感想文等 | 本家たるモーリス・ルブランの怪盗ルパンシリーズで、「あっ」という意外性や、どんでん返し、謎の解明のスリルと快楽に目覚めた(笑)。 冒険活劇部分は全然というほど記憶に残っていなくて(^^;)、「面白かった」と印象強いのは、「八点鐘」とか「バーネット探偵社」とかの、ルパンが名探偵としての活躍なので、嗜好が知れようというものだ。最初にはまったのは「魔女とルパン」だったんだけど。 本家ルパンで何度となく読み返して感心していたのが、銭形ならぬガニマール警部がルパンを逮捕し、投獄、そして……という物語での、ルパンの拍手喝采ものの脱獄術だった。 法廷を舞台にしたどんでん返しへの盛り上がりは、なんだか「Zの悲劇」のようなスリリングな物を感じさせる。法廷での決着への伏線、また、ルパンを成功させてしまうのが、他ならぬガニマール自身であるという皮肉さ、見事なとしか言い様がなかった。 この「脱獄のチャンスは一度」は、その「アルセーヌ・ルパンの脱獄」への挑戦か。 やり口としては、本家の策を少し捻った感じだが、本家ほどにはトリッキーではなく、脱帽まではいかない。 むしろ、ここでは、銭形のルパンへのアンビバレンツが強調され、第1話での銭形のモノローグ、「お前がアルセーヌ・ルパンでなかったら……俺が銭形平次の子孫でなかったら……」に一つの選択肢を示しているようだ。 また、逆にルパンの、1年も投獄に甘んじてでさえも「あの銭形に俺と同じ屈辱感を味わわせてやりたかった」と吐き捨てるように言うプライドの高さと対抗心は、のちの「とっつぁん」と親しみをこめて呼ぶのからは意外なほどだ。 様々な点で印象深いエピソードに違いない。(おっぺ)
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