感想文等 | この「新仕事人」での主水は、すっかり脂気が抜けて、公私ともにで昼行灯めいてきている。つまり、公の部分での昼行灯ぶりが、私の部分――というより「裏」の部分にも侵蝕しているのだ。 これは、何年も一緒に組んで仕事をしてきたかざりの秀の直情ぶりに対して、決して同調できず、といって今更「仕事人」時代のように真っ向から打ち消せもせず(もはや、一緒になって諫めていた左門もいないのだ)、ほとんど「オールドタイプとして同僚からも生徒からも支持をされなくなった」古教師のような感じだ。 だから、ここでの主水には「仕置人」時代の「かっこよさ」も、「仕業人」時代のダークさも、「仕事人」最初の頃の覚悟もない。疲れ、順応し、落ち目を自覚したような無抵抗さが見える。 ……そう、主水は抵抗を失ってしまったのだ。 怒りや、憤りや、哀しみや、そういったものを産みださずにいない「外道」に対する戦い、抵抗だけが残された唯一の真実、生き方、そういった全てを……たぶん、やめたのだ。
この「新仕事人」はタイトル全てが「主水○○する」になっており、中には「それは確かに主水が○○してはいるけど、それって今回の話のキモでもなんでもないじゃん」というものが入っている。秀や勇次がメインのエピソードで、主水が○○していることなんて全然話に関係ない場合でも、とにかく「主水○○する」なのだ。 前「仕事人」のサブタイトルが左門おでん屋編以降、「○○技○×△□」になり、内容が全然思い出せなくなってしまったのを悪踏襲してしまったのだが、とにかく疲れて大勢に順応するようになった主水が何かしている……それが「新仕事人」なのだ。
「主水アルバイトする」は、左門が戦線離脱し、加代が江戸へ戻ってくるまでの出来事を少しばかり窺い知ることのできるエピソードで、その分いろいろ面白かったのだが、それ以上は思い出せない。ただ、名可燃組んでいるうちに、やはり主水は秀をとりあえず認め、仲間として遇しているんだな、と感じさせるところはあったようだ。 その分、いつまでも三味線屋を阻害しているんだね(笑)。(おっぺ)
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