語る「万華鏡」

(「蝶々殺人事件」の一部削除)

蝶々殺人事件(ちょうちょうさつじんじけん)

項目名蝶々殺人事件
読みちょうちょうさつじんじけん
分類ミステリ小説

作者
  • 横溝正史(おっぺ)
  • 公的データ
  • 原さくら歌劇団の主宰者である原さくらが「蝶々夫人」の大阪公演を前に突然、姿を消した……。数日後、数多くの艶聞をまきちらし文字通りプリマドンナとして君臨していたさくらの死体はバラと砂と共にコントラバスの中から発見された! 次々と起こる殺人事件にはどんな秘密が隠されているのだろうか。(おっぺ)
  • 感想文等
  • ミステリは小学校2年生くらいから読んでいたと思う。最初は本格ではなくてルパンだった……それから海外の有名作をひと通りという感じに読んで、中学では乱歩が中心だった。その後、高木彬光とか鮎川哲也とか日本の本格に移っていったはず。
     そんななのだが、実は今回生まれて初めて「蝶々殺人事件」を読んだ。
     どうしてこの有名作品を読まずじまいで来たのかといえば、ひとつにはそもそも自分が横溝正史のあまり熱心な読者ではなかったことは挙げられる。かてて加えて、この「蝶々殺人事件」の探偵役が名高き金田一耕助ではなくて由利先生とかいう(笑)無名な人(←言いがかりである)なのも理由のひとつだった。私でも「獄門島」をはじめ、幾つかは横溝作品を読んではいる。だが、選択の段階で、金田一ものでないのはとりあえずオミットしてしまったのだ。貧乏な田舎の中高生たるもの、一冊の文庫本を買うのも常に究極の選択なのである。
     が、他にも理由はあったと思う。この「蝶々殺人事件」を解説・紹介している文章を、いくら読んでも、「わあ、面白そうだな」という感じにならなかったのだ。その点はっきりと、「獄門島」や何やらと違っている。
     『死体がコントラバスのケースに入っていた事件』。今回読んでみる気になるまで、「蝶々殺人事件」についての認識はその程度のものだった。それを無名の(言いがかりである)由利先生とかいう探偵が解決するらしい。「あ、そうなんですか」という感じである。まあ、別に由利先生でなくて金田一さんでも、あるいは神津恭介でもエルキュール・ポアロでも、その程度の紹介というか宣伝では読む気にならないような気がする。由利先生が悪いのではなかったのである(笑)。
     で、実は今回読んでみる気になったのは、千街晶之『水面の星座 水底の宝石』の中で取り上げられていて、そこではコントラバスがどうこうではなくて別な紹介というか解読がされていたのである。
     もちろん、これまでにも「蝶々殺人事件」について、こういった『作者が読者に仕掛けた心理トリック』がある、ということを書いてある解説文は存在していたのだろう。ただ私が知らなかっただけなのだ。
     とはいえ、普通の「解説」で「作者が読者に……」まで踏み込んで書くのは難しいだろう。うっかりすると「ネタバレ」になってしまうのだ。現に、今回読んだのは角川文庫版だったのだが、その大坪直行さんの解説はまさしく「蝶々殺人事件」とそれから同じ横溝の「夜歩く」のメイントリックと犯人を割ってしまっていた。実は今回はそれらを承知の上で作者の技法を見たくて読み始めたからよかったものの、でなければ解説から先に読む習慣の私は泣いて暮らしていたことだろう。
     ネタを割らずに、しかしなおかつ読者に興味を抱かせる。それができる解説者、評論家は、なかなかいないだろう……特に本格ミステリでは。
     ちなみに、「蝶々殺人事件」と、それから「夜歩く」、どちらも、中高生の頃に予備知識なしで読んでいたら楽しめたかも。今となっては、犯人がクリスティ「ア○ロイド」の犯人や高木彬光「能面○人事件」の犯人に比べてあまりにアンフェアなので減点である。ごめんなさい(笑)。(おっぺ)
  • 削除用パスワード
    この項目に書き込む
    閉じる / 注意事項 / 新規項目の登録 / リロード / 管理モード