感想文等 | 「トゥーヴィックス」で迫られたのと近い、苦渋の選択が待つエピソードになる。 ホログラムのドクター(名前はまだない)の様子がおかしくなり、アルジャーノンさながらに記憶や知能が損なわれていく。これは、ヴォイジャーで起動してから2年間(もうそんなになるのだ!)、様々な経験を経て成長して来たが故のオーバーロードだというのだ。限界を超えてメモリが崩壊していく、まさしくアルジャーノンやチャーリーたちのように。 治療の方法はなく、リセットする以外にドクターを救うことはできない。だが、それはドクターを完全に初期化することであり、彼の全ての記憶は消去され、最初に起動したときまで戻ってしまう。この2年間、クルーと過ごした思い出も、様々な経験も体験も、よろこんだこと苦しんだこと、恋をしたこと、それら総てを喪失してしまうということなのだ。 いつも一番身近にいたケスが、今回もまた最もつらさを味わうことになる。 次第に退化していくドクター、もはや自分が何者なのかも、ケスのことも、わからなく…… もはや…… そしてドクターは初期化される。 起動され――「緊急事態の概要を述べて下さい」。もはや何も覚えていない、「名前はまだない」どころか、名前の必要すら感じても考えても知ってもいない、そんな…… しかし、最後のシーン、そんなドクターが作業をしながら、ふとハミングを始めている。覚えているはずのない、失ってしまったはずの思い出、記憶、けれどドクターは確かにハミングしていた。なくしたはずの…… それは、ひょっとしたら、失われたものなど何もなく、やがてドクターはまた元の、2年間の喜びや哀しみや、そういったもの総てを取り戻すのではないのか、と――せつない希望を抱かせる、そんなエンディングだったのだ。 私は、スタートレックの持つ様々な顔のうち、こんなところが好きだ。SFの好きな部分、こうしたおセンチなところが、どうしても好きなままなのだ……(おっぺ)
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