語る「万華鏡」

(「ヒトクイマジカル」の一部削除)

ヒトクイマジカル(ひとくいまじかる)

項目名ヒトクイマジカル
読みひとくいまじかる
分類ミステリ小説

作者
  • 西尾維新
  • 公的データ
  • 「…具体的に、あなたは何の研究をしているのですか?木賀峰助教授」「死なない研究―ですよ」永遠に生き続ける少女、円朽葉をめぐる奇怪極まりない研究のモニターに誘われた“戯言遣い”こと「ぼく」は、骨董アパートの住人・紫木一姫と春日井春日とともに京都北部に位置する診療所跡を訪れる―が、そこに待ち受けていたのは凄絶な「運命」そのものだった!“一人で二人の匂宮兄妹”―“殺し名”第一位の「匂宮」が満を持して登場する、これぞ白熱の新青春エンタ。戯言シリーズ。
  • 感想文等
  • 実は、この戯言遣いシリーズに関しては、第2作目「クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識」を読み終わった時点で続きを読むかどうか結構考え込んでしまいはしたのだった。

    いや、出来不出来ということではない。もっとシンプルに、この第2作目が自分にとってはあまりに「暗い」内容だったということなのだ。
    単に、ストーリーやプロットに関してならば、もっと「暗い」小説はいくらでもある。人が死に、希望は潰え去り、夢は裏切られ、友情も恋愛も否定され、罵られ、嘲られる。そんな小説もいくらでもある。ごまんとある。そして、そんな小説が礼賛され、持ち上げられ、文学として栄誉を担う。そんな時代性のあることも経験している。

    だが、もっとシンプルなことなのだ。どんなに物語自体が陰惨でも、希望がなくても、要は主人公の存在が、主人公の思いが、どうなのか。その一点に集約される。
    「クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識」はその意味で、いささかという以上に、きつかった、少なくとも読み終わった段階では、そう感じたのだ。

    だから、この先読み続けて果たしてこの主人公がどうなるのか、読み手のこちら側はどうなるのか、少し立ち止まってしまったところがあったのだ。

    つづく第3作目「クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子」を読み始めてしばらくして、どうも主人公のキャラクターがあまりに能天気に感じられ、「もしやこの主人公は前作までの彼とは別人という叙述トリックなのでは?」と疑ったほどだ(笑)。まるっきり、平井和正のアダルト・ウルフガイシリーズ狼男だよ」と「人狼、暁に死す」を連続して読み、主人公犬神明のキャラクターのギャップに戸惑った、それを位相のみ逆にして再経験したみたいなものである。

    はたして、作者の意図はどこにあるのか。この主人公はこのまま虚無の深淵に呑まれるばかりで、彼も読者も共に落ちていくしかないのか。もしそうであるなら、読み続けるのは精神衛生上よろしくない。そんなふうに感じてしまっていたのだ。

    そんな不安とも恐れともつかないものをかかえたまま、しかし、読み進め、この「ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹」にたどり着いた。
    物語はやはり陰惨だ。それは、この主人公自身が書いている。「ぼくは地獄を見る」。確かに、「ククビシメロマンチスト」につづいて、いや、それ以上に、この巻も、あまりにもあっさりと人が死ぬ。伏線も、キャラ立ても、そのすべてを瓦解させる指針こそが目的ででもあるかのように、物語の結構という図式からすればまったく唐突に、意味がないかのように、人が死んでいく。

    「みんな死んでいく……みんな……」(TVアニメ「機動戦士Zガンダム」カミーユ・ビダンのセリフより)

    それはまさしく、ガンダムイデオンダンバイン等の「ロボット・アニメ」で一時期総登場人物全散華、キャラクター皆殺しの汚名を背負って「物語」に立ち向かった富野由悠季さながらではなかったか。あるいは、プロットもストーリーもすべて主人公に奉仕させ、すべてを一気に収斂させるようになった「地球樹の女神」以降の平井和正だってそうであるかもしれない。

    だが、読み終わったときには、「クビシメロマンチスト」の最終ページのときとはちがうベクトルがある。むしろ、「クビシメロマンチスト」のベクトルとはこれは真逆の方向性に至っているのだ。

    これは、少なくとも、この段階で、主人公の心の再生を得た物語なのだ。

    まだ、残る最終プロットが待ちかまえている。ここで、さらなる崩壊が待っているのか。それとも、この再生が青色サヴァンにも繋がるのか。

    怯えず、読んでいくことにしよう。

    ※しかし、この「ヒトクイマジカル」のミステリー的興趣は、これまでの作品と比べると明確にハードルは低いものになっているようだ。ミスディレクションはさほど効果的とは思われない。あるいは、ミステリーとしての部分はあえて振りかぶらないようにしてきたのかもしれない……完結編は、果たして、どう来るか。(おっぺ)
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