感想文等 | このエピソードの主人公、中尾洋一は、なかなか端倪すべからざるキャラクターだった。 基本的に片桐だ高木だ山本だといった「不良」「劣等生」がメインになるはずの学園ドラマで、中尾はかなり独特だった。のちの「われら青春!」など、中村雅俊の学園ドラマでも、優等生が主役のエピソードは数多く存在するが、印象強く残るのは女生徒であり、男子生徒の影は非常に薄い。軟弱だったり、決して深く交わらなかったり、中尾洋一という「優等生の金字塔」を超えることも並ぶこともなかったのではないか。 中尾がどう独特かといえば、まず当たり前のことのはずなのだが、普通に山本たちとクラスメイトとして会話している(笑)。当たり前のはずなのに、のちの番組ではなんだかクラスでも異次元星人なみに孤高でいることが多かった気がする。 中尾は優等生だが、当たり前のようにクラスの一員として毎回ちゃんと存在しているのだ。 だからカンニング話のときは、水谷豊生徒のカンニングに対して何の手も打たないビギンに業を煮やすと、こともあろうに山本たちを唆してカンニング大作戦を決行したりする。こういう、優等生のくせしてトンデモな行動に走るのも中尾の印象深いところだ。 この月光仮面話でも、中尾は正義感とトンデモ行動力で、悪を告発するミニ新聞(これが「月光仮面」)を発刊したりする。誤解や視野の狭さで行き過ぎた断罪をしてしまうなど、実に中尾らしいのだ。 そして最後には、衝撃と苦悩の中、尊敬していた自分の父親の悪を告発する。この辺の突っ走りようも中尾独自のもので、とても「優等生」のやることではない。むしろ、バカな主役達のやるような行動だ。 中尾はつまるところ、サッカーや野球や、喧嘩や格闘技や、そういったものに燃えて一直線に突き進む主人公達となんら変わるところのない、勉強や正義方面に燃える男だった。燃える青春を生きるということでは、むしろ片桐や高木達よりずっと全力だった。ただその対象が「勉強」だったから、『優等生』というレッテルで排斥されただけだったのだ。 或る意味では、中尾こそが、太陽学園随一の「はみだしっ子」だったのかもしれない。(おっぺ)
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