感想文等 | 私の場合、倒叙ミステリといえば鮎川哲也の短編がスタートラインだったと思うので、コロンボでも古畑任三郎でも、「完全犯罪のはずが、犯人の些細なミスからそれが崩壊する」というのが好きなんです。そして、そのミスというのが、読んでいる読者のこちらからして「あっ!」と思うような意外なものだとパーフェクト。 これが、ずるい刑事が罠をかけて犯人に要らぬ口を滑らせて、、、という感じだと面白みは半減するし、ましてや犯人は完璧だったけれど共犯者がドジを踏んでとかになると面白みは殆どなく、、、 つまりは、名犯人でさえ自分で気付けなかった些細なミスを看破する名探偵という、「名探偵対名犯人」の図式、頭脳戦が好きなわけかもしれません。 さて、この「二枚のドガの絵」は、しかし実は前述の「犯人の些細なミス」「探偵役の罠」「共犯者のドジ」のいずれでもない。強いて言えば探偵役の罠に近いのかもしれないけれど、寧ろ偶然に発生させ得た罠、そしてまた同時にそれが偶然に発生させ得た犯人のミスであり、偶然であるが故に犯人の逆襲は当然予期され、、、その逆襲に対して探偵役がどう先手を取れるか、という読み合戦のような頭脳プレイ対決だった、、、そんなふうな面白みを感じました。 余分な付け足しもない、鮮やかなエンディング。こういうのが倒叙ミステリの切れ味だろうと、見直してみて、まあそんなことを思ったりしたのでした。(おっぺ)
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