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Gamers Geographic 応募選考用レビュー文

「即戦力か死か」という求人の敷居が高過ぎることで個人的(身近に弱ってる人見つけたらダウン追い打ちしなくちゃ!的)ホットな話題のゲーム論評サイト「Gamers Geographic」さんが深刻な記者不足におちいっており、編集長やすださんが


http://gamersgeographic.com/veracity/#comment-27
「DONT'T STARVE!」と絶叫していたので、さすがに気になったので執筆者希望申し込みしてみました。

 応募選考書類は
  ●ゲジオ向け記事2本
  ●オールタイムインベストゲームのレビュー。
 の、合計3本。ゲジオ向け記事2本は「御社にとってあなたを雇うことにメリットは有りますか?」という圧迫面談の位置づけで、オールタイムインベストゲームのレビューはゲーマー履歴書、といったところでしょうか。
 まずは、ゲーマー履歴書について向き合うことにしました。



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オールタイムインベスト

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ニュースペースオーダー(ナムコ/未発売・開発中止)



 人類の宇宙進出黎明期。
 母星から各方向に向けて飛び立った恒星間探査船はあまたの恒星系から即座に利得化可能な惑星を探し当て、超光速エンジンを搭載した移民船団がそれらの星々に向けて突き進む。
 その星は炭素・水素・酸素・窒素からなる有機化合物が豊富なガス惑星の衛星群。
 その星は先進的工業化に不可欠なレアメタルの露天採掘に適した矮惑星。
 その星は氷結した将来有望な惑星。生命の根底ともいえる奇跡の分子、水が液体状で存在する惑星。そして母星に似た地球型惑星。
 母星の資源を絞り尽くすかのような恒星間移民が強行され、恒星間超光速物流システム「スターライン」網は拡大を続け、人類は急き立てられるかのごとく繁栄を求めていった。
 そこにフロンティアがあるからか?
 不幸にも、人類を駆り立てたものはフロンティアなどではなかった。

 銀河は混迷を迎える。
 やがてスターライン辺境で探査船からの信号が途絶え、そして母星では正体不明の物体をレーダーに捉える。それは、彼等は、人間であった。
 それは全國民が高度な数学能力を持ち光速度より速い実弾砲撃を可能とした超人の帝國。
 それはすべての民が超能力により結びつき、遺伝子工学で生体宇宙船を作り上げる宗教。
 それは宇宙櫂を始めとする太古の遺産で星の海を渡り、諸国を矛でまとめた王族。
 1万2000年前の昔に母星を離れた人類の末裔が、この銀河連邦と時を同じく宇宙進出を始め、恒星間文明を築き上げていたのだ。
 戦いのための火蓋は、はじめから切って落とされていた。人類圏の、スターライン網の拡大はすべてこのためにあったのだ。

 宇宙での戦闘を主眼においた対艦ミサイルを搭載する人類初の戦闘艦が進水し、ほどなくして長射程を誇る光学兵器の主力艦により陳腐化した。あらゆる砲撃を無効化する亜空間潜航艦が登場し、対潜兵器として人工時空震が着眼され、その対潜爆雷は次元ミサイルに応用された。超長航続距離を誇る戦闘・爆撃機を満載した宇宙母艦は戦局を一変させ、超巨大強襲艦プラネットバスターはクリーンに効率よく惑星住民を殲滅した。
 様々な新しい武器、新しい艦隊、新しい戦略が生まれ、新しい犠牲を礎に、完全なる勝利に手をのばそうと、惑星の富と命を吸い尽くし破滅に向かってひた走る。

 そしてついに、人類の戦いは惑星を破壊する船を造り出すまでに至る。




 ――という宇宙文明の黎明から興亡までの数世紀にわたる恒星間戦争をたった30分間に凝縮したのが、ナムコからリリースされるはずであった「ニュースペースオーダー」というRTS(リアルタイムストラテジー)です。
 ジオソードの直系機、ドラグーンの派生機、ニューコム・ゼネラルリソースの対立、超光速実弾砲撃、超人思想、ドイツ第三帝国、総統閣下、メルニクス語、超能力、巫女、生体船、宗教・聖戦、衝角攻撃、ゾルギア、宇宙オール、三国志、ファードラウトサーガといったナムコレゲーも含むキャッチーなキーワードがふんだんに盛り込まれた重厚な設定を前面に推し、カワイイキャラクターやヒロイズムを排除したマクロ視点で繰り広げられ、ゲームという物語が、しかもそれがリアルタイムに進行していく様に、私は深く感動したものです。
 そう、ゲームプレイがひとつの文明の歴史となる4Xストラテジーと、思考と操作を高密度に凝縮したRTSというジャンルの融合、4X-RTSをこのゲームではじめて知りました。中毒性高い4XとRTSを同時に初体験したというのですから、もちろん、どのような劇的な効果があったかは言うまでもないでしょう。
 もちろん、その手のジャンルは、はじめて触れた作品が記憶に残りやすいものなので贔屓目で採点されてるよう思われても仕方ありません。これが贔屓ではなく、オンリーワンだからこそのオールタイムインベストとご理解いただきたいので、他RTS作品、他宇宙ストラテジー作品との違いについて下記します。



