感想文等 | このサブタイトルはクイーンかクリスティ原作の映画みたいで、なんとなく面白そうだ。 見始めると、色惚けの悪番頭が出てきて、お店の後家女将とその継娘、女中と、3人も毒牙にかけている。普通ならこの男が仕置の的になるところだが、サブタイトルから予想される通り、3人の女のほうが逆襲に出て番頭を謀殺する。 ここからはいわば倒叙ミステリのごとく進んで行く、のかと思いきや、名探偵役のいない「必殺商売人」、怪談仕立てのサスペンスとして話が流れる。 怪談そのものより、計画して人殺しをやりおおせ、口を拭っている女中が、正八の前でいかにも可愛い少女を続けているのが、男の私にはずっと怖い(笑)。 おせいと旧知の女将も、知らずに見ていれば、いつもの「被害者側」そのままだ。うっかり途中から観ていたら、誰が加害者で誰が被害者か、分からないかもしれない。 いや、最初から観ていてさえ、この話の筋立てが透視できない。「うらごろし」ではないので(笑)、この怪談を仕掛けている「犯人」がいるはずなのに、そして登場人物は限られているのに、なかなかその裏の真相が読めない。 ミステリとしての出来が良いというより、アンフェアな映像描写があったせいで、女中が自分がかんざしを落としたことに気づくシーンでカットバックが入った、あれはいわば犯人の内面が「嘘」描写されたわけだから、アンフェアなのだ。 しかし、それ以前の、女3人が番頭に騙された場面、ここは逆に、女中のシーンだけが、女中の口から語られただけで終わっているのは、フェアな描写ということになる。 見直してみると殺害シーンも、殴っているのも川に頭を押し入れているのも、ちゃんと女中である。 あのかんざしのカットがなければなあ……と思ったが、やはり見直してみると、こちらは女中が「思い出したこと」の映像だと思ったのだが、女中が他の2人に語ったことの映像、つまり、最初の番頭との映像と同様の叙述トリックだったようにも見える。スレスレの叙述トリック――。 いやあ。必殺でこういう楽しみ方ができるとは思わなかったな。面白かった(^^)。(おっぺ)
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