項目名 | われら同級生! |
読み | われらどうきゅうせい |
分類 | 青春ドラマ |
作者 | |
公的データ | |
感想文等 | だから、この「われら同級生」の中で、河野教師が「飛び出せ」当時の生徒で、今も高校5年生で生徒をやっている山本に、 「おまえ、みんなが卒業するときに俺になんて言った? 速く走るだけが能じゃない。俺はゆっくり生きるんだ。。。 俺はその言葉を信じた。俺もゆっくり走ろうと思った。だから、島の小学校に行ったんだ」 なかなか感傷的になるシーンで、だから、てっきり、「飛び出せ」の最終回は卒業シーンで、この河野教師と山本のやりとりがあるものだとばかり。。。 でも、実際に「飛び出せ」の最終回を見ることができたとき、それは全然卒業の時でもなんでもなくて、この2人の会話も存在しなかったのだった。あれーとか思ったのを覚えている。(おっぺ) 「先生、好きなんだろ? 先生って職業が好きなんだろ?} 「人生は1度しかないんだろ!? 好きなことは途中でやめたりしちゃいけないんだろ!?」 とか口々に言って止めている。 沖田は、「心の汗」を滲ませながら、 「そうだったな。。。人生は1度だけしかないんだったな。。。好きなことは途中でやめたりしちゃいけないんだったな。。。」とか。。。 このワンシーンを見ただけで、ずいぶん感傷的になれたものなのだけど。。。 あまりに「クライマックス」って感じだったし、状況から、きっとこれが「われら」の最終回なんだろう、と思っていた。 ところが、観る機会のあった「われら」の最終回はやっぱりそんなもんじゃなくて(笑)、あれー。。。と。 実はこのワンシーン、最終回どころか、まさに第1話だったんだと、この再放送でやっと確認できたのだった(笑)(おっぺ) 子供番組でのウルトラ兄弟の設定もそこから出て来たものだろうし、仮面ライダーなどは立花藤兵衛というシリーズを通してのレギュラーの存在が連続性を強くしていた。 『グレートマジンガー』最終パートでは期待に違わずマジンガーZが復帰して活躍してくれたし、『宇宙刑事シャリバン』ラストはギャバンとシャリバンの共闘だった。 子供番組だけの話ではない。『バイオニックジェミー』での『600万ドルの男』との相互リンクや『助け人走る』での中村主水出演回など、やはりイベントとして作り手も受け手も大いに楽しめたのではないか。 さて、この「われら同級生!」では、前シリーズ『飛び出せ!青春』の主人公たちが大挙して登場して活躍してくれるというスペシャル版なみの大盤振る舞いだ。 『われら青春!』は留年2年目の山本や教頭ら、『飛び出せ!青春』のレギュラーがそのまま登場するストレートなシリーズ2作目で、主人公沖田俊も『飛び出せ!』の主人公河野=ビギンの後輩であり、ビギンの勧めで教師になったという前フリもあった。 そしてついにこの回、ビギンや、かつての生徒達が姿を見せるのだ。 落第ラーメンでバイトをしていたマキはともかく、片桐、柴田、ふみ子、木次とあらわれ、それも決して顔見せなどではない。ドラマの根幹に彼らはしっかりと居座っていた。 山本はコンビたる柴田らと一緒に卒業することができなかった。かつての高木のように高校5年生だ。だが、高木のように年下の後輩達に一目置かれるような5年生にはなれなかった。山本は、三年生の時の山本のままだった。 かつて一緒に馬鹿ばかりやっていた柴田や片桐、木次らがスーツ姿で現れ、しかも、まだ高校生の山本には別次元のことのように、木次はふみ子と結婚するという。 同級生だった連中の言動のひとつひとつが自分を嘲っているように聞こえる。 そんな山本の気持ちに同調した現在の同級生たちは片桐たちに攻撃的な態度を取り、木次とふみ子のウェディングケーキやドレスを台無しにしてしまいさえする。 詰め寄る片桐たちの前に、山本が立ちはだかる。 「山本!?」 「片桐、俺が相手だ」 「なにい!?」 「どうしたんだ、山本!? 俺たちは、同級生じゃないか!」 「こいつらのほうが、俺の気持ちを解ってくれるんでね」 沖田=ゲットアップはなんとか山本を励まそうとするが、うまくいかない。 「山本、誰もバカになんかしてないじゃないか」 「バカにしてるよ。……誰もバカにしてなくても、俺が俺をバカにしてる」 「山本」 「バカだよ、俺は。みんなスーツなんか着ちゃってさ。俺は、河野先生とサッカーやったり、今は沖田先生とラグビーやったりさ、相変わらずの、相変わらずの、相変わらずだよ……先生、俺、学校やめるよ。社会に出れば、俺だってもう、一人前だ。結婚だって、しようと思えばできるんだ」 沖田は胸を痛めるがが、ビギンはまるで意に介していない素振りを見せる。 「先輩は山本の気持ちはどうでもいいんですか」 「山本の気持ちがどうかしたのか」 河野=ビギンは山本の態度は下らない僻み根性だと決めつけ、沖田を怒らせる。 『飛び出せ』から登場していた寮の賄いである梅子に対して、沖田は河野への憤懣をぶつける。 「河野先生がどうかしたのかい?」 「あの人は、自分の生徒のことしか頭にないんだ!」 「山本くんだって、河野先生の教え子だよ」 はっ、と意表を突かれた顔になる沖田。 そうなのだ。ビギンからすれば、山本はなんら木次たちと変わらない、自分の教え子の1人なのだ。沖田はそれを忘れていた…… あくまで、今の同級生たちを煽るように、昔の同級生たちと争い続ける山本に、ついにビギンが手を上げようとした時、それに先んじて殴りつける沖田。 「お前は……お前はそんなに下らない奴だったのか!? 甘えんな! 甘えんな! 甘えんな! 甘ったれるんじゃないぞ、山本! 甘ったれるな!」 沖田は、殴る自分の方がボロボロ泣きながら、山本を殴りつけていたのだ。 独り呆けたように浜で座り込んでいる山本のところにやってくるビギン。 「山本」 「先生?」 山本にとっても、ビギンはやはり先生なのだ。 「沖田がお前を殴らなければ、俺がお前を殴っていた。お前の顔が、もっと腫れるほどな」 「先生……」 「山本、お前、みんなが卒業するときに、俺に何て言った?」 「え」 「人生は、速く走るだけが能じゃない。俺は、ゆっくり歩くんだ」 「…………」 「あれは嘘だったのか? 卒業できなくて言った負け惜しみだったのか?」 「…………」 「俺はそうじゃないと思った。俺もゆっくり歩こうと思った。だから俺も、話を貰った時に島の小学校に転勤したんだ。周りからは、馬鹿な奴だと言われたよ。だが、俺は気にしなかった。お前も自信を持って歩いていると思っていたからだ。お前は、高校5年通ったおかげで、あんないい先生にも会えた。お前のことを思ってくれる同級生たちを人の2倍も3倍も作れた。素晴らしいと思わないか、山本」 このエピソードで、ビギンも決してただのゲストなどではない。山本を励ますこのシーンのみならず、木次の結婚に絡むイザコザに、先生として正面からぶつかって行く。 単なる客演ではなく、完全に『飛び出せ』と『われら』が融合していたのだ。 こうして振り返ると、なんて贅沢な造りだったかと驚いてしまう。今ならさっさと2時間スペシャルにしてしまうところだ。 この邂逅は、作中人物の山本にとっても、観ているファンにとっても、宝物のような時間だった。間違いなく…… |