感想文等 | 最近、ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズの最新作「魔術師」が刊行された。「ボーン・コレクター」以来、変幻自在の名犯人と対決を繰り広げてきたリンカーン・ライムの前に、また恐るべき難敵が現れたわけだが、少し盛り沢山すぎで、前作「石の猿」よりは上回ったものの、今ひとつサプライズ等の切れ味は期待に届いていなかったかもしれない。 とはいえ、魔術師――マジシャン、イリュージョニストが敵というのは、こういう名探偵対名犯人型のミステリではやはり読者をワクワクさせるネタであるのは確かだろう。一筋縄ではいかないと、最初から期待できるからだ。 この「魔術師の幻想」は、その魔術師とコロンボの対決編であり、コロンボの頭脳が魔術師のネタやトリックにどう対抗できるのかという期待がまず存在する。実際のところ、普段の犯人(笑)でも十分に名犯人であり、今さら魔術師だからどうだということもないのだが、そこが趣向勝ちというところ。実際の作品を観ると、披露されるマジックやそのネタの面白さが、ミステリとしての普段のコロンボドラマに+αの楽しさを付加している。こういうのがいいんだよね。 詰め手その他はサプライズまで行かなくてそこは残念なのだが、「悪の温室」以来の再登場になるウィルソン刑事とのやり取りなど、ホームズ譚のような楽しさもあって、印象に残る一編には確かになっているのだった。(おっぺ)
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