感想文等 | 正直なところ、「青ルパン」の好きだった私は、「赤ルパン」のスラプスティック一本占めという作風には、やや寂しいものをおぼえていて、この赤ルパンでも「私の愛したルパン」とか「時をかける少女」とか、やはりセンチメンタル系で哀しい眼をしたルパンを見ることもできるのだけど総体的には多くはなく、もっとアダルトなルパンをまた見られないかなあ、、、とないものねだりをしていたわけで。 そんなとき、この映画では、さーすが映画だもん、という感じで、なかなか渋めの演技でルパン三世が活躍してくれたのだ。 心に残るシーンが幾つかある。 峰不二子が複製人間のマモーにさらわれ、(この、敵役の名前がマモーだというのも、旧ルパンの「タイムマシンに気をつけろ!」での印象的な敵役、魔毛狂介を思い出させてくれたのだけど)それをルパンが救出に行くというシーン。 「神」を自称するマモーに対し、 「神様だってんなら、天変地異でも起こしてみろってんだ!」 と啖呵を切るルパン。 すると、なんと実際に大地震が起きる。 さすがにルパンも次元大介も仰天する。 次元「じ、地震だ! 奴は、本物の地震を起こしやがった!」 ルパン「ばかやろ、そんなことあるかい!」 しかし、そんなことあって、ルパンのアジトは崩壊する。 それでもめげずに出発しようとするルパンを、次元が制止する。 次元「奴が神様とはいわねえ。。。だが、とんでもない力を持ってるのは確かなんだぞ!」 ルパン「こねえのか?」 次元「……ああ、いかねえ……」 ルパン「(にやっとして)いいよ、信心深い奴にはむかねえ仕事だ」 そして、出かける。 次元はしばらくそのまま動かないが、やがてコンバットマグナムを一発空に向けて放ち、叫ぶ。 「行くな! ルパン!」 すると、ルパンは静かにこう答えるのだ。 「俺は……夢、盗まれたからな。取り返しにいかにゃ」 次元「? 夢ってのは、女のことか?」 ルパンはまた笑い、 「実際クラシックだよ、おまえって奴は」 このシーン、たぶん、ルパンの言う夢とは女=不二子のことではないのだ。
このほか、マモーとの決着のついたあと、ポツリと漏らすセリフとか、この映画では、ルパンのロマンティックな部分やハードボイルドな世界がなかなかに堪能できる。当時の赤ルパンのテレビ版が人気沸騰していたことからすると意外なほどだ。 ハードさとコメディ部分が見事にバランスの取れている、「カリ城」がセンシティブなルパンの傑作であれば、こちらはロマンティックなルパンの傑作だと思っている。(おっぺ)
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