 ゲームの大まかな流れはリソースを集めてユニットを量産して敵国に押しこむ、C&CやStarCraftといった古典RTS、今風に言うと競技用RTSにあたります。ヒーローユニットやキャピタルシップは存在せず、全てのユニットが雑兵という、今となってはめずらしいオールドファッションのスタイルです。
 ゲームの見栄えは古典RTSと同じく自由拡縮が無いカメラ高度が固定のタイプ。画面端にあるミニマップでマップ全域を確認しつつ操作することとなります。
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 宇宙のゲ―ムなので様々なタイプの惑星が浮かんでおりますが、マップ上に恒星はありません。どこにあるのかと聞きたい気持ちはわかりますが、それらすべてが個別の星系で、即移住可能でなおかつ産業的に利益化できる惑星がアイコンとして表示されているものと考えれば気が楽になるでしょう。
 それら惑星と、惑星周囲を旋回する防衛衛星、そして惑星軌道上施設はポリゴンで表示されております。戦闘の花形こと戦闘艦を始めとするユニットはポリゴンではなく、各部品を描いたレイヤーを縦に並べ、その表示位置をずらすことで立体感を表現しつつパフォーマンスを稼ぐことに成功しています。最大8国家で1国家最大200ユニットという数を動かしながら、低スペックにも対応するための苦肉の策と言えましょうか。その結果、日本古来から伝わるドットアートが前面に出ることで、当時のPCスペックで細かなディティール表現がウリとなっています。


 特記に値するのはリソース回収。
 移民船で惑星に入植すると、近隣の支配惑星と「スターライン」という超光速物流網が自動で結ばれます。このスターラインでつながった惑星は、3つあるリソース種の2つ「クレジット」「資源」を共有します。個々の惑星のリソース出力は微々たるもので、単体で施設を作るリソースを貯めるには時間がかかりますが、スターラインで各惑星からリソースを集めれば、軍事施設や生産施設、移民船を生産することができるようになります。

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(新しく入植した惑星とスターラインを結ぶ様子)

 スターラインにつながった惑星を増やせば増やすほど国家の出力が上がるという単純な経済システムですが、この惑星がマップ上に偏在するためリソース源が大きく広がり、拠点防衛しづらいのがマイン&リファイナリー型経済を採用する古典RTSとの大きな違いです。


 古典RTSにかかせないリソース破壊を始めとしたハラスについては、このスターラインを分断することによって行います。
 敵惑星に強襲艦ユニットを上陸させると、その惑星から伸びたスターラインを切ることができます。物流をとめることでスターライン内の使用できるリソースを少なくすることができ、生産施設への物流網を止めればユニット生産もとめることができます。リソース破壊も施設の無力化も、強襲艦を用いてスターラインを切るだけで出来るのは、シンプルで理解しやすいですね。

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(強襲艦が上陸しスターラインが切れる様子)

 強襲艦はコストが高いためハラスに失敗すると大きな損失となってしまいます。逆に、敵の無防備な惑星を見つけて強襲艦単騎で敵スターラインを分断できれば大きな成果となります。この強襲艦による物流網の分断によって、リソース破壊という概念の簡略化に成功しているといえるでしょう。


 ここで思い当たるは古典RTSの後に出たミリタリ系RTSで採用されているポイントキャプチャ型のリソース回収に近いものと思われますが、ここで3つあるリソース種の最後の1つ「人口」の存在が出てきます。
 人口はスターラインで輸送できないため、施設やユニットの作成は、その惑星の人口を消費します。人口増加の低い惑星ではユニットを量産しつづけることができません。ユニット生産の拠点となるのは人口増加の高い地球型惑星、または水型惑星となります。
 また、5種ある惑星型のうち、木星型惑星と岩石型惑星には施設を建てることができません。よって生産拠点は氷型惑星、水型惑星、地球型惑星の3種となり、おのずと普段から火力が存在する場所というものは限られてしまいます。さらに述べれば、木星型惑星は防御衛星すら建てることができないため強襲艦に狙われやすくなります。
 前線へと連なるスターラインの中にある防御の薄い惑星に強襲艦を送りこんで物流網を分断し、敵前線の弱体化、無力化を行う所は、前線の一進一退に重きをおいたミリタリ系RTSでは味わえないダイナミズムな戦略と言えるでしょう。

