。 キャプテン・グレアム。。。 そして、グレアムはその認識をずっと引きずっていくことになるのだ。。。(おっぺ)
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