民宿丘城宿泊記

2002.7


 佐世保の中心から国道202号線を西彼杵半島に向かって走っていくと、なだらかな丘陵地帯を抜ける快適な道なのですが、その進行方向左手の丘の上に立派な天守が見えてきます。これが民宿「丘城」なんですが、以前にこのルートをドライブした際に発見したものの遠くから写真を撮ったのみでしたので、今回は近くまで行ってみることにしました。

 佐世保でレンタカーを借りて出発したのは午後3時、そこから20分程で丘城に着きました。さて、写真でも撮るかと国道沿いの駐車スペースに車を止めて登っていこうとすると、
「ご用の方は右の食堂まで」
 と書いてあります。それで、撮影の許可を得ようと右手に有る食堂に入って見ました。
「ごめんください」
 入り口が二つ有ったので、受け付けと書いてある入り口から入りましたが誰もいません。奥を窺うと食堂の方に小父さん(民宿の旦那さんと思われます)が居たので声を掛けてみます、
「すみません」
「なんです?宿泊ですか?」
「あっ・・・えーと・・・・どうしようかなぁ?」
 写真だけ撮らせて下さい、などと言うと怒られそうな感じです、その日の宿は決めてなかったのでココに泊まっても良いんですが・・・
 小父さんはいかにも怪しそうにこちらを睨んでます。
「えぇ、宿泊でお願いします」

 宿帖に住所を書いていると、
「おや、埼玉から来たのですか?」
「えぇ、仕事で来たんですけど、この辺を走っていたら立派な建物が見えたんで寄って見たんです」
 ちょっと脚色してます、が、これが効いたのか、
「じゃ、三階、最上階の部屋が空いてるんで、そこを使って下さい」
 因みに二食付きで5000円とリーズナブルなお値段でした。
 夕食は6時半からという事なので、中途半端な時間を潰す為にちょっと有田まで行って来ました。

 6時前に戻ってきて車を上の庭まで入れます、この庭から(に限らずこの一円から)は針尾無線塔の三本の塔がよく見えます(ていうか、今調べたらこれも凄く古くて有名な物だったんですね、しまった、見てくれば良かった)。
 この辺りは針尾島と呼ばれ、佐世保市でも九州本土から浅瀬を挟んだ島になっていて、ハウステンボスも有る風光明媚な地区になっています。

 さて、天守に入り二階、三階・・あれ、二階から登る階段が見当たらないぞ?扉を開けて洗面所を覗いて見ますが(正解はこのまま振り返れば良かったんですが)見つからないので下の食堂まで降りて聞きに行きます。今度は小母さん(民宿の女将さんと思われます)が居たので聞いてみると、
「洗面所の奥に階段が有りますけど・・・」

 ということで、ようやく三階に登って部屋に入ると・・・
 おぉ、部屋の中から四方が見渡せます(つまり最上階には一部屋しか無い)、どちらを見ても見晴らしが良くて正に殿様になった気分です。
 しかし、暫く経つとどうにも落ち着かないので、カーテンを閉めました、周りに人家は殆ど無いのですが、どっちを向いても後ろを取られるって感じでゴルゴ的には我慢ならない所です。

 食事を済ませて、部屋に戻った頃には・・・丁度五島列島沖に達していた台風の影響で風雨供に強まりまして、上記の通り窓だけは一杯有るので、別に建て付けが悪いとかそういう問題は無いんですけど、
「ぐおぉぉぉぉぉ」
「ざぁぁぁぁぁ」
 むう、さらに落ち着かない雰囲気になってきたぞ。これは風呂に入ってとっとと寝てしまおう、ということで風呂にお湯を張ってと・・・どうもこの風呂の一角は取って付けたような構造(後で聞いたらやはり増築したらしい)で、部屋から一旦外に出ないと行けない。
 やはり天守は住むのには向かないのか?などと思いつつ風呂に入って寝入りました。

*翌日はやはり、若干寝不足で有りました。


 翌朝、朝食後に旦那さんに取材したところ、
・天守は昭和57年に建てたものである。
・その後、東側と北側に風呂、トイレ、洗面所などを増築した。
・今後、庭に石造りの露天風呂を造る予定がある。
 との事でした。

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