 加えて、ユニットの視界と射程の短さも、スターラインの攻防をめぐるゲームの特徴を際立たせています。
 ユニットの自動攻撃判定が手動で攻撃指示した時よりかなり短く設定されており、先に操作したユニットが初撃を取ることが出来るのですが、惑星やユニットの視界は索敵ユニットにあたる探査船を除き武器の射程よりも狭いため、敵影の確認が容易ではありません。
 効率よく初撃を得るために、また、敵の強襲艦からスターラインを守るために敵影を発見したいものですが、スターラインにより広がった領土と、それを守るにしては貧弱な視界が、操作量の限界と意識配分ともどかしさを生み出し、結果、宇宙の広大さを肌で感じることができるゲームとなっております。


 開発された時期が古典RTSからミリタリ系RTSへ流行が変わる最中だったためか、きっと、両者の経済システムをよく調べた上でのゲームデザインになったかと思われます。個々のユニットをどれだけ沢山操作したかといったマイクロマネージメント勝負とは別に、4X要素とスターラインをめぐる攻防といった、観察眼と俯瞰視で戦略の幅を広げることができるゲームデザインに辿りつけたのは、この時代だからこその奇跡といえるでしょう。
 惑星の発見から入植、領土の拡大、新兵器の研究そして殲滅という恒星間文明の興亡を自分で描く4X要素。これに古典RTSのスピード感と、簡略化しつつ奥深さを生み出した経済システムを無理なく収めたことで生まれた革新的な宇宙ストラテジー。その重厚なゲームプレイに負けぬよう、どこかしらジャパニメーションじみたサイエンス・フィクション設定にナムコレゲーから引っ張りあげたSF要素をふんだんに盛り合わせることで、国内外問わず古今東西の宇宙が好きなゲームファンに安心してオススメできる世界最高峰の宇宙ゲームとなりました。
 すべての要素に宇宙である必要があり、宇宙でなければゲームとして成立しない。
 まさに宇宙ゲームとして生まれ、宇宙ゲームを一段階上に引っ張りあげ、すべての宇宙ゲームの頂点に君臨するのが、このニュースペースオーダーというゲームなのです。


(1v1マッチ。 HD版 http://youtu.be/9yWF9rQpJFg?hd=1

 …なのですが、頭の方に「ナムコからリリースされるはずであった」と申し上げましたとおり、このゲームは発売されておりません。
 国内メーカー発のRTSとして開発スタートしたこのゲームは、無事、2004年にナムコ直営ネットカフェ「知・好・楽」の新横浜店・高田馬場店でオープンベータテストを始めたものの、1年後の2005年にバンダイがナムコを吸収合併。その後、オープンベータは2007年まで継続されましたが、2008年12月、社名を変えたバンダイナムコゲームズより開発中止の発表がなされました。

 何がいけなかったのでしょうか?

 きっと、間違ったゲームだったのでしょう。


 あれから幾星霜の月日が流れました。
 バンダイナムコゲームズは「機動戦士ガンダムオンライン」や「ジョジョの奇妙な冒険オールスターバトル」といったバンダイの持つIP(知的財産)を最大限に活かした大ヒット作をコンスタントに生み出し、「エースコンバット」や「リッジレーサー」といった最新技術をウリとしてきたナムコIPを海外メーカーに発注することで技術面に敏いシリーズファンのニーズに応え続けています。
 リリースできているのだから、それらは、彼等にとって正しいゲームなのだと思います。
 思えば、日本は以前と比べて正しいゲームが増えたように感じます。

 そして私はというと。
 日夜、彼等なら間違ったゲームと断じそうなゲームを探し歩き、買い求め、その中から面白いと思ったゲームを友達をはじめとするゲームが好きな方々に紹介しています。
 幾人かにはそのゲームをお気に召していただき、いくつかのゲームスタジオからはお礼の言葉をいただきました。ゲームのファンとして、スタジオのファンとして冥利に尽きます。

 いつか、この間違ったゲームたちが日本で認められ、この間違ったゲームによる市場が日本で確立し、ニュースペースオーダーがリリースできるようになるその日まで―― 自分が面白いと思ったゲームを恥ずかしがらず、人へ勧めていこうと思います。
 市場的に正しいゲームや企業的に正しいゲームが押し潰してしまわないよう、守っていこうと思います。

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