語る「万華鏡」

(「サーニンのメモノート」の一部削除)

サーニンのメモノート(さーにんのめものーと)

項目名サーニンのメモノート
読みさーにんのめものーと
分類コミック

作者
  • 三原順(おっぺ)
  • 公的データ
  • はみだしっ子」番外編。「Part17 クリスマスローズ咲く頃」と相互補完を為す。(おっぺ)
  • 感想文等
  • この短いエピソードは、「クリスマスローズ咲く頃」が最初4人の話として始まりながら、いつしかアンジーが視点となっていく形で進んでいき、、、ではその時、例えばサーニンは?を、全くサーニンの視点から描いてあるパートなわけだ。
    はみだしっ子」シリーズの中でも、この「クリスマスローズ咲く頃」と「サーニンのメモノート」は、少なくとも私にとってかなり大きな部分を占めており、アンジーの「ピエロ」に対する感慨や、サーニンの独白は読み返すたびに突き刺さってくるものがある。。。

     崖っぷちを走ってるみたいだとグレアムが言った
     …だってグレアム
     ウサをはらす手だてが他にないのなら自分をもてあそび楽しむ…
     ウツの谷間を見ながらソウ状態を駆け登って行く…
     わざわざ崖っぷちを選んで
     いつ堕ちるか…いつ…
     それはとても面白いよ
     ―――堕ちるまでは

    そして何より――この「サーニンのメモノート」は、私にとってある種鬼門の「再会」が隠し切り札のように取り出されてしまうのだ。
    すでに会っている人、すでに暮らしている人、すでに。。。その人と「思い出す」形で再会する。。。かつん、かつん、、、と足音が近づいてくる。いつだったか…前にもこうして誰かを待っていた事があったような気がする…そうだ…確かに…いつ? そうして誰かが…あれは誰だった?
    この「再会」はたまらなくせつなく、つらく、感的で、感動的で、きつく、鋭く、、、
    私は知っている。新しい出会いのすばらしさも。けれど、「再会」の熱させつなさを愛している。
    それは。。。
    。。。。。。(おっぺ)
  • クリスマスローズ咲く頃」がアンジー視点メインで進んでいく中、さてサーニンなのだが……というだけの「番外編」では、決して、ない。
     この「サーニンのメモノート」は、またひとつの「窓のとおく」が語られている、そしてこれまで基本的には「正しい側」に位置していたはずのはみだしっ子たちが相対化される、そんな「どんでん返し」が顕れてくる転換地であるのだ。
     さらに、これは個人的なことでしかないけれども、圧倒的なせつなさを以て描かれる「再会」の物語でもあり……
     「クリスマスローズ咲く頃」終盤、家を飛び出したアンジーを追ってサーニンは走り、そしてジャックを呼ぶ。
     引き渡してしまっていいの? 今のアンジーを……と考えながら――。
     ――ジャックを待ちながら、ふとサーニンは思う。
     いつだったか…前にもこうして、誰かを待っていた事があったような気がする…
     そうだ…確かに…いつ? そうして誰かが…
     あれは誰だった?
     思い出さなければならない気持ちがせりあがってくる。
     そんなサーニンに足音が近付いてくる。ゆっくりと……少しずつ……
     そしてとまる。
     サーニンを上げた……
     「アンジーは?」
     ジャックが訊いた。
     サーニンは……
     「…雪…降ってた? クリスマス・イブで、ボク達凍死しかけて、病院へ運んだ?……あれ…ジャックだった?」
     こうしてはみだしっ子たちの物語は、まったき最初のスタートラインへと回帰する。「恋人」と思った大人に裏切られ、騙されたと思ったからこそスタートした彼らの旅、放浪。
     しかし、「恋人」は裏切ってなどいなかった! 騙してなどいなかった!
     「サーニン…気づいていたんじゃないのかい? だからクリスマスローズなのだと…じゃあ…」
     サーニンは思い出す。覚えてる? ジャック。ボクとの約束……
     しないね? もうマックスアンジーグレアムを泣かせたりしないね!
     しないね!
     そしてあのときジャックは約束したのだ……
     サーニンは……
     「ジャック……アンジーはあそこだよ」
     これは、サーニンジャックを再び信じた瞬間、もう一度「恋人」として受け入れ信じ委ねた瞬間だったのだ……
     せつなく、甘く、きびしく、つらい「真実」が提示されて在る。「信じられない」とあとにした場所、しかし「信じていない」のははみだしっ子たちのほうだったのだ。そのために彼らは「山の上」までも経験しなければならなくなった。
     そして、だから、再び出会い直した「恋人」ジャックとの日々も、そうあるはずだった「幸福」に彩られてはくれない。待ち受けているのは……
     だがそれはまた先の話なのだ……(おっぺ)
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