感想文等 | ホログラム・ドクター(名前はまだない)の創っているホロノベルを読む(というか実体感する)クルーたち。ドクターとしては、自分の経験を多少カリカチュアライズして、テーマ性を持ったエンタテイメントにしたくらいに思っていたが、モデルであるクルーたちには不快と困惑が大きい。艦長をはじめとする人間のクルーたちに侮蔑され、虐げられるのが、主人公のホログラム・ドクターなのだ。これが出版されれば、宇宙規模でヴォイジャーへの誤解を招きかねないノベルが読まれることになる。 パリスは言う。「俺の悪名が宇宙域全体に広まろうと、そんなことは気にしやしない。ただ、あんたの目に俺があんなふうに映っていたのかと思うと、残念だよ!」 そして、パリスの改変したホロノベルを自ら体験することで、ドクターは考えを改める。改訂版に書き改めよう…… そのあとの紛糾自体は、かつてピカード率いるエンタープライズでデータを巡って繰り広げられた「彼(或いは、この「物」)に人権などあるのか?」の繰り返しだ。 だが、一つ違うところがあった。データは、ほとんど唯一無二の存在だったが、ドクターは違う。彼は、「緊急用医療ホログラム マーク・ワン」のうちの一体でしかなく、逆に言えば、ドクターの同種の仲間は大勢いる。とても大勢いる。そして、医者として産まれた彼らは、今や佐渡の流人さながら、ただ来る日も来る日も穴掘りを、穴掘りのみをやらされているのだ。 ドクターの夢は、仲間たちに自分と同じような自由と権利が与えられるようにと、そのためにこそ、このホロノベルも書いたのだったから…… ラストシーンの、マーク・ワン達の姿は心に焼きつく。ホログラムに魂はある。それがどんなものなのか、どうして産まれたのか、わからないが――。(おっぺ)
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