感想文等 | まずその「造り」に仰天しました。 和久峻三なども「犯罪ファイル」みたいなものを刊行してましたけど、これは、箱入り2分冊で、「笹村雪彦追悼集」とその「別冊」という形の作りです。 帯の文句から抜き出し、再構成してみましょう。
白馬岳から唐松岳へ縦走中、行方不明になった青年・笹村雪彦。彼の山への情熱を讃えるため、彼の誕生から死までを一冊の追悼集にまとめることになった。 登山記録、山岳資料、死体検案書、図版に仕組まれた巧妙な罠。あなたはどこまで挑戦できる?
あたしゃ、まず高木彬光「帝国の死角」を思い出しましたよ、まず。あれには思いっきり参った。あの衝撃は今でも忘れない。……ので、今度も似たような構成だったし、「分売不可」とか書いて2分冊を箱入りで売るというところに、著者の「凝り」と意気込みを感じました。「帝国の死角」のときは、2分冊をバラバラに売り、しかも、1冊目が出た後、2冊目が出るまで相当の空白があったり、タイトルが「通し」の本だと言うことがわかりにくいような売り方だったのでその「仕掛け」が十分に効果を発揮できなかった(初刊行時)というようなことを、「帝国の死角」角川文庫版の解説か何かで読んでいたので、 「ははあ、『帝国の死角』の教訓を生かして、絶対分売できない形、しかも、前編と後編の読む順を間違えたりしないようにとまで気を配って売りに出したな。逆に言えば、それだけこの『仕掛け』に自信があるし、無駄に終わらせたくない、ということだろう」 と思い、さぞや……と期待しながら読みましたわ。 「前編」に当たる「不帰に消える 笹村雪彦追悼集」を読む前と読み終わったときには、 「おおー、凝ってる。凝りに凝ってる。やっぱりミステリはここまで凝ってくれなくちゃ」 と後編への期待がいやがうえにも高まり……後編に即、手を出しました。 つい今し方、読み終えたところなのです。
……これは……。 ……なに? 給料日前でぴーぴーしてるっていうのに、大枚はたいて本体1700円を買ったのに。 それとも、僕の読み方がまずくて、実は傑作なのだろうか。僕が鈍感で作者の仕掛けに気づいておらず、「何だ、これ?」と思っているだけなのだろうか。 そうでもなければ、何で、ここまで凝った造りの本にする必要があったんだ? 「帝国の死角」のときには、「絶対2分冊にしなければならない理由」があった。2分冊にしていたからこそ、あの大トリックが思いっきり生きていた。(こんな書き方程度では、アレのネタバレにはならないと信じてる) でも……これは? もし、「実はあれはああゆー仕掛けだったから、実は……」と「わかったぞ」という人、いらっしゃいましたら、教えて下さい。私は今本体1700円を見つめて泣いています(泣)。折原一のばかー。(おっぺ)
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