感想文等 | 警部対警部の対決、そしてラストの証拠の意外さとペーソス。(おっぺ)
(笑)
今回の趣向は、「名警部対名警部」。 「権力の墓穴」の趣向は、コロンボの上司が犯人、というものだったが、これは上下関係とか、捜査内容が筒抜けとか、相手も同じ道のプロだとか、そういう点でのある種のスリリングさが面白みとなっていた。 しかし今回は、そこをさらに進めて、犯人もまたコロンボと全く同じ名探偵であり名警部だったら、、、という部分にある。 しかし、それをそのままやったのでは、どうも「権力の墓穴」の焼き直しにしかならないような感じがする、、、ためかどうか、趣向はさらに趣向を以てメタフィクショナルに変換され、「テレビで名警部シリーズを演じている役者」が犯人というものに落ち着いていた。 そこだけ取ると、なんだか縮小趣向で面白みも半減するようだが、実際の映像作品を観ると、ちゃんとこの「ルーサン警部」役の役者がコロンボ相手に「ルーサン警部として」などという会話・行動をしており、寧ろ芝居がかった趣向の面白さで上を行っていたかもしれない。演じているのがカーク船長のウイリアム・シャトナーだというのもよかったのかも。吹き替えはカークの矢島正明ではなく山城新伍だったが、意外に悪くなかった。ラストシーンでのセリフが特にいい。コロンボの方のどこか不承不承という感じの「納得してもいいよ」に対する、「やっぱり君はよく解ってくれる。。。同じ警部同士だもんなぁ。。。」に籠められた感慨が個人的にはとても好きだ。 また、詰め手は「歌声の消えた海」や、少し違うが「二枚のドガの絵」にも似た、本当に倒叙ものにふさわしい詰め手であり、ウンウンと頷いて感嘆してしまう。 メタフィクショナルな趣向、警部対警部の趣向、そしてこの詰め手と、美味しいものがいっぱい詰まっていて、決して名作とも佳作とも言われずノベライズもずーっとされないでいた作品だけれども、個人的にはこれをとても偏愛しているのだった。(おっぺ)
|