項目名 | 相手は江戸の大魔王 |
読み | あいてはえどのだいまおう |
分類 | 必殺シリーズ |
作者 | |
公的データ | 『まっしぐら!』最終回は何が駄目か。それは視聴者の視点と秀の視点をごっちゃにしているところだ。ぼくは三人称多視点描写が好きで、自分でもよく使うんだけど、書く場合にはあまり人にはお勧めしない。というのはそれだけ難しい手法だから。気をつけなければいけないのは、視点人物がその時点で何を知っていて、そこから何を類推できるか、常に考えながら書かなければいけないってことなのだ。読者が知っていることと、視点人物の知り得ることは、一視点描写でない限り一致しない。当然のことなんだけど、それをいちいち考えながら書くのはなかなか大変なんですね、これが。 しかるに『まっしぐら!』では、秀の知り得ることとそこから類推することがバラバラ。そもそも疑惑を持ったのは、敵である向島の仁十郎が逃げていった先から、元締めが姿を現したからでしょ。その時点で秀の疑惑は、元締めひとりに向かわなければならないはず。だから元締めの配下であるさぶを疑うのは別にいいけど、どうして麻呂が内通者だって考えるわけ? しかも直前には、その麻呂に命を助けてもらったくせに。頭悪すぎ>秀。 それと、結局自分の知らないところで何があったのか、秀は納得したの? 仁十郎が死に際に何か言ってたけど、あんな短時間にすべてのからくりを説明できるわけがない。ならば元締めと対峙したら、まず事情説明を求めるのが筋じゃない? 話し合って、それでも理解し合えなかったら初めて命のやり取りにならざるを得ないわけで、あんな状況でいきなり殺してしまって秀はなんとも思わないのかね。この点で、秀と視聴者の視点をごっちゃにしている。駄目だよ、これじゃ。 そもそも、こういう仕掛けは必殺では禁じ手なんじゃないの? これをやっちゃ、話が成立しないでしょ。それが初見の際は納得できなかったんだけど、改めて今見直してもやっぱり納得いかない。そこを納得させるためにも、最後は元締めの口から自分の信じることを語らせて欲しかったな。 まあワンパターンから脱却しようという意図はよくわかるし、そういう姿勢は評価するけど、こんな仕掛けなら、ない方がましだったのでは? 少なくともぼくは、普通に終わってくれればもっと褒めるのに。残念だなぁ。(貫井徳郎氏の日記より) |
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